この章で学ぶこと
第 8 章では、 静電気と電流 を数式で扱います。 中学で学んだ 「電流 が流れる」 を 電子 の流れ としてとらえ直し、 電場・電位・コンデンサー・直流回路 を学びます。
- クーロンの法則 で静電気力を計算できる
- 電場 E と 電位 V の関係を理解 する
- コンデンサー の 電気容量 と 静電エネルギー を計算できる
- オームの法則 V = IR、 抵抗 の直並列を計算できる
- ジュール熱 P = I²R を使える
- キルヒホッフの法則 で複雑な 直流回路 を解ける
ポイント: 中学で 「電流 = +(プラス) から −(マイナス) へ流れる」 と学んだが、 高校では 電流 の正体 = 電子 (マイナス) が逆向きに動く と学びます。 電子 の移動方向 は電流 とは逆です。
1. 静電気とクーロンの法則
電荷
物質をこすると + や − の 電荷 が現れます。 電子 (− の電荷) が移動 することにより、 物が + に帯電したり − に帯電したりします。 1 個の 電子 の電荷量 (の絶対値) を 電気素量 e と呼びます。
| 量 | 値 | 単位 |
|---|
| 電気素量 e | 1.6 × 10⁻¹⁹ | C (クーロン) |
| 1 C の電荷 | 約 6.25 × 10¹⁸ 個の 電子 | 個 |
クーロンの法則
2 つの点電荷 の間にはたらく力は、 電荷 の積に比例し、 距離 の 2 乗に反比例します。
| 関係式 | 説明 |
| F = k × q1 × q2 / r² | クーロンの法則 |
| k ≈ 9.0 × 10⁹ N·m²/C² | 真空中の クーロン定数 |
q1, q2 が同符号 (両方 + または両方 −) なら反発力、 異符号なら 引力 がはたらきます。
例題 1
電荷 q1 = +2.0 × 10⁻⁶ C と q2 = +3.0 × 10⁻⁶ C が距離 r = 0.30 m 離れているとき、 互いにはたらく力を求めよ。
解: F = 9.0 × 10⁹ × (2.0 × 10⁻⁶) × (3.0 × 10⁻⁶) / (0.30)² = 9.0 × 10⁹ × 6.0 × 10⁻¹² / 0.09 = 0.6 N (反発力)
2. 電場と電位
電気力線 は 電場 の向きと強さを視覚化したもの。 正電荷 から出て 負電荷 に入る。 線 の 密度が高いほど 電場 が強く、 線 の 接線 が 電場 の 向き を表す。
電場
電荷 の周りには 電場 (electric field) ができ、 その中に別の 電荷 を置くと力を受けます。
| 関係式 | 説明 |
| E = F / q | 電場 の定義 (単位電荷 あたりの力) |
| E = k × Q / r² | 点電荷 Q が距離 r に作る 電場 |
| F = q × E | 電場 E の中で 電荷 q が受ける力 |
電場 の単位 は N/C または V/m。 向きは + の 電荷 が受ける力の向きと一致します。
電位
電位 V は 単位電荷 あたりの 位置エネルギー で、 単位 は V (ボルト) = J/C。
| 関係式 | 説明 |
| V = k × Q / r | 点電荷 Q が距離 r に作る 電位 |
| U = q × V | 電荷 q が 電位 V の点で持つ 位置エネルギー |
| V = E × d (一様電場) | 電位差 = 電場 × 距離 |
ポイント: 電場 は ベクトル (向きがある)、 電位 は スカラー (向きがない、 数値のみ)。 解きやすさで使い分けます。
3. コンデンサー
平行板コンデンサ。 2 枚の 極板に 反対 符号 の 電荷 を 蓄え、 極板間 に 一様 な 電場 をつくる。 電気 容量 C = εS/d (S: 極板面積、 d: 板間隔)。
コンデンサー は 2 枚の 金属板 (極板) の間に絶縁体を挟んだ素子 で、 電荷 を蓄積 できます。
電気容量
| 関係式 | 説明 |
|---|
| Q = C × V | 蓄積電荷 = 電気容量 × 電圧 |
| C = ε × S / d | 平行板コンデンサー の容量 (S: 極板面積、 d: 極板間隔、 ε: 誘電率) |
静電エネルギー
コンデンサー に蓄えられるエネルギー:
| 関係式 | 説明 |
| U = (1/2) × C × V² | 容量 C と電圧 V で表す |
| U = Q × V / 2 | 電荷 Q と電圧 V で表す |
| U = Q² / (2C) | 電荷 Q と容量 C で表す |
コンデンサーの接続
| 接続 | 合成容量 |
|---|
| 並列接続 | C = C1 + C2 + ... (抵抗 の直列と同じ形) |
| 直列接続 | 1/C = 1/C1 + 1/C2 + ... (抵抗 の並列と同じ形) |
