この章で学ぶこと
第 4 章は、 中 3 化学の中心単元 「水溶液とイオン」 です。 中 2 で学んだ 「原子と分子」 の内側に入り、 原子が 電気を帯びる ことで起こる現象を学びます。
- 電解質 と 非電解質 のちがいを知る
- イオン (陽イオンと陰イオン) とは何かを知る
- 電離 を化学反応式 (イオン式) で表せる
- 酸 と アルカリ の性質を知る
- pH と 指示薬 で酸性・中性・アルカリ性を区別できる
- 中和 と 塩 ができる反応を理解する
- 強酸・強塩基の 安全 な取扱いを身につける
ポイント: 中 2 で 「原子はそれ以上分けられない」 と学びましたが、 実は原子の 中 に 電子 という粒があり、 それが動くことで イオン ができます。
1. 電解質と非電解質
水溶液の電気の通りやすさ
水に物質を溶かすと、 電気を通すもの と 通さないもの があります。
| 種類 | 定義 | 例 |
|---|
| 電解質 | 水に溶かすと電気を通す物質 | 食塩 (NaCl)、 塩酸 (HCl)、 水酸化ナトリウム (NaOH)、 硝酸、 硫酸 |
| 非電解質 | 水に溶かしても電気を通さない | 砂糖、 エタノール (C₂H₅OH)、 尿素 |
確かめ方
| 実験装置 | やり方 |
|---|
| 電源 + 豆電球 + 電極 | 水溶液に 2 本の電極を入れて、 豆電球が光れば電解質 |
電気が流れる理由
電解質は水に溶けると 粒子 (= イオン) に分かれます。 イオンは 電気を帯びて いるため、 電源をつなぐと動き始め、 電流が流れます。
非電解質は水に溶けても 「分子のまま」 で、 電気を帯びていないので電流が流れません。
2. イオンとは
原子の構造
中 2 で学んだ原子は、 実はさらに細かく分けられます。
| 部分 | 電気の性質 | 場所 |
|---|
| 原子核 | プラス (+) | 中心 |
| 電子 | マイナス (−) | 外側を回る |
ふつうの原子は、 プラスとマイナスが 同じ数 なので、 全体として 「電気を帯びていない」 状態です。
イオンのでき方
原子が 電子 を失ったり受け取ったりすると、 プラスとマイナスの数が釣り合わず、 電気を帯びた粒 になります。 これが イオン です。
| 種類 | でき方 | 記号の例 |
|---|
| 陽イオン | 電子を 失う → プラス | Na⁺ (ナトリウムイオン)、 H⁺ (水素イオン) |
| 陰イオン | 電子を 受け取る → マイナス | Cl⁻ (塩化物イオン)、 OH⁻ (水酸化物イオン) |
主なイオン
| 名前 | 化学式 | 種類 |
|---|
| 水素イオン | H⁺ | 陽イオン |
| ナトリウムイオン | Na⁺ | 陽イオン |
| カリウムイオン | K⁺ | 陽イオン |
| カルシウムイオン | Ca²⁺ | 陽イオン |
| 銅イオン | Cu²⁺ | 陽イオン |
| 亜鉛イオン | Zn²⁺ | 陽イオン |
| 塩化物イオン | Cl⁻ | 陰イオン |
| 水酸化物イオン | OH⁻ | 陰イオン |
| 硝酸イオン | NO₃⁻ | 陰イオン |
| 硫酸イオン | SO₄²⁻ | 陰イオン |
大事: 「⁺」 や 「⁻」 の数字は 失った / 受け取った電子の数 を表します。 例: Ca²⁺ は電子を 2 個失った陽イオン。
3. 電離と化学式
電離
電解質が水に溶けるとき、 陽イオンと陰イオンに分かれる ことを 電離 と言います。
電離の式の例
| 物質 | 電離式 |
|---|
| 食塩 (NaCl) | NaCl → Na⁺ + Cl⁻ |
| 塩酸 (HCl) | HCl → H⁺ + Cl⁻ |
| 水酸化ナトリウム (NaOH) | NaOH → Na⁺ + OH⁻ |
| 硫酸 (H₂SO₄) | H₂SO₄ → 2H⁺ + SO₄²⁻ |
| 水酸化カリウム (KOH) | KOH → K⁺ + OH⁻ |
