この章で学ぶこと
前章で学んだ 展開 を 「逆向き」 に行う操作が 因数分解 です。
たとえば展開で
(x+2)(x+3)=x2+5x+6
を計算しました。 因数分解 は反対に、 x2+5x+6 を見て 「もとの (x+2)(x+3) を復元する」 ことです。
入試では 二次方程式 や 関数 の問題で 因数分解 が解法の鍵になるため、 中 3 で一番練習量を積むべき単元です。
この章が終わるころにはつぎができるようになります。
- 共通因数 のくくり出しが即できる
- 4 つの 公式 (展開公式 と 1 対 1 対応) を自在に使える
- x2+(a+b)x+ab=(x+a)(x+b) で 「足して A、 かけて B」 となる整数ペアを素早く見つけられる
- 共通因数 + 公式 / 置換 + 公式の 2 段階因数分解ができる
- ax2+bx+c (a=1) の たすき掛け風の分解ができる (発展)
用語: 1 つの整式を 「いくつかの整式の積の形」 に表すことを因数分解といい、 そのときの各整式を 因数 といいます。
1. 因数分解の基本 — 共通因数をくくり出す
最初に必ず見るべきなのが 共通因数 です。 各項 に共通して含まれる文字や数字を前にくくり出します。
例題 1: 6x2+9x を因数分解しなさい。
各項に共通する因数は 3x なので、
6x2+9x=3x(2x+3)
例題 2: 4a2b−8ab2+2ab を因数分解しなさい。
数字の共通因数は 2、 文字は a も b もすべての項にあるので ab。 合わせて 2ab をくくり出す。
4a2b−8ab2+2ab=2ab(2a−4b+1)
ポイント:共通因数をくくり出したあと、 残りを カッコ内に同じ個数の項で書く。 例題 2 のように 「+1」 を忘れがちなので要注意。
2. 公式 1: a2+2ab+b2=(a+b)2
展開公式 1 の逆です。
a2+2ab+b2=(a+b)2,a2−2ab+b2=(a−b)2
見分け方: 両端が 平方、 中央が 両端の 平方根 の 2 倍の積。
例題 3: x2+10x+25 を因数分解せよ。
25=52、 10x=2⋅x⋅5。 ぴったり。
x2+10x+25=(x+5)2
例題 4: 9a2−12ab+4b2 を因数分解せよ。
9a2=(3a)2、 4b2=(2b)2、 中央−12ab=−2⋅3a⋅2b。 OK。
9a2−12ab+4b2=(3a−2b)2
3. 公式 2: a2−b2=(a+b)(a−b)
「2 乗の差」 を見たらすぐ分解。
例題 5: x2−49 を因数分解せよ。
x2−49=x2−72=(x+7)(x−7)
例題 6: 4x2−25y2 を因数分解せよ。
4x2−25y2=(2x)2−(5y)2=(2x+5y)(2x−5y)
ポイント: x2+49 のような 「2 乗の和」 は中学範囲 では因数分解できない。 「差」 だけが公式化されていることに注意。
4. 公式 3: x2+(a+b)x+ab=(x+a)(x+b) — 数ペアさがし
中学因数分解の 主役 です。 「足して 1 次の係数、 かけて定数項」 になる整数ペアを探します。
例題 7: x2+7x+12 を因数分解せよ。
足して 7、 かけて 12 → (3, 4)。
x2+7x+12=(x+3)(x+4)
例題 8: x2−5x+6 を因数分解せよ。
足して -5、 かけて 6 → (-2, -3)。 両方マイナス。
x2−5x+6=(x−2)(x−3)
例題 9: x2+2x−15 を因数分解せよ。
足して 2、 かけて -15 → (5, -3)。 1 つマイナス。
x2+2x−15=(x+5)(x−3)
数ペアの探し方コツ
| 定数項の 符号 | 1 次係数の符号 | 2 数の符号 |
|---|
| プラス | プラス | 両方プラス |
| プラス | マイナス | 両方マイナス |
| マイナス | プラス | 大きい方プラス、 小さい方マイナス |
| マイナス | マイナス | 大きい方マイナス、 小さい方プラス |
ポイント:定数項の約数を全部列挙し、 その中から 「足して 1 次係数」 になる組を探すのが確実。 慣れたら暗算で即答できるようになります。
