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第 2 章は、 高校物理力学の出発点 「等加速度運動と落下運動」 です。 ガリレオが約 400 年前に発見した 「重い物と軽い物は同じ速さで落ちる」 という法則を、 数式であつかいます。
ポイント: この章の主役は 加速度 です。 中学では 「速さが変わるか変わらないか」 だけを区別しましたが、 高校では 「速さがどのくらいの割合で変わるか」 を数値で表します。
中学では 「速さ = 距離 ÷ 時間」 と学びました。 高校では 向き を含めた 速度 を使います。
| 量 | 記号 | 定義 | 単位 |
|---|---|---|---|
| 速さ (スカラー) | v | 進んだ距離 ÷ かかった時間 | m/s |
| 速度 (ベクトル) | v | 変位 ÷ かかった時間 | m/s + 向き |
変位 とは、 「始点から終点への矢印」 のことで、 道筋の長さ (距離) とは区別されます。
100 m を真っすぐ走り、 同じ道を戻ると:
| 量 | 値 |
|---|---|
| 距離 | 200 m (合計の道筋) |
| 変位 | 0 m (始点 = 終点) |
| 平均の速さ | 200 m ÷ 時間 |
| 平均の速度 | 0 m/s (向き付きでゼロ) |
加速度 とは、 「単位時間あたりの速度の変化」 です。
| 公式 | 単位 |
|---|---|
| 加速度 a = (速度の変化) ÷ (時間) = (v − v₀) / t | m/s² |
| 量 | 例 | 大きさ |
|---|---|---|
| 自動車が 0 → 60 km/h を 5 秒 | (16.7 − 0) / 5 | 約 3.3 m/s² |
| 新幹線の出発 | 緩やか | 約 0.7 m/s² |
| 重力 (地上) | g (一定) | 約 9.8 m/s² |
| ジェットコースター急降下 | 短時間 | 約 30 m/s² |
ポイント: 加速度が 正 なら 「速くなる」、 負 なら 「遅くなる」 とは限りません。 加速度と速度が 同じ向き なら加速、 反対向き なら減速です。
等速直線運動 は、 速度が一定 (大きさも向きも不変) の運動です。 加速度 = 0 の場合と言えます。
| 公式 | 意味 |
|---|---|
| x = v t | 位置 = 速度 × 時間 |
| グラフ | 形 | 面積 / 傾き |
|---|---|---|
| v-tグラフ | 横軸時間、 t 軸と平行な直線 | 直線と t 軸の間の面積 = 移動距離 |
| x-t グラフ | 横軸時間、 右上がりの直線 | 傾き = 速度 |
| 状況 | 計算 |
|---|---|
| 5 m/s で 10 秒 | x = 5 × 10 = 50 m |
| 20 m/s で 3 秒 | x = 20 × 3 = 60 m |
等加速度直線運動 とは、 加速度が一定 (向きも大きさも不変) で、 直線上を動く運動です。 高校物理力学の 最重要テーマ です。
初速度 v₀、 加速度 a、 時間 t のあとの速度 v、 変位 x として:
| 公式 | 何を求めるか |
|---|---|
| v = v₀ + a t | 時間から速度を求める |
| x = v₀ t + (1/2) a t² | 時間から変位を求める |
| v² − v₀² = 2 a x | 時間なしで速度・変位をつなぐ |
| 与えられた量 | 使う公式 |
|---|---|
| v₀, a, t を知っていて v を知りたい | v = v₀ + at |
| v₀, a, t を知っていて x を知りたい | x = v₀t + ½at² |
| v₀, a, x を知っていて v を知りたい (時間不明) | v² − v₀² = 2ax |
初速度 0、 加速度 2.0 m/s² で 5.0 s 走ったとき:
| 求める量 | 計算 | 答え |
|---|---|---|
| 5.0 s 後の速度 v | 0 + 2.0 × 5.0 | 10 m/s |
| 5.0 s 間の変位 x | 0 + (1/2) × 2.0 × 5.0² | 25 m |
| 50 m 走ったときの速度 v | √(2 × 2.0 × 50) | 約 14 m/s |
時速 36 km/h (= 10 m/s) で走る自動車が一定の加速度 −2.5 m/s² で減速して止まるまで:
| 量 | 計算 | 答え |
|---|---|---|
| 止まるまでの時間 | 0 = 10 + (−2.5) t → t = 4.0 s | 4.0 秒 |
| 止まるまでの距離 | 0² − 10² = 2 × (−2.5) × x → x = 20 m | 20 m |
| 形 | 意味 |
|---|---|
| t 軸と平行 (水平) な線 | 等速直線運動 (a = 0) |
| 右上がりの直線 | 等加速度 (a > 0) |
| 右下がりの直線 | 等減速 (a < 0) |
| 曲線 | 等加速でない運動 |
| 読む場所 | 表す量 |
|---|---|
| 縦軸の値 | その時刻の速度 |
| 直線の傾き | 加速度 |
| 直線と t 軸の間の面積 | 移動距離 |
横軸 0 〜 4 s、 縦軸 0 〜 8 m/s で、 v が直線的に 0 から 8 m/s まで上がるグラフ:
| 量 | 求め方 | 答え |
|---|---|---|
| 加速度 | 傾き = 8 / 4 | 2.0 m/s² |
| 4 s 間の距離 | 三角形の面積 = 1/2 × 4 × 8 | 16 m |
ポイント: v-t グラフの 面積 = 距離 は、 等加速度直線運動でも等速でも、 すべての直線運動で成り立ちます。 これを知っていると公式を忘れても図から答えが出せます。
