この章で学ぶこと
経営戦略はストラテジ系の中核で 8〜12 問程度出題されます。フレームワーク名を覚え、具体シナリオに当てはめる練習が必要です。
学習ゴール
この章を読み終えた時点で、以下ができるようになっていることを目指します。
- SWOT 分析・PPM・3C 分析など主要フレームワークを判別して使いこなせる
- 競争戦略(コストリーダーシップ・差別化・集中)の違いを判別できる
- マーケティング 4P(Product・Price・Place・Promotion)を使いこなせる
- CRM・SFA・BI・ERP など業務システムの用途を判別できる
- IoT・AI・ビッグデータ等の新技術とビジネス応用を使いこなせる
1. 経営情報分析フレームワーク
1.1 SWOT 分析
自社の内部・外部環境を 4 つの視点で整理する分析手法。「内部 vs 外部」「プラス vs マイナス」の 2 軸で 4 象限に分けて、自社の現状を一枚の図にまとめます。
| プラス要因 | マイナス要因 |
| 内部 | 強み(Strengths) 技術力・ブランド・人材・特許等 | 弱み(Weaknesses) 資金不足・人手不足・古い設備等 |
| 外部 | 機会(Opportunities) 市場拡大・規制緩和・新技術登場等 | 脅威(Threats) 競合参入・景気悪化・原材料高騰等 |
内部は変えられる、外部は与件として受け入れる。
| プラス要因 | マイナス要因 |
|---|
| 内部 | 強み(Strengths) | 弱み(Weaknesses) |
| 外部 | 機会(Opportunities) | 脅威(Threats) |
覚え方: 頭文字で SWOT。S trengths(強み)+ W eaknesses(弱み)+ O pportunities(機会)+ T hreats(脅威)の順番で覚える。
発展形: クロス SWOT 分析では、4 象限の組み合わせから戦略を導きます。「強み × 機会」で積極攻勢、「弱み × 脅威」で**撤退・防衛**、など。試験では基本の 4 象限が問われます。
1.2 PEST 分析
外部のマクロ環境を 4 つの視点で分析します。
- Political(政治) — 規制・法律
- Economic(経済) — 景気・為替
- Social(社会) — 人口動態・価値観
- Technological(技術) — 技術革新
1.3 3C 分析
- Customer(顧客・市場) — 誰に売るか
- Competitor(競合) — 他社はどうしているか
- Company(自社) — 自分の強みは何か
1.4 ポーターの 5 フォース分析
業界の収益性を決める 5 つの競争圧力を分析するフレームワーク。**業界の魅力度**を診断するときに使います。
ポーターの 5 フォース
② 新規参入の脅威
↓
④ 売り手 → ① 業界内の競合 ← ⑤ 買い手
↑
③ 代替品の脅威
| # | フォース | 強くなる条件 |
| 1 | 業界内の競合 | 競合社数が多い・成長率が低い・差別化しにくい |
| 2 | 新規参入の脅威 | 参入障壁が低い(資金・規制・技術がいらない) |
| 3 | 代替品の脅威 | 別カテゴリで同じ価値を提供できる商品がある |
| 4 | 売り手の交渉力 | 仕入先が少数・代替供給源がない |
| 5 | 買い手の交渉力 | 顧客がまとめ買いする・スイッチングコストが低い |
5 つの圧力が強いほど業界の収益性は下がる
| # | フォース | 強くなる条件の例 |
|---|
| 1 | 業界内の競合 | 競合社数が多い・成長率が低い・差別化しにくい |
| 2 | 新規参入の脅威 | 参入障壁が低い(資金・規制・技術がいらない) |
| 3 | 代替品の脅威 | 別カテゴリで同じ価値を提供できる商品がある |
| 4 | 売り手の交渉力 | 仕入先が少数・代替供給源がない |
| 5 | 買い手の交渉力 | 顧客がまとめ買いする・スイッチングコストが低い |
試験での問われ方: シナリオ文から「これは 5 フォースのどの圧力か」を選ぶ問題が定番。「仕入先が少なく価格交渉が難しい」→ 売り手の交渉力、「顧客が大手量販店に集中している」→ 買い手の交渉力、と覚える。
覚え方: 「競・新・代・売・買」と頭文字でリズム化。中央が**競(業界内)、その周りに新規参入と代替品(外から侵入)と売り手・買**い手(取引相手)。
1.5 PPM(プロダクトポートフォリオマネジメント)
複数の事業を抱える企業が、どの事業に投資し、どの事業から撤退するかを判断するためのフレームワーク。**市場成長率(縦軸)× 市場占有率(横軸)**で事業を 4 象限に分類します。
| 市場占有率:高 | 市場占有率:低 |
| 市場成長率:高 | 花形(Star) 投資継続でシェア維持 投資 = 収益 | 問題児(Question Mark) 選択的投資。花形に育てるか 投資 > 収益 |
