この章で学ぶこと
数学 III の 入り口 となる章です。 数学 B で学んだ数列の一般項を、 「項数 n を限りなく大きくすると、 an はどこに近づくか」 という視点で見直します。 これが 極限 です。
- 数列の 収束 と 発散 の区別
- limn→∞an=α の意味
- はさみうち の原理の使い方
- 無限等比数列 {rn} が収束する条件
- 無限級数ととくに 無限等比級数 の和
- 循環小数を分数で表す応用
ポイント: 「n をいくらでも大きくする」 という 無限 のあつかいが、 数学 III 全体の共通言語になります。 ここを早めに体に入れると、 関数の極限 (第 2 章) と微分・積分 (第 3 章以降) が一気に楽になります。
1. 数列の極限とは
直感から出発
数列 an=n1 を並べると、
1, 21, 31, 41, 51, …
となります。 n を大きくするほど値は 0 にいくらでも近づきます。 このことを、
limn→∞n1=0
と書き、 「数列{an} は 0 に収束する」 と言います。
収束と発散の 4 分類
| 振舞い | 例 | 表記 |
|---|
| 収束 (α に近づく) | n1→0 | liman=α |
| 正の無限大に発散 | an=n | liman=+∞ |
| 負の無限大に発散 | an=−n2 | liman=−∞ |
| 振動 (どこにも近づかない) | an=(−1)n | 極限なし |
大事: 「発散」 と 「振動」 は違います。 an=(−1)n は 1,−1,1,−1,… と振動するだけで、 ±∞ には行きません。 この場合は 「極限は存在しない」 と言います。
形式的な定義 (高校レベル)
数列{an} が α に収束するとは、 「n を十分大きくすれば、 an と α の差をいくらでも小さくできる」 ことです。 厳密な ε-N論法は大学で学びますが、 高校ではこの 直感的定義 で十分です。
2. 極限の性質 (基本公式)
数列{an}, {bn} がそれぞれ α, β に収束するなら、 次が成り立ちます。
| 公式 | 内容 |
|---|
| 定数倍 | limkan=kα (k は定数) |
| 和 | lim(an+bn)=α+β |
| 差 | lim(an−bn)=α−β |
| 積 | limanbn=αβ |
| 商 | limbnan=βα (β=0) |
注意: 「収束する同士」 であって初めて使えます。 片方が発散すると別途考える必要があります。
例 1 分数式の極限
limn→∞n2−n+42n2+3n+1
手順: 分母の最高次n2 で分子・分母を割る。
=limn→∞1−n1+n242+n3+n21=1−0+02+0+0=2
コツ: 「最高次で割る」 が分数式の鉄則です。 分子の次数が大きければ ±∞、 小さければ 0 になります。
例 2 ルートを含む極限
limn→∞(n2+n−n)
有理化します。
=limn2+n+n(n2+n−n)(n2+n+n)=limn2+n+nn=lim1+n1+11=21
3. はさみうちの原理
定義
すべての n で bn≤an≤cn で、 limbn=limcn=α ならば、
limn→∞an=α
イメージ: 「両側から 同じ値にはさむ」 と、 真ん中もそこに行かざるを得ない。
例 3 三角関数を含む極限
limn→∞nsinn
−1≤sinn≤1 なので、 −n1≤nsinn≤n1。 両端が 0 に収束するので、
limn→∞nsinn=0
使いどころ: 直接計算できないとき、 まず 「絶対値で上からおさえる」 を考えましょう。
4. 無限等比数列{rn}
公比 r の等比数列 an=rn の極限は 4 通り に場合分けできます。
| r の範囲 | 振舞い | limrn |
|---|
| r>1 | 正の無限大に発散 | +∞ |
| r=1 | 常に 1 | 1 |
| −1<r<1 | 0 に収束 | 0 |
| r≤−1 | 振動 (極限なし) | なし |
収束条件をまとめると
{rn} が 収束する⟺−1<r≤1
例 4 場合分けで解く
n→∞lim1+rnrn+1 を r で場合分けせよ。
- ∣r∣<1 のとき rn→0 なので、 値は 1+00=0。
- r=1 のとき 1+11=21。
- r>1 のとき分子・分母を rn で割って r−n+1r→0+1r=r。
- r≤−1 のとき振動し極限なし。
必修: 「r の範囲によって結果が変わる」 タイプは入試頻出。 表を暗記せず、 上の 4 分類から 自分で場合分けできる ように。
5. 無限級数
定義
数列 {an} のすべての項を加えたものを 無限級数 と言い、
∑n=1∞an=a1+a2+a3+⋯
と書きます。 第n項までの和を 部分和 Sn=a1+a2+⋯+an とし、
limn→∞Sn=S(有限 な 値)
のとき級数は 収束して和S をもつ、 と言います。
大事: 級数の収束とは 「部分和の数列の収束」 です。 元の an が 0 に行くだけでは不足 (例: 調和級数 ∑n1 は発散)。
無限等比級数
初項 a、 公比 r の無限等比級数:
a+ar+ar2+ar3+⋯
| 条件 | 結果 |
|---|
| ∣r∣<1 | 収束して和1−ra |
| ∣r∣≥1 (a=0) | 発散 |
例 5 循環小数を分数に
0.3˙=0.333… を分数で表す。
0.3˙=0.3+0.03+0.003+⋯=1−0.10.3=0.90.3=31
発展: 0.1˙2˙=0.1212⋯=1−0.010.12=9912=334。 循環小数が すべて分数で表せる ことの数学的な根拠が無限等比級数です。
6. 章末まとめ
| 概念 | キーポイント |
|---|
| 極限 | 「n→∞ でどこに行くか」 |
| はさみうち | 「上と下で同じ値にはさめば真ん中もそこ」 |
| rn | 4 通り場合分け、 収束条件 −1<r≤1 |
| 無限級数 | 部分和の極限 |
| 無限等比級数 | ∣r∣<1 で和1−ra |
次の章へ: 第 2 章では n (整数) ではなく x (実数) での極限を扱い、 連続性を学びます。 ここまでの 「はさみうち」 「最高次で割る」 「有理化」 はそのまま使えます。