物語 を よむ(人物像・相互関係・全体像・表現 の 効果・朗読)
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はじめに
4 年生では 物語の山場と情景描写 を学びました。 5 年生ではさらに深く、 人物像・登場人物の相互関係・物語の全体像・表現の効果・朗読 を学びます。
この章でできるようになること:
- 描写から 人物像(性格・状況・心情)を読み取る
- 複数の登場人物の 相互関係 とその変化をつかむ
- 物語の 全体像(始まり・展開・山場・結末の流れ)を捉える
- 比喩・反復・倒置等の 表現の効果 を考える
- 人物像を意識した 朗読 ができる
ポイント:物語を 「あらすじ」 だけでつかむのは、 5 年生ではもう卒業です。 言葉の一つひとつが物語にどう効いているか を考えながら読みましょう。
1. 人物像を読み取る
人物像 とは、 登場人物がどんな人か(性格・置かれた状況・心情)を、 描写からつかむことです。
描写の 4 種類
| 描写 | 読み取れること | れい |
|---|---|---|
| 行動描写 | 何をしたか → 性格・気持ち | 「うつむいて黙り込んだ」→ 内向的・悲しい |
| 会話描写 | 何を言ったか・口調 | 「だから言ったじゃない!」→ 怒り・直情的 |
| 外見描写 | 服装・表情・しぐさ | 「ぼろぼろのシャツ」→ 貧しい、 苦労している |
| 心理描写 | 心の中の言葉 | 「わたしはどうしたらいいのだろう」→ 迷い |
直接と間接の表現
- 直接表現: 「太郎は悲しい」 → そのまま書く
- 間接表現: 「太郎は窓の外をじっと見つめて、 何も言わなかった」 → 読み手が 「悲しい」 と推測する
5 年生では、 間接表現から心情を読み取る力が大切です。
2. 自作物語 1 — 「白い犬とわたしのノート」(Studia オリジナル)
本文
引っ越して来た春、 みかんはどうしてもクラスになじめなかった。 教室の隅の席で、 ノートに鉛筆で小さな犬の絵を描いているだけが、 一日の楽しみだった。
学校の帰り道、 古い公園のそばで、 真っ白な犬と出会った。 犬は鎖につながれていないのに、 じっと同じ場所で座っている。 みかんは立ち止まって、 犬を見つめた。 犬もみかんを見つめ返した。
「白いね」 と、 みかんは小さくつぶやいた。
その翌日から、 みかんは帰り道で必ず公園に寄った。 ノートに犬の絵を描き、 そっと犬に見せた。 犬は動かない。 でも、 みかんが来ると尻尾を一度だけ振った。
ある日、 同じクラスのさくらが犬のそばに立っていた。
「あなたもこの子が好きなの?」
さくらが聞いた。 みかんはうつむいたまま小さくうなずいた。 さくらはふっと笑って、 「わたしも。 おじいちゃんの犬なんだ。 おじいちゃんは言葉がうまく出ない病気で、 でもこの子だけはちゃんと名前を呼べるの」 と教えてくれた。
ノートに描いた犬の絵が、 みかんの心の中の鏡のように思えた。 描いているうちに、 自分の中に言葉にならない寂しさがあることに、 みかん自身が気付いてきたからだ。
その次の日、 さくらは教室でみかんに声をかけた。 「ノート、 見せてくれない?」 みかんは一瞬ためらったが、 そっとノートを開いた。 犬の絵がページいっぱいに並んでいた。
「すごい」 とさくらは目を丸くした。 「上手だね」
その日から、 みかんの席のまわりには、 少しずつ人が集まるようになった。 ノートに描かれた白い犬が、 みかんとクラスのあいだにそっと橋をかけてくれたのだった。
— Studia オリジナル
この物語を読み解く
人物像
| 人物 | 性格・状況 | 根拠となる描写 |
|---|---|---|
| みかん | 内向的・絵が好き・寂しさをかかえている | 「教室の隅の席」「うつむいたまま小さくうなずいた」「言葉にならない寂しさ」 |
| さくら | 率直・明るい・人を思いやる心 | 「ふっと笑って」「すごいと目を丸くした」 |
| おじいちゃん(語られた人) | 病気を抱えながら犬を大切にしている | さくらの言葉からの間接情報 |
相互関係の変化
孤立(みかん一人)→ 出会い(みかんと白い犬)→ 接触(みかんとさくら)→ 広がり(みかんとクラス全体)
表現の効果
- 「ノートに描いた犬の絵が、 みかんの心の中の鏡のように思えた」 → 比喩。 ノート = 心の内側を表す
- 「白い犬が、 みかんとクラスのあいだにそっと橋をかけてくれた」 → 比喩。 物語の結末を象徴する
- 「犬は動かない。 でも、 みかんが来ると尻尾を一度だけ振った」 → 短い文の反復と対比で、 静かな喜びを表す
3. 自作物語 2 — 「夏祭りの終わりに」(Studia オリジナル)
本文
おばあちゃんの家で過ごす夏休み、 最後の夜は町の夏祭りだった。 ぼく、 けんはおばあちゃんと二人で、 提灯の並ぶ道を歩いていた。
「今年で最後かもしれないね、 この祭り」
