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ここから 2 章は 国際社会 の学習です。 第 9 章では、 国家どうしのつながりと、 平和のためのしくみを学びます。
ポイント: 国際社会には世界全体を治める政府はありません。 だからこそ 国家どうしの話し合い と 国際機関 が重要になります。 この章では特定の国を 「正しい / 間違っている」 と評価するのではなく、 国際社会のしくみを多角的に理解することを目指します。
世界には現在、 約 200 の国 があります。 これらの国はおたがいに独立した存在として、 国際社会 を構成しています。
主権国家 とは、 ほかの国に支配されない独立した国家のことです。 国家であるためには、 つぎの 3 要素 が必要とされています。
| 要素 | 意味 |
|---|---|
| **[[主権 | しゅけん]]** |
| **[[領域 | りょういき]]** |
| **[[国民 | こくみん]]** |
国家の領域は、 つぎの 3 つから成ります。
| 名称 | 範囲 |
|---|---|
| **[[領土 | りょうど]]** |
| **[[領海 | りょうかい]]** |
| **[[領空 | りょうくう]]** |
さらに、 沿岸から 200 海里 (約 370 km) までの 排他的経済水域 (EEZ) で、 その国は水産資源・地下資源を独占的に利用できます。
国際社会では、 領土が広い国も小さい国も、 経済力が大きい国も小さい国も、 法的には 対等 とされます。 これが 主権平等の原則 (国家平等の原則) です。
国連総会では、 加盟国が 1 国 1 票 を持っているのも、 この原則に基づいています。
大事: 国内の政治は政府が法律をつくり警察が守らせますが、 国際社会には世界政府も世界警察もありません。 国家どうしが話し合い、 条約 を結び、 国際機関 で協力する。 これが国際社会の基本のかたちです。
国家どうしの関係を定めたルールを 国際法 と言います。 国内法と違い、 違反したからといって自動的に強制執行されるしくみは弱いのですが、 国際社会の秩序を保つ大切な土台です。
| 種類 | 意味 | 例 |
|---|---|---|
| **[[条約 | じょうやく]]** | 国家どうしが文書で結ぶ約束 |
| **[[国際慣習法 | こくさいかんしゅうほう]]** | 長い間の慣行が国家間で 「ルール」 と認められたもの |
| 原則 | 意味 |
|---|---|
| **[[内政不干渉の原則 | ないせいふかんしょうのげんそく]]** |
| **[[民族自決の原則 | みんぞくじけつのげんそく]]** |
| **[[公海自由の原則 | こうかいじゆうのげんそく]]** |
| **[[戦争違法化 | せんそういほうか]] の原則** |
国家間の紛争を裁判で解決する場として、 オランダのハーグに 国際司法裁判所 (ICJ) があります。 国連の主要機関の 1 つで、 国家間の紛争を国際法に基づいて裁きます。
ただし、 当事国の 両方の同意 が必要 (一方だけが訴えても審理されない) という限界があります。
また、 大量虐殺などの個人の重大犯罪を裁く 国際刑事裁判所 (ICC) もあります (2003 年設立)。
第二次世界大戦の反省から、 1945 年に 国際連合 (国連、 UN) が設立されました。 本部はアメリカの ニューヨーク にあります。 加盟国は約 193 カ国 (2026 年時点) で、 ほぼすべての主権国家が加盟しています。
国連憲章 が定める国連の目的は、 大きく 4 つです。
| 機関 | 役割 |
|---|---|
| **[[総会 | そうかい]]** |
| **[[安全保障理事会 | あんぜんほしょうりじかい]] (安保理)** |
| **[[経済社会理事会 | けいざいしゃかいりじかい]]** |
| **[[国際司法裁判所 | こくさいしほうさいばんしょ]] (ICJ)** |
| **[[事務局 | じむきょく]]** |
| **[[信託統治理事会 | しんたくとうちりじかい]]** |
国連で最も大きな権限を持つのが 安全保障理事会 です。 加盟国は 15 カ国。
| 区分 | 数 | 任期 |
|---|---|---|
| **[[常任理事国 | じょうにんりじこく]]** | 5 カ国 (アメリカ・ロシア・イギリス・フランス・中国) |
