この章で学ぶこと
第 4 章で円錐曲線 の概要 を学びました。 この章では 楕円 に集中。 「2 つの 焦点 からの距離 の和が一定」 という定義 から出発し、 標準形・離心率・接線・パラメータ表示まで一気に学びます。
- 楕円 の 作図定義 と標準形の導出
- 長軸・短軸・焦点・離心率・準線
- 楕円 の 接線 の方程式
- 楕円 の 媒介変数表示
- 楕円 の面積 と ケプラー軌道
覚え方: 楕円 = 「 押しつぶした円」。 2 つの 焦点 が一致 すると円 (e=0)、 焦点 が離れるほど細長くなる (e→1)。 太陽系の惑星軌道 はほぼ円に近い楕円 (地球で e≈0.017)、 ハレー彗星 は e≈0.967 の細長い楕円 です。
1. 楕円の定義
作図定義
平面上の 2 定点 F,F′ (焦点) からの距離 の 和が一定 2a である点P の 軌跡 を 楕円 と呼びます。
PF+PF′=2a(2a>FF′)
直感: 鉛筆 と糸を使って、 2 本のピン (= 焦点) に糸をかけ、 ぴんと張りながら鉛筆 を動かすと楕円 がえがけます。 糸の長さが 2a です。
2. 楕円の標準形
横長の楕円
焦点 を x軸上の F(c,0),F′(−c,0) (c>0) とし、 距離 の和を 2a (a>c) とおくと、 軌跡 の方程式は
a2x2+b2y2=1(a>b>0)
ただし b=a2−c2 (ピタゴラス の関係)。
縦長の楕円
焦点 が y軸上 (F(0,c),F′(0,−c)) のときは、 同じ式で b>a となります (長半径 が b)。
用語
| 用語 | 意味 |
|---|
| 中心 | 楕円 の対称中心 (上の例では原点) |
| 長軸 | 長い方の直径、 長さ 2a |
| 短軸 | 短い方の直径、 長さ 2b |
| 頂点 | 軸との 4 つの交点 |
| 焦点 | (±c,0)、 c=a2−b2 |
例題 1
25x2+16y2=1 の 焦点 と 長軸・短軸 の長さを求めよ。
解: a2=25,b2=16 より a=5,b=4。 c=25−16=3。 焦点 (±3,0)、 長軸 2a=10、 短軸 2b=8。
3. 離心率と準線
離心率
楕円 の 離心率 は
e=ac(0≤e<1)
| e | 形 |
|---|
| e=0 | 円 (c=0、 焦点 が中心 に一致) |
| e→1 | きわめて細長い楕円 |
準線
焦点 F(c,0) に対する 準線 は
x=ea=ca2
楕円上の任意 の点P に対し、 PF:(準線 への距離)=e:1 が成り立ちます (焦点・準線統一定義)。
4. 楕円の接線
公式
楕円 a2x2+b2y2=1上の点(x0,y0) における 接線 は
a2x0x+b2y0y=1
(円x2+y2=r2 の接線 x0x+y0y=r2 と同じ形を楕円 に拡張 したもの)
例題 2
16x2+4y2=1上の点(2,3) における接線 を求めよ。
解: 公式 より 162x+43y=1、 すなわち 8x+43y=1、 整理して x+23y=8。
5. 媒介変数表示と面積
パラメータ表示
第 2 章で触れた通り、 楕円 は
x=acosθ,y=bsinθ(0≤θ<2π)
θ は 離心角 と呼ばれ、 円の角とは違い、 物理的な角ではありません (パラメータ)。
面積
楕円 a2x2+b2y2=1 が囲む面積 は
S=πab
円 (a=b=r) の面積 πr2 を拡張 した形になっています。
例題 3
9x2+4y2=1 の面積 を求めよ。
解: a=3,b=2 より S=6π。
6. 焦点を用いた性質
反射性質
楕円内部 の一方の 焦点 から出た光や音波は、 楕円壁で反射 すると 必ずもう一方の 焦点 に集まります。
| 応用例 | 内容 |
|---|
| 「ささやきのホール」 | 楕円形の天井 で一方の焦点 のつぶやきがもう一方の焦点 にはっきり聞こえる |
| 体外衝撃波結石破砕装置 | 一方の焦点 から衝撃波を出し、 体内の結石をもう一方の焦点 に集めて砕く |
ケプラーの第 1 法則
惑星 は 太陽を一方の 焦点 とする 楕円軌道 を描きます。 極方程式 で表すと
r=1+ecosθa(1−e2)
太陽が焦点 にあり、 θ=0 で太陽に最も近く (近日点)、 θ=π で最も遠く (遠日点) なります。
ケプラーの第 2・第 3 法則
| 法則 | 内容 |
|---|
| 第 2 (面積速度一定) | 惑星 と太陽を結ぶ線分が一定時間 にえがく面積 は一定 |
| 第 3 (調和 の法則) | 公転 周期 T と長軸半径 a の間に T2∝a3 |
7. 楕円と円の関係
押しつぶし変換
円X2+Y2=a2 を Y方向 に b/a倍に縮める (つまり X=x,Y=ay/b) と、 楕円 a2x2+b2y2=1 になります。
つまり 楕円 = 円を縮めた図形。 この視点から、 楕円 の多くの性質 (面積 πab など) を円から 「圧縮比」 で説明 できます。
例題 4
楕円 16x2+9y2=1 と直線 x+y=4 で囲まれた図形の面積 を、 円への圧縮視点で求める方針を述べよ。
方針: Y=34y と置き換えて楕円 を円x2+Y2=16 に戻す。 直線 は x+43Y=4 になる。 円内の図形 として面積 S′ を計算 し、 圧縮比b/a=3/4 を戻して S=43S′。
8. 楕円の応用
| 分野 | 楕円 の役割 |
|---|
| 天文学 | 惑星・彗星・人工衛星の軌道 |
| 医学 | 結石破砕装置、 楕円形ベッド (リハビリ) |
| 建築 | 「ささやきのギャラリー」 (米国議会議事堂等) |
| 工学 | 楕円歯車で速度比を周期的に変える |
| スポーツ | 陸上トラック (直線 + 半円) は厳密 には楕円 ではないが似た形 |
章末まとめ
- 定義: PF+PF′=2a (焦点 からの距離 の和一定)
- 標準形: a2x2+b2y2=1, c=a2−b2
- 離心率 e=c/a (0≤e<1)
- 接線 a2x0x+b2y0y=1、 面積 πab
- パラメータ表示(acosθ,bsinθ)
- ケプラーの法則 で惑星軌道 を表す