ポイント: 電離式では、 左辺と右辺で 原子の数 がそろうだけでなく、 電気 (プラスとマイナスの合計) もそろいます。 例: H₂SO₄ → 2H⁺ + SO₄²⁻ は、 左が 0、 右も (+1)×2 + (−2) = 0。
4. 酸とアルカリ
リトマス紙 の色変化 — 右の 2 枚 (酸性) で青が赤に、 左の 2 枚 (アルカリ性) で赤が青に変わる。 中 1 で学んだ酸性・アルカリ性の検出を中 3 では H+・OH-イオン で説明する。
酸とは
水に溶かしたとき 水素イオン H⁺ を出す 物質を 酸 と言います。
酸の性質
| 性質 | くわしく |
|---|
| 酸っぱい味 | 食用の酸 (酢酸・クエン酸) で確認 |
| 青リトマス紙を 赤 に変える | 指示薬の反応 |
| 金属 と反応して 水素 を出す | 例: Zn + 2HCl → ZnCl₂ + H₂ |
| BTB液 を 黄色 にする | 指示薬の反応 |
主な酸
| 名前 | 化学式 | 例 |
|---|
| 塩酸 | HCl | 胃液 |
| 硫酸 | H₂SO₄ | 自動車バッテリー |
| 硝酸 | HNO₃ | 工業用 |
| 酢酸 | CH₃COOH | 食酢 |
| クエン酸 | C₆H₈O₇ | レモン |
| 炭酸 | H₂CO₃ | 炭酸水 |
アルカリとは
水に溶かしたとき 水酸化物イオン OH⁻ を出す 物質を アルカリ (英語で 塩基 = base) と言います。
アルカリの性質
| 性質 | くわしく |
|---|
| 苦い味、 ぬるぬる | 触らず確かめない (危険) |
| 赤リトマス紙を 青 に変える | 指示薬の反応 |
| タンパク質 を溶かす | せっけんが油を落とす仕組み |
| BTB液 を 青 にする | 指示薬の反応 |
| フェノールフタレイン を 赤 にする | 指示薬の反応 |
主なアルカリ
| 名前 | 化学式 | 例 |
|---|
| 水酸化ナトリウム | NaOH | 苛性ソーダ、 排水管クリーナー |
| 水酸化カリウム | KOH | せっけん製造 |
| 水酸化カルシウム | Ca(OH)₂ | 石灰水、 漆喰 |
| アンモニア水 | NH₃ + H₂O | 洗剤 |
| 重曹 | NaHCO₃ | ベーキングパウダー |
5. pH と指示薬
pH とは
水溶液の 酸性 / 中性 / アルカリ性 の強さを表す数値を pH (ピーエイチ) と言います。 0 から 14 までの値を取ります。
| pH | 性質 |
|---|
| 0〜2 | 強酸性 |
| 3〜6 | 弱酸性 |
| 7 | 中性 |
| 8〜11 | 弱アルカリ性 |
| 12〜14 | 強アルカリ性 |
身近なものの pH
| 物 | pH (おおよそ) | 性質 |
|---|
| 胃液 | 1〜2 | 強酸性 |
| レモン汁 | 2 | 酸性 |
| 酢 | 3 | 酸性 |
| 炭酸飲料 | 4 | 弱酸性 |
| 雨 (普通) | 5〜6 | 弱酸性 |
| 純水 | 7 | 中性 |
| 海水 | 8 | 弱アルカリ性 |
| 重曹水 | 9 | 弱アルカリ性 |
| せっけん水 | 10 | アルカリ性 |
| 漂白剤 | 12〜13 | 強アルカリ性 |
指示薬一覧
| 指示薬 | 酸性 | 中性 | アルカリ性 |
|---|
| リトマス紙 | 青 → 赤 | 変化なし | 赤 → 青 |
| BTB液 | 黄 | 緑 | 青 |
| フェノールフタレイン | 無色 | 無色 | 赤 |
| ムラサキキャベツ液 | 赤 | 紫 | 黄緑 |
| pH 試験紙 | 数値で表示 | 数値で表示 | 数値で表示 |
大事: BTB液 は 黄 → 緑 → 青 が 「酸 → 中 → ア」 の順でわかりやすい、 中学では最もよく使う指示薬です。
6. 中和と塩
中和とは
