この章で学ぶこと
中学で学んだ y=ax2 は 放物線 でした。 数学 C ではこれを 「焦点 と 準線 からの距離 が等しい点の 軌跡」 という円錐曲線 の視点で捉え直します。 離心率 e=1 で、 楕円 (e<1) と双曲線 (e>1) の 境界 に立つ曲線 です。
- 放物線 の 作図定義 (焦点・準線)
- 標準形と 4 種の向き
- 放物線 の 接線
- 反射性質 とパラボラアンテナ
- 斜方投射 とのつながり
覚え方: 楕円 = 「閉じた卵形」、 双曲線 = 「開いた 2 本の弓」、 放物線 = 「無限に伸びる U 字」。 離心率 e=1 で楕円 から双曲線 への 臨界 な形で、 「お椀」 「衛星放送 アンテナ」 「投げたボールの軌道」 という私たちに最もなじみ深い円錐曲線 です。
1. 放物線の定義
作図定義
平面上の 1 定点 F (焦点) と、 これを通らない 1 直線 ℓ (準線) からの 距離 が等しい 点P の 軌跡 を 放物線 と呼びます。
PF=(P から ℓ への距離)
離心率 e=1 に相当 します。
用語
| 用語 | 意味 |
|---|
| 焦点 | 定点 F |
| 準線 | 定直線 ℓ |
| 頂点 | F と ℓ を結ぶ垂線と放物線 の交点 |
| 軸 | F を通り ℓ に垂直 な直線 |
2. 放物線の標準形
軸が x 軸、 焦点が右
焦点 F(p,0)、 準線 x=−p (p>0) のとき、 標準形は
y2=4px
4 種の向き
| 形 | 焦点 | 準線 | 向き |
|---|
| y2=4px | (p,0) | x=−p | 右 |
| y2=−4px | (−p,0) | x=p | 左 |
| x2=4py | (0,p) | y=−p | 上 |
| x2=−4py | (0,−p) | y=p | 下 |
中学の y = ax² との関係
x2=4py で 4p=1/a、 すなわち p=1/(4a)。 例えば y=x2 (a=1) なら 焦点 は (0,1/4)、 準線 は y=−1/4。
例題 1
y2=8x の 焦点 と 準線 を求めよ。
解: 4p=8 より p=2。 焦点 (2,0)、 準線 x=−2。
例題 2
焦点 (0,3)、 準線 y=−3 の放物線 を求めよ。
解: 頂点 は原点、 上向き、 p=3 より x2=12y。
3. 放物線の接線
公式
y2=4px上の点(x0,y0) における 接線 は
y0y=2p(x+x0)
x2=4py上の点(x0,y0) では
x0x=2p(y+y0)
例題 3
y2=4x上の点(1,2) における接線 を求めよ。
解: 4p=4 より p=1。 公式 2y=2(x+1)、 すなわち y=x+1。
4. 反射性質
焦点と軸の平行光線
放物線 の鏡に軸と平行な光線をあてると、 反射光は すべて 焦点 F に集まる。 逆に 焦点 から出た光は反射後に 軸と平行な平行光線 になる。
応用
| 装置 | 仕組 み |
|---|
| パラボラアンテナ (衛星放送) | 平行に来る電波を焦点 に集め、 そこに受信部を置く |
| 太陽炉 | 太陽光 (ほぼ平行) を焦点 に集中して高温を得る |
| 自動車ヘッドライト | 焦点 に電球を置き、 反射光を平行ビームにする |
| 反射望遠鏡 (ニュートン式) | 平行に来る星の光を焦点 に結像 |
| 拡声マイク (パラボラ型) | 遠くの音を焦点 に集めて集音 |
直感: 「平行光線 → 1 点集中」 は、 パラボラ形だけが持つ数学的性質 で、 球形の鏡では焦点 が場所によってずれます (球面収差)。 だから高性能望遠鏡や衛星 アンテナは必ず放物線 (または双曲線・楕円) 形を使います。
5. 物理の斜方投射との関連
投射軌道が放物線
地球表面近くで、 重力だけを受けて動く物体 (斜方投射) の軌道 は 放物線 になります。
| 量 | 式 | 説明 |
|---|
| 水平位置 | x=v0cosθ⋅t | 水平には等速 |
| 鉛直位置 | y=v0sinθ⋅t−21gt2 | 重力で加速度−g |
t を消去すると
y=(tanθ)x−2v02cos2θgx2
x2 の項があるので 放物線。 数学 C の 媒介変数表示 (Ch2) との直接的な例です。
例題 4
初速v0=20 m/s、 角度θ=45° で投射した物体が着地する距離 (水平到達距離) を求めよ。 重力加速度g=9.8 m/s2 とする。
解: 水平到達距離 R=gv02sin2θ=9.8400⋅1≈40.8 m。
6. 放物線の平行移動
頂点が原点でない場合
頂点 (p,q) の上向き放物線 は
(x−p)2=4P(y−q)
平方完成の例
y=x2−4x+7 → y=(x−2)2+3 → (x−2)2=y−3。 頂点 (2,3)、 4P=1 より P=1/4、 焦点 (2,3+1/4)、 準線 y=3−1/4。
7. 円錐曲線統一の視点
離心率で並べる
| 円錐曲線 | 離心率 e | 形 |
|---|
| 円 | 0 | 閉じた 1 周 |
| 楕円 | 0<e<1 | 閉じた楕円 |
| 放物線 | 1 | 境界、 開いた U 字 |
| 双曲線 | >1 | 開いた 2 本 |
極方程式で統一
第 3 章で学んだ 極方程式 で、 円錐曲線 は すべて
r=1+ecosθl
の形で書けます。 e の値で 4 種がすっきり並びます。 e=1 で放物線 (分母が 0 になる θ=π で r→∞、 開いている性質 が表れる)。
8. 放物線と文化
| 例 | 説明 |
|---|
| 懸垂線 との違い | つり橋のケーブルは cosh (懸垂線) で放物線 とは違うが、 重さが一様 なら放物線 (例: 主塔上で重量が板で一様 にかかる吊り橋) |
| 噴水 | 各水滴は斜方投射、 軌道 が放物線 |
| スポーツ | バスケットボールのシュート、 砲丸投げ |
| 衛星放送 | パラボラアンテナ |
| サーチライト | 放物線鏡で平行ビームを作る |
章末まとめ
- 定義: 焦点 と 準線 から等距離 (離心率 e=1)
- 標準形y2=4px、 焦点 (p,0)、 準線 x=−p
- 接線 y0y=2p(x+x0)
- 平行光線 → 焦点 の反射性質
- 斜方投射 の軌道 は放物線
- 円錐曲線 の 4 番目として 境界 に立つ曲線