この章で学ぶこと
円・楕円・双曲線・放物線。 中学から別々に学んできたこの 4 つの曲線 は、 実は 同じ円錐 を違う角度で切るだけ で全部出てくる、 兄弟の曲線 です。 この章では 円錐曲線 (二次曲線) として 4 種を 統一的 に眺め、 第 5・6・7 章への共通言語 を整えます。
- 円錐 を切るとなぜ 4 種の曲線 が出るか
- 二次曲線 Ax2+Bxy+Cy2+⋯=0 の一般形と 4 種の判別
- 焦点・準線・離心率 という共通 の言語
- 4 つを 離心率 e で区別 する仕組み
- 円錐曲線と物理・天文の結びつき
大事: アポロニウス (古代ギリシャの数学者) は紀元前 3 世紀に 「すべての円錐曲線 は 1 個の円錐 から切り出せる」 と示しました。 その約 2000 年後、 ケプラー と ニュートン が 「惑星 の軌道 は太陽を焦点 とする 楕円」 と発見し、 純粋数学が自然法則と直接結びつくことを証明しました。
1. 円錐を切ると何が出るか
アポロニウスの 4 種
平面で円錐 (両側に無限に伸びるダブルコーン) を切る角度で、 切り口は 4 種に変化します。
| 切り方 | 切り口 |
|---|
| 軸に垂直 | 円 |
| 軸に斜め (母線 とは平行 でない) | 楕円 |
| 母線 に 平行 | 放物線 |
| 軸に斜めで 両方の円錐 を切る | 双曲線 (2 本の曲線) |
円錐曲線 = 二次曲線
切り口を xy平面 の方程式で書くと、 必ず
Ax2+Bxy+Cy2+Dx+Ey+F=0
のような 2 次式 になります。 そこで円錐曲線 = 二次曲線 とも呼ばれます。
2. 4 種の標準形
第 5〜7 章で詳しく学ぶことになる、 各曲線 の 標準形 を一覧にします。
| 曲線 | 標準形 | 特徴 |
|---|
| 円 (中心原点) | x2+y2=r2 | 1 つの 焦点 (中心) |
| 楕円 | a2x2+b2y2=1 (a>b>0) | 2 つの 焦点、 閉じた曲線 |
| 双曲線 | a2x2−b2y2=1 | 2 つの 焦点、 2 本の開いた曲線 |
| 放物線 | y2=4px または x2=4py | 1 つの 焦点 と 1 本の 準線 |
3. 焦点・準線・離心率
共通の定義
円錐曲線 はすべて、 「1 点 (焦点) と 1 直線 (準線) からの距離 の比が一定」 という共通 の性質 で定義 できます。
準線 からの距離焦点 からの距離=e (RUBY26END)
離心率で 4 種を区別
| 離心率 e | 曲線 |
|---|
| e=0 | 円 (準線 が無限遠) |
| 0<e<1 | 楕円 |
| e=1 | 放物線 |
| e>1 | 双曲線 |
例題 1
焦点 (2,0)、 準線 x=8、 離心率 e=1/2 の軌跡 を求めよ。
解: 点(x,y) とし、 (x−2)2+y2=21∣x−8∣。 両辺 2 乗し整理して
4{(x−2)2+y2}=(x−8)2
4x2−16x+16+4y2=x2−16x+64
3x2+4y2=48⇒16x2+12y2=1
e<1 なので 楕円。
4. 二次曲線の一般形と判別
一般形
xy の項を含む一般形は
Ax2+Bxy+Cy2+Dx+Ey+F=0
判別式
判別式 Δ=B2−4AC で種別がわかります。
| Δ | 円錐曲線 |
|---|
| Δ<0 | 楕円 (含む円) |
| Δ=0 | 放物線 |
| Δ>0 | 双曲線 |
例題 2
3x2−2xy+3y2−8=0 はどの円錐曲線 か。
