はじめに
4 年生では 段落構成と事実と意見の区別 を学びました。 5 年生ではさらに深く、 要旨・論の進め方・原因と結果・図表と結び付け・複数文章の比較 を学びます。
この章でできるようになること:
- 説明文の 要旨(筆者が一番伝えたいこと)をつかむ
- 論の進め方(双括型・尾括型・頭括型)を見分ける
- 原因 と 結果 の関係を読み取る
- 文章と 図表・グラフ を結び付けて読む
- 複数文章の比較 で共通点・相違点・各筆者の立場をつかむ
ポイント: 5 年生の説明文読解は、 「何が書いてあるか」 を越えて、 「筆者はどうやって主張を組み立てているか」 を分析する段階に入ります。
1. 要旨をつかむ
要旨 とは、 文章全体を通して筆者が一番伝えたいこと です。
要旨と要約のちがい
| 項目 | 要約 | 要旨 |
|---|
| 内容 | 文章全体のあらまし | 筆者が一番伝えたい中心の主張 |
| 文字数 | 元の 1/3 〜 1/4 程度 | 1〜2 文 |
| 読む時の視点 | 何が書いてあるか | 結局何が言いたいのか |
要旨の見つけ方
- 題名 を見る — 何を問題にしているかわかる
- 冒頭段落 を読む — 筆者が出発点としている問いを探す
- 結論段落(多くは末尾)を読む — 筆者の答えを探す
- くり返し出てくる言葉 を見る — それがキーワード
2. 論の進め方 — 3 つの構成パターン
筆者が主張をどこで出すかで、 文章の構成が変わります。
| パターン | 構造 | 特徴 |
|---|
| 双括型 | 主張(冒頭)→ 根拠 → 主張(末尾) | 最も説得力がある。 意見文でよく使う |
| 尾括型 | 事例 → 事例 → 主張(末尾) | じっくり結論に導く。 物語風の説明文 |
| 頭括型 | 主張(冒頭)→ 根拠・事例 | 結論が先にわかる。 ニュース記事に多い |
双括型: ◆主張◆ → 根拠 → 根拠 → ◆主張(再)◆
尾括型: 事例 → 事例 → ◆主張◆
頭括型: ◆主張◆ → 根拠 → 根拠
3. 自作説明文 1 — 「プラスチックごみとわたしたちの海」(Studia オリジナル)
本文(双括型)
◆ 主張(冒頭)
わたしたちが毎日使うプラスチックが、 海を汚している。 一人ひとりの小さな行動で、 この問題を減らすことができる。
事実 1
世界の海に流れ込むプラスチックごみは、 一年で約 800 万トンと言われている(環境省公表資料を参考)。 これは、 大型トラック約 80 万台分に相当する量である。
事実 2
プラスチックは自然には分解されにくい。 海で 5 m m 以下になった 「マイクロプラスチック」 は、 魚の体内に入り、 やがて食卓に戻ってくる。
原因と結果
| 原因 | 結果 |
|---|
| ペットボトル・レジ袋の大量使用 | ごみが増える |
| 分別・回収が不十分 | 川や海へ流出 |
| 海の中でプラスチックが細かく砕ける | マイクロプラスチックが食物連鎖へ |
事例
ある海岸の清掃活動では、 一回の活動で軽トラック一台分のごみが集まった。 その 8 割がプラスチック製品だった。
グラフ — 海岸ごみの種類別割合(サンプルデータ)
| 種類 | 割合 |
|---|
| プラスチックボトル | 35 % |
| レジ袋・包装 | 28 % |
| 漁具(網・ロープ) | 15 % |
| 発泡スチロール | 12 % |
| その他 | 10 % |
(※ サンプルデータ)
◆ 主張(末尾)
このように、 プラスチックごみは海を汚し、 生き物を苦しめ、 やがてわたしたちの食卓に戻ってくる。 一人ひとりが マイバッグを使う・ペットボトルを減らす・ごみを分別する ことで、 海を守る行動ができる。
— Studia オリジナル
この説明文の構造分析
- 構成: 双括型
- 要旨: 「プラスチックごみは海を汚す。 一人ひとりの小さな行動で減らせる」
- 論の進め方: 主張 → 事実 → 原因結果 → 事例 → グラフ → 主張(再)
- 図表の役割: 「8 割がプラスチック」 という文章を、 グラフで視覚的に補強
4. 自作説明文 2 — 「お米がわたしたちの食卓に届くまで」(Studia オリジナル)
本文(尾括型)
