この章で学ぶこと
第 7 章では、 第 6 章の波動 の法則 を 音 と 光 に具体化します。 楽器やカメラ、 メガネなど身近な道具のしくみが数式 で説明 できるようになります。
- 音波 の性質 (高さ・大きさ・音色) を理解 する
- うなり と 共鳴 の仕組みを学ぶ
- 弦 の振動 と 気柱 の 共鳴 (笛・楽器) を計算できる
- 光の 反射・屈折・全反射 を理解 し、 屈折率 の計算ができる
- ヤング の実験と 回折格子 の公式 を使える
- 凸レンズ・凹レンズ の 像 を レンズの公式 で求められる
ポイント: 音 = 縦波、 光 = 横波 (電磁波) という 媒質 のちがいはあるが、 「波としての性質 (反射・屈折・干渉・回折)」 は共通。
1. 音波の基本
音の 3 要素
音の聞こえ方は 3 つの要素 で決まります。
| 要素 | 物理量 | 単位 | 備考 |
|---|
| 高さ | 振動数 f | Hz | 大きいほど高い音、 人間 の 可聴域 は約 20 〜 20,000 Hz |
| 大きさ | 振幅 | (相対値) | 音圧 レベル dB で表す |
| 音色 | 波の形 | (なし) | 倍音 の含まれ方で変わる |
音速
空気中の音速 V は、 温度 t (℃) によって変わります。
| 関係式 | 説明 |
| V = 331.5 + 0.6 × t (m/s) | 気温が上がるほど音速が速い |
| 15 ℃ で約 340 m/s | 標準としてよく使う値 |
音の 反射 (こだま)
音が山や壁にぶつかって戻ってくると こだま (山彦) が聞こえます。 音速 V、 往復時間 t とすると距離 L = V × t / 2 で求まります。
2. うなりと共鳴
うなり
振動数 が わずかにちがう 2 つの音を同時に鳴らすと、 「ワンワンワン」 と 大小が周期的に変わる 音が聞こえます。 これを うなり と言います。
| 関係式 | 説明 |
| うなりの振動数 N = |f1 − f2| | 2 つの 振動数 の差 |
例題 1
振動数 440 Hz と 444 Hz の音を同時に鳴らすと、 1 秒間 に何回うなりが聞こえるか?
解: N = |440 − 444| = 4 回 / 秒
共鳴
物体には固有 の 固有振動数 があり、 同じ 振動数 の外力 が加わると大きく振れます。 これを 共鳴 (共振 とも) と言います。
例: 音叉を同じ 振動数 の別の音叉の近くで鳴らすと、 鳴っていない方も振動 し始める。
3. 弦と気柱の振動
楽器の音は 弦 (ギター・バイオリン) や 気柱 (フルート・クラリネット・トロンボーン) の 定常波 で説明 できます。
弦の振動
両端を固定した弦では、 両端が 節 になる 定常波 ができます。 弦の長さを L、 波長 を λ、 弦を伝わる波の速さを v とする:
| 振動 モード | 関係式 |
| n 倍振動 (n = 1, 2, 3, ...) | L = n × λ / 2、 つまり λn = 2L / n |
| 固有振動数 fn | fn = v / λn = n × v / (2L) |
| 基本振動 (n = 1) | f1 = v / (2L)、 最も低い音 |
気柱の振動
開管 (両端が開いた管)
両端が 腹 の 定常波。 fn = n × v / (2L) (n = 1, 2, 3, ...)
閉管 (片方が閉じた管)
閉端が 節、 開端が 腹。 奇数倍振動 のみ起きる:
| 振動 モード | 関係式 |
| 奇数倍振動 (n = 1, 3, 5, ...) | L = n × λ / 4 |
| 固有振動数 fn | fn = n × v / (4L) |
| 基本振動 | f1 = v / (4L)、 開管の半分 |
ポイント: 同じ長さなら閉管の基本音は開管の半分 (1 オクターブ低い)。 クラリネット (閉管) とフルート (開管) の違いはここに現れます。
4. 光の性質
光の速さ
真空中の光速 c = 3.0 × 10⁸ m/s。 媒質中では遅くなり、 v = c / n (n: 屈折率)。
反射と屈折
| 法則 | 内容 |
|---|
| 反射の法則 | 入射角 = 反射角 |
| 屈折の法則 (スネル) | n1 × sin θ1 = n2 × sin θ2 |
全反射
光が 屈折率 が大きい 媒質 から小さい 媒質 へ 進むとき、 入射角 がある角度を超えると 完全に反射 されます。 この限界角を 臨界角 と言います。
| 関係式 | 説明 |
| sin θc = n2 / n1 (n1 > n2) | 臨界角 θc |
| θ > θc なら 全反射 | 光ファイバー・プリズムの原理 |
光の分散とスペクトル
