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論理・表現III

論ろん文ぶん構こう成せい (IMRaD)

最終確認日:

この章しょうで学まなぶこと

第だい 1 章しょうで学まなんだ 5-paragraph essay は 「自じ分ぶんの意い見けんを述べのべる」 文章ぶんしょうでした。 一いっ方ぽう、 大学だいがく進学しんがく後ごに必ひっ須すになる research paper (学がく術じゅつ論ろん文ぶん) は 「自分じぶんの調査ちょうさ結果けっかを報ほう告こくする」 文章ぶんしょうです。

第だい 2 章しょうでは、 国こく際さい標ひょう準じゅんとされる論文ろんぶん構こう成せい IMRaD (Introduction / Methods / Results / Discussion) と、 その前まえに置おかれる abstract の書かき方かたを学まなびます。

  • essay と research paper の違ちがい を説せつ明めいできる
  • IMRaD の各かくセクションの役やく割わりを理り解かいする
  • abstract を 200 語かたり以内いないで書かける
  • 論文ろんぶんで使つかう 時じ制せい と 態たい のルールを理り解かいする

ポイント: 大学だいがく入試にゅうしの自じ由ゆう英えい作さく文ぶんでは IMRaD は求もとめられませんが、 国公立こっこうりつ二に次じの 「グラフ・表ひょうを説せつ明めいせよ」 タイプでは Results 型かたの書かき方かた が役立やくだちます。 また大学だいがく 1 年ねんの必修ひっしゅう 「アカデミックライティングあかでみっくらいてぃんぐ」 で必かならず学まなぶ内ない容ようなので、 高校こうこう段階だんかいで触ふれておくことが大おおきなアドバンテージになります。

1. essay と research paper の違ちがい

観かん点てんessayresearch paper
目もく的てき自分じぶんの意い見けんを主しゅ張ちょう自分じぶんの調査ちょうさ結果けっかを報ほう告こく
長ながさ250〜2000 語かたり3000〜10000 語かたり (学部がくぶ卒そつ論ろんで約やく 1〜3 万まん語ご)
構こう成せい5-paragraph (intro / 3 body / conclusion)IMRaD (intro / method / results / discussion)
証拠きょ一いっ般ぱん的な例れい・統計とうけい自分じぶんが行おこなった実じっ験けん・アンケート・分ぶん析せき
時じ制せい現在形げんざいけい中心ちゅうしん過去かこ形けい (実験じっけん) + 現在形げんざいけい (考察こうさつ) を使つかい分わけ
人にん称しょうI / We を使つかえる伝でん統とう的には受じゅ動どう態たいで I を避さける (近年きんねんは緩かん和わ)
引いん用よう任にん意い必須ひっす (APA / MLA 等とうのルールに厳密げんみつ準じゅん拠きょ)

大事だいじ: essay は 「自じ分ぶんの意い見けんを説せっ得とくする」 (persuasive)、 research paper は 「新あたらしい知ち見けんを提示ていじする」 (informative + analytical)。 この目的もくてきの違ちがいが文体ぶんたいと構成こうせいを決きめます。

2. IMRaDの全ぜん体たい像ぞう

IMRaD 構造をワイングラスの形で示した図
IMRaD 砂時どけい計いモデル (hourglass model) — Introduction (広ひろい導入どうにゅう) → Methods (絞しぼり込こんだ方法ほうほう) → Results (狭せまい結果けっか) → Discussion (広ひろい議論ぎろん) と、 砂時計すなどけいのように 「広ひろ → 狭せま → 広ひろ」 の形かたちになるのが学術がくじゅつ論文ろんぶんの王道おうどう構造こうぞう (Hill et al., 1982)。

IMRaD は 1970 年代ねんだい以い降こう自し然ぜん科か学がくを中心ちゅうしんに国際こくさい標ひょう準じゅんとなった論文ろんぶん構成こうせいです。 現在げんざいは社会しゃかい科学かがく・医学いがく・工学こうがくまで広ひろく採さい用ようされています。

