この章で学ぶこと
中学 3 年で学ぶ 「公民」 は、 1・2 年で学んだ 地理 と 歴史 の上に立つ、 社会科のしめくくりの分野です。
地理は 「今の世界と日本がどこにあって、 どうなっているか」 を学びました。 歴史は 「過去からどう今につながったか」 を学びました。
公民は、 そこから一歩進んで 「今の社会がどう動いているか、 そしてこれからどうするか」 を考える分野です。
- 公民 とは何かを知る (主権者を育てる学問)
- 現代社会 の 3 つの特色 (グローバル化・情報化・少子高齢化) をつかむ
- 持続可能性 (SDGs) とは何か、 なぜ大切かを学ぶ
- 18 歳選挙権が持つ意味を考える
- 1 年間の公民学習の流れをイメージする
ポイント: 公民は 「正解を暗記する科目」 ではありません。 多様な立場の人が一緒に暮らす社会を、 どうつくっていくかを自分の頭で考える 学問です。
1. 公民とは何か
「公民」 という言葉は、 公 (おおやけ、 みんなにかかわること) の民 (一人の国民・住民) という意味です。 つまり、 「社会の一員として、 みんなのことを考える人」 を育てるのが公民の学習です。
なぜ中学で公民を学ぶのか
| 理由 | くわしく |
|---|
| ① 18 歳で大人になる | 2022 年から 18 歳が成人 (民法改正)。 わずか 5 年後 |
| ② 18 歳で選挙権 | 2016 年から 18 歳で投票できる。 高校在学中に選挙が来る |
| ③ 社会を動かす一員 になる | 大人はみんな、 選挙・納税・労働などで社会を支える |
| ④ 多様な意見と出会う | 学校を出ると、 考え方のちがう多くの人と共に暮らす |
公民で扱う 4 つの大きな領域
| 領域 | 学ぶこと | このシリーズでの章 |
|---|
| A 現代社会 | 現代の特色・文化・多様性 | Ch1・Ch2 |
| C 政治 | 人権・憲法・国会・内閣・裁判所・地方自治 | Ch3・Ch4・Ch5・Ch6 |
| B 経済 | 市場・家計・企業・財政・社会保障 | Ch7・Ch8 |
| D 国際社会 | 国際法・国際連合・SDGs・地球規模の課題 | Ch9・Ch10 |
ポイント: 1・2 年の地理・歴史とちがい、 公民は 「今を生きるわたしたち自身の話」 が中心です。 ニュースで見る出来事とつながる場面が多くなります。
2. 現代社会の特色 ① グローバル化
「グローバル化」 とは、 国境をこえて人・モノ・お金・情報が行き来することが増え、 世界が一体につながる動き です。
グローバル化の例
| 分野 | 例 |
|---|
| モノ | スマホの部品は中国・韓国・台湾・アメリカなど世界中でつくられる |
| 人 | 外国への旅行・留学・出かせぎ。 日本で働く外国人も増えている |
| お金 | 円とドルの交換 (為替)、 海外への投資 |
| 情報 | インターネットで世界中のニュースが一瞬で届く |
| 食 | 朝のパン (アメリカ・カナダの小麦)、 寿司 (チリのサーモン) |
グローバル化の良い面と課題
| 良い面 | 課題 |
|---|
| 安く多様な商品が手に入る | 国内産業が海外との競争で苦しくなる |
| 世界の文化にふれられる | 文化のちがいから摩擦や偏見が生まれる |
| 世界規模の問題にみんなで取り組める | 感染症や経済危機も一瞬で広がる |
大事: グローバル化は 「良いこと」 でも 「悪いこと」 でもなく、 「事実として進んでいる動き」 です。 大切なのは、 良い面を活用し、 課題にはどう向き合うかを考えること。
3. 現代社会の特色 ② 情報化
「情報化」 とは、 コンピューター・スマホ・インターネットが暮らしの中心になり、 大量の情報がやり取りされる社会 になることです。
情報化の主な動き
- インターネット: 1990 年代から一般に広がる
- スマートフォン: 2010 年代から急速に普及
- SNS (X・Instagram・LINE など): 個人が世界へ発信できる時代
- AI (人工知能): 画像・文章生成、 自動翻訳、 自動運転
- キャッシュレス決済: 現金を使わず、 スマホで支払う
情報化の良い面
| 良い面 | 例 |
|---|
| すぐ調べられる | 知識へのアクセスが容易 |
| 遠くとつながる | ビデオ通話で海外とも顔を見て話せる |
| 自分から発信できる | 個人が動画・文章を世界へ |
| 業務が効率化 | 紙をデジタル化、 在宅勤務、 自動化 |
情報化の課題 (情報モラル)
「情報モラル」 とは、 情報を使うときのマナーとルールです。
| 課題 | 例 |
|---|
| 個人情報の流出 | SNS の写真から住所が特定される |
| フェイクニュース | うその情報が SNS で拡散され信じられる |
| 著作権の侵害 | 他人の写真・音楽を無断で使う |
| 依存 | スマホばかり見て勉強や睡眠が不足 |
| デジタル・デバイド | 機器を使える人と使えない人の格差 |
| 誹謗中傷 | SNS での攻撃が人を追い詰める |