プリズム に白色光を通すと、 赤・橙・黄・緑・青・藍・紫 の 7 色に 分かれる (分散)。 波長 によって 屈折率 が 異なるため。 これが 虹 のしくみでもある。
白色光 (太陽光) をプリズムに通すと 赤・橙・黄・緑・青・藍・紫 に分かれます。 これは 屈折率 が 波長 によって異なる (赤が小さく紫が大きい) ためです。 この現象 を 光の分散 と言い、 できた帯を スペクトル と言います。
5. 光の干渉
ヤングの実験
2 つの スリット から出た光がスクリーン上で干渉 し、 明暗の縞 (干渉縞) を作ります。 スリット間隔 d、 スリットとスクリーンの距離 L、 波長 λ として:
| 関係式 | 説明 |
| 明線の位置 x = m × L × λ / d | m = 0, 1, 2, ... (強め合い条件) |
| 暗線の位置 x = (m + 1/2) × L × λ / d | (弱め合い条件) |
| 明線の間隔 Δx = L × λ / d | 等間隔 |
回折格子
ガラス板に 数千本 / mm の細い溝を刻んだもの。 格子定数 (溝の間隔) を d とする:
| 関係式 | 説明 |
|---|
| d × sin θ = m × λ (m = 0, 1, 2, ...) | 角度 θ の方向 に明るい光が出る |
薄膜の干渉
シャボン玉 の 表面 に 現れる 虹色 の 模様 は 薄膜の干渉 によるもの。 膜 の 表面 と 裏面 で 反射 した光が干渉 し、 膜 の 厚さに 応じて強め 合う 波長 (色) が 変わるため、 場所 ごとに 違う色が見える。
シャボン玉や油膜が 七色 に見えるのは、 膜の表面と裏面で反射した光が干渉 するためです。 膜の 厚さ と 屈折率 の組み合わせで強め合う 波長 が変わり、 色として見えます。
6. レンズと像
凸レンズと凹レンズ
| 種類 | 形 | 光を | 用途 |
|---|
| 凸レンズ | 中央が厚い | 集める (集光) | カメラ、 拡大鏡、 老眼鏡 |
| 凹レンズ | 中央が薄い | 広げる (発散) | 近視用メガネ、 ファインダー |
レンズの公式
物体からレンズまでの距離 を a、 レンズから像までの距離 を b、 焦点距離 を f とする:
| 関係式 | 説明 |
| 1 / a + 1 / b = 1 / f | レンズの公式 (凸レンズ・凹レンズ共通) |
| 倍率 m = b / a | 像の大きさ ÷ 物体の大きさ |
符号の約束
- f: 凸レンズ は正、 凹レンズ は負
- a: 物体が通常の位置にあるなら正
- b: 実像 は正、 虚像 は負
例題 2
焦点距離 f = 20 cm の 凸レンズ の前 30 cm に物体を置く。 像の位置 b と倍率 m を求めよ。
解:
1 / 30 + 1 / b = 1 / 20
1 / b = 1 / 20 − 1 / 30 = 3 / 60 − 2 / 60 = 1 / 60
b = 60 cm (レンズの反対側に 実像)
m = 60 / 30 = 2 倍 (実物の 2 倍の大きさで倒立 実像)
7. 章末まとめと安全配慮
この章で学んだこと
- 音 = 縦波、 3 要素 (高さ・大きさ・音色)、 V = 331.5 + 0.6t
- うなり N = |f1 − f2|、 共鳴 (固有振動数 と一致で大振動)
- 弦 と開管: fn = n v / (2L)、 閉管: fn = n v / (4L) (奇数倍のみ)
- 光の 屈折・全反射 (sin θc = n2/n1)・分散
- ヤングの干渉縞間隔 Δx = Lλ/d、 回折格子 d sin θ = mλ
- レンズの公式 1/a + 1/b = 1/f、 倍率 m = b/a
安全配慮 — 光学レーザーと強光源
光学実験 では レーザー光 による 目の損傷 が最大の危険 です。 取り扱いには細心の注意 を払います。
| 機材 | 危険 | 対策 |
|---|
| He-Ne レーザー (赤) | 直視で 網膜 損傷、 失明 の可能性 | 絶対に直視しない、 反射光にも注意、 教師 の立ち会い必須 |
| 高出力 LED・ハロゲン ランプ | 紫外線・赤外線 による熱傷・眼疲労 | 保護メガネ (UV カット) 着用、 長時間直視しない |
| プリズム・凸レンズで太陽光を集光 | 火災・皮膚やけど | 太陽をレンズでのぞかない、 紙に集光しない |
| ヤングの干渉実験 | 暗室内での転倒 | 床に配線を這わせない、 手元灯 を用意 |
全章共通ルール
- レーザー光は 必ず水平以下 に向ける (人の目の高さを通らない)
- 反射鏡・金属面での反射を想定して配置を決める
- クラスメイトの視線方向に光路を向けない
次の章: 第 8 章では 電場 と 電流 を学びます。 クーロンの法則・電位・コンデンサー・オームの法則・直流回路 など、 電気工学の基礎が詰まった章です。