解: Δ=(−2)2−4⋅3⋅3=4−36=−32<0 より 楕円。 (実際、 45°回転すると標準形の楕円 になります。)
5. 円錐曲線と自然 ・ 物理
ケプラーの法則と楕円軌道
ケプラー は 17 世紀に 惑星 の軌道 が 太陽 を焦点 とする 楕円 であることを発見しました。 万有引力 (ニュートン) から数学的に導出される結果 で、 軌道 の種類は物体の 力学的エネルギー で決まります。
| エネルギー | 軌道 |
|---|
| 負で大 (深い束縛) | 円 (e=0 に近い) |
| 負 (束縛 あり) | 楕円 (0<e<1) |
| 0 (脱出ぎりぎり) | 放物線 (e=1) |
| 正 (脱出) | 双曲線 (e>1) |
反射鏡・パラボラアンテナ
| 曲線 | 反射 の性質 | 用途 |
|---|
| 放物線 | 軸に平行な光が焦点 に集まる | パラボラアンテナ、 自動車ヘッドライト |
| 楕円 | 一方の焦点 から出た光がもう一方の焦点 に集まる | 結石破砕装置 (体外衝撃波) |
| 双曲線 | 一方の焦点 へ向かう光がもう一方の焦点 に反射される | カセグレン反射望遠鏡 |
6. 二次曲線の平行移動
中心が原点でない場合
中心 (放物線では頂点) を (p,q) にずらすと、 x→x−p, y→y−q と置き換えれば同じ形になります。
| 元の形 | 中心 (p,q) |
|---|
| a2x2+b2y2=1 | a2(x−p)2+b2(y−q)2=1 |
| y2=4px | (y−q)2=4p(x−p) |
例題 3
x2+4y2−2x−16y+13=0 を標準形にせよ。
解: x, y それぞれで平方完成。
x2−2x=(x−1)2−1
4(y2−4y)=4{(y−2)2−4}=4(y−2)2−16
代入して (x−1)2−1+4(y−2)2−16+13=0、 整理して
(x−1)2+4(y−2)2=4⇒4(x−1)2+(y−2)2=1
中心 (1,2)、 a=2,b=1 の 楕円。
7. 円錐曲線の系図
まとめとして、 4 種の関係を系図で。
| 出発 | 操作 | 行き先 |
|---|
| 円 (e=0) | 押しつぶす | 楕円 |
| 楕円 (0<e<1) | e→1 で 焦点 が無限へ | 放物線 |
| 放物線 (e=1) | e>1 で反対側にも出る | 双曲線 |
| 双曲線 (e>1) | e→∞ | 2 直線 (退化) |
8. 円錐曲線と数学の歴史
| 時代 | 出来事 |
|---|
| 紀元前 3 世紀 | アポロニウス が円錐曲線 を体系化 |
| 17 世紀前半 | デカルト が座標幾何 を発明、 4 曲線 が数式で表せるようになる |
| 17 世紀前半 | ケプラー が 惑星 = 楕円軌道 を発見 |
| 17 世紀後半 | ニュートン が 万有引力 から円錐曲線軌道 を数学的に導出 |
| 19 世紀 | 射影幾何 で 4 曲線 を 「同じ 1 つの図形」 として統一 |
次の章へ: 第 5 章で 楕円、 第 6 章で 双曲線、 第 7 章で 放物線 をそれぞれ詳しく学びます。 この章で学んだ 離心率・焦点・準線 の共通言語 が、 すべての章でカギになります。
章末まとめ
- 円錐 を切る角度で円・楕円・放物線・双曲線の 4 種
- 一般 2 次式Ax2+Bxy+Cy2+⋯=0、 判別式Δ=B2−4AC
- 離心率 e で 4 種を区別: e=0円、 0<e<1楕円、 e=1放物線、 e>1双曲線
- 共通言語: 焦点・準線
- 物理では 惑星軌道・反射鏡として必須