この章で学ぶこと
中学数学最後の単元は 標本調査。 統計 の入口です。 計算量は少ないが、 用語と比例の立て方 を正確に押さえる必要がある、 入試で油断できない単元。
選挙の出口調査、 テレビの視聴率、 工場の製品検査など、 私たちの生活でも 標本調査は大活躍しています。 「全部調べるのは大変だから、 一部を調べて全体を推測する」 のが統計の基本発想です。
ゴール:
- 全数調査 と 標本調査 の違いと選択基準を説明できる
- 母集団、 標本、 標本の大きさ、 無作為抽出 の用語を正確に使える
- 標本から母集団の数量を 比例 で 推定 できる
- 推定した値が あくまで推定であり真の値ではない ことを理解 している
1. 全数調査と標本調査
全数調査 (悉皆調査)
調べたい集団の 全員 を調べる方法。
例:
- 国勢調査 (5 年ごとの国民全員)
- 学校での健康診断
- 入学試験
長所: 確実、 正確。 短所: 時間と費用がかかる、 物をこわして調べる場合 (例 ・ 電球の寿命) は不可能。
標本調査
集団の 一部 だけを調べ、 そこから全体の様子を 推測 する方法。
例:
- 視聴率調査
- 出口調査
- 工場の製品検査 (ランダムに取り出して検査)
- 池の魚の数推定 (捕獲 → 印 → 戻す → 再捕獲)
長所: 速い、 安い、 物をこわさず済む。 短所: 推定値であり、 真の値ではない。
使い分けの鉄則: 「全員調べるのが大変 / 不可能」 → 標本調査。 「正確さが必須」 → 全数調査。 入試では 「次のうち標本調査が適切なものは」 という選択問題が頻出。
2. 用語整理
| 用語 | 意味 |
|---|
| 母集団 | 調べたい対象全体 |
| 標本 | 母集団から取り出した一部 |
| 標本の大きさ | 標本の個数 |
| 無作為抽出 | かたよりなく偶然に標本を取り出すこと |
例: 全国の中学 3 年生 (母集団) から 1000 人を無作為に選び (標本)、 平均身長を調べた。 標本の大きさ = 1000。
無作為抽出の大切さ
「自分が調べやすい人だけ選ぶ」 「目立つ人だけ選ぶ」 等の かたより (バイアス) があると、 母集団の様子が正しく反映されません。
無作為抽出の方法:
- 乱数表 / 乱数サイコロ
- コンピュータの乱数
- くじ引き
注意: 「街角で声をかけた 100 人」 は 無作為ではない (場所や時間帯にかたよる)。 入試で 「無作為抽出として適切か」 を問う出題あり。
3. 標本調査で何がわかるか
標本での結果を 母集団に当てはめ て、 母集団の数量を推定する。
比例の立て方 (鉄則)
標本の大きさ標本の注目個数≈母集団の大きさ母集団の注目個数
両辺を比として立て、 4 つの数のうち 1 つが不明なら比例で解く。
4. 例題で使い方を習得
例題 1: 製品検査
ある工場で 1 日に 5000 個の製品を作る。 ランダムに 100 個取り出し、 検査したところ 4 個が不良品だった。 1 日の不良品の数は約何個と推定できるか。
比例を立てる。
1004=5000x⟹x=200
約200 個。
例題 2: 池の魚の数 ( 捕獲再捕獲法 )
池で魚を 50 匹つかまえ、 印をつけて戻した。 後日 80 匹つかまえたところ、 そのうち印があるのは 4 匹だった。 池全体の魚の数を推定せよ。
母集団 (魚の総数) を N と置く。
「池の中で印がついた魚の割合 = 後で取った標本中で印がついた割合」 と仮定すると、
N50=804⟹N=50×480=1000
約1000 匹。
注意: 「約」 を必ずつける。 標本調査の答えは真の値ではなく 推定値。
例題 3: 視聴率
ある番組の視聴率を調べるため、 ランダムに選んだ 600 世帯のうち 78 世帯が見ていた。 視聴率を求めよ。
60078=0.13=13%
母集団 (全国の世帯数が仮に 5000 万とすれば) では 約 650 万世帯 が見ていると推定できる。
例題 4: 玉の比
袋の中に白玉と赤玉が合わせて 1000 個入っている。 取り出して戻す操作を 200 回繰り返したところ、 白玉が出たのは 80 回だった。 袋の中の白玉の数を推定せよ。
白玉の割合 ≈ 20080=0.4。 全体 1000 個の 0.4 倍 = 400 個。
5. 推定の限界 — 「あくまで推定」
標本調査で出した数は 推定値。 標本が偶然偏れば、 答えも大きくずれることがある。
標本を大きくすると推定の精度が上がる
100 個の標本より、 1000 個の標本の方が、 母集団の真の値に近い推定が期待できる (大数の法則)。
結果の表現
入試では 「約 〇〇 個」 「およそ 〇〇 円」 のように、 「約」 「およそ」 を必ず付けて答える。
6. 入試頻出の出題パターン
(1) 「全数 / 標本」 の判定
例題 5: 次の調査のうち、 標本調査が適切なものを選べ。
- ア: 学校のクラスでの出席確認 → 全数
- イ: 入国者全員の検疫 → 全数
- ウ: テレビの視聴率 → 標本
- エ: 缶ジュースの中身の量検査 → 標本 (中身を全部開けたら売れない)
(2) 比例計算
上の例題 1 〜 4 の形。
(3) 用語の穴埋め
「ある集団の性質を知るため、 ( ) を取り出して調べることを ( ) という。」 → 標本 / 標本調査。
7. 章末演習 (入試形式)
(1) 全校生徒 600 人の学校で、 無作為に選んだ 30 人にアンケートしたところ、 18 人がスマホを持っていた。 全校生徒でスマホを持っている人数を推定せよ。
(2) 養殖池の魚を 100 匹つかまえ印をつけて戻し、 後日 50 匹中印付きが 5 匹だった。 池の魚の総数を推定せよ。
(3) 工場で 1 日 12000 個の部品を製造。 標本 200 個中不良が 6 個。 1 日の不良品の数を推定せよ。
(4) 「全国の高校生のスマホ利用時間を知りたい」。 (a) 全数調査と (b) 標本調査のどちらが適切か。 理由とともに答えよ。
略解:
(1) 3018=600x⇒x=360 → 約360 人
(2) N100=505⇒N=1000 → 約1000 匹
(3) 2006=12000x⇒x=360 → 約360 個
(4) (b) 標本調査。 全国の高校生全員を調べるのは時間と費用が大きくかかり現実的でないから。
章のまとめ:標本調査の鍵は 「無作為抽出」 と 「比例を立てて推定」。 答えに 「約」 を忘れないこと、 「全数と標本の使い分け」 を言葉で説明できるようにしておくこと。
まとめ — 標本調査を 3 行で
- 標本調査は集団の一部 (標本) を取り出して全体 (母集団) の性質を推定する手法で、 全数調査と使い分ける
- 無作為抽出 (くじ引き・乱数表) で偏りを防ぎ、 比例式 標本数標本での該当数=母集団x で推定する
- 推定結果は厳密な値ではないため必ず「約 ◯◯」 と表記し、 全数調査が困難な状況 (時間・費用) で標本調査が選ばれることを理解する