この章で学ぶこと
第 3・4 章で 微分 の計算 をそろえました。 この章ではそれを 「関数 を調べる道具」 として使います。
- f′(x) で 関数 の増減・極値
- f′′(x) で 凹凸・変曲点
- グラフ の概形 を 増減表 で描く
- 最大値 と 最小値 の求め方
- 速度 と 加速度 (物理的解釈)
- 平均値の定理 とその応用
ポイント: 「f′>0 なら 単調増加」 「f′′>0 なら 下に凸」 は 数学 III で最も頻出 の武器。 ここで練習 を積むと、 物理・経済・統計 など大学での応用 に直結 します。
1. 関数の増減
基本
f が区間 で微分可能 なとき、
| 条件 | 結論 |
|---|
| f′(x)>0 | f はその区間 で 単調増加 |
| f′(x)<0 | f はその区間 で 単調減少 |
| f′(x)=0 | 増減 が変わる 候補点 |
例 1 増減表
f(x)=x3−3x。 f′(x)=3x2−3=3(x−1)(x+1)。
| x | … | −1 | … | 1 | … |
|---|
| f′(x) | + | 0 | − | 0 | + |
| f(x) | 増 | 極大2 | 減 | 極小−2 | 増 |
大事: 増減表 は 数学 III の答案 の必須部品。 「f′ の符号」 「極値」 「最終値」 を 1 枚の表に集約 することで採点者に 論理 が通る。
2. 極値と第 2 階導関数
極値の判定 (第 1 階)
f′(a)=0 で
- f′ が a の前後で +→− なら 極大
- f′ が a の前後で −→+ なら 極小
- 符号 が変わらなければ 極値 ではない
第 2 階導関数による判定
f′(a)=0 かつ
- f′′(a)>0 なら 極小 (下に凸)
- f′′(a)<0 なら 極大 (上に凸)
- f′′(a)=0 なら 不明 (別途調査)
例 2 第 2 階で判定
f(x)=xe−x。 f′(x)=(1−x)e−x、 f′(x)=0⇒x=1。 f′′(x)=(x−2)e−x、 f′′(1)=−e−1<0。 よって x=1 で極大 f(1)=1/e。
3. 凹凸と変曲点
第 2 階導関数と凹凸
| 条件 | 凹凸 |
|---|
| f′′(x)>0 | 下に凸 (carrol おわん型) |
| f′′(x)<0 | 上に凸 (山型) |
| f′′(x)=0 で符号 が変わる | 変曲点 |
イメージ: 下に凸 な区間 では 接線 がグラフの下 に、 上に凸 な区間 では 接線 がグラフの上 にある。
例 3 凹凸表
f(x)=x3−3x2。 f′(x)=3x2−6x=3x(x−2)、 f′′(x)=6x−6。
| x | … | 0 | … | 1 | … | 2 | … |
|---|
| f′ | + | 0 | − | − | − | 0 | + |
| f′′ | − | − | − | 0 | + | + | + |
| f | 増・上凸 | 極大 | 減・上凸 | 変曲 | 減・下凸 | 極小 | 増・下凸 |
極大 f(0)=0、 極小 f(2)=−4、 変曲点 (1,−2)。
答案 のコツ: f′ と f′′ の 両方の符号表 をつくると、 増減・凹凸・極値・変曲点 が 同時に わかる。
4. グラフの概形
描画 5 ステップ
- 定義域 を確認 (とくに分母・ルート・log)
- 切片 (x 切片、 y 切片) を求める
- 漸近線 を調べる (端の極限)
- f′、 f′′ の符号表
- 上を総合 して 概形 を描く
例 4 分数関数の概形
y=x2+1x。
- 定義域: 全実数、 奇関数
- x→±∞ で y→0 → 水平 漸近線 y=0
- y′=(x2+1)21−x2、 y′=0⇒x=±1
- x=−1 で 極小 −1/2、 x=1 で 極大 1/2
発展: この関数 は ローレンツ 型 と呼ばれ、 物理・統計 で頻出。
5. 最大値・最小値
閉区間での最大最小
連続 な f の 閉区間 [a,b] での最大・最小 は、 次の 候補点の中 から選ぶ:
- 区間内の 極値 (f′(x)=0 の点)
- 端点 f(a)、 f(b)
- f が微分不可能な点 (絶対値など)
例 5 実用問題
底半径 r、 高さ h の直円柱の 体積 が V=πr2h=1 で一定 のとき、 表面積 を最小 にする r を求めよ。
表面積 は S=2πr2+2πrh。 h=πr21 を代入 して、
S(r)=2πr2+r2
S′(r)=4πr−r22=0⇒r3=2π1⇒r=32π1。
S′′(r)>0 なので確かに 最小。
応用 の鉄則: 「変数 が 2 つ出てきたら、 拘束条件 で 1 つに減らす」。 ここでは V=1 で h を r で表した。
6. 速度と加速度
位置 x(t) の 時間微分:
| 量 | 表現 |
|---|
| 速度 | v(t)=dtdx |
| 加速度 | a(t)=dtdv=dt2d2x |
物理 との接続: 加速度 が速度 の微分、 速度 が位置 の微分。 物理 の 運動方程式 F=ma はこの 数学 III の第 2 階導関数 で書かれています。
例 6 単振動
x(t)=Asin(ωt) の速度 と 加速度:
v(t)=Aωcos(ωt),a(t)=−Aω2sin(ωt)=−ω2x(t)
「加速度 が 位置 に比例 し、 向きが逆」 が 単振動 の定義 そのもの。
7. 平均値の定理
定理
f が [a,b] で連続、 (a,b) で微分可能 なら、
b−af(b)−f(a)=f′(c)となる c∈(a,b) が存在 する
直感: 「平均変化率と 等しい瞬間変化率 が必ずどこかにある」。 高速道路で 平均時速 100 km/h なら、 どこかで 瞬間 100 km/h を出している。
応用不等式の証明
0<a<b のとき bb−a<logb−loga<ab−a を示す。
f(x)=logx に 平均値の定理: ある c (a<c<b) で b−alogb−loga=c1。 a<c<b より b1<c1<a1 なので、
bb−a<logb−loga<ab−a
8. 章末まとめ
| 道具 | 何がわかる |
|---|
| f′(x) | 増減 と 極値 |
| f′′(x) | 凹凸 と 変曲点 |
| 増減表 | 上 2 つを統合 |
| 端点 + 極値 | 最大・最小 |
| 第 2 階微分 | 加速度 (物理) |
| 平均値の定理 | 不等式証明 |
次の章へ: ここでの 微分 の逆操作 が 積分。 第 6 章で不定 積分 と 置換積分・部分積分 を学びます。