この章で学ぶこと
第 3 章では 「与えられた図形を式で表す」 学びでした。 この章では逆に、 「条件を満たす点の集まりがどんな図形か」 を求めます。 これが 軌跡、 そして不等式で表される 領域 に進みます。
- 軌跡 の方程式を求める手順 (動点を (x,y) とおく) を身につける
- 二直線や円で区切られた 領域 を図示できる
- 連立不等式 が表す領域を図で表せる
- 領域内で 一次式の最大 ・ 最小 を求められる (線形計画法 の入口)
1. 軌跡
軌跡とは
ある条件を満たす点全体の集合を、 その条件の 軌跡 といいます。
基本手順:
- 動点を P(x,y) とおく
- 与えられた条件を x,y の式に直す
- 整理し、 図形として解釈する
例題: 二定点から等距離の点の軌跡
A(−1,0)、 B(3,0) から等距離にある点P の軌跡を求めよ。
P(x,y) とおくと、 AP2=BP2:
(x+1)2+y2=(x−3)2+y2
x2+2x+1=x2−6x+9
8x=8⇒x=1
軌跡は 直線x=1 (線分AB の垂直二等分線)。
アポロニウスの円
二定点A,B からの距離の比が一定値k (k=1) である点の軌跡は 円 になります (これを アポロニウスの円 という)。
例題
A(0,0)、 B(3,0)、 AP:BP=1:2 を満たす点P の軌跡。
AP2:BP2=1:4 ⇒ 4AP2=BP2:
4(x2+y2)=(x−3)2+y2
3x2+3y2+6x−9=0
x2+y2+2x−3=0
(x+1)2+y2=4
中心(−1,0)、 半径2 の円。
2. 領域の表し方
一つの不等式が表す領域
| 不等式 | 領域 |
|---|
| y>mx+n | 直線y=mx+n の 上側 |
| y<mx+n | 直線y=mx+n の 下側 |
| y≥f(x) | 上側 + 直線自身 (実線) |
| (x−a)2+(y−b)2<r2 | 円の 内部 |
| (x−a)2+(y−b)2>r2 | 円の 外部 |
大事: 等号を含む (≤、 ≥) なら 境界の線 も領域に 含む、 含まない (<、 >) なら境界は含めない。 図示するとき、 含む境界は実線、 含まない境界は点線 (または破線) で描く。
連立不等式
連立不等式が表す領域は、 それぞれの不等式が表す領域の 共通部分。 すべてを同じ図に描き、 重なる部分が答えです。
例題
連立不等式⎩⎨⎧y≥xy≤−x+4y≥0 が表す領域を図示せよ。
直線y=x の上側かつ直線y=−x+4 の下側かつ x軸の上側。 重なる部分は 三角形 (頂点(0,0)、 (4,0)、 (2,2)、 境界含む)。
3. 領域と最大 ・ 最小 (線形計画の入口)
一次式の最大 ・ 最小
領域D において k=ax+by の最大 ・ 最小を考えます。 k を定数と見れば、 y=−bax+bk という 傾き一定の直線 になるので、 この直線を平行に動かしながら領域との接触点を探します。
大事: 領域が多角形で区切られているとき、 一次式の 最大 ・ 最小は必ず頂点のどれか で起こる (線形計画法 の基本定理)。 だから頂点の値をすべて試せばよい。
例題
連立不等式⎩⎨⎧x+y≤42x+y≤6x≥0,y≥0 の領域で、 z=x+2y の最大値を求めよ。
領域の頂点:
- (0,0): z=0
- (3,0) (2x+y=6 と y=0 の交点): z=3
- (0,4) (x+y=4 と x=0): z=8
- (2,2) (x+y=4 と 2x+y=6 の交点): z=6
最大値は z=8 (点(0,4) で)。
最大 ・ 最小を求める手順 (整理)
- 連立不等式が表す 領域 D を図示
- 領域の 頂点 をすべて求める (境界線どうしの交点)
- z=ax+by の値を 各頂点 で計算
- 最大値 ・ 最小値を比較して決定
二次式の場合
最大 ・ 最小を求める式が二次 (z=x2+y2 など) のときは 頂点で起こるとは限らない。 例えば z=x2+y2 (原点からの距離の二乗) の最小は、 「原点から領域への最短距離」 を直接図で考える。
例題
領域x+y≥3、 x≥0、 y≥0 で z=x2+y2 の最小値を求めよ。
原点から直線x+y=3 への距離が最短で、 距離 = 23、 二乗して zmin=29。 接点は (23,23)。
図示のコツ
領域を求める問題では、 必ず 境界の直線 ・ 円 を描き、 それぞれの不等式で どちら側か を矢印や斜線で示し、 最後に重なる部分を強くぬるのが標準的な解答形式です。
4. 円と領域
円が関与する領域
不等式が円の内部 ・ 外部を含むとき、 円と直線の 共有部分 を図で把握することが大事です。
例題
連立不等式{x2+y2≤4y≥x が表す領域を図示せよ。
円x2+y2=4 (中心O、 半径2) の 内部 (境界含む) かつ直線y=x の 上側 (境界含む) の共通部分。 形は円を直径で切った 半円板 (上側) になります。
軌跡と領域を組み合わせた問題
「2 点A,B からの距離の 和 が r以下」 「2 点からの距離の 差 が r以上」 などは、 楕円 ・ 双曲線といった数学 C 内容に接続しますが、 数学 II の範囲でも 「距離の二乗の関係」 で円として表せる場合が多い。
やってみよう: 連立不等式{x2+y2<9x+y>1 の領域はどんな形? (答え: 半径3 の円の内部を直線で切った弓形の一方、 境界線は含まない)
まとめ
- 軌跡 は動点(x,y) とおいて条件を式化し、 整理する
- 二定点から等距離 → 垂直二等分線
- 二定点からの距離比が一定 (=1) → 円 (アポロニウスの円)
- 不等式y>f(x) は上側、 y<f(x) は下側、 等号を含むかで境界を実線か点線か描き分ける
- 連立不等式の領域は 共通部分 (重なるところ)
- 領域内の 一次式の最大最小 は必ず 頂点 で起こる
次の章: 第 5 章では 三角関数 に入ります。 中学 ・ 高校 I の三角比 (0°≤θ≤180°) を 任意の角 に拡張し、 弧度法と加法定理で道具を完成させます。