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4 年生では ことわざ・慣用句・故事成語 を 覚えて使う ことを学びました。 5 年生ではさらに一歩進んで、 これらの言葉が どうやって生まれたか(由来) と、 その背景にある文化や知恵 を学びます。
この章でできるようになること:
ポイント:由来を知ると、 言葉は 「ただの暗記項目」 ではなく、 何千年も前の人たちの体験から生まれた知恵の結晶 だと感じられます。
ことわざ の多くは、 昔の人が 自然を観察したり、 仕事や暮らしのなかで体験したり して気付いたことを、 短い言葉にまとめたものです。
| ことわざ | 由来 | 意味 |
|---|---|---|
| 桜切る馬鹿、 梅切らぬ馬鹿 | 桜は切ると病気になり、 梅は切らないと実が少ない、 という庭の知恵 | 物事にはそれぞれ適切なやり方がある |
| 実るほど頭を垂れる稲穂かな | 稲が実るほど重くてお辞儀するようになる | 立派な人ほど謙虚である |
| 朝焼けは雨、 夕焼けは晴れ | 昔の人が何千年も空を見て気付いた天気の法則 | 自然の観察から生まれた天気予報 |
| ことわざ | 由来 | 意味 |
|---|---|---|
| 猫に小判 | 猫に 小判(昔の金貨)をあげても価値がわからない | 価値のわからない人にあげてもむだ |
| 豚に真珠 | 豚に真珠を与えても価値がわからない(聖書 が元の西洋由来とも言われる) | 同上 |
| 紺屋の白袴 | 紺屋(染物屋)が、 自分の着物(白袴)は染めないで白いままでいること | 専門家が自分のことは後回しにすること |
| 棚からぼた餅 | 棚からぼた餅 が落ちて口に入るような、 思いがけない幸運 | 苦労せずに幸運が舞い込むこと |
気付き: ことわざの多くは、 江戸時代やそれより前の人たちの暮らし から生まれています。 「紺屋」「ぼた餅」 など、 今では使わない言葉が出てくるのは、 そのためです。
慣用句 は、 2 つ以上の言葉が結びついて、 元とは別の意味を表す言い回し です。 多くは 体の部位 や 動物 を使います。
| 慣用句 | 由来 | 意味 |
|---|---|---|
| 目から鱗が落ちる | 聖書 の物語で、 目が見えない人の目から鱗のようなものが落ちて見えるようになったという場面から | 今までわからなかったことが急に理解できる |
| 耳が痛い | 自分の弱みを言われて、 耳で聞くと痛いような気分になることから | 自分の短所を言われてつらい |
| 手を焼く | 熱い物を手で持つとやけどすることから | 扱いがむずかしくて困る |
| 鼻が高い | 自慢して鼻を上に向ける様子から | 誇らしい・自慢できる |
| 足が棒になる | 長く歩いて、 足が棒のようにかたくなる感覚から | 歩きつかれて足が動かなくなる |
| 慣用句 | 由来 | 意味 |
|---|---|---|
| 猫の手も借りたい | 役に立たない猫の手でさえ借りたいほど忙しい | とても忙しい |
| 馬が合う | 馬と乗り手の呼吸がぴったり合う様子から | 気が合う・相性がよい |
| 犬も歩けば棒に当たる | 犬が出歩くと棒でたたかれる、 という江戸の警句 | 思いがけない災難に遭う/何かやれば何か起こる |
| 雀の涙 | 雀のような小さい鳥が流す涙ほどわずか | とても少ないこと |
故事成語 は、 中国の古い本に書かれている物語(故事) から生まれた言葉です。 元の物語を知ると、 意味がぐっと心に残ります。 ここで紹介する中国古典は すべてパブリックドメイン なので、 自分の言葉で自由に書き直しています。
ある国の商人が、 矛(ほこ:長い武器) と 盾(たて:身を守る板) を売っていました。 「この矛はどんな盾でもつき通す」、 「この盾はどんな矛でも防ぐ」 と自慢しました。 客が 「では、 その矛でその盾をつきなさい」 と聞くと、 商人は答えられませんでした。