| 市場成長率:低 | 金のなる木(Cash Cow) 収益源として活用 / 投資控え 投資 < 収益 | 負け犬(Dog) 撤退・縮小検討 投資 ≈ 収益 |
「金のなる木」の収益で「問題児」を育て、「花形」に成長させる、が王道。
| 象限 | 市場成長率 | 市場占有率 | 戦略 |
|---|
| 花形(Star) | 高 | 高 | 投資継続 |
| 金のなる木(Cash Cow) | 低 | 高 | 収益源として活用 |
| 問題児(Question Mark) | 高 | 低 | 選択的投資 |
| 負け犬(Dog) | 低 | 低 | 撤退検討 |
覚え方: シェアが高い側に「花形・金のなる木」、低い側に「問題児・負け犬」。さらに**成長率が高い**側に「花形・問題児」、低い側に「金のなる木・負け犬」。シェアと成長率の 2 軸で組み合わせるとすぐ思い出せる。
試験での頻出: 「市場成長率は低いが市場占有率が高い事業は何か?」 → 金のなる木。安定収益を出すので投資を絞り、その収益を「問題児」に振り分けるのがポートフォリオ経営の基本。
2. 経営戦略手法とマーケティング
2.1 ポーターの 3 つの基本戦略
業界での競争優位を獲得する 3 つの基本戦略。「戦略の対象(広い vs 狭い)」と「競争優位の源泉(コスト vs 差別化)」の組み合わせで決まります。
- コストリーダーシップ戦略 — 業界全体を対象に**低コスト化で価格競争力**を持つ。大量生産・効率化が必要(例: 量販店、Amazon の物流)
- 差別化戦略 — 業界全体を対象に**独自の特徴で付加価値**を出す。ブランド・品質・技術が要(例: Apple、高級車)
- 集中戦略 — 特定市場・顧客セグメントに絞り込む。コスト集中(特定セグメントで低価格)と差別化集中(特定セグメントで独自性)に分かれる(例: 業務用特化、高齢者向け特化)
試験での問われ方: 「自社は中規模で全方位展開は難しい。特定の顧客層に絞って独自サービスを提供している」 → 集中戦略。「業界トップで規模の経済を活かして低価格で勝負」 → コストリーダーシップ戦略。
引っかけ: コストリーダーシップ + 差別化を同時にやるのは「スタック・イン・ザ・ミドル」と呼ばれる失敗パターン。リソースが分散して両方とも中途半端になりがち。基本は どれか 1 つに絞る。
2.2 マーケティングの 4P
- Product(製品)
- Price(価格)
- Place(流通)
- Promotion(販促)
顧客側視点の 4C と対比して覚える:
| 4P(売り手) | 4C(買い手) |
|---|
| Product | Customer Value(顧客価値) |
| Price | Cost(顧客コスト) |
| Place | Convenience(利便性) |
| Promotion | Communication(対話) |
覚え方: 4P は**売り手の視点で「何を / いくらで / どこで / どう伝えるか」、4C は同じものを買い手の視点で「どんな価値が / いくらかかって / 買いやすいか / 一方通行でなく対話できるか」と裏返した発想。売り手目線だけでは現代マーケティングは成り立たない**ので 4C も併せて考えるのが基本。
2.3 STP マーケティング
- Segmentation — 市場細分化
- Targeting — 狙う市場の決定
- Positioning — 自社の立ち位置の明確化
2.4 BSC(バランススコアカード)と KPI/KGI
- BSC — 4 視点(財務・顧客・内部プロセス・学習と成長)で戦略を管理
- KPI(Key Performance Indicator) — 重要業績評価指標(プロセス指標)
- KGI(Key Goal Indicator) — 重要目標達成指標(最終ゴール)
- CSF(Critical Success Factor) — 重要成功要因
頻出引っかけ: KGI と KPI の違い。例「年間売上 10 億円達成」が KGI(ゴール)、「月次商談数 100 件」が KPI(プロセス)。Goal の G が「最終目標」、Performance の P が「途中の業績指標」と覚える。BSC の 4 視点は「財・顧・内・学」(財務・顧客・内部プロセス・学習と成長)。
2.5 その他重要用語
| 用語 | 意味 |
|---|
| M&A | 企業の合併・買収 |
| アライアンス | 企業間提携 |
| TOB | 株式公開買付け |
| MBO | 経営陣による自社買収 |
| コアコンピタンス | 他社が真似できない中核能力 |
| **[[ブルーオーシャン戦略 | ブルーオーシャンせんりゃく]]** |
| ニッチ戦略 | 特定の狭い市場を独占 |
| OEM | 相手先ブランドで製造 |
| ファブレス | 自社工場を持たない経営 |