おばあちゃんがぽつりと言った。 町の人が少なくなって、 祭りを続けるのが大変だということは、 父さんから聞いていた。
太鼓の音が響く。 屋台の灯りが赤くゆれる。 けんはおばあちゃんの手をにぎった。
すると、 急に空が暗くなって、 大粒の雨が降ってきた。 「夕立だ」 とだれかがさけんだ。 屋台の人たちはあわててシートをかぶせる。 提灯が揺れる。 提灯が揺れる。 提灯が揺れる。
「けん、 走るよ」 おばあちゃんがけんの手を引いた。 二人は神社の軒下に駆け込んだ。
雨は 5 分も経たないうちに止んだ。 軒下から出ると、 空には大きな月が出ていた。 屋台は半分ほど閉まって、 でも残った提灯が雨に洗われて、 さっきよりも美しく光っていた。
「お祭りは続いているね」 とけんは言った。
「うん。 続いている」 とおばあちゃんが答えた。
夜空の月を、 けんは見上げた。 美しかった、 その夜空は。 ぼくはこの夏を、 ずっと忘れないだろう。
— Studia オリジナル
表現の効果
| 表現 | 種類 | 効果 |
|---|---|---|
| 「提灯が揺れる。 提灯が揺れる。 提灯が揺れる」 | 反復 | 雨の慌ただしさ・静止画のような強烈な印象 |
| 「美しかった、 その夜空は」 | 倒置 | 「美しかった」 を先頭に出すことで、 心に強く残る |
| 「屋台の灯りが赤くゆれる」 | 情景描写 | 祭りの活気と温かさ |
| 「お祭りは続いているね」 | 会話 + 象徴 | 町の衰退のなかでも、 受け継ぐ心は続くこと |
4. 表現の効果を比べてみよう
同じ場面を、 平凡に書く のと 表現技法を使って書く ので、 印象がどれほど変わるか見てみましょう。
| 平凡な文 | 表現技法を使った文 | 効果 |
|---|---|---|
| 月が出ていた | 月が、 そっと顔を出していた | 擬人法 — 月に命があるように感じる |
| とても寂しかった | 心が、 風の通る廊下のように寂しかった | 比喩 — 寂しさの質感が伝わる |
| 早く走った | 走った。 走った。 走った | 反復 — 必死さ・切迫感が出る |
| 今日は何だか嬉しい | 嬉しい、 今日は何だか | 倒置 — 嬉しいが強く残る |
5. 朗読 — 人物像を意識して読む
朗読 は 音読の発展 です。 ただ読むだけではなく、 人物像や場面を意識 して読みます。
朗読のコツ
| 工夫 | 例 |
|---|---|
| 強弱 | 大事な言葉は強く、 静かな場面は弱く |
| 速さ | 慌てる場面は速く、 静かな場面はゆっくり |
| 間(ま) | 「、」 で短く、 「。」 で長く、 大事な一文の前後で特に長く |
| 声色 | 子どもと大人、 男性と女性、 元気な人と落ち込んだ人を声で描き分ける |
グループ朗読のすすめ
- 物語を場面で区切り、 人物ごとに役を分担
- 司会役の子が場面解説を読む
- ナレーション役が地の文を読む
- 何度も練習し、 おたがいに感想を伝え合う
6. 末コラム — 伝記を読んでみよう(小 6 への橋渡し)
5 年生では物語を中心に学びましたが、 6 年生では 伝記(実在した人の一生を書いた本)も本格的に読みます。
ヘレン・ケラー、 野口英世、 杉原千畝、 マザー・テレサ … 偉人の伝記を読むと、 困難をどう乗り越えたか を知れます。 物語とは違い、 「実際にあったこと」 という重みが心に残ります。
夏休みに図書館で、 気になる偉人の伝記を 1 冊読んでみましょう。
7. まとめ
- 人物像 は 性格・状況・心情 を描写から読み取る
- 相互関係 は物語のなかで 変化する場合が多い
- 全体像 は 始まり・展開・山場・結末 の流れ
- 表現の効果: 比喩・反復・倒置・擬人法 が物語を豊かにする
- 朗読 は人物像を声で表現する活動
次の Ch8 では 説明文 の読み方を学びます。
学習ロードマップ(10件)
- 15 年生で ならう 漢字(まえ)97 字 と 漢字の 成り立ち(象形・指事・会意・形声)
- 25 年生で ならう 漢字(あと)96 字 + 用紙全体との 関係(書写)+ 類語辞典の 使い方
- 3ことばの ひろがり(複合語・思考に 関わる 語句・語感・共通語と 方言・語順・話し言葉と 書き言葉)
- 4仮名と 漢字の 由来 + 漢字と 仮名の 使い分け + 敬語入門(尊敬・謙譲・丁寧)
- 5古典入門(枕草子・平家物語・竹取物語・論語、文語の 音読・暗唱、自作短歌)
- 6ことわざ・慣用句・故事成語 の 由来 と 背景(昔の人の知恵 と 中国古典)
- 7物語 を よむ(人物像・相互関係・全体像・表現 の 効果・朗読)
- 8説明文 を よむ(要旨・論 の 進め方・原因 と 結果・文章 + 図表/グラフ・複数文章 の 比較)
- 9書く(意見文・説明文・引用 + 図表入り レポート・物語 の 続き)+ 文章構成パターン
- 10話す・聞く(意見・提案 の 発表・計画的 な 話し合い・討論・資料 を 活用した発表)