この章で学ぶこと
労働 は私たちの生活を支える営みであり、 社会保障 は病気・老後・失業といったリスクから私たちを守る制度です。 この 2 つは 「国民の暮らしを守るセーフティネット」 として、 政治・経済の両面で中心的な課題となっています。
- 労働三法 (労基法・労組法・労調法) の内容
- 労働基本権 (団結権・団体交渉権・団体行動権) と労働組合
- 年金制度 (国民年金・厚生年金) と 「2 階建て」 の仕組み
- 医療保険・介護保険・雇用保険・労災保険 の 5 保険
- 少子高齢化 と 人口減少 が社会保障に与える影響
- 働き方改革 と最低賃金・非正規労働問題
ポイント: 社会保障は 「自助・共助・公助」 の 3 段階で設計されます。 自分で備え、 仲間と助け合い、 最後に国が支える、 という 順序 です。
1. 労働三法 と労働者の権利
富岡製糸場繰糸所 (1872 年、 群馬県)。 明治政府が建設した模範工場。 当時の長時間労働・女工問題は、 戦後の労働三法による労働者保護の原点となった。
労働三法の全体像
| 法律 | 制定 | 内容 |
|---|
| 労働基準法 | 1947 | 賃金・労働時間・休日等の 最低基準 |
| 労働組合法 | 1945 | 労働組合 の結成・団体交渉権を 保障 |
| 労働関係調整法 | 1946 | 労使紛争 の 調整 (調停・仲裁) |
労働基準法の主な内容
| 項目 | 基準 |
|---|
| 労働時間 | 1 日 8 時間・週 40 時間 (法定労働時間) |
| 休日 | 週 1 日以上、 または 4 週 4 日以上 |
| 割増 賃金 | 時間外 25% 以上、 休日 35% 以上、 深夜 25% 以上 |
| 年次有給 休暇 | 6 か月勤務 で 10 日、 6 年 6 か月で 20 日 |
| 最低年齢 | 満 15 歳 (年度末まで未満 は不可) |
労働基本権 (労働三権)
憲法 28 条が 保障 する労働者の 3 つの権利。
| 権利 | 内容 |
|---|
| 団結権 | 労働組合 を結成する権利 |
| 団体交渉権 | 組合 が 使用者 と 交渉 する権利 |
| 団体行動権 (争議権) | ストライキ等を行う権利 |
大事: 公務員 は職種 によりこれらの権利が 制限 される (例: 警察・自衛隊は三権とも不可、 一般公務員は 争議権 のみ不可)。 代わりに 人事院 勧告制度がある。
2. 社会保障 の仕組み
5 つの 社会保険
| 保険 | 給付 |
|---|
| 医療保険 | 病気・怪我 の医療費 の 7-9 割を給付 |
| 年金保険 | 老後・障害・遺族年金 |
| 介護保険 | 40 歳以上が 加入、 介護サービス 費 を給付 |
| 雇用保険 | 失業給付・育児休業給付 |
| 労災保険 | 業務中・通勤中の 怪我・病気 |
年金制度 の 「2 階建て」
日本 の公的年金は全国民共通の 1 階と、 被用者 (会社員・公務員) の 2 階で 構成 されます。
| 階 | 制度 | 加入対象 |
|---|
| 1 階 | 国民年金 (基礎年金) | 全国民 (20-60 歳) |
| 2 階 | 厚生年金 | 会社員・公務員 |
ポイント: 日本 の年金は 賦課 方式 (現役世代が高齢者を支える) を中心に 運営。 少子高齢化で 1 人当たり 負担 が増えるのが課題。
3. 少子高齢化 と社会保障の持続可能性
日本 の人口推移
| 指標 | 2024 | 2050 (推計) |
|---|
| 総人口 | 約 1 億 2400 万 | 約 1 億 470 万 |
| 高齢化率 (65 歳以上) | 約 29% | 約 37% |
| 合計 特殊 出生率 | 約 1.2 | 約 1.3 |
社会保障給付費 の 拡大
| 年 | 給付費総額 |
|---|
| 1990 | 約 47 兆 円 |
| 2010 | 約 105 兆 円 |
| 2024 | 約 141 兆 円 |
大事: 社会保障 財源 は 「保険料 (60%) + 税 (40%)」。 消費税 が社会保障目的税化 (1989 年導入、 2014 年 8%、 2019 年 10%) された背景にも少子高齢化がある。
4. 働き方改革 と現代の労働問題
働き方改革 (2019 年施行)
| 内容 | 概要 |
|---|
| 時間外労働上限 規制 | 月 45・年 360 時間 (特別 80・720 まで) |
| 年次有給 休暇 強制 取得 | 年 5 日以上を 義務化 |
| 同一労働同一 賃金 | 正規・非正規の 不合理 な待遇差を禁止 |
非正規労働の 拡大
| 年 | 非正規比率 |
|---|
| 1990 | 約 20% |
| 2010 | 約 34% |
| 2024 | 約 37% |
大事: 非正規労働は 雇用 の 柔軟性を 高める一方、 賃金・社会保障・キャリア 形成 で正規との 格差 が大きく、 貧困・少子化 の一因 となっています。
最低賃金
| 年度 | 全国加重 平均 |
|---|
| 2015 | 798 円 |
| 2020 | 902 円 |
| 2024 | 1054 円 |
政府 は 「2030 年代半ばに全国平均 1500 円」 を 目標 と 掲げています。
まとめ
- 労働三法 (労基法・労組法・労調法) が労働者を守る 基
- 労働基本権 = 団結権・団体交渉権・団体行動権 (憲法 28 条)
- 社会保障 = 5 つの 社会保険 + 公的扶助 + 社会福祉 + 公衆 衛生
- 年金制度 は 1 階 (国民年金) + 2 階 (厚生年金)、 賦課 方式中心
- 少子高齢化 が 社会保障 財源 に圧力、 消費税 引上げ・働き方改革・非正規改善 が同時に進行
次章では、 国境 を 越える 取引 = 国際経済 を学びます。