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第 5 章は、 高校力学の仕上げ 「円運動と単振動」 です。 ここまで学んだ直線運動とは違い、 回転し続ける・くり返す 運動を数式であつかいます。
ポイント: 円運動や単振動は一見 「特殊」 に見えますが、 ボールを振り回す・振り子時計・バネ・惑星の公転・音波・光・交流電流・原子の振動まで、 自然界の多くを説明できる 基本道具 です。
等速円運動 は、 「半径 r の円周上を、 一定の速さ v で回る 運動」 です。 速さは一定でも、 向きが常に変わる ため、 速度 (ベクトル) は変化しています。
| 量 | 記号 | 定義 | 単位 |
|---|---|---|---|
| 周期 | T | 1 周にかかる時間 | s |
| 振動数 | f | 1 秒あたりの周回数 | Hz |
| 関係 | T = 1/f | 互いに逆数 | ─ |
角速度 ω は、 「1 秒あたりに中心で進んだ角度」 で、 ラジアン (rad) で表します。
| 公式 | 意味 |
|---|---|
| ω = 2π / T = 2π f | 1 周 = 2π ラジアン |
| v = r ω | 円周上の速度と角速度の関係 |
半径 0.5 m の円周を 2 秒で 1 周する:
| 量 | 計算 | 答え |
|---|---|---|
| 周期 T | ─ | 2 s |
| 振動数 f | 1/2 | 0.5 Hz |
| 角速度 ω | 2π / 2 | π rad/s |
| 速度 v | 0.5 × π | 約 1.57 m/s |
等速円運動では速さは一定ですが、 速度 (ベクトル) の 向きが変わり続け ます。 その変化が 向心加速度 で、 常に中心を向き ます。
| 公式 | 意味 |
|---|---|
| a = v² / r = r ω² | 半径 r、 速さ v の向心加速度 |
向心加速度を生み出す力を 向心力 と言います。 物体を円軌道に縛り続ける力で、 常に中心向き です。
| 公式 | 意味 |
|---|---|
| F = m v² / r = m r ω² | 質量 m の物体の向心力 |
| 場面 | 向心力の正体 |
|---|---|
| 糸で振り回すボール | 糸の 張力 |
| 自動車がカーブを曲がる | タイヤと路面の 摩擦力 |
| 人工衛星が地球を回る | 地球の 重力 (万有引力) |
| 電子が原子核の周りを回る | 静電気力 (古典模型) |
質量 0.5 kg のボールを長さ 1 m の糸でつなぎ、 1 秒に 1 回 (T = 1 s) 回す:
| 量 | 計算 | 答え |
|---|---|---|
| 角速度 ω | 2π / 1 | 2π rad/s |
| 速度 v | 1 × 2π | 約 6.28 m/s |
| 向心加速度 | (6.28)² / 1 | 約 39.5 m/s² |
| 向心力 (糸の張力) | 0.5 × 39.5 | 約 19.7 N |
大事: 「外向きの 遠心力」 は、 厳密には 回転する観察者から見た見かけの力 (慣性力) です。 静止した観察者から見れば、 物体に働くのは向心力だけです。
単振動 は、 「つりあい位置からの **変位に比例 し、 逆向きの復元力 がはたらく振動」 です。
| 公式 | 意味 |
|---|---|
| F = − k x | バネ型の復元力 |
| 加速度 a = − ω² x | x が大きいほど強く引き戻す |
| 量 | 記号 | 定義 | 単位 |
|---|---|---|---|
| 周期 | T | 1 回振動にかかる時間 | s |
| 振動数 | f | 1 秒あたりの振動回数 | Hz |
| 振幅 | A | つりあいからの最大変位 | m |
| 角振動数 | ω | 2π / T | rad/s |
時刻 t における位置・速度・加速度:
| 量 | 式 |
|---|---|
| 位置 | x = A sin (ω t) |
| 速度 | v = A ω cos (ω t) |
| 加速度 | a = − A ω² sin (ω t) = − ω² x |
| エネルギー | 式 |
|---|---|
| 運動エネルギー | (1/2) m v² |
| 弾性エネルギー | (1/2) k x² |
| 全エネルギー | (1/2) k A² (一定) |
ポイント: 単振動は エネルギー保存 の美しい例です。 つりあい位置では K が最大、 端では U が最大、 全体は一定です。
ばね定数 k のバネに質量 m のおもりをつけたバネ振り子の周期:
| 公式 | 意味 |
|---|---|
| T = 2π √(m / k) | 質量が大きいほどゆっくり |
m = 0.1 kg、 k = 10 N/m のバネ振り子:
| 量 | 計算 | 答え |
|---|---|---|
| T | 2π × √(0.1 / 10) = 2π × 0.1 | 約 0.63 s |
| f | 1/T | 約 1.6 Hz |
| 条件変更 | T の変化 |
|---|---|
