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4 年生では 物語の山場と情景描写 を学びました。 5 年生ではさらに深く、 人物像・登場人物の相互関係・物語の全体像・表現の効果・朗読 を学びます。
この章でできるようになること:
ポイント:物語を 「あらすじ」 だけでつかむのは、 5 年生ではもう卒業です。 言葉の一つひとつが物語にどう効いているか を考えながら読みましょう。
人物像 とは、 登場人物がどんな人か(性格・置かれた状況・心情)を、 描写からつかむことです。
| 描写 | 読み取れること | れい |
|---|---|---|
| 行動描写 | 何をしたか → 性格・気持ち | 「うつむいて黙り込んだ」→ 内向的・悲しい |
| 会話描写 | 何を言ったか・口調 | 「だから言ったじゃない!」→ 怒り・直情的 |
| 外見描写 | 服装・表情・しぐさ | 「ぼろぼろのシャツ」→ 貧しい、 苦労している |
| 心理描写 | 心の中の言葉 | 「わたしはどうしたらいいのだろう」→ 迷い |
5 年生では、 間接表現から心情を読み取る力が大切です。
引っ越して来た春、 みかんはどうしてもクラスになじめなかった。 教室の隅の席で、 ノートに鉛筆で小さな犬の絵を描いているだけが、 一日の楽しみだった。
学校の帰り道、 古い公園のそばで、 真っ白な犬と出会った。 犬は鎖につながれていないのに、 じっと同じ場所で座っている。 みかんは立ち止まって、 犬を見つめた。 犬もみかんを見つめ返した。
「白いね」 と、 みかんは小さくつぶやいた。
その翌日から、 みかんは帰り道で必ず公園に寄った。 ノートに犬の絵を描き、 そっと犬に見せた。 犬は動かない。 でも、 みかんが来ると尻尾を一度だけ振った。
ある日、 同じクラスのさくらが犬のそばに立っていた。
「あなたもこの子が好きなの?」
さくらが聞いた。 みかんはうつむいたまま小さくうなずいた。 さくらはふっと笑って、 「わたしも。 おじいちゃんの犬なんだ。 おじいちゃんは言葉がうまく出ない病気で、 でもこの子だけはちゃんと名前を呼べるの」 と教えてくれた。
ノートに描いた犬の絵が、 みかんの心の中の鏡のように思えた。 描いているうちに、 自分の中に言葉にならない寂しさがあることに、 みかん自身が気付いてきたからだ。
その次の日、 さくらは教室でみかんに声をかけた。 「ノート、 見せてくれない?」 みかんは一瞬ためらったが、 そっとノートを開いた。 犬の絵がページいっぱいに並んでいた。
「すごい」 とさくらは目を丸くした。 「上手だね」
その日から、 みかんの席のまわりには、 少しずつ人が集まるようになった。 ノートに描かれた白い犬が、 みかんとクラスのあいだにそっと橋をかけてくれたのだった。
— Studia オリジナル
| 人物 | 性格・状況 | 根拠となる描写 |
|---|---|---|
| みかん | 内向的・絵が好き・寂しさをかかえている | 「教室の隅の席」「うつむいたまま小さくうなずいた」「言葉にならない寂しさ」 |
| さくら | 率直・明るい・人を思いやる心 | 「ふっと笑って」「すごいと目を丸くした」 |
| おじいちゃん(語られた人) | 病気を抱えながら犬を大切にしている | さくらの言葉からの間接情報 |
孤立(みかん一人)→ 出会い(みかんと白い犬)→ 接触(みかんとさくら)→ 広がり(みかんとクラス全体)
おばあちゃんの家で過ごす夏休み、 最後の夜は町の夏祭りだった。 ぼく、 けんはおばあちゃんと二人で、 提灯の並ぶ道を歩いていた。
「今年で最後かもしれないね、 この祭り」
おばあちゃんがぽつりと言った。 町の人が少なくなって、 祭りを続けるのが大変だということは、 父さんから聞いていた。
太鼓の音が響く。 屋台の灯りが赤くゆれる。 けんはおばあちゃんの手をにぎった。
すると、 急に空が暗くなって、 大粒の雨が降ってきた。 「夕立だ」 とだれかがさけんだ。 屋台の人たちはあわててシートをかぶせる。 提灯が揺れる。 提灯が揺れる。 提灯が揺れる。
「けん、 走るよ」 おばあちゃんがけんの手を引いた。 二人は神社の軒下に駆け込んだ。
雨は 5 分も経たないうちに止んだ。 軒下から出ると、 空には大きな月が出ていた。 屋台は半分ほど閉まって、 でも残った提灯が雨に洗われて、 さっきよりも美しく光っていた。
「お祭りは続いているね」 とけんは言った。
「うん。 続いている」 とおばあちゃんが答えた。
夜空の月を、 けんは見上げた。 美しかった、 その夜空は。 ぼくはこの夏を、 ずっと忘れないだろう。
— Studia オリジナル
| 表現 | 種類 | 効果 |
|---|---|---|
| 「提灯が揺れる。 提灯が揺れる。 提灯が揺れる」 | 反復 | 雨の慌ただしさ・静止画のような強烈な印象 |
| 「美しかった、 その夜空は」 | 倒置 | 「美しかった」 を先頭に出すことで、 心に強く残る |
| 「屋台の灯りが赤くゆれる」 | 情景描写 | 祭りの活気と温かさ |
| 「お祭りは続いているね」 | 会話 + 象徴 | 町の衰退のなかでも、 受け継ぐ心は続くこと |
同じ場面を、 平凡に書く のと 表現技法を使って書く ので、 印象がどれほど変わるか見てみましょう。
| 平凡な文 | 表現技法を使った文 | 効果 |
|---|---|---|
| 月が出ていた | 月が、 そっと顔を出していた | 擬人法 — 月に命があるように感じる |
| とても寂しかった | 心が、 風の通る廊下のように寂しかった | 比喩 — 寂しさの質感が伝わる |
| 早く走った | 走った。 走った。 走った | 反復 — 必死さ・切迫感が出る |
| 今日は何だか嬉しい | 嬉しい、 今日は何だか | 倒置 — 嬉しいが強く残る |
朗読 は 音読の発展 です。 ただ読むだけではなく、 人物像や場面を意識 して読みます。
| 工夫 | 例 |
|---|---|
| 強弱 | 大事な言葉は強く、 静かな場面は弱く |
| 速さ | 慌てる場面は速く、 静かな場面はゆっくり |
| 間(ま) | 「、」 で短く、 「。」 で長く、 大事な一文の前後で特に長く |
| 声色 | 子どもと大人、 男性と女性、 元気な人と落ち込んだ人を声で描き分ける |
5 年生では物語を中心に学びましたが、 6 年生では 伝記(実在した人の一生を書いた本)も本格的に読みます。
ヘレン・ケラー、 野口英世、 杉原千畝、 マザー・テレサ … 偉人の伝記を読むと、 困難をどう乗り越えたか を知れます。 物語とは違い、 「実際にあったこと」 という重みが心に残ります。
夏休みに図書館で、 気になる偉人の伝記を 1 冊読んでみましょう。
次の Ch8 では 説明文 の読み方を学びます。