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数学C

ド・モアブルの定理ていり (n 乗根じょうこん)

最終確認日:

この章しょうで学まなぶこと

数学すうがく C 最終さいしゅう章しょうは、 極形式きょくけいしきの真価しんかが発揮はっきされる ド・モアブルの定理どもあぶるのていり です。 「複ふく素そ数すうの nn乗」 が 角かくを nn倍ばいするだけ で計けい算さんでき、 「nn乗根じょうこん」 は 正nn角形けいの頂ちょう点てん として視覚しかく化かできます。

  • ド・モアブルの定理どもあぶるのていり (cos⁡θ+isin⁡θ)n=cos⁡nθ+isin⁡nθ(\cos\theta+i\sin\theta)^{n} = \cos n\theta + i\sin n\theta
  • 複ふく素そ数すうの nn乗の高速こうそく計けい算さん
  • 1 の n 乗根1 の n じょうこん と正せいnn角形けい
  • 任にん意いの複ふく素そ数すうの nn乗根じょうこん
  • オイラーの公式おいらーのこうしきとの関係かんけい (大学だいがくへの橋渡わたし)

大事だいじ: ド・モアブルの定理どもあぶるのていりは 「極形式きょくけいしきの全すべてが集しゅう約やくされた公式こうしき」 で、 大学だいがく数学すうがく・物理ぶつりで何なん度ども使つかいます。 「複ふく素そ数すうの乗法じょうほう = 偏へん角かくの足たし算ざん」 を nn回かい繰くり返かえすと 「nn倍」 という、 当あたり前まえの観察かんさつから導みちびかれます。

1. ド ・ モアブルの定理ていり

定理ていり

任にん意いの整数せいすうnn と実数じっすうθ\theta に対たいして

(cos⁡θ+isin⁡θ)n=cos⁡nθ+isin⁡nθ(\cos\theta + i\sin\theta)^{n} = \cos n\theta + i\sin n\theta

証明しょうめいの概要がいよう

n=2n=2 の場合ばあい: 第だい 9 章しょうの乗法じょうほう公こう式しきより

(cos⁡θ+isin⁡θ)2=cos⁡2θ+isin⁡2θ(\cos\theta+i\sin\theta)^{2} = \cos 2\theta + i\sin 2\theta

nn が自然しぜん数すうの場合ばあいは 数学的帰納法すうがくてききのうほう で一いっ般ぱん化できます。 nn が負ふの整数せいすうのときは、 商しょうの公こう式しきから同おなじ結論けつろんが出でます (n=0n=0 も自じ明めい、 1=cos⁡0+isin⁡01=\cos 0+i\sin 0)。

例題れいだい 1

(cos⁡20°+isin⁡20°)9(\cos 20° + i\sin 20°)^{9} を計けい算さんせよ。

解かい: cos⁡180°+isin⁡180°=−1\cos 180° + i\sin 180° = -1。

例題れいだい 2

(1+i)8(1 + i)^{8} を計けい算さんせよ。

解かい: 1+i=2(cos⁡45°+isin⁡45°)1+i = \sqrt{2}(\cos 45° + i\sin 45°)。 ド・モアブルより

(1+i)8=(2)8(cos⁡360°+isin⁡360°)=16⋅1=16(1+i)^{8} = (\sqrt{2})^{8}(\cos 360° + i\sin 360°) = 16\cdot 1 = 16

直ちょっ交こう形のまま (1+i)8(1+i)^{8} を展開てんかいすると大変たいへんですが、 極形式きょくけいしきなら一行いっこうで終おわります。

2. ド ・ モアブルを使つかった三角さんかく関数かんすうの公式こうしき

倍角ばいかく公式こうしきを一気いっきに出だす

ド・モアブル (cos⁡θ+isin⁡θ)2=cos⁡2θ+isin⁡2θ(\cos\theta + i\sin\theta)^{2} = \cos 2\theta + i\sin 2\theta の左辺さへんを展開てんかい:

cos⁡2θ−sin⁡2θ+2isin⁡θcos⁡θ=cos⁡2θ+isin⁡2θ\cos^{2}\theta - \sin^{2}\theta + 2i\sin\theta\cos\theta = \cos 2\theta + i\sin 2\theta

実部じつぶ・虚部きょぶを比較ひかくして

cos⁡2θ=cos⁡2θ−sin⁡2θ,sin⁡2θ=2sin⁡θcos⁡θ\cos 2\theta = \cos^{2}\theta - \sin^{2}\theta,\quad \sin 2\theta = 2\sin\theta\cos\theta

