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第 3 章は高校物理 力学 の心臓部 「ニュートンの運動 3 法則」 です。 第 2 章で学んだ 「加速度」 を 「なぜそう動くのか」 = 力で説明 できるようになります。
ポイント: F = ma は たった 1 つの式 ですが、 この章の 9 割がこの式の使いこなし です。 「どの物体に」 「どの向きに」 「何 N の力が 」 を図で整理 する力を育てましょう。
物理での 力 とは、 「物体の 速度 を変える もと」 です。 形を変える・止める・動かすすべてがこれに含まれます。
| 量 | 単位 | 大きさの目安 |
|---|---|---|
| 力 F | N (ニュートン) | 1 N ≈ 100 g の物を持ち上げる力 |
力は ベクトル なので、 「大きさ・向き・作用点」 の 3 つで完全に決まります。 図に描くときはこの 3 つを矢印 で表します。
| 要素 | 図での表現 |
|---|---|
| 大きさ | 矢印 の長さ |
| 向き | 矢印 の向き |
| 作用点 | 矢印 の始点 |
物体にはたらく力をすべて足して (= 合力) ゼロなら、 物体は 力のつりあい の状態 で、 等速直線運動 を続けるか、 静止します。
| 例 | つりあいの式 |
|---|---|
| 机の上の本 | 重力 mg = 垂直抗力 N |
| 天井からつるしたおもり | 重力 mg = 張力 T |
| バネにつるしたおもり | 重力 mg = 弾性力 kx |
| 力 | 性質 | 向き | 大きさ |
|---|---|---|---|
| 重力 | 地球が引く力 | 真下 (鉛直) | mg |
| 垂直抗力 | 面が押し返す力 | 面に垂直 | 場合による |
| 張力 | 糸・ロープが引く力 | 糸に沿って | 場合による |
| 弾性力 | バネが元に戻ろうとする力 | 変位と反対向き | F = kx (フックの法則) |
| 摩擦力 | 接触面ですべりを妨げる | 動こうとする向きと反対 | μN |
地表での重力は、 質量 m の物体に F = m g の力としてはたらきます (g ≈ 9.8 m/s²)。 「重さ = 重力」 であり、 質量 とは区別 します。
| 用語 | 意味 | 単位 |
|---|---|---|
| 質量 | 物体そのものの量 | kg |
| 重さ (重力) | その物体に働く重力の大きさ | N |
ポイント: 月に行くと 「質量」 は変わらないが 「重さ」 は約 1/6 になります (月では g ≈ 1.6 m/s²)。
バネには F = k x の力 (元に戻ろうとする向き) がはたらきます。 k は ばね定数 (N/m)、 x は自然長からの伸び (or 縮み) です。
摩擦力 には 2 種類あります。
| 種類 | いつはたらく | 大きさ |
|---|---|---|
| 静止摩擦力 | 動いていない物体を押すとき | 加えた力と同じ (最大値まで) |
| 最大静止摩擦力 | 動き出す直前 | μ₀ N (μ₀ は 静止摩擦係数) |
| 動摩擦力 | 動いている間 | μ N (μ は 動摩擦係数) |
ポイント: ふつう μ₀ > μ です。 「動き出す瞬間」 が一番力が必要、 「動き始めると軽くなる」 という体験 の通りです。
ニュートンの第1法則 = 慣性の法則: 「力が加わらなければ、 物体は 等速直線運動 を続けるか、 静止を続ける」。
慣性 とは、 物体が 「今の運動状態 を保とうとする性質」 です。 質量 が大きいほど 慣性 も大きく、 動かしにくく、 止めにくくなります。
| 場面 | 慣性のはたらき |
|---|---|
| 急ブレーキで体が前に倒れる | 体は 「動き続けよう」 とする |
| 急発進 で体が後ろに倒れる | 体は 「止まっていよう」 とする |
| ハンマーの柄を叩くと頭が締まる | 頭が動き続けようとして柄に入り込む |
| 毛布の上の食器をすばやく引く | 食器は静止を続けようとして残る |
ニュートンの第2法則 = 運動方程式: 「物体の 加速度 は、 受ける 合力 に 比例 し、 質量 に 反比例 する」。
| 公式 | 意味 |
|---|---|
| F = m a | 力 = 質量 × 加速度 |
| a = F / m | 同じ力でも重いものほど加速 しにくい |
| 量 | 単位 |
|---|---|
| F | N (ニュートン) |
| m | kg |
| a | m/s² |
| ⇒ 1 N = 1 kg・m/s² | 定義 |
質量 5 kg の物体を 10 N の力で押すと:
| 量 | 計算 | 答え |
|---|---|---|
| 加速度 | a = F/m = 10/5 | 2.0 m/s² |
| 3 秒後の 速度 (初速 0) | v = at = 2.0 × 3 | 6.0 m/s |
質量 2 kg の物体を水平に 8 N で引き、 動摩擦力が 4 N のとき:
| 量 | 計算 | 答え |
|---|---|---|
| 合力 | 8 − 4 | 4 N |
| 加速度 | a = 4/2 | 2.0 m/s² |
大事: F は 合力 (すべての力のベクトル和) です。 1 つの力だけではなく、 「物体に働くすべての力を図に描き、 向き付きで足す」 がスタートです。