3. 経営管理システム
3.1 主要な経営管理システム
企業の各業務領域を IT で支援するシステムの総称。何を管理対象にしているかで略語の役割が決まります。
| 略称 | 正式名 | 役割 | 中心となる管理対象 |
|---|
| ERP | Enterprise Resource Planning | 企業資源計画。財務・人事・生産・販売を統合管理 | 企業全体のリソース |
| CRM | Customer Relationship Management | 顧客関係管理。顧客情報の一元化 | 顧客 |
| SCM | Supply Chain Management | 供給連鎖管理。調達〜販売の最適化 | モノ・情報の流れ |
| SFA | Sales Force Automation | 営業支援システム。商談・案件管理 | 営業活動 |
| KM | Knowledge Management | ナレッジマネジメント。知識の組織的活用 | 暗黙知 / 形式知 |
| HRM | Human Resource Management | 人事管理。採用・評価・育成 | 人材 |
覚え方: 略語の中央の文字に注目。ERP の R(リソース全部)、CRM の C(カスタマー)、SCM の S(サプライ)、SFA の F(フォース=営業力)、KM の K(ナレッジ)、HRM の H(ヒューマン)。
試験での頻出: シナリオから「どのシステムを導入すべきか」を選ぶ問題。「顧客の購買履歴を一元管理して継続営業に活かしたい」 → CRM、「部品メーカーから店舗まで在庫情報を共有したい」 → SCM、「全部門の予算実績を統合的に管理したい」 → ERP。
3.2 関連用語
- MOT(Management of Technology) — 技術経営
- TQM(Total Quality Management) — 総合的品質管理
- BPR(Business Process Re-engineering) — 業務プロセスの抜本的再設計
- ベンチマーキング — 他社の優れた手法を自社に取り入れる
4. 技術戦略マネジメント
4.1 技術開発戦略
- MOT — 技術を経営戦略に組み込む考え方
- 技術ロードマップ — 時間軸で技術の進化計画を可視化
- プロセスイノベーション — 製造・業務プロセスの革新
- プロダクトイノベーション — 製品・サービスの革新
4.2 イノベーション関連用語
| 用語 | 意味 |
|---|
| イノベーションのジレンマ | 優良企業が既存事業に固執して新技術に乗り遅れる現象 |
| キャズム | 革新的商品が主流市場に普及する前の溝 |
| デザイン思考 | 利用者視点で課題を捉え解決を図るアプローチ |
| オープンイノベーション | 外部との連携で技術革新を起こす |
| ハッカソン | 短期集中でアイデアを具現化するイベント |
| リーンスタートアップ | 仮説検証を高速サイクルで回す起業手法 |
| MVP(Minimum Viable Product) | 実用最小限の製品 |
| PoC(Proof of Concept) | 概念実証 |
4.3 API エコノミー
- API(Application Programming Interface) — ソフトウェア機能を外部から呼び出す仕組み
- API エコノミー — API を公開・連携させて生まれる経済圏
- マッシュアップ — 複数サービスの API を組み合わせて新サービスを作る
試験での頻出: イノベーションのジレンマは「優良企業ほど既存顧客に最適化しすぎて破壊的新技術に乗り遅れる」現象(クリステンセン著『イノベーションのジレンマ』に由来)。MVP は「Minimum Viable Product」=実用最小限の製品で**早期市場検証**するためのもの。PoC は「Proof of Concept」=技術的に実現可能か小規模で検証する段階。MVP は事業化前提、PoC は技術検証段階、と区別する。
5. ビジネスインダストリ
5.1 代表的なビジネスシステム
| 用語 | 意味 |
|---|
| POS システム | 販売時点情報管理。売上・在庫をリアルタイム把握 |
| 電子商取引(EC) | ネット上の商取引。B2B / B2C / C2C |
| RFID | IC タグを使った非接触認識技術 |
| IC カード | 接触・非接触型カード。SUICA など |
| GPS | 全地球測位システム |
| ETC | 自動料金収受システム |
5.2 エンジニアリングシステム
| 用語 | 意味 |
|---|
| CAD | Computer Aided Design。設計の CAD |
| CAM | Computer Aided Manufacturing。製造支援 |
| FA | Factory Automation。工場自動化 |
