この章で学ぶこと
第 6 章では、 波動 の基本 を学びます。 水面 の波や音、 光など、 自然界 にはさまざまな波があり、 共通 の法則 で説明 できます。
- 波 とは何か (媒質 の振動 が伝わる現象) を理解 する
- 横波 と 縦波 のちがいを知る
- 波長・周期・振動数・速さ の関係 (v = fλ) を使えるようになる
- 波の 反射・屈折・回折・干渉 を理解 する
- ホイヘンスの原理 と重ね合わせの原理 を学ぶ
- ドップラー効果 のしくみを公式 で計算 できるようになる
ポイント: 中学では 「波とは何か」 を定性的に学びました。 高校では 数式 で波を扱い、 反射・屈折・干渉 の計算 ができるようになります。
1. 波の基本
波 とは、 ある場所 で起きた 振動 (ゆれ) が、 周囲 の 媒質 を伝わって広がっていく現象 です。 波が伝わるとき、 媒質 そのものは移動 せず、 その場で振動 するだけです。
波を表す 4 つの量
| 量 | 記号 | 単位 | 意味 |
|---|
| 波長 | λ | m | 1 つの山から次の山までの長さ |
| 周期 | T | s | 1 回振動 するのにかかる時間 |
| 振動数 | f | Hz (ヘルツ) | 1 秒間 に何回振動 するか |
| 速さ | v | m/s | 波が進む速さ |
基本公式 (波の関係式)
| 関係式 | 説明 |
| v = f × λ | 波の速さ = 振動数 × 波長 |
| T = 1 / f | 周期 と 振動数 は 逆数 の関係 |
| λ = v × T | 波長 = 速さ × 周期 |
例題 1
振動数 f = 50 Hz、 波長 λ = 4 m の波の速さを求めよ。
解: v = f × λ = 50 × 4 = 200 m/s
大事: 波の速さ v は 媒質 で決まる (空気中の音は約 340 m/s、 水中では約 1500 m/s)。 振動数 f は 波を出す物で決まる (音源・光源等)。
2. 横波と縦波
横波 は波の進む向きと媒質の 振動方向が 垂直 (例: 光・弦 の 振動)。 縦波 は進む向きと 振動方向が 平行 (例: 音波・地震 P 波)。
波は、 媒質 の振動方向 と波の進行方向 の関係 で 2 種類 に分けられます。
横波と縦波のちがい
| 種類 | 振動方向 と進行方向 | 例 |
|---|
| 横波 | 垂直 (直角 に振動) | 水面 の波、 弦 の波、 電磁波 (光・電波) |
| 縦波 | 平行 (進行方向 と同じ向きに振動) | 音波、 地震波 の P 波 |
横波の形
横波は 山 (媒質 が上にふれる部分) と 谷 (下にふれる部分) が交互 に並びます。 弦 を弾いじいたときや、 水面に 石 を投げ入れたときの波が例です。
縦波の形
縦波は 媒質 が進行方向 に 押し寄せた 密 の部分 と 広がった 疎 の部分 が交互 に並びます。 これを 疎密波 とも呼びます。 音波 が代表例で、 空気 の 圧力 の 高低 が進行方向に沿って伝わります。
ポイント: 音波 は 縦波 です。 図に描くときは 疎密 のしま模様 で表すか、 便宜上横波 と同じ山谷 の形で表します (波を計算する上では同じ扱いができる)。
電磁波としての光
光 (可視光・紫外線・赤外線) は 電磁波 であり、 電場 と 磁場 が 直角 に振動 しながら進む 横波 です。 真空中での速さは c = 3.0 × 10⁸ m/s で、 全ての 電磁波 で共通です。
3. 波の反射と屈折
波が 境界 面 (異なる 媒質 のさかい) にぶつかると、 一部は 反射 し、 一部は 屈折 (折れ曲がって進む) します。
反射の法則
| 法則 | 内容 |
|---|
| 入射角 = 反射角 | 境界面の 法線 とのなす角が等しい |
| 入射波・反射波・法線 は同一平面上 | 3 本が 1 つの面にそろう |
屈折の法則 (スネルの法則)
異なる 媒質 へ波が入ると、 速さが変わるので進む向きが変わります。
| 関係式 | 説明 |
| sin i / sin r = v₁ / v₂ = n₁₂ | 入射角 i・屈折角 r・速さ v・屈折率 n の関係 |
| n = c / v | 絶対屈折率 n = 真空中の光速 ÷ 媒質中の光速 |
屈折のイメージ
水中でストローが折れて見える、 プールの底が浅く見えるなどは全て 屈折 が原因です。 光が水 ↔ 空気の境界で速さを変えるため、 進路が折れ曲がります。
ポイント: 振動数 f は媒質 が変わっても 変わらない。 変わるのは速さ v と 波長 λ。 これは光でも音でも同じです。
ホイヘンスの原理
「波面上の各点から 二次素元波 (small wavelet) が出て、 その共通接線が次の瞬間 の波面になる」 という原理 で、 反射・屈折・回折 のすべてを説明 できます。 高校では結論 (例: スネルの法則 の導出) を知れば十分 です。
4. 干渉と回折
