この章で学ぶこと
第 6 章で学んだ 三角比 を 直角でない三角形 にも適用する武器が 正弦定理 と 余弦定理 です。 これで 「3 つの情報から三角形を完全に決める」 ことができます。
- 正弦定理 sinAa=2R の形と使い方
- 余弦定理 a2=b2+c2−2bccosA
- 三角形の 決定条件 (1 角 2 辺など)
- どっちを使うかの判断基準
- 角の大きさの判定 (cos の符号)
ポイント: 「角と対辺のセット」 が 2 組そろうなら 正弦定理、 「3 辺」 か 「2 辺と挟む角」 なら 余弦定理。 これだけ押さえれば 9 割解けます。
1. 三角形の表記
標準表記
△ABC で:
- 頂点を A,B,C (大文字)
- 各頂点に 対する辺 を a,b,c (小文字、 対面)
- 各頂点の内角も A,B,C で表す (兼用)
| 角 | 対辺 |
|---|
| A | a=BC |
| B | b=CA |
| C | c=AB |
大事: 「角A の対辺が a」 という約束がこの章の全公式を読む鍵。 必ず図を描いて確認。
2. 正弦定理
公式
△ABC の 外接円 の半径を R とすると
sinAa=sinBb=sinCc=2R
意味
「辺a ÷ 対角A の sin = 一定 (= 直径2R)」。 三角形のどの辺を取っても同じ比になる、 という強力な関係。
使いどころ
| 与えられた情報 | 使えるか | 求まるもの |
|---|
| 1 角 + 対辺 | 2R が求まる | 他の辺・角 |
| 2 角 + 1 辺 | 残りの角がわかれば全部 | 残りの辺 |
例題
△ABC で a=6, A=30° のとき、 外接円 の半径R を求めよ。
2R=sinAa=sin30°6=1/26=12
R=6
例題 2
A=45°, B=60°, a=4 のとき b を求めよ。
sinAa=sinBb
b=sinAasinB=sin45°4⋅sin60°=224⋅23=243=26
ポイント: 「角と対辺をペアで見る」。 sinA と a, sinB と b がセットになって等しいことを確認。
3. 余弦定理
公式
a2=b2+c2−2bccosA
b2=c2+a2−2cacosB
c2=a2+b2−2abcosC
意味
「ある辺の平方 = 他の 2 辺の平方和 − 2 × 2 辺の積 × 挟む角の cos」。 中学の 三平方の定理 a2=b2+c2 (A=90° のとき cosA=0 で一致) の一般化です。
変形 (角を求める)
cosA=2bcb2+c2−a2
cosB=2cac2+a2−b2
cosC=2aba2+b2−c2
使いどころ
| 与えられた情報 | 使えるか |
|---|
| 2 辺 + 挟む角 | そのまま残りの辺を求める |
| 3 辺 | 変形で角を求める |
例題
△ABC で b=3, c=5, A=60° のとき a を求めよ。
a2=32+52−2⋅3⋅5⋅cos60°=9+25−30⋅21=19
a=19
例題 2
a=7,b=5,c=3 のとき A を求めよ。
cosA=2⋅5⋅352+32−72=3025+9−49=30−15=−21
A=120°
大事: 「3 辺がわかったら cos で角が出る」。 cos の 符号 で鋭角 / 直角 / 鈍角が即判断できます。
4. 角の大きさの判定
余弦定理 の変形から、 三角形の最大の角 (θ) と最大の辺 (x) の関係:
| cosθ の符号 | b2+c2 と a2 | θ の種類 |
|---|
| cosθ>0 | b2+c2>a2 | 鋭角 |
| cosθ=0 | b2+c2=a2 | 直角 (三平方の定理) |
| cosθ<0 | b2+c2<a2 | 鈍角 |
例題
3 辺が 5,7,8 の三角形は鋭角・直角・鈍角のどれか。
最大の辺8 に対応する角を θ とすると
cosθ=2⋅5⋅752+72−82=7025+49−64=7010=71>0
よって鋭角 (= 三角形全体が鋭角三角形)。
ポイント: 三角形の鋭角 / 鈍角を判定するときは 最大の辺 に対応する角だけ調べれば十分。 そこが鋭角なら残りも鋭角。
5. 正弦定理と余弦定理の使い分け
三角形の決定条件
| 与えられた情報 | 使う定理 |
|---|
| 3 辺 (SSS) | 余弦定理 で角を求める |
| 2 辺 + 挟む角 (SAS) | 余弦定理 で残りの辺、 正弦定理 で角 |
| 1 辺 + 両端の 2 角 (ASA) | A+B+C=180° で残りの角、 正弦定理 で残りの辺 |
| 2 辺 + 対角 (SSA) | 正弦定理 で角、 ただし解が 2 つある場合あり |
例題: SSA で解が 2 つ
a=4,b=6,A=30° のとき B を求めよ。
sin30°4=sinB6
sinB=46sin30°=46⋅1/2=43
B は 0°<B<150° (A+B<180°) の範囲で 2 つの候補:
B=arcsin43 または 180°−arcsin43
両方とも A+B<180° を満たすので 2 通りの三角形 がある。
大事: SSA は 「曖昧なケース」。 解が 0 個・1 個・2 個と場合があるので必ず範囲を確認。
6. 例題 (総合)
例: △ABC で a=7,b=8,c=5 のとき、 (1) cosA、 (2) sinA、 (3) 外接円 の半径R を求めよ。
(1) 余弦定理:
cosA=2⋅8⋅582+52−72=8064+25−49=8040=21
(2) A は三角形の内角なので sinA>0:
sinA=1−cos2A=1−41=23
(A=60° とわかる)
(3) 正弦定理:
2R=sinAa=3/27=314=3143
R=373
ポイント: 余弦定理 で cos を出し → sin を計算 → 正弦定理 で R。 この 3 連コンボは入試頻出。
まとめ
- 正弦定理 は 角と対辺のペア が主役、 2R を経由
- 余弦定理 は 3 辺と 1 角 の関係、 三平方の定理 の一般化
- 3 辺 → 余弦定理 で角、 2 辺 + 挟角 → 余弦定理 で辺
- cos の 符号 で鋭角 / 直角 / 鈍角を一発判定
- SSA は 解が 0/1/2 個 になり得る注意ケース
次章ではこれらの定理を使って 三角形の面積と ヘロンの公式、 空間図形 の計量を行います。