この章で学ぶこと
確率分布 は 「確率変数がどの値をどのくらいの確率で取るか」 を一覧にしたもの。 この章では 離散型 (サイコロ・コインなど飛び飛びの値) を学びます。
- 確率変数 X とその 確率分布 を知る
- 期待値 (平均) E[X] の計算
- 分散 V[X] と 標準偏差 σ の計算
- 二項分布 B(n,p) の性質
- 確率変数の 線型性 (和と定数倍)
ポイント: 期待値は 「平均的にどのくらいになるか」、 分散は 「どのくらいばらつくか」 を表す。 数学 B の確率分布は統計学の入口です。
1. 確率変数と確率分布
確率変数
確率変数 X とは、 「どの値が出るか 試行するまでわからない 数値」。 確率とセットになっているのが普通の変数との違い。
例: サイコロ 1 回の目
| X (出る目) | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 |
|---|
| P(X=x) | 61 | 61 | 61 | 61 | 61 | 61 |
この表を 確率分布 (確率分布表) と呼ぶ。
確率分布の条件
| 条件 | 意味 |
|---|
| ① 0≤P(X=x)≤1 | 確率は 0 〜 1 の間 |
| ② ∑xP(X=x)=1 | すべての確率を足すと 1 |
2. 期待値 (平均)
定義
期待値 E[X] とは、 確率で重み付けした 「平均」。
E[X]=x∑x⋅P(X=x)
サイコロの期待値
E[X]=1⋅61+2⋅61+⋯+6⋅61=621=3.5
→ 「平均的には 3.5」 がサイコロの期待値。 6 回振れば合計は 約 21 になる。
期待値の性質
| 性質 | 式 |
|---|
| 定数倍 | E[aX]=aE[X] |
| 定数加算 | E[X+b]=E[X]+b |
| 和 (独立でなくとも OK) | E[X+Y]=E[X]+E[Y] |
例題 1
サイコロを 2 個振るとき、 出目の和X の期待値を求めよ。
解: X1,X2 をそれぞれの目とすると X=X1+X2。 期待値の和の性質から
E[X]=E[X1]+E[X2]=3.5+3.5=7
3. 分散と標準偏差
分散V[X]
分散 V[X] とは、 「期待値からのずれの 2 乗の平均」。
V[X]=E[(X−E[X])2]=x∑(x−E[X])2⋅P(X=x)
計算がラクな公式
V[X]=E[X2]−(E[X])2
標準偏差σ
σ(X)=V[X]
→ 単位が元の X と同じになり、 「どのくらいばらつくか」 を直感的に表す。
サイコロの分散と標準偏差
E[X2]=612+22+32+42+52+62=691
V[X]=691−3.52=691−449=12182−147=1235≈2.917
σ(X)=1235≈1.71
分散の性質
| 性質 | 式 |
|---|
| 定数倍 | V[aX]=a2V[X] |
| 定数加算 | V[X+b]=V[X] (平行移動でばらつきは不変) |
| 独立な和 | V[X+Y]=V[X]+V[Y] (X,Y が 独立 のときのみ) |
大事: E は 「線型性」 (いつでも和 OK)、 V は 「独立な場合だけ 和 OK」 と区別する。
4. 二項分布
定義
二項分布 B(n,p) とは、 確率p で成功する試行を n回独立に行い、 成功回数 X を確率変数とする分布。
確率関数
P(X=k)=(kn)pk(1−p)n−k(k=0,1,2,…,n)
ここで (kn) は 二項係数 (組合せ nCk と同じ)。
平均と分散
| 量 | 式 |
|---|
| 期待値 | E[X]=np |
| 分散 | V[X]=np(1−p) |
| 標準偏差 | σ=np(1−p) |
例題 2
確率p=0.2 で当たるくじを 10 回引くとき、 当たり回数X の期待値・分散・標準偏差を求めよ。
解: X∼B(10,0.2) なので
E[X]=10⋅0.2=2
V[X]=10⋅0.2⋅0.8=1.6
σ=1.6≈1.26
→ 「平均 2 回当たり、 ばらつきは約 1.3 回」
例題 3 (具体的な確率)
X∼B(5,1/3) のとき、 P(X=2) を求めよ。
解:
P(X=2)=(25)(31)2(32)3=10⋅91⋅278=24380
5. まとめ
| 概念 | 式 |
|---|
| 期待値 | E[X]=∑xP(X=x) |
| 分散 | V[X]=E[X2]−(E[X])2 |
| 標準偏差 | σ=V[X] |
| 二項分布 | P(X=k)=(kn)pk(1−p)n−k、 E=np、 V=np(1−p) |
6. 発展: aX+b の期待値と分散
確率変数X を 1 次変換 した Y=aX+b (a,b は定数) に対し
| 量 | 式 |
|---|
| 期待値 | E[Y]=aE[X]+b |
| 分散 | V[Y]=a2V[X] |
| 標準偏差 | σ(Y)=∣a∣σ(X) |
例題 4
サイコロの出目X に対して、 Y=2X−1 の期待値と分散を求めよ。
解: 第 3 節で求めた E[X]=3.5、 V[X]=35/12 を使う。
E[Y]=2⋅3.5−1=6,V[Y]=22⋅1235=335≈11.67
大事: 平行移動 (+b) は分散を変えない が、 拡大 (×a) は分散を a2倍 にする。 標準偏差では ∣a∣倍です。 次章の 標準化 で中心的に使う性質。
7. 期待値の応用例
例題 5 (くじの期待値)
1 等が 10 万円 (当選確率1/100)、 2 等が 1 万円 (当選確率5/100)、 残りは外れというくじがある。 1 枚あたりの賞金の期待値を求めよ。
解:
E[X]=100000⋅1001+10000⋅1005+0⋅10094=1000+500=1500 円
→ 1 枚の値段が 1500 円未満なら平均的に得、 1500 円より高ければ損と判断できる。 「期待値を価格と比べる」 のが経済的な意思決定の基本。
例題 6 (二項分布の確率)
ある試験の 1 問あたりの正答確率が p=0.7 であるとき、 10 問中 8 問以上正答する確率を求めよ。
解: X∼B(10,0.7)。 P(X≥8)=P(X=8)+P(X=9)+P(X=10)。
P(X=8)=(810)0.78⋅0.32≈45⋅0.0576⋅0.09≈0.2335
P(X=9)=(910)0.79⋅0.3≈10⋅0.0404⋅0.3≈0.1211
P(X=10)=0.710≈0.0282
→ P(X≥8)≈0.383 (約 38 %)。
次の章: 第 6 章では 連続型確率分布 に進み、 正規分布 (ガウス分布) を学びます。 二項分布の 「ならした形」 が正規分布と言えることも直感的に確認します。