この章で学ぶこと
第 7 章で微分の道具がそろいました。 この章ではそれを武器に、 「関数の形を自分で描く」 「最大 ・ 最小を求める」 という応用に進みます。 手でグラフが描けるようになると、 後の積分 (面積) や物理 (運動の解析) が一気に見やすくなります。
- 導関数 の符号 で関数の 増減 を判定できる
- 極大 ・ 極小 を求め、 増減表 を書ける
- 三次関数のグラフを描ける
- 閉区間での 最大値 ・ 最小値 を求められる
- 方程式の実数解の個数 をグラフで数えられる
1. 増減と極値
単調増加と単調減少
ある区間で f′(x)>0 なら f(x) はその区間で 単調増加、 f′(x)<0 なら 単調減少 です (f のグラフが右上がりか右下がりか)。
| f′(x) の符号 | f(x) の増減 | グラフ |
|---|
| f′(x)>0 | 増加 | 右上がり |
| f′(x)=0 | 接線が水平 | 山 ・ 谷 ・ 平ら |
| f′(x)<0 | 減少 | 右下がり |
極値の定義
ある点x=a の近くで f(a) が最大 (極限して近くだけでよい) なら 極大、 最小なら 極小。 このとき f′(a)=0 が必要条件です (逆は必ずしも真でない)。
大事: f′(a)=0 であっても、 その前後で符号が変わらなければ 極値ではない。 例: f(x)=x3 は f′(0)=0 だが、 x=0 の前後で f′(x)>0 のままなので極値ではない (変曲点)。
2. 増減表の書き方
手順
- f′(x) を求める
- f′(x)=0 を解いて f′(x)=0 の点 (極値候補) を求める
- 数直線 にそれらを書き、 各区間で f′(x) の符号を調べる
- 増減表に x、 f′(x)、 f(x) の三段を並べる
- 極値を表から読み取る
例題
f(x)=x3−3x2+4 の増減を調べ、 極値を求めよ。
f′(x)=3x2−6x=3x(x−2)。 f′(x)=0 ⇒ x=0,2。
| x | ⋯ | 0 | ⋯ | 2 | ⋯ |
|---|
| f′(x) | + | 0 | − | 0 | + |
| f(x) | 増 | 4 | 減 | 0 | 増 |
f(0)=4、 f(2)=8−12+4=0。 よって x=0 で極大値4、 x=2 で極小値0。
グラフを描く
| 特徴 | 三次関数y=ax3+⋯ (a>0) |
|---|
| x→−∞ | y→−∞ |
| x→+∞ | y→+∞ |
| 形 | 左下から右上、 山と谷を一つずつ (極値が二つある場合) |
上の例だと、 左から上がり、 (0,4) で山、 (2,0) で谷、 また右上へ上がり、 x軸に接するかどうかを f(x)=0 の解で確認します。
3. 最大値と最小値
閉区間での求め方
閉区間[a,b] で f が連続なら、 f は 必ず 最大値と最小値をもちます。 候補は次の三種類だけ。
- 極値をとる点 (f′(x)=0 の内部解)
- 区間の端点 x=a と x=b
ぜんぶの f値を比べて最大 ・ 最小を決めます。
例題
f(x)=x3−3x+2 の −2≤x≤2 での最大 ・ 最小を求めよ。
f′(x)=3x2−3=3(x−1)(x+1)。 f′(x)=0 ⇒ x=±1 (両方区間内)。
| 候補 | x | f(x) |
|---|
| 端 | −2 | −8+6+2=0 |
| 極大 | −1 | −1+3+2=4 |
| 極小 | 1 | 1−3+2=0 |
| 端 | 2 | 8−6+2=4 |
最大値4 (x=−1,2)、 最小値0 (x=−2,1)。
やってみよう: f(x)=−x3+3x の 0≤x≤2 での最大値と最小値を求めよ。 (答え: 最大2 (x=1)、 最小−2 (x=2))
4. 方程式と不等式への応用
実数解の個数
方程式f(x)=a の実数解の個数は、 y=f(x) のグラフと 水平直線y=a の共有点の個数と等しい。
例題
x3−3x=a の実数解の個数を a で場合分けせよ。
g(x)=x3−3x とおく。 g′(x)=3x2−3、 g′(x)=0 ⇒ x=±1。 増減表を作ると、 g(−1)=2 (極大)、 g(1)=−2 (極小)。
| a の範囲 | 実数解の個数 |
|---|
| a>2 または a<−2 | 1個 |
| a=2 または a=−2 | 2個 (重解を含む) |
| −2<a<2 | 3個 |
不等式の証明
f(x)−g(x)>0 を示したいとき、 h(x)=f(x)−g(x) とおいて増減を調べ、 最小値が正であることを示す方法が強力。
大事: 「区間全体で h(x)≥0」 を示すには、 その区間での最小値≥0 を言えばよい。 微分で最小値を求める、 というのが鉄板の流れ。
例題
x≥0 で x3+2≥3x を示せ。
h(x)=x3−3x+2 とおく。 h′(x)=3x2−3=3(x−1)(x+1)。 x≥0 で h′(x)=0 ⇒ x=1。 増減表で x=1 で最小とわかり、 h(1)=1−3+2=0。 区間端x=0 で h(0)=2>0。 よって最小値は 0、 h(x)≥0 が成立 (等号は x=1)。 □
5. 文章題への応用 (最適化)
容積の最大化
縦 ・ 横が 20cm ・ 30cm の長方形の紙の四隅から同じ大きさの正方形を切り取り、 残りを折り曲げてフタのない箱を作る。 体積を最大にする切り取る正方形の一辺の長さは?
切り取る一辺を x (0<x<10) とおくと、 箱の寸法は縦20−2x、 横30−2x、 高さ x。
V(x)=x(20−2x)(30−2x)=x(600−100x+4x2)=4x3−100x2+600x
V′(x)=12x2−200x+600=4(3x2−50x+150)。 V′(x)=0 ⇒ x=650±2500−1800=650±700=650±107=325±57。 7≈2.646 なので x=325−57≈3.92 (もう一方は 325+57≈12.74 で範囲外)。
増減を確認すると x≈3.9 で極大 (=最大)。
大事: 文章題では 変数を何に置くか、 その変数の動く範囲 を明示することが採点の大きなポイント。
まとめ
- f′(x)>0 で 増加、 f′(x)<0 で 減少
- 極大 ・ 極小 は f′(x)=0 の前後で符号が変わる点で起こる
- 増減表 に x、 f′(x)、 f(x) を並べるのが標準形
- 閉区間の 最大 ・ 最小 の候補は 「極値 + 端点」 だけ
- 方程式の実数解の個数 はグラフと水平直線の共有点で数える
次の章: 第 9 章で微分の 「逆」 である 積分 に進みます。 不定積分 と 定積分、 そして面積の計算を学びます。