ポイント: コンデンサー と 抵抗 の直並列公式 は 逆 になるので注意 (抵抗の直列 = 容量の並列が同じ形)。
4. オームの法則と抵抗
オームの法則
抵抗 R の 導体 に電圧 V をかけると、 流れる電流 I は:
| 関係式 | 説明 |
| V = I × R | オームの法則 |
| R = ρ × L / S | 抵抗率 ρ、 長さ L、 断面積 S の抵抗 |
抵抗の直並列
| 接続 | 合成 抵抗 |
|---|
| 直列接続 | R = R1 + R2 + ... |
| 並列接続 | 1/R = 1/R1 + 1/R2 + ... |
例題 2
10 Ω と 30 Ω の 抵抗 を 並列 に接続 したときの合成抵抗 R を求めよ。
解: 1/R = 1/10 + 1/30 = 3/30 + 1/30 = 4/30
R = 30/4 = 7.5 Ω
5. 電力とジュール熱
電気 がする仕事 の速さ (電力) と、 抵抗で発生する熱 (ジュール熱) を求めます。
| 関係式 | 説明 |
| P = V × I | 電力 (単位: W ワット) |
| P = I² × R | 抵抗と電流で表す |
| P = V² / R | 抵抗と電圧で表す |
| Q = P × t = I² × R × t | ジュール熱 (単位: J ジュール) |
例題 3
100 V の電源 に 50 Ω の 抵抗 をつなぐ。 電力 と 1 分間の ジュール熱 を求めよ。
解: I = V/R = 100/50 = 2.0 A
P = V × I = 100 × 2.0 = 200 W
Q = P × t = 200 × 60 = 12000 J = 12 kJ
6. キルヒホッフの法則
複雑な回路を解くための 2 つの法則 です。
第 1 法則 (電流の法則)
回路の 任意の接続点 で、 流れ込む電流 の和 = 流れ出る電流 の和。
| 例 | 式 |
|---|
| 接続点 P に I1, I2 が流入、 I3 が流出 | I1 + I2 = I3 |
第 2 法則 (電圧の法則)
回路の 任意の閉路 を一周すると、 起電力 の和 = 電圧降下の和。
| 例 | 式 |
|---|
| 起電力 E、 抵抗 R1, R2 を直列で一周 | E = I × R1 + I × R2 |
解き方の手順
- 各枝路の電流 に文字 (I1, I2, ...) を置き、 仮の向きを決める
- 各接続点で第 1 法則 を立てる
- 各閉路で第 2 法則 を立てる (起電力 と電圧降下の符号に注意)
- 連立方程式を解く (負になったら仮定と逆向き)
ポイント: 電池 の 内部抵抗 r があると、 端子電圧は V = E − I × r になります (E: 起電力)。 内部抵抗を無視できる場合 のみ V = E とします。
7. 章末まとめと安全配慮
この章で学んだこと
- 電気素量 e = 1.6 × 10⁻¹⁹ C、 クーロンの法則 F = kq1q2/r²
- 電場 E (ベクトル) と 電位 V (スカラー)、 V = E × d
- コンデンサー Q = CV、 静電エネルギー U = (1/2)CV²
- 並列で容量増、 直列で容量減 (抵抗 と逆)
- オームの法則 V = IR、 直列 R = R1+R2、 並列 1/R = 1/R1+1/R2
- 電力 P = VI = I²R = V²/R、 ジュール熱 Q = Pt
- キルヒホッフの法則 (電流の法則 + 電圧の法則) で複雑回路を解析
安全配慮 — 高電圧と感電
電気 の実験 では 感電・短絡・火災 が主な危険 です。 100 V 以上を扱うときはとくに注意。
| 機材・場面 | 危険 | 対策 |
|---|
| コンデンサー (大容量) の充電 | 充電後の 感電 (コンデンサー は電源を切っても 電荷 を保持) | 使用前後に 放電 (抵抗 で短絡)、 端子を直接触らない |
| 直流高電圧電源 | 100 V 以上で 心室細動 の危険 | 電源 を切ってから配線、 ぬれた手で触らない |
| 抵抗の発熱 | 過大電流で 発火、 やけど | 定格電力 を超えない、 触らない (熱い) |
| 配線の 短絡 (ショート) | 大電流で 配線 融解・火災 | + と − を直接つながない、 ヒューズ を使う |
全章共通ルール
- 必ず電源 を切ってから配線を変更する
- ぬれた手で電気機器を触らない
- コンデンサー は使用後必ず 放電 する
- 異常 (焦げ臭い・煙) を感じたら即電源 を切る
次の章: 第 9 章では 磁場 と 電磁誘導 を学びます。 電流 が作る磁場、 磁場 が電流 に与える力 (フレミング左手)、 ファラデー の 電磁誘導、 交流 など、 発電機・モーターの原理 を学びます。