この章で学ぶこと
がけや切り通しの土の壁に、しま模様が見えることがあります。これが地層です。地層には、その場所の数百万年・数億年の歴史が刻まれています。地層を読み解けば、はるか昔の海や山の様子が分かります。
- 風化・侵食・運搬・堆積 の流水のはたらきを理解する
- 堆積岩 (れき岩・砂岩・泥岩・石灰岩・チャート・凝灰岩) を区別できる
- 示相化石 と 示準化石 の違いと使い方を覚える
- 地質年代 (古生代・中生代・新生代) の代表的な化石を覚える
- 隆起・沈降・しゅう曲・断層 など大地の変動を理解する
- 化石観察での持ち帰り禁止などのマナーを身につける
ポイント: 地球の歴史は約 46 億年。人類の歴史 (約 700 万年) と比べると、地球はその 600 倍以上長く存在してきました。地層と化石は、その膨大な時間を教えてくれる「地球の日記帳」です。
1. 流水のはたらき
地層は、流水が運んだ土砂が積もってできます。流水には 4 つのはたらきがあります。
流水のはたらき 4 つ
| はたらき | 説明 |
|---|
| 風化 | 岩石が気温の変化や水のはたらきで割れたり、ぼろぼろになったりする |
| 侵食 | 流水が岩石や土を削る |
| 運搬 | 流水が土砂を運ぶ |
| 堆積 | 運んだ土砂が積もる |
場所による違い
| 場所 | 流れの速さ | はたらき | 地形の例 |
|---|
| 山地 (上流) | 速い | 侵食・運搬 | V 字谷 |
| 平地 (中流) | 中 | 運搬・少し堆積 | 扇状地 (山から平地に出る所) |
| 海岸 (下流) | 遅い | 堆積 | 三角州 (河口) |
大事: 川の上流ほど流れが速く、大きな粒も運べます。下流に行くほど流れが遅くなり、運ぶ力が弱まって重い粒から順に沈んでいきます。これが地層の粒の大きさが場所ごとに違う理由です。
風化の 2 種類
| 種類 | 仕組み | 例 |
|---|
| 物理的風化 | 温度差・凍結で割れる | 岩石の表面がぼろぼろ・割れ目ができる |
| 化学的風化 | 雨水・空気で性質が変わる | 鉄が錆びる・石灰岩が雨でとける |
2. 地層のでき方
土砂が層になって積み重なったものが地層です。地層は次のような順序でできます。
地層。 れき・砂・泥・火山灰 などが長い時間 をかけて積み重なってできたしま模様 の層。 普通は 下の層ほど古い (地層累重の法則)。
地層のでき方の順序
| ステップ | 出来事 |
|---|
| ① | 山で岩石が風化して、れき・砂・泥などになる |
| ② | 雨が降って侵食され、川に運ばれる |
| ③ | 川が土砂を海まで運搬する |
| ④ | 河口で流れが遅くなり、堆積する |
| ⑤ | 重い粒 (れき) → 軽い粒 (泥) の順に沈む |
| ⑥ | 長い時間で何層にも重なる |
| ⑦ | 上の層に押されて圧縮され、岩石になる |
粒の大きさによる分類
| 名前 | 粒の大きさ |
|---|
| れき | 2 mm 以上 |
| 砂 | 0.06 - 2 mm |
| 泥 | 0.06 mm 以下 |
河口での堆積
川が海に流れこむと、流速が急に落ちます。その結果:
| 距離 | たまる粒 |
|---|
| 河口に近い | れき (重いのですぐ沈む) |
| 中間 | 砂 |
| 河口から遠い | 泥 (軽いので遠くまで運ばれる) |
ポイント: 1 つの地層を縦に見ると、下から上に「れき → 砂 → 泥」 と粒が小さくなることが多いです。これは「海の深さがだんだん深くなった」ことを示します。逆に「泥 → 砂 → れき」と上に行くほど粒が大きくなれば、「海が浅くなった」ことを示します。
3. 堆積岩
長い時間圧縮された地層は、固まって堆積岩となります。
堆積岩の種類
| 名前 | 材料 | 特徴 |
