1級では、上級の句動詞(phrasal verb)・イディオム・コロケーションが大量に問われます。これらは大問1の得点源であり、ライティングとスピーチの質を左右します。この章では、丸暗記ではなく前置詞・副詞の核心イメージから句動詞を理解し、フォーマルな言いかえや知的な議論で使うイディオム・コロケーションまで身につけます。
この章で学ぶこと
- 句動詞の核心イメージ(up / down / out / off / over など)
- 句動詞とフォーマルな1語動詞の双方向の言いかえ
- 混同しやすい句動詞の区別
- 知的な議論で使う上級イディオム
- ライティング・スピーチの質を上げるコロケーション
- どう問われるか
ポイント: 句動詞は「動詞」より「前置詞・副詞のイメージ」で覚えるのがコツです。up=「上・完全に」、down=「下・減少・記録」、out=「外・消滅・完成」、off=「分離・出発」。このイメージを核にすると、初見の句動詞も意味が推測できます。1級では、句動詞をフォーマルな1語動詞に言いかえる力が特に重要です。
上級の句動詞——核心イメージで束ねる
句動詞を支える前置詞・副詞には、共通する核心イメージがあります。これを軸に、上級の句動詞を束ねて覚えましょう。
| 語 | 核心イメージ | 上級の句動詞の例 |
|---|
| up | 完全に・出現・蓄積 | conjure up(呼び起こす), gloss over(取り繕う・ごまかす) |
| down | 抑える・記録・減少 | water down(骨抜きにする), clamp down on(取り締まる) |
| out | 排除・解明・尽きる | iron out(解決する), single out(選び出す), fizzle out(立ち消えになる) |
| off | 分離・抑止・引き起こす | stave off(食い止める), set off(引き起こす) |
| over | 全体に・移行・支配 | gloss over(ごまかす), lord over(威張る) |
- 例文: The government finally clamped down on tax evasion by large corporations. (政府はついに、大企業による脱税を厳しく取り締まった。)
ポイント: clamp down on(押さえつける=取り締まる)、water down(水で薄める=骨抜きにする)のように、句動詞は比喩で意味が広がります。物理的なイメージから、抽象的・比喩的な意味へどう広がるかを意識すると、初見でも推測できます。
句動詞とフォーマルな1語動詞の双方向言いかえ
1級では、句動詞をフォーマルな1語動詞に言いかえる力が、大問1・長文読解・ライティングのすべてで問われます。
| 句動詞(やや口語) | 1語動詞(フォーマル) | 意味 |
|---|
| put up with | tolerate | 我慢する |
| do away with | abolish / eliminate | 廃止する |
| bring about | engender / cause | 引き起こす |
| account for | constitute / explain | 占める/説明する |
| hold back | restrain / withhold | 抑える |
| carry out | conduct / implement | 実行する |
- 例文: The reform sought to do away with outdated regulations that hindered innovation. (その改革は、技術革新を妨げる時代遅れの規制を廃止しようとした。)
ポイント: 英文要約や意見論述・スピーチでは、句動詞をフォーマルな1語動詞(abolish / engender / implement)に言いかえると評価が上がります。逆に長文では、フォーマルな語を句動詞に戻すと意味がつかみやすい。双方向で言いかえられるようにしましょう。
混同しやすい句動詞の区別
意味が近かったり形が似ていたりする句動詞は、文脈で区別します。
| 句動詞 | 意味 | ちがい |
|---|
| bear out | 裏づける・証明する | bear with(我慢する)と混同注意 |
| make out | 理解する・見分ける | make up(でっち上げる・構成する)と混同注意 |
| run down | けなす・衰弱させる | run into(偶然出会う・直面する)と混同注意 |
| fall through | (計画が)失敗に終わる | fall back on(頼る)と混同注意 |
- 例文: The latest findings bear out the theory that had long been dismissed. (最新の知見は、長らく退けられてきたその理論を裏づけている。)
ポイント: bear out(裏づける)と bear with(我慢する)のように、前置詞が変わると意味が一変します。例文ごと覚えると、文脈での使い分けが体にしみ込みます。
知的な議論で使う上級イディオム
イディオムは、単語の足し算では分からない決まり文句です。1級の議論やエッセイで使える上級のものを整理します。
| イディオム | 意味 |
|---|
| a double-edged sword | 一長一短のもの・両刃の剣 |
| the lion's share | 大部分・最大の取り分 |
| a slippery slope | 歯止めが効かなくなる危険な道筋 |
| at the expense of | 〜を犠牲にして |
| beg the question | 当然の疑問を生じさせる/論点先取 |
| by and large | おおむね・全体として |
- 例文: Rapid economic growth often comes at the expense of the environment. (急速な経済成長は、しばしば環境を犠牲にして得られる。)
ポイント: a double-edged sword(一長一短)や at the expense of(〜を犠牲にして)は、意見論述やスピーチで「利点と代償」を論じるときにそのまま使えます。意味だけでなく、自分の論述に組み込めるかを意識して覚えましょう。
ライティング・スピーチの質を上げるコロケーション
1級では、抽象的・知的な内容を論じるためのコロケーションが、語彙点を大きく左右します。
| コロケーション | 意味 |
|---|
| address a pressing issue | 喫緊の課題に取り組む |
| strike a balance | 釣り合いをとる |
| undermine confidence | 信頼を損なう |
| bridge the gap | 隔たりを埋める |
| set a precedent | 前例をつくる |
| weigh the pros and cons | 長所と短所を比較検討する |
- 例文: Policymakers must strike a balance between economic growth and environmental protection. (政策立案者は、経済成長と環境保護の釣り合いをとらねばならない。)
ポイント: strike a balance / address an issue / weigh the pros and cons は、エッセイやスピーチの「論じる動作」をそのまま表せる便利なコロケーションです。論述の骨組みに使える表現として、第10章の文体とあわせて蓄えましょう。
どう問われるか
句動詞・イディオムは、リーディング大問1(短文の語句空所補充)で頻出します。
- 例題(オリジナル): The committee struggled to ( ) the differences between the two opposing factions before the deadline.
- 選択肢の方向性: iron out(解決する)/ gloss over(ごまかす)/ stave off(食い止める)/ single out(選び出す)
- 正解の考え方: 「委員会は、対立する二派の相違を期限前に〜しようと苦心した」→ 文脈から iron out(しわを伸ばす=解決する)。out(解明・解消)の核心イメージから推測できる。
ポイント: 句動詞・イディオムの問題は、前置詞・副詞の核心イメージと文脈の論理で解けます。知らない表現でも、イメージから比喩的な意味を推測してみましょう。
まとめ
- 上級の句動詞も前置詞・副詞の核心イメージ(up / down / out / off / over)で束ねて覚える。
- 句動詞はフォーマルな1語動詞(abolish / engender / implement)に双方向で言いかえる。
- bear out と bear with など、混同しやすい句動詞は例文ごと覚える。
- 上級イディオム(a double-edged sword / at the expense of)は議論・エッセイにそのまま使える。
- 論じるためのコロケーション(strike a balance / address an issue)を蓄え、ライティング・スピーチの質を上げる。
- 大問1ではイメージ+文脈の論理で推測する力を鍛える。