5. 共通因数 + 公式の 2 段階分解
入試では まず共通因数をくくり、 残りを公式で分解する 「2 段階」 が頻出です。
例題 10: 2x2+12x+18 を因数分解せよ。
共通因数 2 をくくる。
2x2+12x+18=2(x2+6x+9)=2(x+3)2
例題 11: 3a2−27 を因数分解せよ。
3a2−27=3(a2−9)=3(a+3)(a−3)
例題 12: x3−4x を因数分解せよ。
x が共通。 残りは x2−4=(x+2)(x−2)。
x3−4x=x(x2−4)=x(x+2)(x−2)
鉄則:因数分解の最初の一手は 「共通因数はないか?」。 これを飛ばすと 「分解が中途半端」 と判定され減点されるので必ず確認。
6. 置換を使う因数分解
複数の文字や長いかたまりがあるときは 1 つの文字に置く。
例題 13: (x+y)2−4(x+y)+4 を因数分解せよ。
x+y=A と置く。
A2−4A+4=(A−2)2=(x+y−2)2
例題 14: (a+b)2−c2 を因数分解せよ。
a+b=M と置くと M2−c2=(M+c)(M−c)。 戻して、
(a+b+c)(a+b−c)
ポイント: 「2 乗の差」 「2 乗 + 2 倍の積 + 2 乗」 など 公式の形 に見えるように置換するのがコツ。
7. 4 文字 / 4 項のくくり直し (たすき掛け の前段階)
例題 15: ax+ay+bx+by を因数分解せよ。
前半と後半で共通因数をくくる。
ax+ay+bx+by=a(x+y)+b(x+y)=(a+b)(x+y)
例題 16: x2+xy−2x−2y を因数分解せよ。
x2+xy−2x−2y=x(x+y)−2(x+y)=(x−2)(x+y)
ポイント: 4 項のときは 2 項ずつペア にして共通因数をくくり、 さらに全体で共通するカッコをくくり出す。
8. 発展 — ax2+bx+c (a=1) の因数分解
公立入試では一部の上位校で出題されるので、 触れておきます。
例題 17: 2x2+7x+3 を因数分解せよ。
積が 2⋅3=6、 和が 7 の 2 数を探す → (6, 1)。 1 次の項を分割し、
2x2+7x+3=2x2+6x+x+3=2x(x+3)+1⋅(x+3)=(2x+1)(x+3)
例題 18: 3x2−5x−2 を因数分解せよ。
積−6、 和−5 → (-6, +1)。
3x2−5x−2=3x2−6x+x−2=3x(x−2)+1⋅(x−2)=(3x+1)(x−2)
覚え方: 「かけて ac、 足して b」 の整数ペアで 1 次項を分割し、 2 項ずつくくり出す。 これはたすき掛けの別表現です。
9. 章末演習 (入試形式)
つぎの式を因数分解せよ。
(1) x2−8x+16
(2) x2−64
(3) x2+x−20
(4) 3x2−12x−36
(5) (x−1)2−9
(6) ax+ay−bx−by
(7) x2−y2+4y−4 (発展)
略解:
(1) (x−4)2
(2) (x+8)(x−8)
(3) (x+5)(x−4)
(4) 3(x2−4x−12)=3(x−6)(x+2)
(5) {(x−1)+3}{(x−1)−3}=(x+2)(x−4)
(6) a(x+y)−b(x+y)=(a−b)(x+y)
(7) −y2+4y−4=−(y−2)2 なので x2−(y−2)2=(x+y−2)(x−y+2)
章のまとめ:因数分解の鉄則は 「① 共通因数 → ② 公式 → ③ 置換 / くくり直し」。 この順で必ず試す。 二次方程式の解法の中心が因数分解なので、 何度も演習して体に染み込ませましょう。
まとめ — 因数分解を 3 行で
- 因数分解の手順は「共通因数を括り出す → 展開公式を逆に使う → 置換やくくり直しを試す」 の 3 段階で必ず網羅する
- x2+(a+b)x+ab=(x+a)(x+b) や a2−b2=(a+b)(a−b) など、 展開公式の逆操作が因数分解の要である
- 因数分解は二次方程式の解法の中心であり、 反復演習で即座に形を見抜ける力を身につけることが重要である