数学すうがく II の倍角ばいかく公こう式しきが自し然ぜんに出でます。

3 倍角ばいかく

n=3n=3 で同おなじことをすると

cos⁡3θ=4cos⁡3θ−3cos⁡θ\cos 3\theta = 4\cos^{3}\theta - 3\cos\theta

sin⁡3θ=3sin⁡θ−4sin⁡3θ\sin 3\theta = 3\sin\theta - 4\sin^{3}\theta

(実部じつぶ・虚部きょぶ比較ひかくと sin⁡2+cos⁡2=1\sin^{2}+\cos^{2}=1 で整理せいり)

例題れいだい 3

cos⁡4θ\cos 4\theta を cos⁡θ\cos\theta の多項たこう式しきで表あらわせ。

方針ほうしん: (cos⁡θ+isin⁡θ)4(\cos\theta+i\sin\theta)^{4} を二に項こう定理ていりで展開てんかいし実部じつぶを取とる。 結果けっか:

cos⁡4θ=8cos⁡4θ−8cos⁡2θ+1\cos 4\theta = 8\cos^{4}\theta - 8\cos^{2}\theta + 1

3. 1 の n 乗根じょうこん

定義ていぎと公式こうしき

方程てい式zn=1z^{n} = 1 の解かいを 1 の n 乗根1 の n じょうこん と呼よびます。 極形式きょくけいしき z=r(cos⁡θ+isin⁡θ)z = r(\cos\theta + i\sin\theta) で

zn=rn(cos⁡nθ+isin⁡nθ)=1=cos⁡0+isin⁡0z^{n} = r^{n}(\cos n\theta + i\sin n\theta) = 1 = \cos 0 + i\sin 0

両辺りょうへん比較ひかくで rn=1r^{n} = 1 より r=1r=1、 nθ=2πkn\theta = 2\pi k (k∈Zk\in\mathbb{Z}) より θ=2πkn\theta = \dfrac{2\pi k}{n}。

zk=cos⁡2πkn+isin⁡2πkn(k=0,1,…,n−1)z_k = \cos\frac{2\pi k}{n} + i\sin\frac{2\pi k}{n}\quad (k = 0, 1, \ldots, n-1)

幾何きか的てき意味いみ

1 の n 乗根1 の n じょうこんは、 単位たんい円上えんじょうを nn等分とうぶん した点てん = 正nn角形けいの頂ちょう点てん です。 1 つは必かならず z0=1z_0 = 1。

例題れいだい 4

z3=1z^{3} = 1 の解かいを求もとめよ。

解かい: 公こう式しきより

kkzkz_k
011
1cos⁡2π3+isin⁡2π3=−12+32i\cos\dfrac{2\pi}{3}+i\sin\dfrac{2\pi}{3} = -\dfrac{1}{2}+\dfrac{\sqrt{3}}{2}i
2cos⁡4π3+isin⁡4π3=−12−32i\cos\dfrac{4\pi}{3}+i\sin\dfrac{4\pi}{3} = -\dfrac{1}{2}-\dfrac{\sqrt{3}}{2}i

3 解かいが単位たんい円上えんじょうで正三しょうさん角かく形がたを作つくります。

例題れいだい 5

z4=1z^{4} = 1 の解かいを求もとめよ。

解かい: zk=cos⁡πk2+isin⁡πk2z_k = \cos\dfrac{\pi k}{2}+i\sin\dfrac{\pi k}{2} (k=0,1,2,3k=0,1,2,3)、 すなわち 1,i,−1,−i1, i, -1, -i。 単位たんい円上えんじょうで正方形せいほうけいの頂ちょう点てん。

4. 一般いっぱんの複素数ふくそすうの n 乗根じょうこん

公式こうしき

zn=wz^{n} = w (w=ρ(cos⁡ϕ+isin⁡ϕ)w = \rho(\cos\phi + i\sin\phi)、 ρ>0\rho>0) の解かいは

zk=ρ1/n(cos⁡ϕ+2πkn+isin⁡ϕ+2πkn)(k=0,1,…,n−1)z_k = \rho^{1/n}\left(\cos\frac{\phi + 2\pi k}{n} + i\sin\frac{\phi + 2\pi k}{n}\right)\quad (k=0,1,\ldots,n-1)

