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第 4 章は、 力を 「エネルギー」 という別の視点 であつかう章です。 第 3 章の F = ma は 「瞬間」 の関係 でしたが、 エネルギー 保存則 は 「最初と最後」 だけをつなぐ 強力な武器 です。
ポイント: エネルギー の強さは、 「途中 の過程 を知らなくても、 始点と終点だけで答えが出る」 ことです。 ジェットコースター・ボールの跳ね返り・振り子 など、 一見複雑 な運動 も一瞬で解けます。
物理での 仕事 とは、 「力 が その向きに動かした距離」 です。 単位 は J (ジュール) = N・m。
| 公式 | 意味 |
|---|---|
| W = F d | 力と移動 が同じ向き |
| W = F d cos θ | 力と移動 の角度 が θ |
力 F と移動方向 のなす角度 が θ のとき、 移動方向 への力の成分 は F cos θ です。 仕事 は 「移動方向成分 × 距離」 とも言えます。
| θ | cos θ | W | 意味 |
|---|---|---|---|
| 0° | 1 | F d | 同じ向き、 最大の 仕事 |
| 60° | 1/2 | F d / 2 | 半分の 仕事 |
| 90° | 0 | 0 | 垂直 なら 仕事 ゼロ |
| 180° | −1 | −F d | 反対向き、 負 の 仕事 |
| 場面 | 仕事 |
|---|---|
| 重い荷物を持って 水平に歩く | 0 J (重力は鉛直、 移動 は水平) |
| 重い荷物を 持ち上げる | mg h (重力に逆らう) |
| 重い荷物を 持って静止 | 0 J (動いていない) |
| 動いている物体に 垂直 な力 | 0 J (例: 円運動 の 向心力) |
大事: 日常的な 「努力」 と物理の 「仕事」 は違います。 重い物を持って立ち続けても、 物理では W = 0 です (動いていないから)。
仕事率 P は 「1 秒 あたりの 仕事」 で、 単位 は W (ワット)。
| 公式 | 意味 |
|---|---|
| P = W / t | 仕事 ÷ 時間 |
| P = F v | 力 × 速度 (一定の力で等速に動かしているとき) |
| 単位 | 換算 |
|---|---|
| 1 W | 1 J / s |
| 1 kW | 10³ W |
| 1 馬力 (HP) | 約 746 W |
| 場面 | 計算 | 仕事率 |
|---|---|---|
| 50 kg の人が 5 m の階段を 10 秒 で上がる | (50 × 9.8 × 5) / 10 | 約 245 W |
| 自動車 のエンジン (100 kW) | 公称値 | 100 kW = 100 000 W |
| LED 電球 | カタログ値 | 約 7 W |
| エアコン (家庭用) | カタログ値 | 約 600 W |
ポイント: 仕事 (J) は 「どれだけ動いたか」、 仕事率 (W) は 「どれだけ速くやったか」 を表します。 階段を走って上がる人とゆっくり上がる人で、 仕事 は同じでも 仕事率 は違います。
動いている物体がもつ エネルギー を 運動エネルギー K と言います。
| 公式 | 単位 |
|---|---|
| K = (1/2) m v² | J (ジュール) |
| 物体 | 質量 m | 速度 v | K |
|---|---|---|---|
| ボール | 0.2 kg | 10 m/s | 10 J |
| 自転車 | 100 kg (人込み) | 5 m/s | 1250 J |
| 自動車 | 1500 kg | 20 m/s | 300 000 J = 300 kJ |
| ライフル弾 | 0.01 kg | 800 m/s | 3200 J |
物体に加えた 合力 の 仕事 は、 運動エネルギー の変化 に等しい (エネルギー と 仕事 の関係)。
| 公式 | 意味 |
|---|---|
| W = ΔK = (1/2) m v² − (1/2) m v₀² | 合力 の 仕事 = 運動エネルギー変化 |
質量 2 kg の物体に力を加えて 0 → 6 m/s に加速した:
| 量 | 計算 | 答え |
|---|---|---|
| ΔK | (1/2) × 2 × 6² − 0 | 36 J |
| 加えた 仕事 | = 36 J | 36 J |
地面を基準 として、 高さ h にある質量 m の物体がもつ 位置エネルギー U:
| 公式 | 単位 |
|---|---|
| U = m g h | J |
ばね定数 k のバネを自然長から x だけ伸ばした (or 縮めた) ときの 弾性エネルギー:
| 公式 | 単位 |
|---|---|
| U = (1/2) k x² | J |
| 物体 | U の計算 | 答え |
|---|---|---|
| 1 kg を 10 m の高さ (g = 9.8) | 1 × 9.8 × 10 | 98 J |
| バネ k = 100 N/m を 0.2 m 伸ばす | (1/2) × 100 × 0.2² | 2 J |
| 1 t (1000 kg) の車を 5 m | 1000 × 9.8 × 5 | 49 000 J = 49 kJ |
位置エネルギー は 基準点からの高さ で決まります。 地面でも、 机の上でも、 基準 を自由 に選べます。 大事なのは 「最初と最後で同じ基準」 で計算 することです。
摩擦 や空気抵抗 が 無視 できる とき、 運動エネルギー K と 位置エネルギー U の和 (力学的エネルギー) は 常に一定 に保たれます。
