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5 年生からは、 いよいよ 古典 の世界に入ります。 古典とは、 1 0 0 年以上前に書かれ、 今でも読み継がれている文章 のことです。
この章でできるようになること:
ポイント:古典を読むと、 千年前の人と心がつながる体験ができます。 言葉は変わっても、 春を美しいと思う心、 友を大切にする心は今も同じです。
古典 は、 ふつう 1 0 0 年以上前に書かれた文章 で、 しかも 長く読み継がれているもの を言います。 日本の古典には、 平安時代(約 1 0 0 0 年前) や鎌倉時代(約 8 0 0 年前) のものがたくさんあります。
| 時代 | およその年 | 代表作 |
|---|---|---|
| 奈良時代 | 7 1 0〜7 9 4 年 | 万葉集・古事記 |
| 平安時代 | 7 9 4〜1 1 8 5 年 | 枕草子・竹取物語・源氏物語 |
| 鎌倉時代 | 1 1 8 5〜1 3 3 3 年 | 平家物語・徒然草・新古今和歌集 |
中国の古典では、 論語(紀元前 5 世紀) が特に有名です。 紀元前ということは、 今から 2 5 0 0 年以上前 の言葉です。
枕草子 は、 平安時代の女性清少納言 が書いた 随筆(自分の感じたこと・考えたことを自由につづった文章) です。 1 0 世紀末(西暦 1 0 0 0 年ごろ) に成立しました。
春はあけぼの。 やうやう白くなりゆく山ぎは、 すこしあかりて、 紫だちたる雲の細くたなびきたる。
夏は夜。 月のころはさらなり、 やみもなほ、 蛍の多く飛びちがひたる。 また、 ただ一つ二つなど、 ほのかにうち光りて行くもをかし。 雨など降るもをかし。
秋は夕暮れ。 夕日のさして山の端いと近うなりたるに、 烏の寝どころへ行くとて、 三つ四つ、 二つ三つなど飛び急ぐさへあはれなり。
冬はつとめて。 雪の降りたるは言ふべきにもあらず。 霜のいと白きも、 またさらでもいと寒きに、 火など急ぎおこして、 炭持て渡るもいとつきづきし。
春は夜明けのころがよい。 だんだん白くなっていく山ぎわの空が少し明るくなって、 紫がかった雲が細長くたなびいている、 その様子がよい。
夏は夜がよい。 月のある夜はもちろん、 闇夜でもやはり、 蛍がたくさん飛び交っているのがよい。 また、 ただ一つ二つなどが、 ほんのり光りながら飛んでいくのも心に残る。 雨などが降るのも趣がある。
秋は夕暮れがよい。 夕日が差して山の端がとても近く見えるころ、 カラスがねぐらに帰ろうと、 三羽四羽、 二羽三羽と急いで飛ぶ姿までも、 しみじみと心にしみる。
冬は早朝がよい。 雪が降った朝は言うまでもない。 霜がとても白い朝も、 また霜がなくてもとても寒い朝に、 火などを急いで起こして、 炭を持ち運ぶのもとても似つかわしい。
| 古語 | 意味 |
|---|---|
| あけぼの | 夜明けのころ |
| やうやう | だんだん |
| 山ぎは | 山の上の空(山と空のさかい) |
| 紫だちたる | 紫がかった |
| をかし | 趣がある・よい |
| あはれなり | しみじみ心にしみる |
| つとめて | 早朝 |
| つきづきし | 似つかわしい |
やってみよう:清少納言は千年前の人ですが、 「春は夜明けが一番美しい」「夏は夜がいい」 と季節ごとに一番すてきな時間を選んでいます。 あなたならどう書きますか? 「春は ___。」 と書いてみましょう。
平家物語 は、 鎌倉時代(1 3 世紀) に成立した 軍記物語(武士の戦いをえがいた物語) です。 平家の一族が栄え、 やがて滅びていく物語を、 琵琶法師 という人たちが琵琶を弾きながら語り伝えました。
祇園精舎の鐘の声、 諸行無常の響きあり。 沙羅双樹の花の色、 盛者必衰の理をあらはす。
おごれる人も久しからず、 ただ春の夜の夢のごとし。 たけき者も遂には滅びぬ、 ひとへに風の前の塵に同じ。
祇園精舎の鐘の音には、 この世のすべてのものが移り変わっていくという響きがこもっている。 沙羅双樹の花の色は、 栄えているものも必ずいつかは衰えるという道理を示している。
思い上がっている人も長くは続かない。 ちょうど春の夜に見る夢のように、 すぐに消えてしまう。 強く勇ましい者も結局は滅びてしまう。 それはまさに、 風の前に舞う塵と同じである。
| 言葉 | 意味 |
|---|---|
| 祇園精舎 | 釈迦(お釈迦様) が説法をしたインドの寺 |
| 諸行無常 | この世のすべてのものは移り変わっていくという仏教の考え方 |
| 沙羅双樹 | 釈迦が亡くなったとき周りにあった木 |
| 盛者必衰 | 栄えているものも必ず衰えるという道理 |
| おごれる | 思い上がっている |
| たけき者 | 強く勇ましい人 |
平家物語は、 漢語(祇園精舎・諸行無常) と 和語(春の夜の夢・風の前の塵) が混じり合い、 「七五調」 に近いリズムを持ちます。 声に出して読むと、 心地よい響きが感じられます。
やってみよう: 「祇園精舎の鐘の声、 諸行無常の響きあり」 を、 区切りに気をつけて三回音読してみましょう。 リズムが体にしみこんできます。
