この章で学ぶこと
微分の逆演算である積分を、大学レベルの技法とともに整理します。積分は「求積(面積・体積)」と「微分方程式の解」の両方で土台になります。
- 不定積分の基本公式
- 置換積分・部分積分
- 部分分数分解による有理関数の積分
- 定積分と微積分の基本定理
- 広義積分(無限区間・特異点)
ポイント: 積分には微分のような万能の公式がなく、「どの技法に持ち込むか」を見抜く力が要です。置換・部分積分・部分分数の3つが基本道具で、これで多くの初等関数が積分できます。
1. 不定積分の基本公式
F′(x)=f(x) となる F を f の原始関数といい、∫f(x)dx=F(x)+C(C は積分定数)と書きます。
| 被積分関数 | 不定積分 |
|---|
| xn (n=−1) | n+1xn+1+C |
| x1 | log∣x∣+C |
| ex | ex+C |
| sinx | −cosx+C |
| cosx | sinx+C |
| 1+x21 | arctanx+C |
2. 置換積分と部分積分
置換積分: t=g(x) とおくと dt=g′(x)dx により変数を変換します。
∫f(g(x))g′(x)dx=∫f(t)dt
部分積分: 積の微分公式を積分に直したもの。
∫f(x)g′(x)dx=f(x)g(x)−∫f′(x)g(x)dx
例題: ∫xexdx を求めよ。
部分積分で f=x, g′=ex とおくと f′=1, g=ex。
∫xexdx=xex−∫1⋅exdx=xex−ex+C=(x−1)ex+C
検算: dxd{(x−1)ex}=ex+(x−1)ex=xex。被積分関数に戻る。正しい。
例題: ∫2xcos(x2)dx を求めよ。
t=x2 とおくと dt=2xdx。
∫2xcos(x2)dx=∫costdt=sint+C=sin(x2)+C
検算: dxdsin(x2)=cos(x2)⋅2x。戻る。正しい。
3. 部分分数分解
有理関数の積分は、分母を因数分解して部分分数に分けると計算できます。
例題: ∫x2−11dx を求めよ。
x2−1=(x−1)(x+1) なので、(x−1)(x+1)1=x−1A+x+1B とおく。両辺に分母をかけ 1=A(x+1)+B(x−1)。x=1 で A=21、x=−1 で B=−21。
∫x2−11dx=21∫x−1dx−21∫x+1dx=21logx+1x−1+C
検算: dxd{21(log∣x−1∣−log∣x+1∣)}=21(x−11−x+11)=21⋅x2−12=x2−11。戻る。正しい。
4. 定積分と微積分の基本定理
微積分の基本定理: f が [a,b] で連続、F をその原始関数とすると、
∫abf(x)dx=F(b)−F(a)
例題: ∫0πsinxdx を求めよ。
∫0πsinxdx=[−cosx]0π=(−cosπ)−(−cos0)=−(−1)−(−1)=2
検算: sinx≥0 が [0,π] で成り立ち、面積として正の値 2。半周期の正弦の面積が 2 になるのは既知の結果と一致する。
5. 広義積分
積分区間が無限、または被積分関数が区間内で発散する場合は、極限で定義する広義積分を考えます。
∫a∞f(x)dx=limR→∞∫aRf(x)dx
例題: ∫0∞e−xdx を求めよ。
∫0∞e−xdx=limR→∞[−e−x]0R=limR→∞(−e−R+1)=0+1=1
検算: R→∞ で e−R→0。よって積分値は 1 に収束する。
例題: ∫0∞xe−xdx を求めよ。
部分積分で ∫xe−xdx=−xe−x−e−x+C=−(x+1)e−x+C。よって
∫0∞xe−xdx=[−(x+1)e−x]0∞=0−(−(0+1)⋅1)=1
検算: これはガンマ関数 Γ(2)=1!=1 に等しい。一般に ∫0∞xne−xdx=n! が成り立ち、n=1 で 1。一致する。
大事: 広義積分は「まず有限区間で計算し、極限をとる」のが原則です。極限が有限の値に収束すれば収束、発散すれば発散といいます。たとえば ∫1∞xdx は発散、∫1∞x2dx=1 は収束します。
どう問われるか
- 一次では「指定された関数の不定積分・定積分を求めよ」が頻出。置換・部分積分・部分分数の判断が鍵。
- 二次では「広義積分の収束判定と値の計算」「回転体の体積・曲線の長さ」など、積分の応用が問われます。
まとめ
- 積分の3大技法は置換積分・部分積分・部分分数分解
- 定積分は原始関数の差(微積分の基本定理)
- 広義積分は有限区間で計算してから極限をとる
- ∫0∞xne−xdx=n!(ガンマ関数)は頻出
次章では、積分を使って解く微分方程式(変数分離・1階線形・定数係数2階線形)を学びます。