|---|
| れき岩 | れき (粒 2 mm 以上) | 大きな粒が固まっている |
| 砂岩 | 砂 (0.06-2 mm) | ざらざらした手触り |
| 泥岩 | 泥 (0.06 mm 以下) | なめらか・粒が見えない |
| 石灰岩 | 海の生物の骨や殻 (炭酸カルシウム) | 塩酸で泡 (二酸化炭素を出す) |
| チャート | 海の生物の殻 (二酸化ケイ素) | 非常にかたい・塩酸で反応しない |
| 凝灰岩 | 火山灰が積もったもの | 角ばった粒・色が混じる |
石灰岩とチャートの見分け方
| 性質 | 石灰岩 | チャート |
|---|
| かたさ | やわらかい (くぎで傷つく) | 非常にかたい (くぎでも傷つかない) |
| 塩酸への反応 | 泡が出る (二酸化炭素) | 反応しない |
| 由来 | サンゴ・有孔虫 | 放散虫・ケイソウ |
大事: 石灰岩は、塩酸 (うすい塩酸) を 1 滴落とすと、シュワッと泡を出します。これは中の炭酸カルシウムが塩酸と反応して、二酸化炭素を出すためです。「泡が出れば石灰岩、出なければ別の岩」が見分けの決め手です。
凝灰岩は重要な目印
凝灰岩は、ある時の火山噴火で積もった火山灰の層です。離れた場所でも同じ凝灰岩の層が見つかれば、それらは「同じ時期にできた地層」ということになります。これを鍵層 といいます。
4. 化石
地層の中に保存された、昔の生物の体や生活のあとを化石といいます。化石には大きく 2 種類の使い道があります。
化石の 2 つの役割
| 種類 | 教えてくれること | 例 |
|---|
| 示相化石 | その地層ができた環境 | サンゴ → あたたかい浅い海 |
| 示準化石 | その地層ができた時代 | アンモナイト → 中生代 |
示相化石の代表例
| 化石 | 当時の環境 |
|---|
| サンゴ | あたたかく浅い海 (水温 25 ℃ 以上、水深 50 m 以下) |
| アサリ・ハマグリ | 浅い海・河口 |
| シジミ | 河口・湖 |
| ホタテ | 冷たい浅い海 |
| ブナ | 温帯のすずしい場所 |
示準化石の条件
「示準化石」になるには、次の条件が必要です。
| 条件 | 理由 |
|---|
| 広い範囲に分布 | 世界中で同じ時代を判定できる |
| 個体数が多い | 見つかりやすい |
| 生きていた期間が短い | 時代を細かく特定できる |
| 特徴的な形 | 見分けやすい |
5. 地質年代と代表的な示準化石
地球の歴史は、化石をもとに古生代・中生代・新生代の 3 つに大きく分けられています (それより古い時代は「先カンブリア時代」)。
地質年代の区分
| 時代 | 期間 | 代表的な生物 | 示準化石 |
|---|
| 古生代 | 約 5.4 億 - 2.5 億年前 | 三葉虫・フズリナ・サンヨウチュウ | 三葉虫・フズリナ |
| 中生代 | 約 2.5 億 - 6600 万年前 | 恐竜・アンモナイト | アンモナイト・恐竜 |
| 新生代 | 約 6600 万年前 - 現在 | ほ乳類・人類 | ビカリア・ナウマンゾウ・マンモス |
代表的な示準化石の特徴
| 化石 | 時代 | 特徴 |
|---|
| 三葉虫 | 古生代 | 海の節足動物・3 つに分かれた体 |
| フズリナ | 古生代 | 米粒のような形・有孔虫 |
| アンモナイト | 中生代 | 渦巻状の殻・イカやタコの仲間 |
| 恐竜 | 中生代 | 陸上の大型動物 |
| ビカリア | 新生代 | 巻貝・河口にすむ |
| ナウマンゾウ | 新生代 | 日本にいたゾウ |
| マンモス | 新生代 | 寒冷地のゾウ・氷河期 |
