気体の性質
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この章で学ぶこと
身の回りには、目に見えないけれど大切なはたらきをしている気体がたくさんあります。私たちが呼吸で取り込む酸素、植物が光合成で取り込む二酸化炭素、空気の約 8 割を占める窒素などです。
この章では、代表的な気体の作り方・性質・集め方を学びます。
- 酸素・水素・二酸化炭素・アンモニア の 4 つの気体について、性質と発生方法を覚える
- 水上置換法・上方置換法・下方置換法 の 3 つの集め方の使い分けを身につける
- 気体をにおい・水へのとけ方・密度 (空気と比べた重さ) で見分ける
- 気体を安全に扱うときのルール (火気・換気・吸わない) を身につける
ポイント: 「どの気体か分からないものを目の前に出された」とき、においをかぐ・水にとかす・火を近づける・石灰水に通す、といった操作で気体の正体を確かめます。これを気体の同定といいます。
1. 空気は混合気体
私たちが吸っている空気は、1 種類の気体ではなく、いくつもの気体が混ざった混合物です。
| 気体 | 体積の割合 (約) | はたらき |
|---|---|---|
| 窒素 | 78 % | 反応しにくい。たんぱく質の材料 |
| 酸素 | 21 % | 呼吸・燃焼に必要 |
| アルゴン | 0.9 % | 電球の中などに利用 |
| 二酸化炭素 | 0.04 % | 植物の光合成の材料 |
| その他 | わずか | 水蒸気・ヘリウムなど |
大事: 空気の 5 分の 4 は窒素で、酸素は 5 分の 1 ほどしかありません。それでも私たちが息苦しくないのは、肺が効率よく酸素を血液に取り込んでいるからです。
気体の調べ方
| 方法 | 何が分かるか |
|---|---|
| におい | アンモニアなど特有のにおい |
| 水へのとけ方 | とけにくい / 少しとける / よくとける |
| 空気と比べた重さ | 空気より軽い / 重い (密度の違い) |
| 石灰水を入れる | 二酸化炭素があれば白くにごる |
| 火のついた線香を入れる | 酸素があれば炎を上げて燃える |
| マッチの火を近づける | 水素があれば「ポンッ」と音を立てて燃える |
| 赤色リトマス紙を近づける | アンモニアがあれば青に変わる |
ポイント: においをかぐときは、気体を直接吸い込んではいけません。びんの口に手であおぎ寄せて、少しだけかぐようにします (手であおぐ)。アンモニアや塩素など、強いにおいの気体を直接吸うと体に害があります。
2. 気体の集め方 3 種類
気体を実験で集めるとき、その気体の性質によって集め方を変えます。水上置換法・上方置換法・下方置換法 の 3 つです。
集め方の比較表
| 集め方 | 仕組み | 適する気体 | 例 |
|---|---|---|---|
| 水上置換法 | 水の入った容器を逆さにし、水と置きかえて集める | 水にとけにくい気体 | 酸素・水素・窒素 |
| 上方置換法 | びんを口を下にして上から集める | 水にとけやすく、空気より軽い気体 | アンモニア |
| 下方置換法 | びんを口を上にして下から集める | 水にとけやすく、空気より重い気体 | 二酸化炭素・塩素 |
集め方の選び方フローチャート
| ステップ | 質問 | YES → | NO → |
|---|---|---|---|
| ① | 水にとけにくい? | 水上置換法 | ② へ |
| ② | 空気より軽い? | 上方置換法 | 下方置換法 |
大事: 水上置換法が最も使いやすい方法です。なぜなら、集めた気体の量を目で見て確かめられる (水位を見ればよい) から、空気が混ざりにくい からです。水にとけてしまう気体だけ、しかたなく上方・下方を使います。
二酸化炭素はどちらでも OK
二酸化炭素は水に少しとけますが、それほど多くはとけません。そのため、水上置換法でも下方置換法でも集められます。実験では、量を確かめやすい水上置換法を使うことが多いです。
3. 酸素
呼吸と燃焼に必要不可欠な気体、それが酸素です。空気中に約 21 % 含まれています。
酸素の性質
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 色 | 無色 |
| におい | 無臭 |
| 水へのとけ方 | とけにくい |
| 空気と比べた重さ | 少しだけ重い |
| 集め方 | 水上置換法 |
| 特徴的な反応 | 物を激しく燃やす (助燃性) |
大事: 酸素そのものは燃えません。ほかの物が燃えるのを助ける性質 (助燃性) があります。「酸素 = 燃える気体」と誤解しがちですが、燃えるのは水素のほうです。
酸素の作り方
中学校でよく使う方法は次の 2 つです。
| 方法 | 材料 |
|---|---|
