数値解析・初等整数論 — ニュートン法・合同式と二次対策
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この章で学ぶこと
仕上げとして、数値解析と初等整数論の基礎、そして二次(数理技能)で得点するための戦略を学びます。
- ニュートン法による方程式の近似解
- ユークリッドの互除法と最大公約数
- 合同式と中国剰余定理
- 二次(数理技能)対策の進め方
ポイント: 数値解析は「解析的に解けない問題を反復計算で近づける」技法、整数論は「割り算の余り」を主役にした分野です。どちらも二次の選択問題で得点源になりやすい実用的なテーマです。
1. ニュートン法
方程式 の解を、初期値 から出発して接線で近づける反復法がニュートン法です。
例題: にニュートン法を適用し、 から の近似値を1ステップ求めよ。
。 で 、。
検算: 真の値 。1ステップで から へ大きく近づいた( で に近い)。ニュートン法は2次収束するので、さらに数ステップで高精度になる。正しい。
大事: ニュートン法の更新式は「現在の点での接線が 軸と交わる点」を次の近似値とするものです。 になる点の近くでは破綻するので注意が必要です。
2. ユークリッドの互除法
2つの整数の最大公約数 は、「大きい数を小さい数で割った余りに置き換える」操作を繰り返すユークリッドの互除法で求まります。
例題: を求めよ。
余りが になる直前の除数 が最大公約数。よって 。
検算: 、。 と は互いに素なので、 が最大公約数で正しい。
ポイント: 互除法を逆にたどると、 となる整数 が求まります(ベズーの等式)。これは1次不定方程式 の解法や、合同式での逆数計算に使えます。
3. 合同式
整数 を で割った余りが等しいとき と書き、合同といいます。合同式はたし算・ひき算・かけ算について通常の等式のように計算できます。
例題: を で割った余りを求めよ。
なので 。 のべきの余りは周期 で循環する()。 なので
よって余りは 。
検算: を 乗しても 。フェルマーの小定理( が素数で が の倍数でないとき )からも、 なので 。一致する。
大事: 中国剰余定理は、互いに素な について連立合同式 がただ1つの解を でもつことを保証します。たとえば「 で割ると 余り、 で割ると 余る数」は で と一意に定まります()。
4. 二次(数理技能)対策の進め方
1級の二次は「必須2問 + 選択5問から2問」の記述式です。得点するためのコツを整理します。
- 得意分野で選択問題を選ぶ: 解析(微積分・微分方程式)、線形代数(固有値・対角化)、確率統計のうち、自信のある分野を選ぶ。
- 定理の仮定を確認してから使う: 「連続だから最大値をとる」「微分可能だから平均値の定理が使える」など、根拠を明示すると記述の評価が高い。
- 計算は必ず検算する: 固有値なら「和=トレース・積=行列式」、積分なら「微分して戻す」など、独立な方法で確かめる。
- 途中式をていねいに書く: 二次は部分点が大きい。最終答だけでなく、立式・変形の流れを論理的に書く。
大事: 1級は範囲が広いので、全分野を浅く より 数分野を確実に が戦略です。本教材なら「解析(第2〜5章)+ 線形代数(第7〜8章)」を主軸に固め、確率統計・複素解析・整数論から得意なものを選択問題用に1〜2分野準備するとよいでしょう。
どう問われるか
- 一次では「ニュートン法の1〜2ステップ」「最大公約数」「合同式によるべき乗の余り」などの計算が出ます。
- 二次では「漸化式・近似計算」「不定方程式・合同式の応用」「これまでの全分野の総合問題」が記述式で問われます。
よくまちがえるところ
数値解析と整数論は、誤差の種類と合同式で許される操作の理解が勝負どころです。
| まちがい | 例 | 直し方 |
|---|---|---|
| 打ち切り誤差と丸め誤差を混同する | 桁数を増やせば打ち切り誤差も消えると考える | 打ち切りは有限項・有限回で止めたことによる誤差、丸めは有限桁でしか表せないことによる誤差。原因が別 |
| ニュートン法で導関数が 0 になる点を避けない | f(x) = x³ - x に初期値 1/√3 を使う | そこで導関数が 0 になり計算が破綻する。初期値を変える |
