この章で学ぶこと
数学 I までであつかった方程式は 二次まで でした。 中には解をもたない (実数の範囲で) ものもありました。 この章では 数の世界を拡げ て、 すべての二次方程式が解をもつようにし、 さらに 三次 ・ 四次方程式 にも進みます。
- 虚数単位 i (i2=−1) と 複素数 a+bi の四則を計算できる
- 共役複素数 と 複素数の絶対値 の性質を理解する
- 剰余の定理 ・ 因数定理 で整式の因数を見つけられる
- 三次方程式 ・ 四次方程式 を因数分解で解ける
- 解と係数の関係 (二次 ・ 三次) を使える
ポイント: x2=−1 の解を認めると、 「任意の n次方程式はちょうど n個の解をもつ」 という美しい定理 (代数学の基本定理) が成り立ちます。
1. 複素数
虚数単位と複素数
i2=−1 を満たす数i を 虚数単位 といい、 実数a,b を用いて a+bi と書ける数を 複素数 といいます。 a を 実部、 b を 虚部 といいます。
| 種類 | 形 | 例 |
|---|
| 実数 | a+0i=a | 3、 −2 |
| 純虚数 | 0+bi=bi (b=0) | 2i、 −i |
| 虚数 | a+bi (b=0) | 1+2i |
四則計算
二つの複素数z1=a+bi、 z2=c+di について、
- 加法: z1+z2=(a+c)+(b+d)i
- 減法: z1−z2=(a−c)+(b−d)i
- 乗法: z1z2=(ac−bd)+(ad+bc)i (i2=−1 を使う)
- 除法: z2z1=(c+di)(c−di)(a+bi)(c−di)=c2+d2(ac+bd)+(bc−ad)i (分母を実数化)
例題
| 問題 | 解法 |
|---|
| (2+3i)+(1−4i) | 3−i |
| (2+3i)(1−2i) | 2−4i+3i−6i2=2−i+6=8−i |
| 1−i1+i | (1−i)(1+i)(1+i)2=22i=i |
共役複素数と絶対値
z=a+bi に対し、 共役複素数 を zˉ=a−bi と定めます。 性質:
- z+zˉ=2a (実数)、 zzˉ=a2+b2 (実数かつ 0 以上)
- z1+z2=z1ˉ+z2ˉ、 z1z2=z1ˉz2ˉ
- 複素数の絶対値: ∣z∣=a2+b2、 ∣z∣2=zzˉ
2. 二次方程式と解の判別
解の公式と判別式
ax2+bx+c=0 (a=0) の解は
x=2a−b±b2−4ac
判別式 D=b2−4ac で解の種類がわかります。
| D | 解 |
|---|
| D>0 | 異なる 2 実解 |
| D=0 | 重解 (2 重解) |
| D<0 | 異なる 2 虚解 (互いに共役) |
解と係数の関係 (二次)
ax2+bx+c=0 の二解を α,β とすると、
α+β=−ab,αβ=ac
例題
x2−5x+6=0 の二解を α,β とする。 α2+β2 を求めよ。
α+β=5、 αβ=6。 α2+β2=(α+β)2−2αβ=25−12=13。
3. 剰余の定理と因数定理
剰余の定理
整式f(x) を x−a で割った余りは f(a) に等しい。 これを 剰余の定理 といいます。
例題
f(x)=x3−2x+5 を x−2 で割った余りは? f(2)=8−4+5=9。
因数定理
f(a)=0 ⇔ f(x) は (x−a) を 因数 にもつ。 これを 因数定理 といい、 高次方程式の解法の鍵です。
大事: 因数を探すときは、 定数項の約数 を a の候補として試します (整数解がある場合)。
4. 高次方程式の解法
三次方程式
f(x)=x3−6x2+11x−6=0 を解く。
手順 1: 候補 (定数項−6 の約数) ±1,±2,±3,±6 を試す。 f(1)=1−6+11−6=0 ⇒ (x−1) が因数。
手順 2: f(x)=(x−1)(x2−5x+6) と割り算で求める。
手順 3: x2−5x+6=(x−2)(x−3)=0 ⇒ x=2,3。
答え: x=1,2,3。
四次方程式と虚数解
x4−1=0 ⇒ (x2−1)(x2+1)=0 ⇒ (x−1)(x+1)(x−i)(x+i)=0。 解は x=±1,±i の 4 個。
やってみよう: x3−1=0 を解け。 (答え: x=1、 x=2−1±3i)
解と係数の関係 (三次)
ax3+bx2+cx+d=0 の三解を α,β,γ とすると、
α+β+γ=−ab,αβ+βγ+γα=ac,αβγ=−ad
5. 組立除法と二次方程式の作成
組立除法
整式を (x−a) で割るときに使える便利な計算法が 組立除法 です。 係数だけを並べ、 順にかけて足していくだけで商と余りが出ます。
例題
x3−4x2+x+6 を (x−2) で割る:
| 1 | −4 | 1 | 6 |
|---|
| a=2 | | 2 | −4 | −6 |
| 1 | −2 | −3 | 0 |
商は x2−2x−3、 余りは 0。 つまり x3−4x2+x+6=(x−2)(x2−2x−3)=(x−2)(x−3)(x+1)。 三次方程式の解は x=2,3,−1。
二解を指定して二次方程式を作る
α,β を解とする二次方程式 (係数が整数として) は、 解と係数の関係を逆用して、
x2−(α+β)x+αβ=0
例題
2+3 と 2−3 を解とする二次方程式を求めよ。
和=4、 積=(2)2−(3)2=4−3=1。 よって x2−4x+1=0。
大事: 実数係数の方程式が虚数解a+bi をもてば、 必ずその 共役 a−bi も解です。 二解のセットを単位として考えると楽。
まとめ
- 複素数 a+bi で数の世界を拡げ、 任意の二次方程式が解をもつ
- 判別式 D=b2−4ac で解の種類を判定する
- 剰余の定理 ・ 因数定理 で整式の因数を見つけ、 高次方程式を解く
- 候補因数は 定数項の約数 から試す
- 解と係数の関係 で解を求めずに対称式が計算できる
次の章: 第 3 章では 座標平面 に戻り、 直線 ・ 円の方程式をあつかいます。 数学 I の二次関数と接続し、 図形を式で解く力を育てます。