| **[[非常任理事国 | ひじょうにんりじこく]]** | 11 カ国 (2025 年東ティモール 加盟) |
重要な決定には、 15 カ国中 9 カ国以上の賛成 が必要で、 さらに 常任理事国 が 1 カ国でも反対する と否決されます。 これを 拒否権 と言います。
拒否権 は、 大国の意見を一致させて世界の安定を保つ、 という第二次大戦後の構想で生まれました。 しかし現実には、 大国どうしの対立で安保理が 「機能不全」 に陥る場面もあります。
このため、 安保理改革 (常任理事国を増やす、 拒否権を制限する など) が長く議論されています。 日本もインド・ブラジル・ドイツとともに、 常任理事国入りを目指してきました (G4 諸国)。 ただ、 利害が複雑で改革はなかなか進んでいません。
ポイント: 国連は完璧ではありませんが、 戦争を防ぐ唯一の世界規模の枠組み であり、 加盟国がほぼすべての主権国家にわたっていることは大きな価値です。 「うまく機能していない場面がある」 と 「不要だ」 はまったく別の話です。
国連には、 平和維持以外にも幅広い活動があります。 国連の専門機関 や 国連諸機関 がそれぞれの分野で活動しています。
| 略称 | 名称 | 役割 |
|---|---|---|
| UNESCO | 国連教育科学文化機関 | 教育・科学・文化の協力、 [[世界遺産 |
| WHO | 世界保健機関 | 保健衛生、 感染症対策 |
| UNICEF | 国連児童基金 | 子どもの権利、 子ども支援 |
| UNHCR | 国連難民高等弁務官事務所 | 難民の保護と支援 |
| ILO | 国際労働機関 | 労働条件の改善 |
| FAO | 国連食糧農業機関 | 食料・農業 |
| IMF | 国際通貨基金 | 国際金融の安定 |
| IAEA | 国際原子力機関 | 原子力の平和利用と核不拡散 |
| WTO | 世界貿易機関 (国連の専門機関ではないが関連) | 自由貿易の促進 |
国連が紛争地に派遣する 平和維持活動 (PKO、 Peace Keeping Operations) も重要な役割です。 停戦監視や人道支援を行います。
日本は 1992 年に PKO 協力法 を成立させ、 自衛隊を カンボジア や 南スーダン などに派遣してきました。 これは 日本国憲法 9 条との関係で、 当時 (今でも) 国内で大きな議論となりました。
国家どうしの協力は、 国連のような世界規模だけでなく、 地域単位でも進んでいます。 これを 地域統合 と呼びます。
EU (欧州連合) は、 1993 年に発足したヨーロッパの地域統合体です。 加盟国は約 27 カ国 (2020 年に イギリス が脱退 = ブレグジット)。
| EU の特徴 | 内容 |
|---|---|
| 共通通貨ユーロ | 多くの加盟国が共通通貨を使用 |
| 人・モノ・お金の移動が自由 | 国境検査なしで移動 ([[シェンゲン協定 |
| 共通政策 | 農業・環境・貿易など共通の政策 |
| 欧州議会 | 加盟国市民の直接選挙 |
長所は経済の活性化と平和の維持。 短所は、 加盟国どうしの経済格差や、 主権の制約への反発です。
ASEAN (東南アジア諸国連合) は、 1967 年に結成された東南アジア 11 カ国 (2025 年東ティモール 加盟)の地域協力組織です (インドネシア・タイ・マレーシア・シンガポール・フィリピン・ベトナム・ミャンマー・カンボジア・ラオス・ブルネイ)。
経済協力 (AFTA = ASEAN 自由貿易地域) や安全保障対話 (ARF) を進めています。 EU ほど深い統合ではなく、 各国の主権を尊重する 「ゆるやかな協力」 が特徴です。
| 略称 | 内容 |
|---|---|
| USMCA | アメリカ・メキシコ・カナダ協定 (旧 NAFTA を改定、 2020 〜) |
| APEC | アジア太平洋経済協力 (環太平洋の 21 カ国・地域、 1989 〜) |
| AU | アフリカ連合 (アフリカ 55 カ国・地域、 2002 〜) |
| MERCOSUR | 南米南部共同市場 |
国際経済では、 自由に貿易を進める 自由貿易 と、 国内産業を守るために輸入を制限する 保護貿易 という 2 つの考え方があります。
| 利点 | 問題 |
|---|---|
| 安く品質のよい商品が手に入る | 競争に負けた国内産業が衰退 |
| 比較優位を活かして効率がよい | 雇用が失われる |
| 国際協力が進む | 食料・エネルギーの自給率が下がる |
| 利点 | 問題 |