| 質量 m を 4 倍 | T は 2 倍 |
| バネ定数 k を 4 倍 | T は 1/2 倍 |
| 振幅 A を大きく | T は変わらない (等時性) |
大事: 単振動の 周期は振幅に関係なく一定 です。 これを 等時性 と言い、 ガリレオがピサの大聖堂でシャンデリアを観察して発見したと伝えられます。
単振り子 は、 「軽い糸におもりをつけ、 真下から小さく揺らした振り子」 です。 振幅が小さいとき、 単振動とみなせます。
| 公式 | 意味 |
|---|---|
| T = 2π √(L / g) | 糸の長さ L、 重力加速度 g |
L = 1.0 m、 g = 9.8 m/s²:
| 量 | 計算 | 答え |
|---|---|---|
| T | 2π × √(1.0 / 9.8) ≈ 2π × 0.32 | 約 2.0 s |
| 条件変更 | T の変化 |
|---|---|
| 糸の長さ L を 4 倍 | T は 2 倍 |
| 重力加速度 g を 1/4 (月面) | T は 2 倍 |
| おもりの質量を変える | T は変わらない |
| 振幅を変える | T は変わらない (等時性) |
ポイント: 単振り子の周期は 質量によらず糸の長さと g だけで決まります。 この性質が、 振り子時計の精度を支えています。 1 m の振り子はちょうど約 2 秒 (1 往復) です。
等速円運動を 横から見る (= 円周上の点をまっすぐな直線に投影する) と、 その影は 単振動 になります。
| 等速円運動 | 投影 = 単振動 |
|---|---|
| 半径 r、 角速度 ω | 振幅 A = r、 角振動数 ω |
| 円周上の位置 (x, y) | 1 軸上の x = r cos (ω t) |
| 周期 T = 2π / ω | 周期 T = 2π / ω |
| 運動 | 周期 T |
|---|---|
| バネ振り子 | 2π √(m / k) |
| 単振り子 | 2π √(L / g) |
| 等速円運動 | 2π / ω = 2π r / v |
| 音波 (基本振動数 f) | 1/f |
| 交流電流 (50 Hz) | 1/50 = 0.02 s |
大事: 自然界には 「周期運動」 があふれています。 心拍・呼吸・潮の満ち引き・惑星公転・音波・光・電波・原子の振動。 高校物理の単振動が、 これらすべてを統一的に説明する出発点になります。
物体を鉛直な円周上で回すと (例: バケツに水を入れて振り回す)、 場所によって向心力の立て方が変わります。
| 位置 | 向心力を作るもの |
|---|---|
| 最下点 | 張力 − 重力 = m v² / r ⇒ T = m v² / r + m g |
| 最上点 | 張力 + 重力 = m v² / r ⇒ T = m v² / r − m g |
| 横 (水平) | 張力 = m v² / r |
最上点で糸がゆるまない条件は、 張力 T ≥ 0:
| 立式 | 条件 |
|---|---|
| m v² / r − m g ≥ 0 | v² ≥ g r |
| 最上点の最小速度 | v_min = √(g r) |
ポイント: バケツを振り回して水がこぼれないのは、 この条件を満たしているからです。 速さを落としすぎると、 最上点で水が落ちてきます。
振り子や円運動の実験は、 物体が周囲の人や機器に当たる 危険があります。
| 場面 | 危険 | 対策 |
|---|---|---|
| 大きな振り子 | おもりが顔・頭に当たる | 振り子の軌道上に立たない、 距離を取る |
| ボールを振り回す | 糸が切れて飛び散る | 糸の強度を事前に確認、 周囲を空ける |
| バネ振り子 | バネが跳ね返る | 保護メガネ、 顔の高さに置かない |
| 鉛直円運動 | 物体が落下 | 床にマット、 真下に立たない |
| 高速回転 | 物が飛び出す | 安全カバー、 距離確保 |
| ストロボ・動画撮影 | 機材の転倒 | 三脚とクランプで固定 |
| ルール | くわしく |
|---|---|
| ① 保護メガネ | 跳ね返り・破片防止 |
| ② 軌道上に立たない | おもりの通り道から 1.5 m 以上離れる |
| ③ 糸・チェーンの強度 | 想定重量の 3 倍以上 の強度 |
| ④ 結び目の確認 | 実験前に必ず引っ張って確認 |
| ⑤ 加速度の計算 | a = v²/r = (2π/T)² r ⇒ 想定より大きい力 |
| ⑥ 高速回転は短時間 | 摩擦や疲労で破損しやすい |
| ⑦ 終了後の確認 | 糸やバネの損傷を点検 |
大事: 1 m の振り子で質量 1 kg を振幅 0.5 m で振ると、 最下点の速度は約 1.6 m/s ( 力学的エネルギー保存則より)。 ハンマーが振りかぶられる程度の衝撃があります。 軽そうに見えても油断しないでください。
次の章: ここまでが高校力学の基礎 「直線運動・円運動・単振動」 の 1 周目です。 次の章からは 熱力学・波動・電磁気学 へ進み、 物理の全体像を広げていきます。 力学で鍛えた 「ベクトル」 「エネルギー保存」 「周期運動」 の視点が、 すべてに生きます。