この章で学ぶこと
数学 III の 最終章。 これまでの曲線は y=f(x) や f(x,y)=0 で表してきました。 この章では 2 つの新しい表現 を学びます。
- 媒介変数表示 (x(t), y(t))
- **媒介変数の **微分・積分
- 極座標 (r,θ) と xy 座標との変換
- 極方程式 r=f(θ)
- 典型曲線: サイクロイド・カージオイド・アステロイド・アルキメデスの渦巻線
ポイント: 「位置を 1 つの数ではなく、 「時間」 や 「角度と距離」 の組で表す」 という 発想の転換。 これで表現できる曲線が飛躍的に広がります。
1. 媒介変数表示
定義
曲線上の点を 第 3 の変数 t を使って、
x=x(t),y=y(t)
の形で表すことを 媒介変数表示 と呼ぶ。 t は 時間・角度 などと物理的な意味を持つことが多い。
例 1 円
x=rcost、 y=rsint は 半径 r の円。 t は 原点からの角度。
例 2 楕円
x=acost、 y=bsint は 楕円 a2x2+b2y2=1。
例 3 直線
x=1+2t、 y=3−t は 方向ベクトル (2,−1)、 点(1,3) を通る直線。
2. 媒介変数の微分
公式
x=x(t)、 y=y(t) がともに微分可能で dtdx=0 のとき、
dxdy=dx/dtdy/dt
連鎖律の応用 (見かけ上、 dt で約分)。
例 4 円の接線
x=cost、 y=sint で t=π/3 での接線の傾き:
dxdy=−sintcostt=π/3=−3/21/2=−31
第 2 階微分
dx2d2y=dxd(dxdy)=dx/dt1⋅dtd(dx/dtdy/dt)
3. サイクロイド
定義
半径 a の円が直線上を滑らずに転がるとき、 円上の 1 点が描く曲線。
x=a(t−sint),y=a(1−cost)
性質
- 1 周期で x は 2πa進む
- 最高点で y=2a
- 1 周期の 弧長 =8a (第 8 章)
- 1 周期の 面積 =3πa2 (= 円の面積の 3 倍)
応用: サイクロイドは 「最速降下曲線」 (重力だけで 2 点間を最速で結ぶ曲線)、 「等時性曲線」 (出発点によらず着く時間が同じ) として物理・数学の古典的名題。
4. 極座標
定義
平面上の点を、 原点からの距離 r と 実軸からの角度 θ で表す。
| 変換 | 公式 |
|---|
| 極 → xy | x=rcosθ、 y=rsinθ |
| xy → 極 | r=x2+y2、 tanθ=y/x |
例 5
xy 座標 (1,3) の極座標: r=2、 θ=π/3。
極座標 (r,θ)=(2,2π/3) の xy: x=2cos(2π/3)=−1、 y=2sin(2π/3)=3。
5. 極方程式
定義
曲線を r=f(θ) の形で表したものを 極方程式。
例 6 円
r=a は 原点中心・半径 a の円。 r=2acosθ は 点(a,0) を中心とし、 半径 a の円 (x2+y2=2ax と同値)。
例 7 直線
θ=π/4 は 原点を通る傾き 1 の直線。
rcos(θ−α)=d は 原点から距離 d の直線。
例 8 カージオイド
r=a(1+cosθ) は カージオイド ( ハート型)。 円が同じ大きさの円の外側を転がるとき描く曲線。
例 9 アルキメデスの渦巻線
r=aθ は アルキメデスの渦巻線。 一定の速さで動きながら一定の角速度で回転した軌跡。
6. 極座標での面積
公式
極方程式 r=f(θ) と 2 本の動径θ=α、 θ=β で囲まれる部分の面積:
S=21∫αβr2dθ=21∫αβ{f(θ)}2dθ
イメージ: 微小角dθ における 扇形の面積 は 21r2dθ (半径 r、 中心角dθ)。 それを足す。
例 10 カージオイドの面積
r=a(1+cosθ) の全体の面積 (0≤θ≤2π):
S=21∫02πa2(1+cosθ)2dθ=2a2∫02π(1+2cosθ+21+cos2θ)dθ=23πa2
7. その他の典型曲線
アステロイド
x=acos3t、 y=asin3t。 「4 つの尖点 をもつ星型」。 同値な陰関数表現は x2/3+y2/3=a2/3。
| 量 | 値 |
|---|
| 弧長 | 6a |
| 面積 | 83πa2 |
レムニスケート
r2=a2cos2θ。 ∞ (横 8 の字) の形。
楕円 (極方程式版)
太陽を焦点とする惑星の軌道は、
r=1+ecosθℓ(0≤e<1)
の形。 e は 離心率。 これが ケプラーの法則 の数式表現です。
8. 数学 III 全体の振り返り
| 章 | 中心テーマ |
|---|
| 1 | 数列の極限 |
| 2 | 関数の極限と連続 |
| 3 | 微分の基本公式 |
| 4 | 三角・指数・対数の微分 |
| 5 | 微分の応用 (グラフ・最大最小) |
| 6 | 積分の基本計算 |
| 7 | 面積・体積 |
| 8 | 弧長・物理量 |
| 9 | 複素数平面 |
| 10 | 媒介変数・極座標 |
全体を貫く思想: 「変化 (微分) と 累積 (積分)」、 「極限のあつかい」、 「平面と数の統一 (複素数)」、 「様々な表現 で曲線を捉え直す」。 この 4 つが 大学数学・物理・工学の共通言語 です。
次へ: 大学へ進む人は 微分方程式、 多変数解析、 ベクトル解析、 線形代数 などへ。 いずれも数学 III が 基礎中の基礎。 ここまで来れたことを自信に、 次のステージへ。
まとめ — 媒介変数表示・極座標を 3 行で
- 媒介変数表示 (x(t),y(t)) では時間など第 3 の変数で曲線を記述し、 サイクロイド・アステロイドなど y=f(x) で書けない曲線も扱える
- 極座標 (r,θ) と直交座標は x=rcosθ、 y=rsinθ で変換され、 極方程式r=f(θ) でカージオイド等の対称的曲線が簡潔に表せる
- 媒介変数表示の微分は dxdy=dx/dtdy/dt、 積分による面積・弧長は典型曲線の応用問題で頻出である