竹取物語 は、 平安時代(1 0 世紀) に成立した 日本最古の物語 と言われています。 かぐや姫の物語として、 今でも親しまれています。
今は昔、 竹取の翁といふものありけり。 野山にまじりて竹を取りつつ、 よろづのことに使ひけり。 名をば、 さぬきの造となむいひける。
その竹の中に、 もと光る竹なむ一すぢありける。 あやしがりて、 寄りて見るに、 筒の中光りたり。 それを見れば、 三寸ばかりなる人、 いとうつくしうてゐたり。
今ではもう昔のことだが、 竹取の翁という人がいた。 野や山を歩き回って竹を取り、 いろいろなことに使っていた。 名前を 「さぬきの造」 といった。
ある日、 いつものように竹を取っていると、 根元が光る竹が一本あった。 不思議に思って近寄って見ると、 筒の中が光っていた。 中をのぞくと、 身長が三寸(約 9 センチメートル) ほどの小さな人が、 とても美しい様子で座っていた。
| 古語 | 意味 |
|---|---|
| 今は昔 | 今では昔のことだが(昔話の始めの言葉) |
| 翁(おきな) | おじいさん |
| いふ | 言う |
| けり | 〜 だった(過去を示す) |
| よろづのこと | いろいろなこと |
| あやしがりて | 不思議に思って |
| いと | とても |
| うつくしうて | かわいらしくて・美しくて |
| ゐたり | 座っていた |
「いとうつくしうて」 の 「うつくし」 は、 古文では 「かわいらしい」 の意味で使うことが多い言葉です。 現代の 「美しい」 とは少しちがいます。
竹から生まれたかぐや姫は、 やがて美しい女性に育ち、 多くの求婚者が集まります。 しかしかぐや姫は、 月の都から来た人であり、 やがて月へ帰っていきます。 別れの場面は、 千年経っても心を打つ物語です。
論語 は、 中国の思想家孔子(紀元前 5 世紀) の言葉と行いを、 弟子たちがまとめた本です。 「人としての生き方」 を教える言葉がたくさん入っています。
子曰、 學而時習之、 不亦説乎。
子のたまはく、 学びて時にこれをならふ、 また 説 ばしからずや。
先生(孔子) がおっしゃった。 「学んだことを、 時を見計らって復習する。 これは何と楽しいことではないか。」
己所不欲、 勿施於人。
己の欲せざる所、 人に施すことなかれ。
自分がされたくないことを、 他の人にしてはならない。
有朋自遠方来、 不亦楽乎。
朋あり、 遠方より来たる、 また楽しからずや。
同じ志を持った友が、 遠い所からたずねて来てくれる。 何と楽しいことではないか。
漢文は、 中国で書かれた文章を 日本語として読む ために、 順序を入れ替えたり助詞を補ったりします。 これを 訓読 と言います。
| ステップ | やること |
|---|---|
| 白文 | 漢字だけで書かれた元の文 |
| 書き下し文 | 訓読して日本語の順序に並べた文 |
| 現代語訳 | 今の言葉に直した文 |
論語の短い章句を何度も声に出して読むことを 素読 と言い、 江戸時代の子どもたちはこれで心を育てていました。
短歌 とは、 5・7・5・7・7(合計 3 1 音) の 5 句で作られる、 日本の古い詩の形です。 万葉集(8 世紀) のころから、 現代まで親しまれています。 4 年生で学んだ 俳句(5・7・5、 1 7 音) に 7・7 が加わった形と考えるとわかりやすいです。
| 句 | 音数 | れい |
|---|---|---|
| 初句 | 5 | あかとんぼ |
| 二句 | 7 | なのはらとおく |
| 三句 | 5 | まちなみに |
| 四句 | 7 | ゆうひそまって |
| 結句 | 7 | かげのびてゆく |
合わせて: 「あかとんぼ/なのはらとおく/まちなみに/ゆうひそまって/かげのびてゆく」(Studia オリジナル)
サンプル 1(春):
あさづゆの/ひかるゆびさき/ぬらしつつ/さくらのつぼみ/そっとかぞえる
サンプル 2(学校生活):
ひるやすみ/そらのあおさに/さそわれて/クラスのみんな/はしりまわるひ
サンプル 3(家族):
よるおそく/おちゃをすするの/おばあちゃん/しわしわのてが/カップをつつむ
| ステップ | やること |
|---|---|
| 1. 題材を決める | 季節・出来事・家族・友達・自然など身近なもの |
| 2. 一番印象に残った場面を思い出す | 五感(見た・聞いた・触れた・におい・味) で |
| 3. キーワードをいくつか書き出す | 「ゆうひ・はしる・あかとんぼ」 など |
| 4. 5・7・5・7・7 に当てはめる | 音数を指で数えながら |
| 5. 何度も声に出して整える | リズムが心地よいか確かめる |
やってみよう:今日一番心に残ったことを、 5・7・5・7・7 で表してみましょう。 言葉がぴったりはまったときの喜びは、 千年前の歌人たちも感じたはずです。
古典を声に出して読んだり、 自分で短歌を作ったりすると、 千年を越えて言葉と心がつながります。 次の Ch6 では ことわざ・慣用句・故事成語の由来と背景 を学びます。