ニュートンの第3法則 = 作用反作用: 「物体 A が B に力を加えると、 B も A に同じ大きさ・反対向きの力を加える」。
| 場面 | A → B | B → A |
|---|---|---|
| 歩く | 足が地面を後ろに押す | 地面が足を前に押す |
| ロケット | 燃焼ガスを後方へ噴射 | ガスがロケットを前へ押す |
| 泳ぐ | 手が水を後ろに押す | 水が手を前に押す |
| ぶつかる | A が B に力を加える | B も A に同じ力 |
| 区別 | 力のつりあい | 作用反作用 |
|---|---|---|
| どこにはたらく力か | 同じ物体 に 2 つの力 | 異なる 2 物体 が互いに |
| 大きさ | 同じ | 同じ |
| 向き | 反対 | 反対 |
| 例 | 机の本: 重力 vs 垂直抗力 | 本が机を押す vs 机が本を押す |
大事: 「机の上の本の重力と、 机から受ける 垂直抗力」 は つりあい であり、 作用反作用 ではありません。 入試でよく出るひっかけです。
斜面上の物体 (角度 θ、 質量 m) にはたらく重力を、 斜面方向 と 斜面 に垂直 な方向 に分けます。
| 方向 | 重力の成分 | 意味 |
|---|---|---|
| 斜面 に沿って (下向き) | mg sin θ | 滑り落とそうとする力 |
| 斜面 に垂直 | mg cos θ | 面を押す力 |
| 量 | 値 |
|---|---|
| 加速度 | a = g sin θ |
| 角度 θ = 30° | a = g/2 ≈ 4.9 m/s² |
| 角度 θ = 60° | a = (√3/2) g ≈ 8.5 m/s² |
| 角度 θ = 90° (垂直) | a = g (= 自由落下) |
動摩擦係数 μ のとき、 斜面下向きを正とすると:
| 力 | 値 |
|---|---|
| 斜面方向 の重力 | mg sin θ |
| 垂直抗力 | N = mg cos θ |
| 摩擦力 | μ N = μ mg cos θ |
| 合力 | mg sin θ − μ mg cos θ |
| 加速度 | a = g (sin θ − μ cos θ) |
θ = 30°、 μ = 0.2、 g = 10 m/s² の斜面:
| 計算 | 答え |
|---|---|
| sin 30° = 1/2、 cos 30° = √3/2 ≈ 0.87 | ─ |
| a = 10 × (0.5 − 0.2 × 0.87) | 約 3.3 m/s² |
複数 の物体が糸やバネでつながっているとき、 それぞれの物体ごとに F = ma を立て ます。 糸が伸び縮みしないなら、 つながった物体の 加速度 は同じ です。
質量 m₁ = 2 kg、 m₂ = 3 kg を糸でつなぎ、 m₂ を 10 N で引く (摩擦なし):
| 物体 | 立式 | 結果 |
|---|---|---|
| 全体 | 10 = (2 + 3) a | a = 2.0 m/s² |
| m₁ だけ | T = 2 × 2.0 | T = 4.0 N |
質量 m₁、 m₂ (m₁ > m₂) の物体を軽い糸・滑車 でつなぐ:
| 物体 | 立式 |
|---|---|
| m₁ (落ちる側) | m₁ g − T = m₁ a |
| m₂ (上がる側) | T − m₂ g = m₂ a |
| 解 | a = (m₁ − m₂) g / (m₁ + m₂) |
m₁ = 3 kg、 m₂ = 1 kg、 g = 10 m/s²:
| 計算 | 答え |
|---|---|
| a = (3 − 1) × 10 / (3 + 1) | 5.0 m/s² |
| T = m₂ (g + a) = 1 × (10 + 5) | 15 N |
力学台車・滑車・おもりを使う 実験 は、 物体が 飛び出す、 落下する、 指を挟む などの危険 があります。
| 場面 | 危険 | 対策 |
|---|---|---|
| 力学台車 | 台車 が机から落下 | 机の端に ストッパー、 床にマット |
| おもりの落下 | 足や機器 を直撃 | 真下に立たない、 重いおもりは使わない |
| 滑車 | 指を挟む | 動いている間は触らない |
| バネの跳ね返り | 顔への直撃 | 保護メガネ 必須 |
| 糸の 切断 | 重いおもりの落下 | 糸の強度 を事前に確認 |
| 斜面 からの飛び出し | 物体が加速して飛び散る | 斜面 の下に受け皿 |
| ルール | くわしく |
|---|---|
| ① 重い物の真下に立たない | 落下の直撃 を避ける |
| ② 保護メガネ | 跳ね返り・破片防止 |
| ③ 進行方向を空ける | 台車・振り子 の軌道 から離れる |
| ④ 機器 の固定 | 滑車・センサーをクランプで |
| ⑤ ロープ・糸の強度 | 想定重量の 2 倍以上を |
| ⑥ データ取得中は触らない | 信頼性と安全の両面 |
大事: 1 kg のおもりが 1 m から落下すると、 着地時の エネルギー は約 10 J です。 ハンマーで軽く叩かれた程度 の衝撃 があります。 油断しないでください。
次の章: 第 4 章では、 力のはたらきを 「仕事 と エネルギー」 という別の視点 から整理 し、 力学的エネルギー 保存則 を学びます。 F = ma が 「瞬間 の関係」 なら、 エネルギー 保存則 は 「全過程 の関係」 です。