| ① | 二酸化マンガン + オキシドール (うすい過酸化水素水) |
| ② | 二酸化マンガン + うすい過酸化水素水 (同じ仕組み) |
二酸化マンガンは反応を速めるだけで、それ自体は変化しません (このようなはたらきをするものを触媒といいます)。実際に酸素を出しているのは過酸化水素のほうです。
酸素の確かめ方
集めた気体に火のついた線香を入れます。炎を上げて激しく燃えれば、その気体は酸素です。
注意: 酸素は燃焼を激しくします。周囲に紙や布、髪の毛など燃えやすい物がないか確認してから線香を入れましょう。長く燃やしすぎると線香が短くなって指を熱くするので、すぐに取り出します。
4. 二酸化炭素
私たちが息をはくと出てくる気体、それが二酸化炭素です。空気中には約 0.04 % しかありませんが、地球温暖化の主犯としても有名です。
二酸化炭素の性質
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 色 | 無色 |
| におい | 無臭 |
| 水へのとけ方 | 少しとける (水にとけると炭酸水) |
| 空気と比べた重さ | 重い (空気の約 1.5 倍) |
| 集め方 | 水上置換法または下方置換法 |
| 特徴的な反応 | 石灰水を白くにごらせる |
二酸化炭素の作り方
| 方法 | 材料 |
|---|---|
| ① | 石灰石 (または貝がら・卵のから) + うすい塩酸 |
| ② | 重そう (炭酸水素ナトリウム) を加熱 |
石灰石はカルシウムを含む岩石です。塩酸を注ぐと、シュワシュワと泡を出して気体が発生します。この泡が二酸化炭素です。
二酸化炭素の確かめ方
集めた気体に石灰水を入れて、よく振ります。白くにごれば、その気体は二酸化炭素です。
大事: 石灰水は水酸化カルシウムの水溶液です。二酸化炭素と反応して、炭酸カルシウム (水にとけない白い粉) ができるため、白くにごって見えます。これは中学校で最もよく出る化学反応の 1 つです。
炭酸水
二酸化炭素を水にとかしたものが炭酸水です。サイダーやコーラの「シュワシュワ」は、とけきれなくなった二酸化炭素が泡となって出てくるためです。炭酸水は弱い酸性を示し、青色リトマス紙を赤く変えます。
5. 水素
宇宙で最も多く存在する元素、それが水素です。最も軽い気体としても知られ、かつては飛行船の浮力源として使われていました。
水素の性質
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 色 | 無色 |
| におい | 無臭 |
| 水へのとけ方 | とけにくい |
| 空気と比べた重さ | 最も軽い (空気の約 14 分の 1) |
| 集め方 | 水上置換法 |
| 特徴的な反応 | 燃えると水になる |
水素の作り方
| 方法 | 材料 |
|---|---|
| ① | 亜鉛 (または鉄・マグネシウム) + うすい塩酸 |
| ② | アルミニウム + うすい塩酸 |
金属に酸を加えると、金属がとけて水素が発生します。このとき試験管がほんのり熱くなります (発熱反応)。
水素の確かめ方
水素を集めた試験管の口にマッチの火を近づけます。「ポンッ」と音を立てて燃え、試験管の内側が水てきでくもれば、その気体は水素です。
注意: 水素は引火性があり、空気と混ざった状態で火を近づけると爆発的に燃えます。実験ではごく少量だけ集めて確かめます。大量の水素を一度に燃やしてはいけません。また、周囲に火気がないことを必ず確認してから作業します。
水素は未来のエネルギー?
水素は燃えると水になるだけで、二酸化炭素を出しません。そのため、地球温暖化の対策として、ガソリンの代わりに水素を燃料にする「燃料電池自動車」が開発されています。
6. アンモニア
つんとした強いにおいで知られる気体、それがアンモニアです。トイレの掃除用洗剤や、肥料の原料として使われています。
アンモニアの性質
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 色 | 無色 |
| におい | 刺激臭 (つんとした強いにおい) |
| 水へのとけ方 | 非常によくとける |
| 空気と比べた重さ | 軽い (空気の約 0.6 倍) |
| 集め方 | 上方置換法 |
| 特徴的な反応 | 水溶液はアルカリ性 |
アンモニアの作り方
塩化アンモニウム と 水酸化カルシウム を混ぜて加熱すると、アンモニアが発生します。試験管の口を少し下げて加熱するのがコツです (発生した水が試験管の底に流れこんで割れるのを防ぐため)。
アンモニアの確かめ方
| 方法 | 結果 |
|---|---|
| におい | 強い刺激臭 (手であおいでかぐ) |
| 湿らせた赤色リトマス紙 | 青色に変わる (アルカリ性) |
| 水を入れたフラスコの噴水実験 | フラスコ内のアンモニアが水にとけて、気圧が下がり水が吸い上げられて噴水になる |