|---|---|
| 国内産業 (特に農業) を守れる | 消費者が高い商品を買わされる |
| 雇用が守られる | 国際協力が進まず、 経済が活性化しにくい |
| 食料・エネルギーの自給を維持 | 報復関税で貿易戦争に発展する恐れ |
第二次大戦後、 自由貿易を推進するために GATT (関税と貿易に関する一般協定) が結ばれ、 1995 年に WTO (世界貿易機関) に発展しました。 WTO は世界中の国の間で 多角的な貿易交渉 を進めています。
しかし、 加盟国が多くなり交渉がまとまりにくくなったため、 最近は 特定の国どうし で結ぶ FTA (自由貿易協定) や EPA (経済連携協定) が増えています。
| 協定 | 内容 |
|---|---|
| FTA | 関税の撤廃や引き下げを中心 |
| EPA | FTA に加え、 投資・労働・知的財産まで広く対象に |
TPP (環太平洋パートナーシップ協定) は、 太平洋を囲む 11 カ国 (日本・オーストラリア・カナダ など) が結んだ大規模な経済連携です。 関税撤廃や投資ルールの統一など、 幅広い内容を含みます。
日本は他にも 日 EU・EPA や RCEP (東アジア地域包括的経済連携、 アジア 15 カ国) などを結んでいます。
ポイント: 自由貿易と保護貿易は 「どちらが正解」 ではなく、 バランス の問題です。 工業製品では自由貿易を進めても、 主食である 米 や生乳のように 「自給率を保ちたい」 分野には保護的な政策をとる、 というように使い分けるのが一般的です。
国際社会には、 1 つの国だけでは解決できないさまざまな課題があります。
第二次大戦後の最大の課題のひとつは 核兵器 です。
| 条約 | 年 | 内容 |
|---|---|---|
| **[[部分的核実験禁止条約 | ぶぶんてきかくじっけんきんしじょうやく]] (PTBT)** | 1963 |
| **[[核拡散防止条約 | かくかくさんぼうしじょうやく]] (NPT)** | 1968 |
| **[[包括的核実験禁止条約 | ほうかつてきかくじっけんきんしじょうやく]] (CTBT)** | 1996 |
| **[[核兵器禁止条約 | かくへいききんしじょうやく]]** | 2017 |
核兵器禁止条約 には核兵器保有国は参加していません。 日本も アメリカ の 核の傘 のもとにあるため、 現在は参加していません。 一方で 唯一の被爆国 として核軍縮の重要性を訴え続けています。
対人地雷禁止条約 や クラスター爆弾禁止条約 のように、 通常兵器の使用を制限する国際条約も結ばれています。
地域紛争では、 国連PKO や、 NGO (非政府組織)、 赤十字国際委員会 などが人道支援を行っています。
経済の グローバル化 で、 世界はますますつながっています。
このような相互依存のなかで、 「自分の国だけ」 で解決できる問題は減っています。
最後に、 国際社会を考えるときの心構えをまとめます。
国際問題を考えるときに、 一番気をつけたいのは 「特定の国を 100 % 善 / 悪と決めつけない」 ことです。
| ありがちな単純化 | より深い見方 |
|---|---|
| 「○○国は悪い、 だから何をしてもいい」 | 国にも歴史があり、 国民にも事情がある |
| 「日本は被害者だ / 加害者だ」 | 立場や時代によって両方の側面がある |
| 「一方が完全に正しい」 | 両方に言い分があり、 妥協点を探るのが外交 |
国際関係は、 1 つの国の利益と他国の利益、 過去の歴史と現在の関係、 政治と経済と文化、 さまざまな要素が絡みます。 複数の視点から考える 姿勢が大切です。
国際ニュースは、 報道する側の国・メディアによって 見え方が違います。 同じ出来事でも、 日本のメディアと海外のメディア、 さらには紛争当事国のメディアでは伝え方が異なります。
複数のソース (できれば複数の国のメディア) を見て、 自分の頭で考えることが大切です。 これも メディアリテラシー のひとつです。
国際社会の課題に取り組む手段は、 国家だけではありません。
将来、 青年海外協力隊 や国際 NGO で働くことも選択肢のひとつです。
大事: 国際社会には絶対の正解がありません。 それぞれの国に立場があり、 歴史があり、 国民の願いがあります。 だからこそ 「自分の意見を持つこと」 と 「他国の立場も理解しようとすること」 の両方が必要です。 これは特定の国を批判することではなく、 国際社会を 「公正に見る目」 を育てることです。