| 近い数どうしの引き算(桁落ち)を放置する | 大きい x で √(x+1) - √x をそのまま計算する | 有理化して 1/(√(x+1) + √x) に直してから計算する |
| 合同式で自由に割り算する | 2x ≡ 2 (mod 4) から x ≡ 1 と結論する | 法と互いに素な数でしか割れない。この解は x ≡ 1 と x ≡ 3 の2つ |
いちばん多いのは誤差の混同です。打ち切り誤差は、無限級数を有限項で切ったり、反復計算を有限回で止めたりすることから生じます。項数や反復回数を増やせば小さくできます。丸め誤差は、計算機が有限桁でしか数を表せないことから生じ、こちらは桁数(精度)を上げないと小さくなりません。打ち切り誤差は計算の設計で、丸め誤差は計算機の表現能力で決まる、と原因のちがいで整理してください。
合同式の割り算も要注意です。a ≡ b (mod m) の両辺を c で割れるのは、c と m が互いに素なときに限ります。上の例では c = 2 と m = 4 の最大公約数が 2 なので割れません。互いに素でない場合は、法のほうも割って 2x ≡ 2 (mod 4) を x ≡ 1 (mod 2) と読みかえます。
誤差の種類を使い分ける
| 誤差の名前 | 生じる原因 | 例 | 減らし方 |
|---|---|---|---|
| 打ち切り誤差 | 無限の操作を有限で止める | テイラー展開を3項で切る | 項数・反復回数を増やす |
| 丸め誤差 | 有限桁でしか表せない | 1/3 を 0.3333 と表す | 精度(桁数)を上げる |
| 桁落ち | 近い数どうしを引く | 大きい x での √(x+1) - √x | 式を変形して引き算を避ける |
| 情報落ち | 大きさの違う数を足す | 非常に大きい数に非常に小さい数を足す | 小さい数から順に足す |
ニュートン法の性質も整理しておきます。この方法は、現在の点での接線が x 軸と交わる点を次の近似値とするもので、更新式は x(次) = x(今) - f(x(今))/f'(x(今)) です。解の近くでは2次収束するため、正しい桁数がおよそ倍々に増えていきます。
| 段階 | x の値 | 2乗した値 |
|---|---|---|
| 初期値 | 1.5 | 2.25 |
| 1回目 | 1.41666... | 約 2.0069 |
| 2回目 | 1.414215... | 約 2.0000006 |
f(x) = x² - 2 の場合、2回の反復で √2 = 1.4142135... にきわめて近づきます。ただし導関数が 0 に近い点では更新の分母が小さくなって発散するので、初期値の選び方が重要です。
大事: 合同式でべき乗の余りを求めるときは、周期を見つけるのが早道です。法 5 における 2 のべきは 2、4、3、1 と周期 4 で循環するので、指数を 4 で割った余りだけを見ればよいことになります。フェルマーの小定理(p が素数で a が p の倍数でないとき a の (p-1) 乗が 1 と合同)を使うと、この周期の上限がすぐ分かります。
自分でチェック
- 打ち切り誤差と丸め誤差を原因のちがいで説明できる
- 桁落ちを避けるために式を変形できる
- ニュートン法の更新式を書き、破綻する条件を言える
- 合同式で割り算が許される条件を言える
- べき乗の余りを周期やフェルマーの小定理で求められる
まとめ
- ニュートン法 は接線で近づける反復法
- ユークリッドの互除法で 、逆にたどってベズーの等式
- 合同式はべき乗の余りの周期性・フェルマーの小定理・中国剰余定理
- 二次は得意分野を選び、仮定の確認・検算・途中式を大切に
これで数検1級の教材はひと通り終わりです。解析と線形代数を主軸に、各章の例題を検算しながら繰り返し解き、一問一答や問題集で計算力を確かめましょう。
※「数検」「実用数学技能検定」は公益財団法人日本数学検定協会の登録商標です。本教材は非公式の学習教材であり、合格を保証するものではありません。
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