| JIT(ジャストインタイム) | 必要なものを必要な時に必要なだけ |
| MRP | Material Requirements Planning。資材所要量計画 |
| セル生産方式 | 少人数チームで多工程担当 |
| リーン生産方式 | 無駄を徹底的に排除 |
| かんばん方式 | トヨタの JIT を実現する情報伝達手法 |
5.3 e-ビジネス関連
| 用語 | 意味 |
|---|
| EDI | 電子データ交換(企業間で定型書類を電子的にやりとり) |
| 電子マーケットプレイス | ネット上の取引市場 |
| フィンテック | FinTech。IT を活用した金融サービス |
| 暗号資産 | ビットコイン等 |
| ブロックチェーン | 分散型台帳技術 |
| クラウドファンディング | 不特定多数から資金調達 |
| シェアリングエコノミー | 遊休資源を共有する経済 |
5.4 IoT システム
IoT(Internet of Things、モノのインターネット)は、家電・センサ・車両などあらゆる「モノ」をインターネットに接続して、データ収集と制御を行う仕組み。試験では特に 3 層構造とエッジコンピューティングが頻出。
シングルボードコンピュータ (例: Raspberry Pi)。 IoT デバイスのデバイス層・エッジ層で広く使われる小型 PC。
| 層 | 役割 | 例 |
| ☁️ クラウド層 | 大規模集約・長期保存・AI 分析・全体最適化 | AWS IoT、Azure IoT Hub |
| ⚡ エッジ層 | 端末近くでリアルタイム処理。遅延短縮・通信量削減 | ゲートウェイ、5G MEC |
| 📡 デバイス層 | センサ・アクチュエータ。物理世界とのインタフェース | 温度計、カメラ、モーター |
データは下から上、制御は上から下に流れる。エッジで処理 = 全部クラウドに送らず近場で処理。
- IoT システムの 3 層構造: デバイス層 → エッジ層 → クラウド層
- エッジコンピューティング — IoT 端末近くで処理する方式(遅延短縮・通信量削減)
- デジタルツイン — 現実のモノや環境を仮想空間に再現
- スマートシティ — IoT・AI で都市を効率化
- スマート農業 — IoT・センサで農業を自動化・精密化
試験での頻出: エッジコンピューティングの目的は「遅延短縮(自動運転など即応性が必要)」と「通信量削減(クラウドに全データを送ると帯域が足りない)」。「全データを一旦クラウドに集めて分析する」は中央集中型で、エッジの逆。区別問題が頻出。
5.5 AI 活用
| 用語 | 意味 |
|---|
| 生成 AI(Generative AI) | テキスト・画像・音声等を生成する AI |
| LLM(Large Language Model) | 大規模言語モデル |
| プロンプトエンジニアリング | AI への指示文の工夫 |
| ハルシネーション | AI が事実でない情報を生成する現象 |
| RAG | 検索拡張生成。外部知識を参照して精度向上 |
| ファインチューニング | 事前学習モデルを特定用途に追加学習 |
| 説明可能 AI(XAI) | AI の判断根拠を説明できるようにする |
頻出引っかけ: ハルシネーション(AI が事実でない情報を自信満々に生成する現象)の対策として RAG(Retrieval-Augmented Generation、検索拡張生成)が出題される。RAG は外部知識ベース(社内ドキュメント等)を検索して LLM に渡すことで、「事実に基づいた回答」を生成しやすくする手法。社内 AI チャットの設計でほぼ必須の概念。
5.6 RPA と自動化
- RPA(Robotic Process Automation) — 定型業務を自動化するソフトウェアロボット
- チャットボット — 自動会話プログラム
- OCR(光学文字認識) — 画像内の文字をデータ化
📋 章末まとめ
最重要ポイント 10 連発
- SWOT の 4 象限 — 内部×外部・プラス×マイナスで分類
- 5 フォース — 業界競争の 5 要因
- PPM の 4 象限 — 花形・金のなる木・問題児・負け犬
- 4P/4C の対応 — 売り手視点と買い手視点
- KGI vs KPI — ゴール指標と途中経過指標
- ERP/CRM/SCM/SFA — 何を管理するシステムか即答
- MVP と PoC — 実用最小限 vs 概念実証
- JIT・かんばん方式 — トヨタ生産方式の中核
- IoT の 3 層構造とエッジ — 処理を端末近くに寄せる意味
- 生成 AI の限界 — ハルシネーション、RAG による対策
出題傾向のコツ
- 具体シナリオ → 正しいフレームワーク名を選ぶ型が中心
- 略語は英語の略と日本語の両方で即答できるように
- AI 分野は新しい用語が増加中 — 最新シラバスを必ず確認