この章で学ぶこと
中学で学んだ 「直角三角形の辺の比」 を高校では 三角比 という名で体系化し、 さらに 鈍角 まで拡張 します。 第 7 章の 正弦定理・余弦定理、 第 8 章の 図形 計量 の土台。
- sinθ,cosθ,tanθ の定義 (鋭角)
- 特殊角 30°,45°,60° の値
- 0°≤θ≤180° への拡張 (単位円を使う)
- 三角比の 相互関係
- 三角比を含む式の計算
ポイント: sin,cos,tan は 記号を怖がらない こと。 「ある角に対する辺の比」 と思えば、 普通の数と同じように計算できます。
1. 直角三角形と三角比
鋭角θ (0°<θ<90°) の三角比
直角三角形で ∠C=90°、 ∠A=θ とすると:
| 名前 | 記号 | 比 |
|---|
| 正弦 (サイン) | sinθ | 斜辺対辺=ca |
| 余弦 (コサイン) | cosθ | 斜辺隣辺=cb |
| 正接 (タンジェント) | tanθ | 隣辺対辺=ba |
ここで 「対辺」 = 角θ の向かい側の辺、 「隣辺」 = 角θ に接する (斜辺でない) 辺。
覚え方のコツ
筆記体の s, c, t の形をなぞると比が出る。
- s → 「対辺 / 斜辺」 (sin)
- c → 「隣辺 / 斜辺」 (cos)
- t → 「対辺 / 隣辺」 (tan)
大事: 「斜辺が分母か分子か」 を必ず確認。 サイン と コサイン は 斜辺が分母、 タンジェント は 斜辺を使わない。
2. 特殊角の値
30°,45°,60°
| θ | sinθ | cosθ | tanθ |
|---|
| 30° | 21 | 23 | 31 |
| 45° | 22 | 22 | 1 |
| 60° | 23 | 21 | 3 |
出所の三角形
- 45°: 直角二等辺三角形 (辺比1:1:2)
- 30°,60°: 正三角形を半分に切った三角形 (辺比1:3:2)
0° と 90°
| θ | sinθ | cosθ | tanθ |
|---|
| 0° | 0 | 1 | 0 |
| 90° | 1 | 0 | (定義不能) |
ポイント: tan90° は 「分母が 0」 になるため 定義できない。 試験でよく引っかかるポイント。
3. 三角比の拡張
単位円を使う
0° から 180° までの角に三角比を拡張するには、 半径r=1 の 単位円 を使います。
座標平面で原点O を中心に、 x軸から反時計回りに θ だけ回した半直線上に r=1 の点P(x,y) をとると
| 三角比 | 定義 |
|---|
| sinθ | y |
| cosθ | x |
| tanθ | xy (x=0) |
鈍角 (90°<θ<180°) での値
| θ | sinθ | cosθ | tanθ |
|---|
| 120° | 23 | −21 | −3 |
| 135° | 22 | −22 | −1 |
| 150° | 21 | −23 | −31 |
| 180° | 0 | −1 | 0 |
補角公式
sin(180°−θ)=sinθ
cos(180°−θ)=−cosθ
tan(180°−θ)=−tanθ
大事: 鈍角の三角比は 「対応する鋭角の値に符号をつけ替える」 のが基本戦略。 単位円でどこにあるか (第 II 象限) をイメージすると符号が自然にわかる。
4. 相互関係
3 つの重要公式
sin2θ+cos2θ=1
tanθ=cosθsinθ(cosθ=0)
1+tan2θ=cos2θ1
由来
単位円上の点(cosθ,sinθ) は半径1 の円上にあるので
x2+y2=1⟺cos2θ+sin2θ=1
例題
sinθ=53, 90°<θ<180° のとき、 cosθ,tanθ の値を求めよ。
cos2θ=1−sin2θ=1−259=2516
θ は鈍角なので cosθ<0:
cosθ=−54
tanθ=cosθsinθ=−4/53/5=−43
ポイント: 平方をはずすときに 必ず符号を確認。 θ の範囲を見て第何象限かを判定する習慣をつけましょう。
5. 三角比を含む計算
例題 1
sinθ+cosθ=21 のとき、 sinθcosθ の値を求めよ。
両辺を平方:
(sinθ+cosθ)2=sin2θ+2sinθcosθ+cos2θ=41
sin2θ+cos2θ=1 より
1+2sinθcosθ=41
sinθcosθ=−83
例題 2
sinθ−cosθ の値も求めよ。
(sinθ−cosθ)2=1−2sinθcosθ=1+43=47
sinθ−cosθ=±27
大事: sin+cos と sincos と sin−cos は 平方と sin2+cos2=1 で相互に行き来できます。 三角比計算の王道。
6. 三角比の値から角を求める
例: sinθ=21 (0°≤θ≤180°) を満たす θ を求めよ。
特殊角 の表を思い出すと θ=30°。 鈍角では 180°−30°=150° も答え。
θ=30°,150°
例: cosθ=−22 (0°≤θ≤180°) を解け。
cosθ=22 なら θ=45° なので、 補角公式で
θ=180°−45°=135°
ポイント: sin は 2 つ の解が出ることが多い (θ と 180°−θ)。 cos と tan は範囲内で 1 つ だけ (単調性から)。
まとめ
- 鋭角の三角比は 直角三角形の辺の比
- 拡張は 単位円 で 「x が cos, y が sin」
- 補角公式で鈍角の値を鋭角に帰着
- 相互関係sin2+cos2=1 が万能
- sinθ=k は解が 2 つ、 cos は 1 つ
次章ではこの三角比を三角形一般に適用し、 正弦定理・余弦定理 を学びます。