→ 意味:言うことの前と後ろが合わないこと。
シギ(鳥) とハマグリ(貝) が争って、 シギがハマグリの中にくちばしを突っ込み、 ハマグリがシギのくちばしをはさんで動けなくなりました。 そこに漁師が来て、 両方とも簡単に捕まえました。
→ 意味:二者が争っているうちに、 関係ない第三者が利益を得ること。
ある人たちが、 一杯の酒を早く蛇の絵を描き終えた人がもらえる、 という競争をしました。 一番に描き終えた人が、 「まだ時間がある」 と蛇に足を描き加えました。 するとほかの人が 「蛇に足はないから、 これは蛇ではない」 と言って、 酒を取ってしまいました。
→ 意味:余計なものを付け加えること。
中国の北の国境に住む老人の馬が逃げた。 みんなが残念がると老人は 「これが幸せになるかもしれない」 と言った。 やがて馬は立派な馬を連れて帰った。 みんなが喜ぶと老人は 「これが不幸になるかもしれない」 と言った。 老人の子がその馬から落ちてけがをした。 すると戦争が起こり、 けがのおかげで子は戦場に行かずに済んだ。
→ 意味:人生の幸不幸は簡単には決められない。
唐の詩人賈島が、 詩のなかで 「僧は推す月下の門」 とするか 「僧は敲く月下の門」 とするか迷い、 馬に乗ったまま考え込んで、 役人韓愈(かんゆ) にぶつかりました。 事情を話すと、 韓愈が 「敲く(たたく) のほうがよい」 と教えました。
→ 意味:文章の言葉を何度も練り直すこと。
気付き:故事成語は 2 0 0 0 年以上前の中国の物語 から生まれました。 それが今の日本でも使われているのは、 人間の性質や物事の本質が時代を越えて変わらないからです。
いろは歌 は、 平安時代に作られたと言われる、 仮名 4 7 字を一度ずつ使った歌 です。 作者ははっきりわかっていませんが、 1 0 0 0 年以上前から仮名を覚えるために使われてきました。
いろはにほへと ちりぬるを わかよたれそ つねならむ うゐのおくやま けふこえて あさきゆめみし ゑひもせす
美しい花もいつかは散ってしまう。 この世でだれが永遠に生きられるだろうか。 人生の深い山を今日越えて、 浅い夢を見ない、 酔っぱらわない。
| リズム | 区切り | れい |
|---|---|---|
| 七五調 | 7 音 + 5 音 | 「いろはにほへと/ちりぬるを」、 唱歌「ふるさと」 |
| 五七調 | 5 音 + 7 音 | 「春はあけぼの/やうやう白くなりゆく」 |
やってみよう: 「いろはにほへと」 と声に出して読み、 リズムを感じてみましょう。 千年前の人も、 同じリズムでこの言葉を口ずさんでいました。
言葉は 生きもの のように、 時代とともに変わっていきます。 これは良い・悪いではなく、 自然なことです。
| 言葉 | 昔の意味 | 今の意味 |
|---|---|---|
| やばい | 危ない・危険 | (良い意味でも使う)すごい・最高 |
| 全然 | 「全然 + よい」 で 「とてもよい」 と使えた | 「全然 + 否定」 が標準(全然だめ) |
| すばらしい | おそろしい・程度が大きい | とてもよい |
| あさって | 「あさっての方向」 で 「明日の次の日」 と 「とんでもない方向」 の両方 | ふつう「明日の次の日」 |
新しい言葉は、 新しい道具や文化 とともに生まれます(「タイパ」「映え」「リモート」 等)。 一方で、 道具が使われなくなると言葉も消えていきます(「火打ち石」「ちょんまげ」「丁稚」 等)。
大切な考え方:言葉は 古いから良い、 新しいから悪い、 ということはない。 「世代がちがうと言葉もちがう」 と知って、 おたがいを認め合うことが大切です。
由来を知ると、 ことわざや慣用句が 「丸暗記するもの」 ではなく、 物語のつまった文化財 に見えてきます。 次の Ch7 では 物語をよむ力を深めます。