ちょうど nn個の解かいが、 半はん径けい ρ1/n\rho^{1/n} の円上えんじょうに等間隔とうかんかくに並ならびます。

例題れいだい 6

z3=−8iz^{3} = -8i の解かいを求もとめよ。

解かい: −8i=8(cos⁡(−π/2)+isin⁡(−π/2))-8i = 8(\cos(-\pi/2)+i\sin(-\pi/2))。 ρ=8\rho = 8, ϕ=−π/2\phi = -\pi/2, n=3n=3 で

zk=2(cos⁡−π/2+2πk3+isin⁡−π/2+2πk3)(k=0,1,2)z_k = 2\left(\cos\frac{-\pi/2 + 2\pi k}{3}+i\sin\frac{-\pi/2+2\pi k}{3}\right)\quad (k=0,1,2)

各kk で:

kk角かくzkz_k
0−π/6-\pi/62(cos⁡(−π/6)+isin⁡(−π/6))=3−i2(\cos(-\pi/6)+i\sin(-\pi/6)) = \sqrt{3} - i
1π/2\pi/22(0+i)=2i2(0 + i) = 2i
27π/67\pi/62(cos⁡(7π/6)+isin⁡(7π/6))=−3−i2(\cos(7\pi/6)+i\sin(7\pi/6)) = -\sqrt{3} - i

3 解かいが半はん径けい 2 の円上えんじょうで正三しょうさん角かく形がたを作つくります。

5. 1 の n 乗根じょうこんの性質せいしつ

1 の原始げんし n 乗根じょうこん

z=cos⁡2πn+isin⁡2πnz = \cos\dfrac{2\pi}{n} + i\sin\dfrac{2\pi}{n} (1 の原始 n 乗根1 のげんし n じょうこん) を ω\omega と書かくと、 1 の n 乗根1 の n じょうこんは 1,ω,ω2,…,ωn−11, \omega, \omega^{2}, \ldots, \omega^{n-1}。

和わの公式こうしき

z≠1z\neq 1 のとき、 等比とうひ数列すうれつの和わ公こう式しきより

1+ω+ω2+⋯+ωn−1=ωn−1ω−1=01 + \omega + \omega^{2} + \cdots + \omega^{n-1} = \frac{\omega^{n}-1}{\omega-1} = 0

つまり 1 の n 乗根1 の n じょうこんの総和そうわは 0 (n≥2n\ge 2)。 単位たんい円上えんじょうで等間隔とうかんかくなので 「重心じゅうしんが原げん点てん = 0」 という直感ちょっかんと一いっ致ち。

1 の 3 乗根じょうこんの特別とくべつな関係かんけい

ω=−12+32i\omega = -\dfrac{1}{2}+\dfrac{\sqrt{3}}{2}i とすると

1+ω+ω2=0,ω3=11 + \omega + \omega^{2} = 0,\quad \omega^{3} = 1

これは高校こうこう数学すうがく II 「整せい式しきの計けい算さん」 でよく出でてくる ω\omega で、 ド・モアブルから自し然ぜんに導みちびかれます。

6. オイラーの公式こうしきとの関係かんけい

大学だいがく数学すうがくへ

ベキ級数きゅうすう (テイラー展開テイラーてんかい) を使つかうと

eiθ=cos⁡θ+isin⁡θ(RUBY10END)e^{i\theta} = \cos\theta + i\sin\theta\quad (オイラーの公式おいらーのこうしき)

が示しめされます。 この視点してんから、 ド・モアブルの定理どもあぶるのていりは単たんに 指し数すう法ほう則そく

(eiθ)n=einθ(e^{i\theta})^{n} = e^{in\theta}

の言い換えいいかえに過すぎません。 「複ふく素そ数すうと三さん角かく関数かんすうと指し数すう関数かんすうが 1 つの言げん語ご」 で結むすばれる、 数学すうがくで最もっとも美うつくしい公式こうしきのひとつです。

神かみの公式こうしき

θ=π\theta = \pi を代入だいにゅうすると

eiπ+1=0e^{i\pi} + 1 = 0

数学すうがくで最もっとも重要じゅうような 5 つの数かず (0,1,π,e,i0, 1, \pi, e, i) がひとつの等とう式しきに集あつまります。 この 「オイラーの等とう式しき」 こそが、 高校こうこう数学すうがくで学まなんだあらゆる量りょうが 同おなじ世界せかいに住すんでいる ことの究きゅう極きょくの表あらわれです。