| 公式 | 意味 |
|---|---|
| K + U = 一定 | 力学的エネルギー保存則 |
| (1/2) m v₁² + m g h₁ = (1/2) m v₂² + m g h₂ | 状態 1 と状態 2 |
| F = ma で解く | エネルギー保存 で解く |
|---|---|
| 途中 の力を全部知る必要 | 始点と終点だけわかれば OK |
| 計算 が複雑 | 計算 がシンプル |
| 時間経過 が必要 な問題向き | 速度 と高さだけの問題向き |
高さ 20 m から落下する時の着地速度 (g = 9.8):
| 立式 | 計算 |
|---|---|
| m g h = (1/2) m v² | g h = (1/2) v² |
| v = √(2 g h) = √(2 × 9.8 × 20) | v ≈ 19.8 m/s |
長さ L の糸でつるした 振り子 を高さ h まで引き上げ、 静かに離すと、 最下点での 速度 は:
| 立式 | 結果 |
|---|---|
| m g h = (1/2) m v² | v = √(2 g h) |
自由落下 と同じ式が出ます。 振り子 が描く 経路 は関係 なく、 高さだけで決まります。
高さ h の斜面 から滑り落ちたとき、 斜面 の角度 や形に関係 なく、 最下点の速度は v = √(2 g h) です。
大事: 力学的エネルギー保存則 は 「経路 に関係 ない」 という美しい性質 を持ちます。 ジェットコースターが同じ高さまで上がらないのは、 摩擦 と空気抵抗 のせいです。
摩擦力 や空気抵抗 のように、 力学的エネルギー を 「熱」 や 「音」 に変えてしまう力を 非保存力 と言います。
| 力の種類 | 例 | 性質 |
|---|---|---|
| 保存力 | 重力・弾性力 | 位置エネルギー が定義 できる |
| 非保存力 | 摩擦・空気抵抗 | エネルギー を熱等に変換 |
摩擦 がある場合、 失われた 力学的エネルギー は 熱 になっています。
| 公式 | 意味 |
|---|---|
| (始点の K + U) − (終点の K + U) = 摩擦の仕事 | 失われた量 = 熱 |
| 摩擦の仕事 = μ N d | μ (動摩擦係数) × 垂直抗力 × 距離 |
質量 2 kg の物体が摩擦のある水平面 (μ = 0.3) を 5 m/s で滑り出して止まるまでの距離 (g = 10):
| 立式 | 計算 |
|---|---|
| (1/2) m v² = μ m g d | (1/2) × 2 × 5² = 0.3 × 2 × 10 × d |
| d = 25 / 6 | 約 4.2 m |
| 種類 | 例 |
|---|---|
| 力学的エネルギー | 動く物・高い場所の物 |
| 熱エネルギー | お湯・温かい物体 |
| 電気エネルギー | 電池・コンセント |
| 化学エネルギー | 食物・燃料 |
| 光エネルギー | 太陽光・LED |
| 音エネルギー | 楽器・スピーカー |
| 原子核エネルギー | 核反応 |
「エネルギー の形は変わっても、 全体の量は変わらない」 という法則 を エネルギー保存則 と言います。 物理学で最も重要 な原理の 1 つです。
| 場面 | エネルギー変換 |
|---|---|
| 水力発電 | 位置エネルギー → 運動エネルギー → 電気エネルギー |
| 光合成 | 光エネルギー → 化学エネルギー |
| ガソリンエンジン | 化学エネルギー → 熱 → 運動エネルギー (一部は廃熱) |
| 火力発電 | 化学エネルギー → 熱 → 蒸気 → 運動エネルギー → 電気エネルギー |
ポイント: 力学的エネルギー保存則 は 「摩擦 なし」 の条件 が必要 ですが、 エネルギー保存則 (一般) は 常に成り立ちます。 失ったように見えた エネルギー は、 必ず熱や音など別の形になっています。
エネルギー の章では、 重い物体を持ち上げたり落としたりする 実験 が増えます。 エネルギー が大きいほど、 事故 の衝撃 も大きくなります。
| 場面 | 危険 | 対策 |
|---|---|---|
| 重量物の持ち上げ | 腰を痛める、 落下でケガ | 腰ではなく膝で持ち上げる、 2 人以上 |
| 滑車 とおもり | おもりの落下、 指を挟む | 直下に立たない、 動作中触らない |
| バネ・ゴム | 跳ね返りの直撃 | 保護メガネ、 顔の高さに置かない |
| 振り子 | 周囲に当たる | 振り子 の軌道上に立たない |
| ジェットコースター 風実験 | レールから物体が飛ぶ | レール周りに受け皿 |
| エネルギー計算 の例 | 1 kg・1 m 落下で約 10 J | ハンマーで軽く叩かれる衝撃 |
| ルール | くわしく |
|---|---|
| ① 重量を事前に確認 | 5 kg 以上は 1 人で持たない |
| ② 持ち方 | 膝を曲げ、 背中を真っすぐ に |
| ③ 通路を空ける | 運ぶ際は視界 と経路を確保 |
| ④ 落下ゾーンに立たない | 重い物の真下を通らない |
| ⑤ 保護具 | 必要に応じて安全靴・手袋・ヘルメット |
| ⑥ 緊急時 | すぐ先生に報告 |
大事: エネルギー = (1/2) m v² は v の 2 乗 に 比例 します。 速度 が 2 倍になれば エネルギー は 4 倍 です。 自動車 の制動距離 が速度の 2 乗に 比例 するのも、 この法則 が理由です。
次の章: 第 5 章では 円運動 と 単振動 に進みます。 ここまでの直線運動 とは違い、 「回転する運動」 と 「くり返す運動」 の数式 を学びます。 周期 や 振動数 という新しい道具 が登場します。