大事: 情報は力を持ち、 同じくらい危険も持ちます。 情報を受け取る時は出所を確認し、 発信する時は相手を思いやる。 これが公民としての基本です。
4. 現代社会の特色 ③ 少子高齢化
「少子高齢化」 とは、 生まれる子どもの数が減り (少子化)、 65 歳以上の高齢者の割合が増える (高齢化) こと です。
数字で見る日本
| 指標 | 1970 年 | 2020 年 |
|---|
| 合計特殊出生率 (1 人の女性が一生に産む子の平均) | 約 2.13 | 約 1.33 |
| 65 歳以上の割合 | 約 7 % | 約 28 % |
| 総人口 | 約 1 億 400 万人 | 約 1 億 2600 万人 (頭打ち、 減少局面) |
メモ: 人口を維持するには出生率がおよそ 2.07 必要。 日本は 50 年以上、 これを下回っている。
少子化の主な原因
- 晩婚化 (結婚が遅くなる)・未婚化
- 教育費・住宅費 など子育てにかかるお金の大きさ
- 共働き が増えたのに、 育児・家事の負担が女性に偏 (かたよ) る
- 子を持つことが 「義務」 から 「選択」 へ変わった
高齢化の主な原因
- 医療の発達と食生活の向上による 平均寿命 の大はばなのび (約 84 歳で世界トップクラス)
- 戦後ベビーブーム世代 (団塊の世代) が高齢期へ
少子高齢化がもたらす課題
| 分野 | 課題 |
|---|
| 労働力 | 働く人が減り、 経済が縮小する心配 |
| 社会保障 | 年金・医療・介護を支える現役世代が減る |
| 地域 | 地方の過疎・空き家の増加 |
| 学校 | 統廃合、 部活の維持が難 (むずか) しくなる |
どうするか (考える視点)
- 子育て支援 の充実 (保育所・育児休暇)
- 女性・高齢者・外国人 が働きやすい社会
- AI・ロボット の活用
- 地域 で助け合うしくみ
ポイント: 少子高齢化に 「これが正解」 という単一の答えはありません。 多様な視点から議論 し、 みんなで決めていく必要があります。 これこそが公民の学習そのものです。
5. 持続可能な社会と SDGs
「持続可能 (サステナブル)」 とは、 今のわたしたちだけでなく、 これから生まれてくる世代 (将来世代) も豊かに暮らせること を大切にする考え方です。
この考え方を世界で共有する約束が、 SDGs (エス・ディー・ジーズ、 持続可能な開発目標) です。
SDGs の基本
- 採択: 2015 年、 国際連合 (国連) サミットで全加盟国 (193 か国) が合意
- 目標年: 2030 年
- 目標の数: 17 (例: 貧困をなくそう、 質の高い教育を、 ジェンダー平等を、 気候変動に具体的な対策を)
- 17 目標の下に 169 のターゲット がある
SDGs の大きな特ちょう
| 特徴 | 内容 |
|---|
| 誰一人取り残さない | (Leave no one behind) 弱い立場の人を置き去りにしない |
| 先進国も対象 | 開発途上国だけでなく日本も行動が必要 |
| 3 つのバランス | 経済成長と社会的包摂と環境保護 |
わたしたちにできることの例
- 地球環境: 食べ残しを減らす、 リサイクルに協力、 マイボトルを使う
- 多様性: 国籍・性別・障害・宗教のちがいを尊重する
- 学び: ニュースに関心を持ち、 自分で調べる習慣
- 発信: SNS で正確な情報を広げる
大事: SDGs は 「すごい人がやること」 ではなく、 わたしたち一人ひとりの毎日の選択の積み重ね です。 ペットボトルを 1 本リサイクルすることも SDGs の一歩です。
まとめと安全配慮
この章のまとめ
| 学んだこと | キーワード |
|---|
| 公民とは | みんなのことを考える主権者を育てる分野 |
| 現代の特色 ① | グローバル化 (世界が一体につながる) |
| 現代の特色 ② | 情報化 (大量の情報と情報モラル) |
| 現代の特色 ③ | 少子高齢化 (人口構成の大きな変化) |
| 持続可能な社会 | SDGs (2030 年目標、 17 目標) |
安全配慮 — 多様な意見の尊重
公民では、 一つの問題に対して いくつもの立場・意見 があるのがふつうです。 たとえば
- グローバル化を 進める べきか、 国内産業を守る べきか
- 子育て支援のお金を 増やす べきか、 税金を下げる べきか
- スマホを 規制 すべきか、 自由な利用 を認めるべきか
これらには 「絶対の正解」 はありません。 大切なのは、
- 自分とちがう意見にも耳をかたむける
- データや事実にもとづいて考える
- 「なぜそう思うか」 を言葉にする
- 多数決で決まった後も、 少数意見を大切にする
これらは 民主主義の基本 であり、 公民学習のいちばん大切な力です (Ch3 でくわしく)。
主権者としての自覚
あなたはあと数年で 18 歳、 選挙権を持つ一人の大人になります。 公民の 1 年間は、 その準備の時間です。
次の章では, 文化と多文化共生 (Ch2)、 人権の歴史 (Ch3) へと進みます。 公民の学びを楽しんでいきましょう。