各かくセクションの役割やくわりと質問しつもん

セクション答こたえる質問しつもん含ふくめる内容ないよう
IntroductionWhat is the question? なぜこれを研けん究きゅうするか?背景はいけい・先せん行こう研究けんきゅう・research question・hypothesis
MethodsHow did you study it? どう調しらべたか?対たい象しょう・実験じっけん手て順じゅん・分ぶん析せき方法ほう
ResultsWhat did you find? 何なにがわかったか?数値すうち・グラフ・表ひょう (解かい釈しゃくはしない)
DiscussionWhat does it mean? それは何なにを意味いみするか?結果けっかの解釈かいしゃく・先行せんこう研究けんきゅうとの比ひ較かく・限げん界かい・今後こんごの展てん望ぼう

沙時とけいの形かたち

IMRaD は 「砂時とけいの形かたち」 に例たとえられます。

  • Introduction = 上うえの広ひろがり (一いっ般ぱんから具体ぐたいへ): 大おおきな背景はいけい → 既き存そん研究けんきゅう → 自分じぶんの research question
  • Methods + Results = 中央ちゅうおうの細ほそい部分ぶぶん (具体ぐたい的てき・限定げんてい的てき): 自分じぶんの実験じっけんと結果けっかだけ
  • Discussion = 下したの広ひろがり (具体ぐたいから一般いっぱんへ): 自分じぶんの結果けっか → 既存きそん研究けんきゅうとの比ひ較かく → 一般いっぱん化か・社会しゃかいへの含がん意い

3. abstractの書かき方かた

Abstract は論文ろんぶんの 要よう約やく で、 本文ほんぶんの前まえに置おかれます。 通常つうじょう 150〜250 語かたり、 1 段落だんらく。 読者どくしゃが 「この論文ろんぶんを全部ぜんぶ読よむか」 を決きめる場ば所しょなので極きわめて重要じゅうようです。

Abstract の標ひょう準じゅん構造こうぞう (BAMRC: Background / Aim / Methods / Results / Conclusion)

注ちゅう意い: CARS モデルかーずもでる (Swales 1990) は Abstract ではなく Introduction の構造こうぞうモデルです。 Abstract の国こく際さい標ひょう準じゅんは BAMRC 形けい式しき (背景はいけい → 目的もくてき → 方法ほうほう → 結果けっか → 結論けつろん) で、 構こう造ぞう化か abstract とも呼よばれます。

文ぶん番号ばんごう内容ないよう例れい (英語えいご教育きょういくの論文ろんぶん)
1〜2 文ぶんBackground 背景はいけいEnglish speaking proficiency among Japanese high school students remains low compared to other Asian countries.
3 文ぶんPurpose目的もくてきThis study investigates whether daily 5-minute shadowing exercises improve speaking fluency.
4〜5 文ぶんMethods 方法ほうほうA 12-week experiment was conducted with 60 second-year high school students, divided into a shadowing group (n=30) and a control group (n=30).
6〜7 文ぶんResults 結果けっかThe shadowing group showed a 23% improvement in fluency scores, while the control group showed only 4%. The difference was statistically significant (p<0.01).
8 文ぶんConclusion結論けつろんThese results suggest that even short, daily shadowing practice can substantially improve speaking fluency in Japanese high school learners.

訳わけ

日本にほんの高校生こうこうせいの英語えいごスピーキング力りょくは他たのアジア諸国しょこくに比くらべ低ひくいままである。 本ほん研究けんきゅうは毎日まいにち 5 分ぶんのシャドーイング練れん習しゅうが流りゅう暢ちょうさを向上こうじょうさせるかを調査ちょうさする。 60 名なの高校こうこう 2 年ねん生せいを対象たいしょうに 12 週間しゅうかんの実験じっけんを行おこない、 シャドーイング群ぐん (30 名めい) と統とう制せい群ぐん (30 名めい) に分わけた。 シャドーイング群ぐんは流暢りゅうちょうさスコアが 23% 向上こうじょうした一方いっぽう、 統制とうせい群ぐんは 4% に留とどまった。 その差さは統計とうけい的てきに有ゆう意い (p<0.01) であった。 この結果けっかは、 短みじかい毎日まいにちのシャドーイング練れん習しゅうでも日本にほんの高校生こうこうせい学習がくしゅう者しゃの流暢りゅうちょうさを大幅おおはばに改善かいぜんしうることを示し唆さする。