大事: アンモニアの噴水実験は、「アンモニアは水によくとける」「アンモニア水はアルカリ性」の 2 点を同時に示せる、見ごたえのある実験です。フェノールフタレイン液を入れた水を吸い上げると、フラスコ内が赤色に変わります。
7. その他の気体
| 気体 | 性質 | 集め方 | 用途 |
|---|---|---|---|
| 窒素 | 無色無臭。水にとけにくい。反応しにくい | 水上置換法 | 食品の酸化防止・タイヤの充填 |
| 塩素 | 黄緑色。刺激臭。水にとける。空気より重い | 下方置換法 | 水道水の消毒・漂白剤 |
| 塩化水素 | 無色。刺激臭。水によくとける (= 塩酸)。空気より重い | 下方置換法 | 塩酸として工業用途 |
| 硫化水素 | 無色。卵の腐ったにおい。空気より重い | 下方置換法 | (有毒、火山ガスや温泉) |
注意: 塩素・塩化水素・硫化水素はいずれも有毒な気体です。中学校では原則として教師が演示するか、ごく少量で扱います。生徒が直接吸い込むことのないよう、必ず換気のよい場所で実験します。
8. 気体の見分け方まとめ
実験で 4 種類の気体 (酸素・水素・二酸化炭素・アンモニア) のうちどれかを当てるテストがよく出ます。順序立てて調べる方法を覚えましょう。
見分け方の手順
| 順序 | 操作 | 反応 | 結論 |
|---|---|---|---|
| ① | においをかぐ (手であおぐ) | 刺激臭がある | アンモニアと判定 |
| ② | (においが無ければ) 火のついた線香を入れる | 激しく燃える | 酸素と判定 |
| ③ | (燃えなければ) マッチの火を近づける | ポンッと音がして燃える | 水素と判定 |
| ④ | (反応なければ) 石灰水を入れて振る | 白くにごる | 二酸化炭素と判定 |
ポイント: 「におい → 線香 → マッチ → 石灰水」の順で調べると、4 種類の気体を確実に区別できます。順序を変えると、たとえば水素と酸素を取り違えて爆発につながる危険があるので注意しましょう。
9. 安全に気体を扱う
気体実験の安全ルール
| ルール | 理由 |
|---|---|
| 必ず換気する | 有毒な気体や酸欠を防ぐ |
| においは手であおいでかぐ | 直接吸い込むと有害なことがある |
| 火気の近くで水素を扱わない | 引火・爆発の危険 |
| 酸素のそばに燃えやすい物を置かない | 激しく燃え広がる |
| 加熱した試験管をすぐ触らない | やけどの危険 |
| 塩素・アンモニアなどは少量で | 強い刺激で気管支を傷める |
| 薬品が手についたら大量の水で洗う | 皮ふへのダメージを最小化 |
| 保護めがねを着用 | 飛び散りから目を守る |
大事: 気体は目に見えません。「反応しているのか、終わったのか」が分かりにくいので、集めた量・経過時間を必ず記録しながら進めます。「もう発生は止まったかな」と顔を近づけて確かめるのは絶対にやめましょう。
緊急時の対応
| 状況 | 対応 |
|---|---|
| 強いにおいで気分が悪い | すぐに窓を開けて新鮮な空気を吸う |
| 薬品が目に入った | すぐに大量の水で 15 分以上洗う |
| 試験管が割れた | 素手で触らず、ピンセットで集める |
| 引火した | 濡れぞうきんでおおって酸素を断つ |
10. ふりかえり
この章で学んだことを確かめましょう。
- [ ]空気の組成 (窒素 78 % / 酸素 21 % / その他 1 %) が言える
- [ ]水上置換法・上方置換法・下方置換法の使い分けができる
- [ ]酸素の作り方 (二酸化マンガン + オキシドール) と確かめ方 (火のついた線香) が言える
- [ ]二酸化炭素の作り方 (石灰石 + 塩酸) と確かめ方 (石灰水が白くにごる) が言える
- [ ]水素の作り方 (亜鉛 + 塩酸) と確かめ方 (マッチでポンッ) が言える
- [ ]アンモニアの作り方と確かめ方 (赤色リトマス紙が青に) が言える
- 4 種類の気体を順序立てて見分ける手順が説明できる
- [ ]気体実験の安全ルール (換気・手であおぐ・火気注意) を守れる
この章の安全配慮
- 気体を直接吸い込まない。においは手であおいで少しだけかぐ
- 水素は引火性があるので、必ず周囲に火気がないことを確認し、少量だけで実験する
- 酸素を集めた容器の近くに紙・布・髪などの燃えやすい物を置かない
- アンモニア・塩素などの強い刺激臭の気体は、換気のよい場所で実験する
- 薬品 (塩酸・水酸化カルシウム・塩化アンモニウム) は素手で触らず、保護めがねを着用する
- 加熱した試験管はすぐ冷えないので、冷えるまで触らない
次の章: 第 7 章では、気体に続いて液体の世界、水溶液 を学びます。砂糖水や食塩水の中で、目に見えない粒がどう動いているのかを考えます。