波の干渉。 2 つの波源から出る波が重なり、 山+山 や 谷+谷 の場所で強め合い、 山+谷 の場所で弱め合う。 これが光の 干渉縞の原理。
重ね合わせの原理
2 つの波が同じ場所で出会うと、 その点での変位 は 2 つの波の変位 の和 になります。 これを 重ね合わせの原理 と言います。
| 場合 | 結果 |
|---|
| 山と山が重なる | 強め合う (強め合い、 振幅 が 2 倍) |
| 山と谷が重なる | 打ち消し合う (弱め合い、 振幅 が 0) |
干渉の条件
2 つの 波源 からの距離 の差 (経路差) を Δl、 波長 を λ とすると:
| 条件 | 結果 |
| Δl = m × λ (m = 0, 1, 2, ...) | 強め合う (山と山が重なる) |
| Δl = (m + 1/2) × λ | 弱め合う (山と谷が重なる) |
回折
波が 障害物 や 隙間 の後ろに回り込む現象 を 回折 と言います。 隙間 の幅が 波長 と同じくらいに狭いほど回折が強く起きます。
例: 部屋のドアの隙間から廊下の音が聞こえる (音の回折)。 光の場合は 波長 がとても短い (約 500 nm) ため、 隙間が大きいと回折しにくい。
定常波 (定在波)
同じ振動数・振幅 の 2 つの波が 逆向 き に進んで重なると、 進まないでその場でゆれるだけの 定常波 ができます。 弦楽器・気柱・笛の音がこれで説明 できます。 節 (動かない点) と 腹 (大きく振動 する点) が交互に並びます。
5. ドップラー効果
音源 と観測者のどちらか (または両方) が動いていると、 観測される 振動数 が変わる現象 を ドップラー効果 と言います。 救急車のサイレンが近づくと高く、 遠ざかると低く聞こえるのが例です。
ドップラー効果の公式
音速を V、 音源の速さを vS、 観測者の速さを vO、 元の 振動数 を f、 観測者が聞く 振動数 を f' とする:
| 状況 | 公式 |
| 音源が観測者に近づく | f' = V / (V − vS) × f (高く聞こえる) |
| 音源が観測者から遠ざかる | f' = V / (V + vS) × f (低く聞こえる) |
| 観測者が音源に近づく | f' = (V + vO) / V × f |
| 観測者が音源から遠ざかる | f' = (V − vO) / V × f |
| 両方動く一般式 | f' = (V ± vO) / (V ∓ vS) × f |
一般式の符号ルール
一般式での符号は、 音源 → 観測者 の向きを正とすると覚えやすい:
- 観測者 vO: その向きに動けば +、 逆なら −
- 音源 vS: その向きに動けば +、 逆なら −
- 結果として 「近づくと f' 増、 遠ざかると f' 減」 となる
例題 2
サイレン (f = 600 Hz) を鳴らす救急車が静止した観測者に音速 V = 340 m/s に対して vS = 20 m/s で近づくとき、 観測者が聞く振動数 f' は?
解: f' = V / (V − vS) × f = 340 / (340 − 20) × 600 = 340 / 320 × 600 = 637.5 Hz
ポイント: 光でも ドップラー効果 は起きます (赤方偏移 = 銀河 が遠ざかると光の 振動数 が下がり赤寄りに見える)。 ハッブルの法則 や宇宙 の膨張観測の基礎 です。
6. 章末まとめと安全配慮
この章で学んだこと
- 波 = 媒質 の 振動 が伝わる現象、 4 つの量 (λ, T, f, v) と公式 v = fλ
- 横波 (光・水面波) と 縦波 (音・疎密波) のちがい
- 反射 の法則 (入射角 = 反射角)、 屈折 の法則 (スネルの法則)
- ホイヘンス の原理、 重ね合わせの原理、 干渉・回折・定常波
- ドップラー効果 (近づくと高く、 遠ざかると低く聞こえる)
安全配慮 — 音響実験と機材の扱い
波動 の実験 では、 大きな音や機材の落下に注意 が必要 です。
| 実験 | 危険 | 対策 |
|---|
| 音叉 (おんさ)・スピーカーでの 共鳴実験 | 大音量での 聴覚障害 | 音量は小さめから始める、 耳栓 を用意する、 連続鳴らさない |
| 弦 の 定常波実験 | 弦が切れて飛ぶ、 おもり が落下 | 保護メガネ着用、 おもり の真下に立たない |
| ウォータータンクでの 水波実験 | 水こぼし → 感電 の可能性 | 電源 と水を離す、 こぼれたら即拭く |
全章共通ルール
- 大音量機器は必ず音量を 最小 から始める
- 超音波機器は鼓膜 へ直接向けない
- 実験終了後は全機材の電源 を切る
次の章: 第 7 章では、 この章で学んだ波動 の法則 を 音と光 に具体化します。 うなり、 弦 や 気柱 の共鳴、 レンズ と ヤング の干渉実験 など、 身近な現象 が公式 で解けるようになります。
ドップラー効果 — 音源が動くと、 進行方向では波長が短くなり (高音)、 反対側では長くなる (低音)。 救急車のサイレンが通り過ぎる時に音が下がって聞こえる現象の原理。