この章で学ぶこと
中学では 「正しいかどうか」 を直感的に判断してきましたが、 高校では 論理 の言葉できちんと議論します。 ここが数学の 「証明」 の入口です。
- 集合 の表し方と演算 (共通部分・和集合・補集合)
- ド・モルガンの法則
- 命題 とは何か、 真偽を判定する
- 逆・裏・対偶 の関係
- 必要条件・十分条件・必要十分条件
ポイント: 「x=2 なら x2=4」 は正しいけれど、 「x2=4 なら x=2」 は正しくない (x=−2 もある)。 こういう 「逆が成り立つか」 を正確に判定する力をつけます。
1. 集合の基本
集合と要素
集合 とは 「ある条件を満たすものの集まり」 です。 集合をつくるひとつひとつを 要素 といいます。
| 記号 | 読み | 意味 |
|---|
| a∈A | a は A の要素 | a が A に属する |
| a∈/A | a は A の要素でない | a が A に属さない |
集合の表し方
| 表し方 | 例 |
|---|
| 要素列挙法 | A={1,2,3,4,5} |
| 条件提示法 | B={x∣x は 10 以下の自然数} |
部分集合
A のすべての要素が B に属すとき、 A は B の 部分集合 といい、
A⊂B
と書きます。
大事: A=B とは 「A⊂B かつ B⊂A」 のこと。 等しい ことの証明では両向きを示します。
2. 集合の演算
共通部分・和集合・補集合
| 記号 | 名前 | 意味 |
|---|
| A∩B | 共通部分 | A と B のどちらにも属する |
| A∪B | 和集合 | A か B の少なくとも一方に属する |
| A | 補集合 | 全体集合 U の中で A に属さない |
| ∅ | 空集合 | 要素がひとつもない |
具体例
U={1,2,3,4,5,6,7,8,9,10}, A={2,4,6,8}, B={1,2,3,4} のとき
| 演算 | 結果 |
|---|
| A∩B | {2,4} |
| A∪B | {1,2,3,4,6,8} |
| A | {1,3,5,7,9,10} |
| A∩B | {6,8} |
ド・モルガンの法則
A∩B=A∪B
A∪B=A∩B
ポイント: 「∩ と ∪ が入れかわって、 個別にバーがつく」 と覚える。 集合だけでなく命題 (and/or/not) でも同じ形が成り立ちます。
3. 命題と条件
命題とは
命題 とは 「真か偽かが判定できる文」 です。
| 文 | 命題か | 真偽 |
|---|
| 「2+3=5」 | 命題 | 真 |
| 「1+1=3」 | 命題 | 偽 |
| 「x>0」 | (条件) | x による |
| 「明日は雨」 | 命題でない | (主観) |
条件と命題 「p⇒q」
x などの変数を含む文を 条件 といい、 「p ならば q」 を p⇒q と書きます。 これもひとつの命題です。
例: p:「x=2」, q:「x2=4」 のとき、 p⇒q は 真。
反例
命題が 偽 であることを示すには 反例 を 1 つ挙げればよい。
例: 「x2=4 ならば x=2」 は偽。 反例は x=−2。
大事: 真を示すには すべての場合で成り立つこと を述べる、 偽を示すには 反例を 1 つ 出す。 この非対称性が高校数学の鉄則。
4. 否定とド・モルガン
否定
条件p の 否定 を p と書きます。
| p | p |
|---|
| x=2 | x=2 |
| x>3 | x≤3 |
| すべての x で p | ある x で p |
| ある x で p | すべての x で p |
「かつ」 と 「または」 の否定
p かつ q=p または q
p または q=p かつ q
ポイント: 「すべて」 の否定は 「ある」、 「ある」 の否定は 「すべて」。 「かつ」 と 「または」 は否定で入れかわる。 第 3 章以降の不等式の否定でも必須です。
5. 逆・裏・対偶
命題 「p⇒q」 に対して、
| 名前 | 形 |
|---|
| 元の命題 | p⇒q |
| 逆 | q⇒p |
| 裏 | p⇒q |
| 対偶 | q⇒p |
真偽の関係
- 元の命題と 対偶 の真偽は必ず一致する
- 元の命題と逆・裏の真偽は一致するとは限らない
例: 元: 「x=2⇒x2=4」 (真)
| 名前 | 命題 | 真偽 |
|---|
| 逆 | x2=4⇒x=2 | 偽 (x=−2 が反例) |
| 裏 | x=2⇒x2=4 | 偽 (x=−2 が反例) |
| 対偶 | x2=4⇒x=2 | 真 |
大事: 直接証明がむずかしい命題は、 対偶を証明する ことで元の命題を示せます (対偶法)。
6. 必要条件・十分条件
「p⇒q」 が真のとき:
| 立場 | 名前 |
|---|
| p から見ると | p は q であるための 十分条件 |
| q から見ると | q は p であるための 必要条件 |
必要十分条件
p⇒q も q⇒p も真のとき、 p と q は 必要十分条件 といい、
p⇔q
と書きます (p は q と同値)。
例題
p:「x=2」, q:「x2=4」 のとき
- p⇒q: 真 (代入すれば 4=4)
- q⇒p: 偽 (x=−2)
よって p は q であるための 十分条件 だが 必要条件 ではない。
覚え方のコツ
「矢の出発が十分、 矢の到着が必要」。 p⇒q なら p が 十分 (出発)、 q が 必要 (到着)。
ポイント: 試験でよく出るのが 「p は q の何条件か」 の 4 択。 p⇒q と q⇒p の両方を確認して必要 / 十分 / 必要十分 / どちらでもないのどれかを答えます。
まとめ
- 集合 の演算は ∩,∪, の 3 つ。 ド・モルガンの法則 が万能
- 真は全場合で、 偽は 反例 1 つ で示す
- 元の命題と 対偶 の真偽は一致
- 「p⇒q」 が真なら p は十分、 q は必要
次章では第 1 章で学んだ計算力とこの章の場合分けを使って 一次不等式・二次不等式 を解きます。