この章で学ぶこと
高校数学I の出発点です。 中学で学んだ 「文字式」 「平方根」 を高校では 実数 と 整式 という形で整理しなおします。 ここでの計算力が、 第 4 章以降の 二次関数 や第 6 章の 三角比 の土台になります。
- 実数 の分類を理解する (自然数・整数・有理数・無理数)
- 整式 の加法・減法・乗法を自由に計算できる
- 展開 の公式を使いこなす
- 因数分解 のパターンを見ぬく
- 絶対値 と 平方根 を正しく扱う
ポイント: 中学との一番の違いは 「文字式を 1 つの数として自在に動かす」 ことです。 (x+2)(x−3) を一瞬で x2−x−6 に直せるようになるのが、 この章のゴール。
1. 実数の分類
数の仲間を整理する
中学で出会った数を、 高校では 実数 という大きなくくりでとらえなおします。
| 名前 | 意味 | 例 |
|---|
| 自然数 | 1, 2, 3, ... の正の 整数 | 1, 5, 100 |
| 整数 | 自然数と 0 と負の整数 | −3,0,7 |
| 有理数 | 分数で表せる数 | 21,−43,0.25 |
| 無理数 | 分数で表せない数 | 2,π,e |
| 実数 | 有理数と無理数をあわせたもの | 上の全部 |
有理数と無理数の見分け方
| 性質 | 有理数 | 無理数 |
|---|
| 小数表示 | 有限小数か 循環小数 | 無限に続き循環しない |
| 例 | 31=0.333... | 2=1.41421356... |
| 分数化 | 必ずできる | できない |
大事: 4=2 は有理数です。 「ルートがついているから無理数」 とは限りません。 中身が 平方数 かどうかを必ず確認しましょう。
数直線上のイメージ
| 区間表記 | 意味 | 例 |
|---|
| a≤x≤b | a以上b以下 | 0≤x≤3 |
| a<x<b | a より大きく b より小さい | −1<x<2 |
| a≤x<b | a以上b未満 | 0≤x<5 |
2. 整式の計算
用語の確認
文字を含む式で、 加法・減法・乗法だけでできているものを 整式 といいます。
| 用語 | 意味 | 例 |
|---|
| 項 | 整式を + でつないだひとまとまり | 3x2, −5x, 7 |
| 係数 | 文字にかかっている数 | 3x2 の係数は 3 |
| 次数 | 文字がかけられている個数 | 3x2 の次数は 2 |
| 定数項 | 文字を含まない項 | 3x2−5x+7 の 7 |
整式の加減
同類項 (文字部分が同じ項) をまとめます。
例:
(3x2−2x+1)+(x2+5x−4)=4x2+3x−3
整式の乗法
分配法則 を使い、 すべての項をかけ合わせます。
例:
(x+2)(x2−3x+1)=x3−3x2+x+2x2−6x+2=x3−x2−5x+2
ポイント: 計算ミスを防ぐコツは、 同類項を縦にそろえて書く こと。 高校では 4 次・5 次の整式も出てくるので、 早いうちに整理する習慣をつけましょう。
3. 展開の公式
中学で学んだ (a+b)2=a2+2ab+b2 を拡張します。
必須の 展開公式
(a+b)2=a2+2ab+b2
(a−b)2=a2−2ab+b2
(a+b)(a−b)=a2−b2
(x+a)(x+b)=x2+(a+b)x+ab
(ax+b)(cx+d)=acx2+(ad+bc)x+bd
3 数の平方
(a+b+c)2=a2+b2+c2+2ab+2bc+2ca
3 乗の公式
(a+b)3=a3+3a2b+3ab2+b3
(a−b)3=a3−3a2b+3ab2−b3
例題
(2x−3)2 を展開せよ。
(2x−3)2=(2x)2−2⋅2x⋅3+32=4x2−12x+9
大事: 公式の a,b には どんな式でも入れられます。 (2x+3)2 なら a=2x, b=3 と見て当てはめます。
4. 因数分解
展開 の逆操作が 因数分解 です。 「式をいくつかの積に直す」 と覚えましょう。
共通因数をくくり出す
6x2+9x=3x(2x+3)
公式利用
x2+2ax+a2=(x+a)2
x2−a2=(x+a)(x−a)
x2+(a+b)x+ab=(x+a)(x+b)
たすき掛け
ax2+bx+c の因数分解で、 係数が 1 でない場合に使います。
例: 2x2+7x+3 を因数分解する。
| | → かけ算 |
|---|
| 2x | 1 | 2x |
| 1x | 3 | 6x |
たすき掛けの和が 2x+6x=8x では合わないので並べ替え。
| | → かけ算 |
|---|
| 2x | 1 | 1x |
| 1x | 3 | 6x |
和=1x+6x=7x で一致。 よって
2x2+7x+3=(2x+1)(x+3)
ポイント: たすき掛けは慣れるまで試行錯誤が必要です。 まず a=2,c=3 の約数の組を全パターン書き出し、 和が b=7 になるものをさがす流れで練習しましょう。
5. 絶対値
数直線上で 0 からの距離 を表すのが 絶対値 です。
∣a∣={a−a(a≥0)(a<0)
例
| 式 | 値 |
|---|
| ∣3∣ | 3 |
| ∣−5∣ | 5 |
| ∣0∣ | 0 |
| ∣2−7∣ | ∣−5∣=5 |
文字を含む場合の場合分け
∣x−2∣ を簡単にせよ。
| 範囲 | x−2 の符号 | ∣x−2∣ |
|---|
| x≥2 | + または 0 | x−2 |
| x<2 | − | −(x−2)=2−x |
大事: 絶対値は 「マイナスをプラスにする装置」 とイメージするとわかりやすい。 第 3 章の 絶対値 を含む 不等式 でこの場合分けを多用します。
6. 平方根の計算
基本性質
a2=∣a∣,(a)2=a(a≥0)
a⋅b=ab(a,b≥0)
ba=ba(a≥0,b>0)
分母の有理化
21=22
3+11=(3+1)(3−1)3−1=23−1
二重根号
a+b+2ab=a+b(a≥b≥0)
例: 5+26 を簡単にせよ。
5=2+3, 6=2⋅3 より
5+26=2+3
ポイント: 分母に根号がある形は 必ず 有理化 して答えます。 高校数学のマナーです。
まとめ
- 実数 は 有理数 (有限小数か 循環小数) と 無理数 (循環しない無限小数) に分かれる
- 整式 の計算は 同類項 をまとめるのが基本
- 展開 は公式で一気に、 因数分解 は 「逆を想像する」
- 絶対値 は場合分けではずす
- 平方根 は必ず 有理化 して答える
次章では 「集合 と 命題」 を学び、 数学的な議論のしかたを整理します。