この章で学ぶこと
数学 II の後半の主役 「微分」 に入ります。 微分は 17 世紀にニュートンとライプニッツが独立に発見した、 「変化の速さ」 を関数として取り出す道具です。 物理 (速度 ・ 加速度)、 経済 (限界利益)、 工学 (最適化) で必須の概念。
- 関数の 極限 limx→af(x) の意味を理解する
- 平均変化率 と 微分係数 f′(a) の違いを説明できる
- 導関数 f′(x) の定義と公式を使える
- f(x)=xn の 微分公式 (f′(x)=nxn−1) を使える
- 関数の 接線 ・ 法線 の方程式を求められる
1. 関数の極限
極限とは
x が a に限りなく近づくとき、 f(x) が限りなく一つの値α に近づくことを、
limx→af(x)=α
と書きます (f(x) は a で値をもたなくてもよい)。
例題
| 極限 | 値 |
|---|
| x→2lim(x2+1) | 5 (代入で OK) |
| x→1limx−1x2−1 | 約分: x−1(x−1)(x+1)=x+1、 値2 |
| x→0limx(x+3)2−9 | 展開: xx2+6x=x+6、 値6 |
大事: 分母が 0 になる形でも、 約分や展開で不定形を解消できることが多い。 そのまま x=a を代入するのではなく、 まず整理する。
2. 平均変化率と微分係数
平均変化率
関数y=f(x) について、 x が a から b (a=b) まで変わるときの 平均変化率 は、
b−af(b)−f(a)
これは二点(a,f(a))、 (b,f(b)) を結ぶ 直線の 傾き に等しい。
微分係数
b=a+h とおき、 h→0 とする極限:
f′(a)=limh→0hf(a+h)−f(a)
これを 微分係数 といい、 グラフ上で点(a,f(a)) での 接線の傾き を表します。
例題
f(x)=x2 について f′(3) を求めよ。
f′(3)=limh→0h(3+h)2−9=limh→0h6h+h2=limh→0(6+h)=6。
3. 導関数と公式
導関数の定義
x を動かしながら f′(x) を関数と見たもの:
f′(x)=limh→0hf(x+h)−f(x)
これを 導関数 といい、 dxdy や y′ とも書きます。 f から f′ を求める操作を 微分する といいます。
基本公式
| 関数 | 導関数 |
|---|
| f(x)=c (定数) | f′(x)=0 |
| f(x)=x | f′(x)=1 |
| f(x)=xn (n自然数) | f′(x)=nxn−1 |
| f(x)=kg(x) (k定数) | f′(x)=kg′(x) |
| f(x)=g(x)±h(x) | f′(x)=g′(x)±h′(x) |
例題
f(x)=2x3−5x2+4x−7 の導関数を求めよ。
f′(x)=2⋅3x2−5⋅2x+4−0=6x2−10x+4。
やってみよう: f(x)=x4−3x2+1 の導関数を求めよ。 (答え: f′(x)=4x3−6x)
4. 接線と法線
接線の方程式
曲線y=f(x)上の点A(a,f(a)) での 接線 の方程式は、
y−f(a)=f′(a)(x−a)
(点通過形の直線で、 傾きが f′(a))。
法線
接線と直交する直線を 法線 といい、 傾きは −f′(a)1 (f′(a)=0) です。
例題
曲線y=x3 の点(1,1) における接線と法線を求めよ。
f(x)=x3 より f′(x)=3x2、 f′(1)=3。
- 接線: y−1=3(x−1) ⇒ y=3x−2
- 法線: y−1=−31(x−1) ⇒ y=−31x+34
接線の性質を使う問題
大事: 「曲線上で ない 点から引いた接線」 を求める時は、 接点を (t,f(t)) とおき、 接線の方程式がその与点を通る条件から t を決定する。
例題
曲線y=x2 に点(0,−1) から引いた接線の方程式を求めよ。
接点を (t,t2) とおく。 f′(x)=2x より接線は y−t2=2t(x−t)、 すなわち y=2tx−t2。 これが (0,−1) を通る ⇒ −1=−t2 ⇒ t=±1。
接線は y=2x−1 (接点(1,1)) と y=−2x−1 (接点(−1,1)) の 2 本。
やってみよう: y=x2−2x の x=1 での接線の傾きを求めよ。 (答え: 0、 つまり水平接線)
5. 微分の意味をまとめる
三つの顔
f′(a) は同じ量を別の言葉で表しているだけで、 場面により解釈が変わります。
| 場面 | f′(a) の解釈 |
|---|
| 数学 (グラフ) | 点(a,f(a)) での 接線の傾き |
| 物理 (運動) | 時刻a における 瞬間の速度 |
| 経済 (利益等) | 数量a での 限界利益 (1 単位増やすとどれだけ増えるか) |
6. 速度と加速度
物理での微分
直線上を動く物体の 位置 を x(t) (t は時刻) とすると、 第 7 章の微分の言葉で次が成り立つ。
| 名称 | 定義 |
|---|
| 速度v(t) | v(t)=x′(t)=dtdx |
| 加速度a(t) | a(t)=v′(t)=dt2d2x |
つまり 位置 → 微分して速度 → さらに微分して加速度 という順で出てきます。
例題
位置関数が x(t)=t3−6t2+9t (t≥0) のとき、 時刻t=2 での速度と加速度を求めよ。
v(t)=x′(t)=3t2−12t+9、 a(t)=v′(t)=6t−12。
v(2)=12−24+9=−3、 a(2)=12−12=0。 速度が負 ⇒ t=2 で物体は負方向へ動いている。 加速度が 0 ⇒ 速度がちょうど変化の切れ目 (極値)。
やってみよう: x(t)=t2−4t+5 の t=3 での速度を求めよ。 (答え: v(3)=2)
まとめ
- 極限 limx→af(x) は x が a に近づくときの f(x) の行き先
- 平均変化率 b−af(b)−f(a) は二点を結ぶ直線の傾き
- 平均変化率の極限が 微分係数 f′(a)、 接線の傾き
- f(x)=xn の導関数は f′(x)=nxn−1 (公式中の主役)
- 接線の方程式は y−f(a)=f′(a)(x−a) で必ず書ける
- 接線と法線は直交 (傾きの積が −1)
次の章: 第 8 章では微分を 応用 して、 関数の増減 ・ 極値 ・ 最大最小を求めます。 グラフを自分で描けるようになるのが目標。