自由落下 は、 「初速度 0 で、 重力だけを受けて落ちる運動」 です。 空気の抵抗は無視します。
地上での重力加速度 g は約 9.8 m/s² です。 計算を簡単にするために g = 10 m/s² として出題されることもあります。
等加速度直線運動の 3 公式で v₀ = 0、 a = g とおき換えるだけです。
| 公式 | 意味 |
|---|---|
| v = g t | t 秒後の速度 |
| y = (1/2) g t² | t 秒後の落下距離 |
| v² = 2 g y | y 落下後の速度 |
高さ 20 m から自由落下 (g = 9.8 m/s²):
| 量 | 計算 | 答え |
|---|---|---|
| 落下時間 | 20 = (1/2) × 9.8 × t² → t² = 4.08 → t ≈ 2.0 s | 約 2.0 秒 |
| 着地速度 | v = 9.8 × 2.0 ≈ 20 m/s | 約 20 m/s |
ガリレオ・ガリレイ (1564-1642) は、 ピサの斜塔から重い球と軽い球を同時に落として、 「重さによらず同じ速さで落ちる」 と主張したと伝えられています (実際は斜面実験)。
| 物体 | 真空中の落下 | 空気中の落下 |
|---|---|---|
| 鉄球 | g で落ちる | ほぼ g (空気抵抗小) |
| 羽根 | g で落ちる | g より遅い (抵抗大) |
大事: アポロ 15 号 (1971) の月面実験で、 ハンマーと羽根が月では 同時に落ちた ことが映像で確認されています。 月には空気がないからです。
鉛直投げ上げ は、 「初速度 v₀ で真上に投げ、 重力で減速し、 やがて落ちてくる運動」 です。 上向きを正として、 a = −g とします。
| 公式 | 意味 |
|---|---|
| v = v₀ − g t | t 秒後の速度 |
| y = v₀ t − (1/2) g t² | t 秒後の高さ |
| v² − v₀² = −2 g y | 高さ y での速度 |
初速度 19.6 m/s で真上に投げた場合 (g = 9.8 m/s²):
| 量 | 計算 | 答え |
|---|---|---|
| 最高点までの時間 | 0 = 19.6 − 9.8 t → t = 2.0 s | 2.0 秒 |
| 最高点の高さ | y = 19.6 × 2.0 − (1/2) × 9.8 × 2.0² | 19.6 m |
| 元の高さに戻る時間 | 上りと同じだけかかる | 4.0 秒 |
水平投射 は、 「水平に投げた物体が、 同時に落下する」 運動です。 水平と鉛直の 2 方向に 独立 に考えます。
| 方向 | 公式 |
|---|---|
| 水平 (x) | x = v₀ t (等速直線) |
| 鉛直 (y) | y = (1/2) g t² (自由落下) |
高さ 20 m から水平に 10 m/s で投射:
| 量 | 計算 | 答え |
|---|---|---|
| 落下時間 | 20 = (1/2) × 9.8 × t² → t ≈ 2.0 s | 約 2.0 秒 |
| 水平距離 | 10 × 2.0 | 約 20 m |
ポイント: 水平方向と鉛直方向は 独立 に進みます。 水平に投げた物と、 同じ高さから落とした物は 同時に着地 します。
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 速度 | ベクトルとしての速さ |
| 速さ | 速度の大きさ (スカラー) |
| 変位 | 始点から終点へのベクトル |
| 加速度 | 時間あたりの速度変化 |
| 等加速度直線運動 | a 一定の直線運動 |
| 自由落下 | 初速 0 で重力だけを受ける |
| 鉛直投げ上げ | 真上に投げ、 重力で減速 |
| 水平投射 | 水平に投げ、 同時に落下 |
| v-tグラフ | 縦軸速度、 横軸時間 |
物理 (発展) ではこの章の内容が 「斜方投射」 「相対速度」 へ拡張されます。 また 「運動量」 「力積」 と結びつき、 衝突の問題が出ます。 これらは章の終盤や物理 (発展) 範囲で学びますが、 ここで 「ベクトルで考える力学」 の基礎をしっかりつくりましょう。
落下実験は、 物体が床や人に当たる危険があります。
| 場面 | 危険 | 対策 |
|---|---|---|
| 自由落下実験 | 落下物が足に当たる | 足元にマット、 床の物をどける |
| 水平投射実験 | 物体が飛び出して友人に当たる | 飛行経路に人がいないことを確認 |
| 重い物の落下 | 床・机の破損 | 柔らかい物で受ける、 重量を抑える |
| 高所からの落下 | 速度が大きくなって危険 | 1 m 以内からの落下にとどめる |
| ストロボや動画撮影 | 撮影機材の転倒 | 三脚やクランプで固定 |
| ピサの斜塔風実験 | 落下物が階下を直撃 | 絶対に高所から投下しない |
| ルール | くわしく |
|---|---|
| ① 保護メガネ | 跳ね返り防止 |
| ② 進行方向に立たない | 飛ぶ・落ちる物の経路から離れる |
| ③ 床の整理 | 足元をクリアに |
| ④ 機材の固定 | カメラ・ストップウォッチ・センサーを固定 |
| ⑤ データは複数回 | 偶然誤差を減らすため |
大事: 「g = 9.8 m/s²」 と言うと小さいように思えますが、 1 m の高さから落ちた物は 着地時に約 4.5 m/s = 時速 16 km です。 自転車の速度と同じで、 当たればケガします。
次の章: 第 3 章では 「力と運動の法則」 を学びます。 ニュートンの 3 法則 (慣性・F=ma・作用反作用) を数式としてあつかい、 摩擦や斜面など入試定番の場面へ進みましょう。