この章で学ぶこと
これまでの 直交座標 (x,y) は 「縦横の物差し」 で点の位置 を表しました。 数学 C で学ぶ 極座標 は、 「原点 からの距離 r」 と 「x軸からの角θ」 で表す全く別の座標系です。 円や渦巻きのように 「中心 との関係」 が主役の図形を 驚くほど短い式 で書けます。
- 極座標の定義 と直交座標 との変換
- 円・直線 の 極方程式
- カージオイド・ばら曲線・アルキメデスの渦線
- 極座標 での 面積 の公式
- 大学微分積分 への橋渡 し
ポイント: 円を直交座標 で書くと x2+y2=r2 ですが、 極座標 なら r=一定 だけで表せます。 中心 からの 「広がり」 を主役 にしたい図形 (天体の軌道・電磁場・流体) では、 極座標 が圧倒的に自然 な言語 になります。
1. 極座標とは
定義
平面 に原点 O (極) とそこから出る半直線 (始線) を決めます。 点P の位置 を、
- O からの 距離 r (r≥0)
- 始線 から反時計回りに測った 角 θ
の組(r,θ) で表すのが 極座標 です。
直交座標との変換
直交座標 (x,y) と 極座標 (r,θ) の関係は
x=rcosθ,y=rsinθ
逆に
r=x2+y2,tanθ=xy (x=0)
例題 1
直交座標 (3,1) を 極座標 で表せ。
解: r=3+1=2、 tanθ=1/3 で θ=π/6 (x,y とも正だから第 1 象限)。 答え (2,π/6)。
2. 極方程式の基本
円の極方程式
| 中心 と半径 | 極方程式 |
|---|
| 中心 O、 半径 a | r=a |
| 中心 (a,0) (x軸上)、 半径 a | r=2acosθ |
| 中心 (0,a) (y軸上)、 半径 a | r=2asinθ |
導出: (x−a)2+y2=a2 を展開 すると x2+y2=2ax。 これに x2+y2=r2, x=rcosθ を代入して r2=2a⋅rcosθ、 両辺を r で割って r=2acosθ。
直線の極方程式
| 直線 | 極方程式 |
|---|
| 原点 を通り角α | θ=α |
| x軸に垂直、 x=a | rcosθ=a |
| 原点 から距離 d、 法線 が角α | rcos(θ−α)=d |
3. カージオイド (心臓形)
式と形
極座標 で
r=a(1+cosθ),a>0
と表される曲線 を カージオイド (心臓形) と呼びます。 θ=0 で r=2a (右へ最も伸びる)、 θ=π で r=0 (原点 に戻る) というハートのような形です。
性質
| 項目 | 値 |
|---|
| 最大r | 2a |
| 1 周期 | 0≤θ≤2π |
| 1 周期で囲む面積 | 23πa2 |
| 1 周期の弧長 | 8a |
由来: カージオイド はラテン語で 「心 (cardia)」 から来ており、 ハート型だからこの名前がつきました。 マイクの指向性 (カーディオイドマイク) や、 マンデルブロ集合の中央 の大きな部分としても現れます。
4. ばら曲線
式と花弁の数
r=acos(nθ)またはr=asin(nθ)
を ばら曲線 (ローズカーブ) と呼びます。 n のパリティで花弁の数が変わります。
| n | 花弁の数 |
|---|
| 奇数 (1, 3, 5, ...) | n枚 |
| 偶数 (2, 4, 6, ...) | 2n枚 |
例: r=cos(3θ) は 3 枚のバラ、 r=cos(2θ) は 4 枚のバラ。
5. アルキメデスの渦線
式と性質
r=aθ(θ≥0, a>0)
を アルキメデスの渦線 と呼びます。 角が 1 ラジアン増えるごとに、 距離 が a ずつ増える、 等間隔の渦巻きです。
| 性質 | 内容 |
|---|
| 連続 する巻きの間隔 | 2πa |
| 角速度一定 で動く点の速度 | 中心 から離れるほど速い |
例題 2
r=aθ で θ=2π の点と θ=4π の点の間隔 (動径方向) はいくらか。
解: r の差は 4πa−2πa=2πa。
6. 極座標での面積
公式
極方程式 r=f(θ) (α≤θ≤β) で表される図形が、 原点 と 2 本の半直線 θ=α,θ=β で囲む面積 は
S=21∫αβ{f(θ)}2dθ
公式の導き方
微小な角dθ に対し、 半径 r の扇形 の面積 は 21r2dθ。 これを積み上げて積分 すると上の公式が出ます。
例題 3
カージオイド r=a(1+cosθ) (0≤θ≤2π) が囲む面積 を求めよ。
解:
S=21∫02πa2(1+cosθ)2dθ
(1+cosθ)2=1+2cosθ+cos2θ=1+2cosθ+21+cos2θ
∫02πcosθdθ=0,∫02πcos2θdθ=0
したがって
S=2a2∫02π(1+21)dθ=2a2⋅23⋅2π=23πa2
7. 極座標と直交座標の使い分け
| 直交座標 が自然 | 極座標 が自然 |
|---|
| 直線・長方形 | 円・楕円・渦 |
| 関数y=f(x) | 中心対称 な図形 |
| 「縦 ×横」 で体積 を計算 | 「半径 と角」 で面積 を計算 |
大事: 物理では 惑星 の軌道 や 電場 の 等電位面 のように中心 からの広がりが主役 のとき、 極座標 が圧倒的に短く美しい式を与えます。 ケプラーの法則 (惑星軌道 が 楕円) は 極方程式 r=1+ecosθl で一行に書けます。
8. 極座標と大学数学
| 高校で学ぶこと | 大学での拡張 |
|---|
| 平面 極座標 (r,θ) | 円柱座標 (r,θ,z)、 球面座標 (ρ,θ,ϕ) |
| 極での面積 21∫r2dθ | ヤコビアン を使った一般的な座標変換 |
| ケプラーの法則 | 微分方程式 と 万有引力 から軌道 を導出 |
章末まとめ
- 極座標 (r,θ)、 直交 とは x=rcosθ,y=rsinθ
- 円中心原点 = r=a、 中心 (a,0) = r=2acosθ
- カージオイド = r=a(1+cosθ)、 ばら曲線 = r=acos(nθ)
- 面積 S=21∫αβr2dθ
- 中心対称・渦・天体軌道 には極座標が自然