数検準1級
行列の演算と一次変換(発展) β版
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この章で学ぶこと
重要な注意: 行列と一次変換は 現在の高等学校の学習指導要領では扱わない範囲 です。 しかし数検は旧課程を踏まえ、 行列を出題範囲に含め続けています。 そのため本章は、 数検の対策として学ぶ 発展内容 です。
この章では、 数を長方形に並べた行列と、 行列によって点を移す一次変換を学びます。
- 2次正方行列の和・実数倍・積
- 行列式 ad−bc と逆行列
- 一次変換と回転行列
ポイント: 行列の積は 「左の行」 と 「右の列」 を組にして、 かけてたす のが基本ルールです。 順序を変えると結果が変わる(交換法則は成り立たない)点に注意します。
1. 行列の演算
2次正方行列を A=(acbd) のように書きます。 和・実数倍は成分ごとに行います。
行列の積
(acbd)(prqs)=(ap+brcp+draq+bscq+ds).
例題: (1324)(5768) を計算せよ。
(1⋅5+2⋅73⋅5+4⋅71⋅6+2⋅83⋅6+4⋅8)=(19432250).
検算: 左上=5+14=19、 右上=6+16=22、 左下=15+28=43、 右下=18+32=50。 正しい。
2. 行列式と逆行列
A=(acbd) の行列式は detA=ad−bc。 detA=0 のとき逆行列が存在し、
A−1=ad−bc1(d−c−ba).
例題: A=(2312) の逆行列を求めよ。
detA=2⋅2−1⋅3=4−3=1。 よって
A−1=11(2−3−12)=(2−3−12).
検算: AA−1=(2312)(2−3−12)=(4−36−6−2+2−3+4)=(1001)。 単位行列になる。 正しい。
3. 一次変換
点(x, y) を行列A で移す変換(x′y′)=A(xy) を一次変換といいます。
原点を中心に角θ だけ回転する回転行列は
R(θ)=(cosθsinθ−sinθcosθ).
例題: 点(1, 0) を原点中心に 90°回転させた点を、 回転行列を使って求めよ。
θ=90° で cos90°=0, sin90°=1 なので R(90°)=(01−10)。
(01−10)(10)=(0⋅1+(−1)⋅01⋅1+0⋅0)=(01).
点(1, 0) は (0, 1) へ移ります。
検算: 90°回転で x軸上の点(1,0) が y軸上の (0,1) に来るのは図形的に正しい。 正しい。
どう問われるか
- 一次では行列の積や逆行列の計算が直接問われます。
- 二次では一次変換による点や図形の移り先、 回転行列を使った変換が出ます。
- 積の順序、 行列式 ad−bc の符号、 逆行列の ad−bc1 の見落としに注意します。
よくまちがえるところ
行列は計算規則が高校までの数と違うため、 数と同じ感覚で扱う ことがまちがいのもとになります。
| まちがい | 例 | 直し方 |
|---|
| 積の順序を入れかえる | AB と BA を同じものとして扱う | 一般に AB と BA は一致しない。 順序を変えない |
| 行列式の符号をまちがえる | 第1行が (2, 1)、 第2行が (3, 2) の行列で ad + bc = 7 とする | ad - bc = 2×2 - 1×3 = 1 |
| 逆行列で 1/(ad - bc) を落とす | 成分を入れかえ符号を変えただけで終える | 全体を ad - bc で割る |
| 行列式が 0 でも逆行列を作ろうとする | 第1行が (1, 2)、 第2行が (2, 4) の行列の逆行列を求める | ad - bc = 0 なので逆行列は存在しない |
いちばん多いのは 積の順序 です。 行列の積は 「左の行と右の列を組にして、 かけて足す」 という決まりなので、 左右を入れかえると組み合わせそのものが変わってしまいます。 一次変換で考えると分かりやすく、 AB は 「まず B の変換をしてから A の変換をする」 という意味です。 回転してから対称移動するのと、 対称移動してから回転するのとでは行き先が違う、 と図で確かめておくとまちがえません。
一次変換を行列で書き分ける
代表的な一次変換の行列を、 第1行・第2行の順に並べて書きます。
| 変換 | 第1行 | 第2行 |
|---|
| 原点まわりに角 θ の回転 | (cosθ, -sinθ) | (sinθ, cosθ) |
| x軸に関する対称移動 | (1, 0) | (0, -1) |
| y軸に関する対称移動 | (-1, 0) | (0, 1) |
| 原点に関する対称移動 | (-1, 0) | (0, -1) |
| 直線 y = x に関する対称移動 | (0, 1) | (1, 0) |
| 原点中心の k倍の拡大 | (k, 0) | (0, k) |
確かめ方は簡単です。 点 (1, 0) と点 (0, 1) の行き先 を見ると、 それがそのまま行列の第1列・第2列になります。 たとえば 90 度回転なら (1, 0) は (0, 1) へ、 (0, 1) は (-1, 0) へ移るので、 第1列が (0, 1)、 第2列が (-1, 0)、 つまり第1行が (0, -1)、 第2行が (1, 0) です。 上の表で θ = 90 度としたものと一致します。
大事: 行列式は 「変換で面積が何倍になるか」 を表します。 回転行列の行列式は cos²θ + sin²θ = 1 で、 回転しても面積が変わらないことと合います。 行列式が 0 の変換は平面をつぶして直線か点にしてしまうので、 元に戻せません。 これが 「行列式が 0 なら逆行列がない」 ことの意味です。
自分でチェック
- AB と BA が一般に一致しないと言える
- 行列式を ad - bc と正しく計算できる
- 逆行列の 1/(ad - bc) を落とさずに書ける
- 行列式が 0 のとき逆行列が無い理由を説明できる
- (1, 0) と (0, 1) の行き先から変換の行列を作れる
まとめ
- 行列の積は 「行 × 列」 でかけてたす。 順序を変えると結果が変わる
- 行列式 detA=ad−bc、 逆行列は ad−bc1(d−c−ba)
- 回転行列 R(θ)=(cosθsinθ−sinθcosθ)
- ※行列は現行の高校課程外。 数検固有の発展範囲
次章では、 データを整理する 基礎的統計処理 を学びます。
※ 「数検」「実用数学技能検定」 は公益財団法人日本数学検定協会の登録商標です。