ポイント: Abstract には 数値すうち を入いれる (「improved fluency」 ではなく 「23% improvement」)。 また、 「結論けつろんを 1 文ぶんで」 が鉄てっ則そく。

4. Introduction の書かき方かた

論文ろんぶんの Introduction は CARS モデル (Create A Research Space) と呼よばれるフレームで書かきます。

CARS の 3 ステップ

Move内容ないよう文例ぶんれい
Move 1: Establish a territory研究けんきゅう領りょう域いきの重要じゅうよう性せいを述べのべるEnglish speaking proficiency is increasingly important in a globalized economy.
Move 2: Establish a niche既存きそん研究けんきゅうの gap (空白くうはく) を指摘してきHowever, few studies have examined short-duration practice methods suitable for time-constrained Japanese students.
Move 3: Occupy the niche自分じぶんの研究けんきゅうがその gap を埋うめると宣言せんげんThis study fills this gap by testing the effectiveness of daily 5-minute shadowing exercises.

大事だいじ: 研究けんきゅう論文ろんぶんで必かならず必要ひつようなのが 「research gap」 (先行せんこう研究けんきゅうが答えこたえていない問いとい) を示しめすこと。 「まだ誰だれもやっていない」 を言いえれば、 「私わたしの研究けんきゅうには価値かちがある」 と主張しゅちょうできます。

5. Methods の書かき方かた

Methods は 「他たの研究けんきゅう者しゃが同おなじことを再さい現げんできるレベルの詳しょう細さい」 で書かくことが求もとめられます。

含ふくめる 4 要素ようそ

要素ようそ含ふくめる情報じょうほう
Participants (対象たいしょう)人数にんずう・年齢ねんれい・性別せいべつ比ひ・選抜せんばつ基き準じゅん・倫りん理り同どう意い
Materials (材料ざいりょう)教材きょうざい・機器き・アンケート用紙ようし・ソフトウェア
Procedure (手て順じゅん)いつ・どこで・どう行おこなったか (時じ系列けいれつ)
Analysis (分ぶん析せき)統計とうけい手法しゅほう・有ゆう意い水すい準じゅん・使用しようソフト

時制じせいと態たい

Methods は 過去かこ形けい + 受動態じゅどうたい が基本きほん。

例れい: Participants were divided into two groups. The pre-test was administered in week 1, and the post-test was given in week 12.

訳わけ: 参加さんか者しゃは 2 群ぐんに分わけられた。 事じ前ぜんテストは 1 週しゅう目めに、 事じ後ごテストは 12 週しゅう目めに実じっ施しされた。

6. Results の書かき方かた

Results は 数値すうちと事実じじつだけ を述べのべます。 解かい釈しゃく・意い見けんは一切いっさい入いれません (それは Discussion の仕事しごと)。

含ふくめる表現ひょうげん

用途ようと表現ひょうげん
増ぞう加かA increased significantly from X to Y. / There was a marked rise in B.
減げん少しょうC decreased by 15%. / D showed a sharp decline.
比ひ較かくGroup A scored higher than Group B (M=82.3 vs M=68.1).
統計とうけい有ゆう意いThe difference was statistically significant (t(58)=4.21, p<0.001).
図表ずひょう参さん照しょうAs shown in Figure 1, ... / Table 2 displays ...

例文れいぶん

The shadowing group's mean fluency score increased from 5.2 to 6.4 over 12 weeks, an improvement of 23%. The control group's score increased from 5.1 to 5.3, an improvement of only 4%. As shown in Figure 1, the gap between the two groups widened progressively from week 4 onwards. The difference at week 12 was statistically significant (p<0.01).