酸とアルカリを混ぜると、 互いの性質を打ち消し合います。 これを 中和 と言います。
酸の H⁺ + アルカリの OH⁻ → H₂O (水)
中和の反応式
| 酸 + アルカリ | 反応式 |
|---|
| HCl + NaOH | HCl + NaOH → NaCl + H₂O |
| H₂SO₄ + 2NaOH | H₂SO₄ + 2NaOH → Na₂SO₄ + 2H₂O |
| HCl + KOH | HCl + KOH → KCl + H₂O |
塩とは
中和で 水と一緒にできる物質 を 塩 (えん) と言います。 化学での 「塩」 は食塩だけでなく、 陽イオンと陰イオンが結びついた物質すべてを指します。
| 酸 + アルカリ | できる塩 |
|---|
| 塩酸 + 水酸化ナトリウム | 食塩 (NaCl) |
| 硫酸 + 水酸化ナトリウム | 硫酸ナトリウム (Na₂SO₄) |
| 塩酸 + 水酸化カリウム | 塩化カリウム (KCl) |
| 硝酸 + 水酸化ナトリウム | 硝酸ナトリウム (NaNO₃) |
中和の観察方法
BTB液を入れた塩酸 (黄色) に水酸化ナトリウムを少しずつ加えると:
| 加えた量 | 色 | 性質 |
|---|
| 0 | 黄 | 強酸性 |
| 少し | 黄 | 弱酸性 |
| ちょうど中和点 | 緑 | 中性 |
| 多め | 青 | アルカリ性 |
BTB液による中和反応 — 塩酸 (HCl) に水酸化ナトリウム (NaOH) を少しずつ加えていくと、 黄 (酸性) → 緑 (中性) → 青 (アルカリ性) と色が変わる。 緑の瞬間がちょうど 中和点。
ポイント: 中和は 発熱 を伴います。 強い酸と強いアルカリを混ぜるとかなり熱くなるので注意。
7. 安全配慮とふりかえり
強酸・強塩基の取扱い
中 3 化学の実験では 塩酸 や 水酸化ナトリウム などの 強酸・強塩基 を使います。 取扱いを誤ると やけど や 失明 の危険があります。
| 場面 | 危険 | 対策 |
|---|
| 塩酸・硫酸が服に付く | 服が溶ける | 実験衣 (白衣) 着用、 すぐ大量の水で洗う |
| 水酸化ナトリウムが目に入る | 失明の危険 | 保護メガネ必須、 大量の水で 15 分以上洗う、 すぐ病院 |
| 薬品の蒸気を吸う | 気持ち悪くなる | 必ず 換気、 窓を開ける |
| 薬品を触る | 皮膚が荒れる | ゴム手袋 着用、 触れたらすぐ洗う |
| 薬品を流しに捨てる | 環境汚染 | 中和 してから先生の指示に従う |
安全ルール 5 か条
- 保護メガネを必ず着用 (強酸・強塩基の場面では例外なし)
- 換気 を行う (窓を開け、 換気扇を回す)
- 薬品を直接触らない (ゴム手袋推奨、 こぼしたら大量の水で洗う)
- 口ですすらない (ピペットは必ず安全ピペッターを使う)
- 流しに直接捨てない (中和後に廃棄、 必ず先生の指示)
この章のふりかえり
この章の安全配慮
- 保護メガネ を必ず着用 (強酸・強塩基では例外なし)
- 換気 を行う (窓を開け、 換気扇を回す)
- 薬品を直接触らない、 口に入れない
- 服や皮膚に付いたら すぐ大量の水で洗う
- 目に入ったら 15 分以上大量の水で洗い、 すぐ病院へ
- 薬品を 流しに捨てない、 必ず先生の指示に従う
次の章: 第 5 章では、 イオンの知識を使って 「化学変化と電池」 を学びます。 酸化還元 (電子のやりとり) と、 ボルタ・ダニエル電池、 燃料電池のしくみに出会います。
まとめ — 水溶液とイオンを 3 行で
- 原子が電子を失う・得ることで陽イオン (+) と陰イオン (-) に分かれ、 これらを含む水溶液を電解質水溶液という
- 酸は水中で水素イオンを出し、 アルカリは水酸化物イオンを出す物質で、 強さはpH (0-14、 7 が中性) で量化される
- 中和は酸と塩基が反応して水と塩を生じる現象で、 強酸 ・強塩基を扱う際は保護メガネ ・換気の安全ルールを厳守する