春、 田に水が入り、 苗が植えられる。 5 月ごろの田植えは、 昔は家族総出の大切な行事だった。
夏、 稲は太陽を浴び、 水を吸い、 ぐんぐん育つ。 農家の人は害虫や雑草と戦い、 水の量をこまめに調整する。
秋、 稲が黄金色になると収穫だ。 大型のコンバインで一気に刈り取る田もあれば、 今でも手で刈る田もある。 刈った稲は乾燥機で乾かし、 もみから玄米へ、 玄米から白米へと加工される。
加工されたお米は、 倉庫からトラックで全国のスーパーへ運ばれる。 わたしたちが手にする一袋 5 キロのお米は、 こうした長い旅の終着点だ。
グラフ — 日本の米生産量の推移(サンプルデータ)
| 年 | 生産量(万トン) |
|---|
| 1970 | 1300 |
| 1990 | 1100 |
| 2010 | 850 |
| 2020 | 760 |
(※ サンプルデータ)
原因と結果
| 原因 | 結果 |
|---|
| 農家の高齢化(後継ぎ不足) | 田が減る → 生産量が下がる |
| 食生活の変化(パンや麺の増加) | 米の消費量が下がる |
| 地球温暖化(猛暑) | 品質が落ちる年が増える |
◆ 主張(末尾)
お米は日本の食の中心であり続けてきたが、 今は大きな課題に直面している。 わたしたちが食事でお米を残さず食べること、 田や農業を大切にする気持ちを持つことが、 これからの日本の食を支える力になる。
— Studia オリジナル
この説明文の構造分析
- 構成: 尾括型 — 事実と工程をじっくり紹介し、 末尾で主張
- 要旨: 「お米を大切にする気持ちが、 日本の食を支える」
- 原因と結果の連鎖: 高齢化 → 田減少 → 生産量減少
5. 文章と図表・グラフを結び付けて読む
説明文では、 文章と図表・グラフが 互いを補い合っている ことが多いです。
結び付け方のコツ
- 本文で 「図 1 を見てほしい」「下の表のように」 と書かれた部分で、 図表を確認
- 図表の 見出しと単位 を読む(「万トン」「%」「2020 年時点」 等)
- 図表の 大きな変化・突出した数値 を探す
- その変化が 本文のどの主張を裏付けているか を確かめる
注意:図表だけ・本文だけでは全体がわからないことが多い。 必ず 両方を行き来 して読む習慣をつける。
6. 複数の説明文を比較して読む
同じテーマでも、 筆者によって立場がちがうことがあります。 複数の文章を比較すると、 物事を 多角的 に考えられるようになります。
比較用の短文例(Studia オリジナル)
短文 A: 「給食はメニュー固定がよい」
給食は全員が同じメニューであることが大切だ。 第一に、 公平だ。 全員が同じものを食べることで、 「だれかだけ特別」 がなくなる。 第二に、 食の経験が広がる。 自分では選ばない食材にも出会える。 第三に、 調理の手間や食ロスが少なくて済む。 だから固定メニューを続けるべきだ。
短文 B: 「給食は選択制がよい」
給食は子どもが選べる仕組みにするべきだ。 第一に、 アレルギーや体質への配慮がしやすい。 第二に、 自分で食事を選ぶ習慣が、 家庭や将来の食生活に役立つ。 第三に、 残食が減る可能性がある。 「選んだもの」 はしっかり食べるからだ。 だから選択制を取り入れるべきだ。
比較表
| 観点 | 短文 A(固定派) | 短文 B(選択派) |
|---|
| 公平性 | 全員同じで公平 | 個人差に配慮が公平 |
| 食の経験 | 自分で選ばない食材にも出会う | 自分の関心から広げる |
| 食ロス | 調理の手間が少ない | 残食が減る |
→ 共通点: 子どものためを考えている
→ 相違点: 「公平さ」 を 「全員同じ」 と取るか 「個別配慮」 と取るか
7. 末コラム — もっと読んでみよう
学校図書館・新聞・インターネットで、 同じテーマを扱う複数の本や記事を読み比べてみましょう。 一つの本だけを信じるのではなく、 複数の立場を知って自分の考えを作る ことが、 これからの時代に必要な力です。
8. まとめ
- 要旨 = 文章全体で筆者が 一番伝えたいこと
- 論の進め方: 双括型・尾括型・頭括型
- 原因 と 結果 は 連鎖する ことが多い
- 文章と 図表・グラフ は互いを補う
- 複数文章の比較 で多角的な視点を持つ
次の Ch9 では 書く力を学びます。