この章で学ぶこと
仕上げとして、数値解析と初等整数論の基礎、そして二次(数理技能)で得点するための戦略を学びます。
- ニュートン法による方程式の近似解
- ユークリッドの互除法と最大公約数
- 合同式と中国剰余定理
- 二次(数理技能)対策の進め方
ポイント: 数値解析は「解析的に解けない問題を反復計算で近づける」技法、整数論は「割り算の余り」を主役にした分野です。どちらも二次の選択問題で得点源になりやすい実用的なテーマです。
1. ニュートン法
方程式 f(x)=0 の解を、初期値 x0 から出発して接線で近づける反復法がニュートン法です。
xn+1=xn−f′(xn)f(xn)
例題: f(x)=x2−2 にニュートン法を適用し、x0=1.5 から 2 の近似値を1ステップ求めよ。
f′(x)=2x。x0=1.5 で f(1.5)=2.25−2=0.25、f′(1.5)=3。
x1=1.5−30.25=1.5−0.0833…=1.4166…
検算: 真の値 2=1.41421…。1ステップで 1.5 から 1.4167 へ大きく近づいた(x12=1.41672≈2.007 で 2 に近い)。ニュートン法は2次収束するので、さらに数ステップで高精度になる。正しい。
大事: ニュートン法の更新式は「現在の点での接線が x 軸と交わる点」を次の近似値とするものです。f′(xn)=0 になる点の近くでは破綻するので注意が必要です。
2. ユークリッドの互除法
2つの整数の最大公約数 gcd は、「大きい数を小さい数で割った余りに置き換える」操作を繰り返すユークリッドの互除法で求まります。
例題: gcd(252,105) を求めよ。
252=105×2+42
105=42×2+21
42=21×2+0
余りが 0 になる直前の除数 21 が最大公約数。よって gcd(252,105)=21。
検算: 252=21×12、105=21×5。12 と 5 は互いに素なので、21 が最大公約数で正しい。
ポイント: 互除法を逆にたどると、gcd(a,b)=ax+by となる整数 x,y が求まります(ベズーの等式)。これは1次不定方程式 ax+by=c の解法や、合同式での逆数計算に使えます。
3. 合同式
整数 a,b を m で割った余りが等しいとき a≡b(modm) と書き、合同といいます。合同式はたし算・ひき算・かけ算について通常の等式のように計算できます。
例題: 7100 を 5 で割った余りを求めよ。
7≡2(mod5) なので 7100≡2100(mod5)。2 のべきの余りは周期 4 で循環する(21≡2, 22≡4, 23≡3, 24≡1)。100=4×25 なので
2100=(24)25≡125=1(mod5)
よって余りは 1。
検算: 24=16≡1(mod5) を 25 乗しても 1。フェルマーの小定理(p が素数で a が p の倍数でないとき ap−1≡1(modp))からも、24≡1(mod5) なので 2100=(24)25≡1。一致する。
大事: 中国剰余定理は、互いに素な m1,m2,… について連立合同式 x≡a1(modm1), x≡a2(modm2),… がただ1つの解を (modm1m2⋯) でもつことを保証します。たとえば「3 で割ると 2 余り、5 で割ると 3 余る数」は (mod15) で x≡8 と一意に定まります(8=3⋅2+2, 8=5⋅1+3)。
4. 二次(数理技能)対策の進め方
1級の二次は「必須2問 + 選択5問から2問」の記述式です。得点するためのコツを整理します。
- 得意分野で選択問題を選ぶ: 解析(微積分・微分方程式)、線形代数(固有値・対角化)、確率統計のうち、自信のある分野を選ぶ。
- 定理の仮定を確認してから使う: 「連続だから最大値をとる」「微分可能だから平均値の定理が使える」など、根拠を明示すると記述の評価が高い。
- 計算は必ず検算する: 固有値なら「和=トレース・積=行列式」、積分なら「微分して戻す」など、独立な方法で確かめる。
- 途中式をていねいに書く: 二次は部分点が大きい。最終答だけでなく、立式・変形の流れを論理的に書く。
大事: 1級は範囲が広いので、全分野を浅く より 数分野を確実に が戦略です。本教材なら「解析(第2〜5章)+ 線形代数(第7〜8章)」を主軸に固め、確率統計・複素解析・整数論から得意なものを選択問題用に1〜2分野準備するとよいでしょう。
どう問われるか
- 一次では「ニュートン法の1〜2ステップ」「最大公約数」「合同式によるべき乗の余り」などの計算が出ます。
- 二次では「漸化式・近似計算」「不定方程式・合同式の応用」「これまでの全分野の総合問題」が記述式で問われます。
まとめ
- ニュートン法 xn+1=xn−f′(xn)f(xn) は接線で近づける反復法
- ユークリッドの互除法で gcd、逆にたどってベズーの等式
- 合同式はべき乗の余りの周期性・フェルマーの小定理・中国剰余定理
- 二次は得意分野を選び、仮定の確認・検算・途中式を大切に
これで数検1級の教材はひと通り終わりです。解析と線形代数を主軸に、各章の例題を検算しながら繰り返し解き、一問一答や問題集で計算力を確かめましょう。
※「数検」「実用数学技能検定」は公益財団法人日本数学検定協会の登録商標です。本教材は非公式の学習教材であり、合格を保証するものではありません。