訳わけ: シャドーイング群ぐんの平均へいきん流暢りゅうちょうさスコアは 12 週しゅうで 5.2 から 6.4 へ 23% 上じょう昇しょうした。 統制とうせい群ぐんは 5.1 から 5.3 へわずか 4% の上昇じょうしょうに留とまった。 図ず 1 の通とおり、 両りょう群ぐんの差さは 4 週しゅう目め以い降こう漸ぜん次じ拡かく大だいした。 12 週しゅう目めの差さは統計とうけい的てきに有意ゆうい (p<0.01) であった。

7. Discussion の書かき方かた

Discussion は論文ろんぶんで最もっとも 創造そうぞう的てき な部分ぶぶん。 「結果けっかが何なにを意味いみするか」 を議論ぎろんします。

Discussion の 5 要素ようそ

  1. Restate key findings — 結果けっかの要点ようてんを再さい掲けい
  2. Compare with prior studies — 先せん行こう研究けんきゅうとの一いっ致ち・不一ふいつ致ち
  3. Explain mechanism — なぜその結果けっかになったかの解かい釈しゃく
  4. Acknowledge limitations — 研究けんきゅうの限げん界かいを正しょう直じきに認みとめる
  5. Suggest future directions — 今後こんごの研究けんきゅう課か題だい

例れい (限界げんかいを認みとめる部分ぶぶん)

However, this study has several limitations. First, the sample was limited to one high school in Tokyo, which may not represent rural learners. Second, the 12-week duration may be too short to detect long-term retention effects. Future studies should include diverse regions and longer follow-up periods.

訳わけ: しかし、 本ほん研究けんきゅうにはいくつかの限げん界かいがある。 第だい一いちに、 標ひょう本ほんは東京とうきょうの 1 校こうに限かぎられ、 地方ちほうの学習がくしゅう者しゃを代表だいひょうしない可能かのう性せいがある。 第だい二にに、 12 週しゅうの期間きかんは長ちょう期き保ほ持じ効こう果かを検けん出しゅつするには短みじかいかもしれない。 今後こんごの研究けんきゅうでは多様たような地域ちいきと長ながい追つい跡せき期間きかんを含ふくめるべきである。

大事だいじ: 限げん界かいを認みとめることは 論文ろんぶんの弱点じゃくてんではなく強つよ味み。 研究けんきゅう者しゃとしての誠せい実じつさを示しめし、 結論けつろんの範囲はんいを適切てきせつに限定げんていするための必須ひっすステップです。

8. 時制じせいの使つかい分わけ一いち覧らん

セクション主おもな時制じせい例れい
Abstract過去かこ形けい (研究けんきゅう) + 現在形げんざいけい (一般いっぱん化か)This study investigated ... The results suggest ...
Introduction現在形げんざいけい (一般いっぱん事実じじつ) + 現在げんざい完了かんりょう (先行せんこう研究けんきゅう)English is important. Few studies have examined ...
Methods過去かこ形けい + 受動態じゅどうたいParticipants were tested ...
Results過去かこ形けいThe score increased ...
Discussion現在形げんざいけい + 仮定かてい法ほうThese results indicate ... It may suggest that ...

次じ章しょう予告よこく: 第だい 3 章しょうでは論文ろんぶんで必須ひっすとなる 引用いんよう・参考さんこう文献ぶんけん のルール (APA / MLA / Chicago) と、 paraphraseと quote の使つかい分わけ、 plagiarism (剽ひょう窃せつ) の回かい避ひを学まなびます。

まとめ — 論文ろんぶん構成こうせい (IMRaD) を 3 行くだりで

  • 学術がくじゅつ論文ろんぶんの国際こくさい標準ひょうじゅん構成こうせい IMRaD は Introduction (背景はいけい・目的もくてき) / methodology (方法ほうほう) / results (結果けっか) / discussion (考察こうさつ) の 4 部ぶで、 essay と違ちがい客観きゃっかん性せい・再現さいげん性せいが命いのち。
  • 巻頭かんとうには abstract (要旨ようし) を置おき研究けんきゅう全体ぜんたいを 200〜250 語かたりで圧縮あっしゅく、 末尾まつびには限界げんかい (limitations) を認みとめることが弱点じゃくてんではなく強つよみになる。
  • 時制じせいはセクション毎ごとに使つかい分わけ、 Methods は過去かこ形けい + 受動態じゅどうたい、 Results は過去かこ形けい、 Discussion は現在形げんざいけい + 仮定かてい法ほう (may / might) で結論けつろんの範囲はんいを適切てきせつに限定げんていする。
この教材きょうざいは役やくに立たちましたか?