7. 応用おうよう — フラクタルと信号しんごう処理しょり

マンデルブロ集合しゅうごう

c∈Cc\in\mathbb{C} に対たいして、 数列すうれつz0=0,zn+1=zn2+cz_0=0, z_{n+1}=z_n^{2}+c が 発散はっさんしない cc の集しゅう合ごうを マンデルブロ集合まんでるぶろしゅうごう と呼よびます。 この集しゅう合ごうの境きょう界かいが無限むげんに細こまかいフラクタルふらくたる構造こうぞうを持もち、 ここにはド・モアブルや正せい多角たかく形けいの角度かくどが隠かくれています。

離散りさんフーリエ変換へんかん

1 の n 乗根1 の n じょうこん ω=e2πi/n\omega = e^{2\pi i/n} を使つかって表あらわされる 離散フーリエ変換りさんふーりえへんかん (DFT、 FFT) は、 音声おんせい圧あっ縮しゅく (MP3)、 画像がぞう圧あっ縮しゅく (JPEG)、 通信つうしん (4G/5G) など 現代げんだい IT の心しん臓ぞう部 で動うごいています。

8. 数学すうがく C を修おさむえて

高校こうこう数学すうがく全体ぜんたいの締しめくくり

数学すうがく C で学まなんだことは、 一言ひとことで言いえば 「2 次元じげん・3 次元じげんの図形ずけいを数かずで表あらわし、 数かずで操あやつる」 です。

内容ないよう中心ちゅうしん概念がいねん
Ch1空間くうかんベクトルべくとる、 行列ぎょうれつ、 1次変換いちじへんかん
Ch2媒介変数表示ばいかいへんすうひょうじ
Ch3極座標きょくざひょう、 極方程式きょくほうていしき
Ch4-7円錐曲線えんすいきょくせん (4 種たねを統とう一いつ言げん語ごで)
Ch8-10複素数平面ふくそすうへいめん、 極形式きょくけいしき、 ド・モアブルの定理どもあぶるのていり

大学だいがくへの橋渡はしわたし

大学だいがくで学まなぶ科目かもく数学すうがく C との接続せつぞく
線形代数せんけいだいすうCh1 ベクトル・行列ぎょうれつが直結ちょっけつ
微分積分びぶんせきぶん (多た変数へんすう)Ch2 媒ばい介かい変へん数すう・Ch3 極座標きょくざひょう
微分幾何びぶんきかCh4-7 円えん錐すい曲きょく線せん
複素関数論ふくそかんすうろんCh8-10 複素数平面ふくそすうへいめん
フーリエ解析フーリエかいせきCh10 1 の n 乗根じょうこん
量子力学りょうしりきがく全ちょん章しょう (ベクトル・複素数ふくそすう・行列ぎょうれつ)

おつかれさまでした: 数学すうがく C は 「高校こうこう数学すうがくと大学だいがく数学すうがくをつなぐ架かけ橋はし」 です。 この章しょうまで来くれば、 大学だいがくで出会であう線形代数せんけいだいすうや複素関数論ふくそかんすうろんの多おおくが 「あ、 高校こうこうで見みたことある」 と感かんじられるはずです。 数学すうがくが現代げんだい社会しゃかい (GPS、 通信つうしん、 画像がぞう処理しょり、 量子りょうし計けい算さん) を支ささえていることを体感たいかんしながら、 さらに学まなびを続つづけてください。

章しょう末まつまとめ

  • ド・モアブルの定理どもあぶるのていり: (cos⁡θ+isin⁡θ)n=cos⁡nθ+isin⁡nθ(\cos\theta + i\sin\theta)^{n} = \cos n\theta + i\sin n\theta
  • zn=wz^{n} = w の解かいは nn個、 円上えんじょうで等間隔とうかんかく (正nn角形けい)
  • 1 の n 乗根1 の n じょうこんの総和そうわは 0 (n≥2n\ge 2)
  • 倍角ばいかく公こう式しき (cos⁡2θ,sin⁡2θ,cos⁡3θ\cos 2\theta, \sin 2\theta, \cos 3\theta等) が自動的じどうてきに出でる
  • オイラーの公式おいらーのこうしき eiθ=cos⁡θ+isin⁡θe^{i\theta} = \cos\theta+i\sin\theta で大学だいがくへ
  • eiπ+1=0e^{i\pi}+1=0 — 数学すうがくの最もっとも美うつくしい等式とうしき
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