数検準1級
基礎的統計処理 — 平均・分散・標準偏差・確率分布 β版
最終確認日:
この章で学ぶこと
データの散らばりぐあいを数で表すのが分散・標準偏差です。 さらに、 偶然で値が決まる確率変数の期待値と分散を学びます。
- 平均・分散・標準偏差
- 確率変数の期待値 E(X) と分散 V(X)
- 二項分布 B(n, p)
ポイント: 分散は 「偏差(平均との差)の2乗の平均」 です。 計算には V(X)=E(X2)−{E(X)}2(2乗の平均−平均の2乗)という公式が便利です。
1. 平均・分散・標準偏差
データ x1, x2, …, xn について、
xˉ=n1∑i=1nxi,V=n1∑i=1n(xi−xˉ)2,σ=V.
例題: データ 2, 4, 6, 8, 10 の平均・分散・標準偏差を求めよ。
平均xˉ=52+4+6+8+10=530=6。
偏差の2乗は (2−6)2,(4−6)2,(6−6)2,(8−6)2,(10−6)2=16,4,0,4,16。 その和は 40。
V=540=8,σ=8=22.
検算: ∑x2=4+16+36+64+100=220。 E(X2)=5220=44、 {E(X)}2=36。 V=44−36=8(一致)。 正しい。
2. 確率変数の期待値と分散
確率変数X が値xi を確率pi でとるとき、
E(X)=∑xipi,V(X)=E(X2)−{E(X)}2.
例題: 1個のさいころを投げて出た目を X とする。 E(X) と V(X) を求めよ。
各目は確率61 なので
E(X)=61+2+3+4+5+6=621=27=3.5.
E(X2)=61+4+9+16+25+36=691。 よって
V(X)=691−(27)2=691−449=12182−147=1235.
検算: 691=12182、 449=12147。 差は 1235≈2.917。 正しい。
大事: 確率変数X を aX+b に変えると、 E(aX+b)=aE(X)+b、 V(aX+b)=a2V(X) です。 分散には定数b は影響せず、 係数は2乗されます。
3. 二項分布
1回の試行で確率p で起こることが、 独立に n回くりかえされるとき、 起こる回数X は二項分布 B(n, p) にしたがいます。
E(X)=np,V(X)=np(1−p).
例題: さいころを 180回投げるとき、 1 の目が出る回数X の期待値と分散を求めよ。
n=180, p=61 の二項分布なので
E(X)=180⋅61=30,V(X)=180⋅61⋅65=30⋅65=25.
検算: np=30、 np(1−p)=30⋅65=25。 正しい。
どう問われるか
- 一次では平均・分散・標準偏差の計算が問われます。 V=E(X2)−{E(X)}2 が速いです。
- 二次では確率変数の分布表をつくり期待値・分散を求める問題や、 二項分布の E(X)=np、 V(X)=np(1−p) の活用が出ます。
- V(aX+b)=a2V(X) で定数b を分散に足してしまうミスに注意します。
よくまちがえるところ
統計は公式が少ないぶん、 公式のどこに何が入るか の取りちがえが失点に直結します。
| まちがい | 例 | 直し方 |
|---|
| 分散に定数を足してしまう | V(2X + 3) を 4V(X) + 3 とする | V(aX + b) = a² V(X)。 定数 b は分散を変えない |
| 分散と標準偏差を取りちがえる | 分散を聞かれて 2√2 と答える(正しくは 8) | 標準偏差は分散の平方根。 単位が違う |
| 2乗の平均と平均の2乗を入れかえる | V = {E(X)}² - E(X²) と書く | V = E(X²) - {E(X)}²。 逆にすると負になる |
| 二項分布の分散を np とする | さいころ 180 回で V(X) = 30 とする | V(X) = np(1 - p) = 180 × 1/6 × 5/6 = 25 |
いちばん多いのは V(aX + b) に b を足す ことです。 分散は 「平均からのずれ」 の大きさなので、 全体を b だけ平行移動しても、 ずれの大きさは変わりません。 だから b は分散に影響しないのです。 一方、 全体を a 倍するとずれも a 倍になり、 分散は 2乗した量なので a² 倍になります。 「平行移動では散らばりは変わらない、 引きのばすと 2乗で効く」 と意味で覚えると、 公式を思い出せなくなっても間違えません。
たしかめ方
計算し終えたら、 次の 4 つで検算します。 どれも数秒で終わります。
| 見るところ | 成り立つべきこと | 破れていたら |
|---|
| 分散の符号 | 分散は必ず 0 以上 | E(X²) と {E(X)}² を逆にしている |
| 期待値の位置 | E(X) は取りうる値の最小と最大の間 | 確率の重みづけを取りちがえている |
| 確率の合計 | 分布表の確率の合計は 1 | 場合分けの数えもれがある |
| 二項分布の大小関係 | V(X) = np(1-p) は E(X) = np より小さい | 1 - p をかけ忘れている |
もう 1 つ、 分散には 2 通りの求め方があります。 どちらで出しても同じ値になるので、 時間があれば両方で確かめられます。
| 求め方 | 式 | 向いている場面 |
|---|
| 定義どおり | 偏差の2乗の平均 | 値が少なく平均が整数のとき |
| 変形した式 | E(X²) - {E(X)}² | 平均が分数のとき、 確率分布のとき |
データ 2, 4, 6, 8, 10 なら、 定義どおりでは (16 + 4 + 0 + 4 + 16)/5 = 8、 変形した式では 220/5 - 36 = 44 - 36 = 8 で一致します。
大事: 標準偏差はもとのデータと同じ単位、 分散はその 2乗の単位です。 問題文が 「散らばりの度合いを、 データと同じ単位で答えよ」 と言っていれば標準偏差です。 どちらを答えるのかを最初に確認しましょう。
自分でチェック
- V(aX + b) = a² V(X) と書け、 b が効かない理由を説明できる
- 分散と標準偏差を単位のちがいで言い分けられる
- V = E(X²) - {E(X)}² の順序を正しく書ける
- 二項分布で E(X) = np、 V(X) = np(1-p) を使い分けられる
- 分散が 0 以上か、 期待値が値の範囲内かで検算できる
まとめ
- 分散 V=E(X2)−{E(X)}2、 標準偏差 σ=V
- E(aX+b)=aE(X)+b、 V(aX+b)=a2V(X)
- 二項分布 B(n,p) は E(X)=np、 V(X)=np(1−p)
次章では、 ここまでの内容と2級範囲を合わせた 二次(数理技能)対策・総合 を行います。
※ 「数検」「実用数学技能検定」 は公益財団法人日本数学検定協会の登録商標です。