ポイント: 「古→三葉虫・フズリナ、中→アンモナイト・恐竜、新→ビカリア・ナウマンゾウ」 と覚えましょう。アンモナイトと三葉虫はどちらも「巻貝のように見えるけれど違うもの」なので注意。三葉虫は節足動物 (虫の仲間)、アンモナイトは軟体動物 (タコ・イカの仲間) です。
化石の年代決定の例
地層からフズリナの化石が見つかれば、その地層は古生代にできたものと分かります。アンモナイトと一緒に発掘されることはありえません (時代が違うから)。
アンモナイト の 化石。 中生代 (約 2.5 億 〜 6600 万年前) に海で生きていたイカやタコのなかま。 渦巻き形の殻が特徴 で、 中生代を示す 示準化石 の代表。
逆に、新しい地層からアンモナイトが出てきたら…それは「化石が二次堆積した」など特殊な事情を考える必要があります。
6. 大地の変動
地層は水平に積もりますが、時間がたつと地殻変動でさまざまな形に変形します。
隆起と沈降
| 動き | 説明 | 例 |
|---|
| 隆起 | 大地がもち上がる | 海岸段丘・河岸段丘 |
| 沈降 | 大地が沈む | リアス海岸・湾の発達 |
しゅう曲と断層
| 構造 | 説明 |
|---|
| しゅう曲 | 地層が波のように曲がる (やわらかいうちに圧力を受けた) |
| 断層 | 地層がずれる (硬くなった岩石が大きな力で割れた) |
不整合
地層が一度地表に出てから、再び水中に沈み新しい地層が積もると、不整合という時間の隙間ができます。古い地層と新しい地層の境目に、はっきりした「しま模様の不一致」が見られます。
| 構造 | 形成過程 |
|---|
| 整合 | 連続して堆積している |
| 不整合 | 一度地表に出て、また堆積した (時間の隙間あり) |
7. 地層から大地の歴史を読む
地層を観察すると、その場所が昔どんな環境だったかが分かります。
地層の読み方の例
| 観察したこと | 推定できること |
|---|
| れきが多い層 | 河口や海岸の近く |
| 泥が多い層 | 沖合の深い海 |
| サンゴの化石 | あたたかく浅い海 |
| アンモナイトの化石 | 中生代の海 |
| 凝灰岩の層 | 当時、近くで火山噴火があった |
| しゅう曲・断層 | 大きな地殻変動があった |
「地層累重 (るいじゅう) の法則」
普通、地層は下が古く、上が新しい順に積み重なっています。これを地層累重の法則といいます。地層を読むときの基本ルールです。
大事: ただし、しゅう曲で逆転している場合もあります。アンモナイトの上にフズリナが乗っていたら「逆転している」と判断します。化石を使って時代を判定すれば、どちらが本当に古いかが分かります。
8. 日本列島の生い立ち
日本列島は、約 2000 万年前までユーラシア大陸の一部でした。地殻変動でちぎれて、今の位置に移動してきました。
日本列島の歴史 (簡略)
| 年代 | 出来事 |
|---|
| 古生代 | 海の底だった |
| 中生代 | 大陸の縁にあった |
| 約 2000 万年前 | 大陸からちぎれて移動開始 |
| 約 1500 万年前 | 日本海ができ始める |
| 約 200 万年前以降 | 火山活動でほぼ今の形に |
| 現在 | 4 枚のプレートの境界・地震多発 |
ポイント: 日本にはアンモナイトの化石も三葉虫の化石も両方見つかります。北海道の白亜紀の地層からはアンモナイトが、岐阜県や山口県の古生代の地層からは三葉虫やフズリナが出土します。化石は日本各地の博物館で見ることができます。
9. 化石観察のマナーと安全
持ち帰り禁止のルール
| ルール | 理由 |
|---|
| 国立公園内は持ち帰り厳禁 | 自然公園法で禁止 |
| 私有地に勝手に入らない | 不法侵入になる |
| 化石を勝手に持ち帰らない | 学術資料・他の人の楽しみのため |
| 観察は写真とスケッチで | 採取より記録が大切 |
| 巨大な化石は届け出 | 文化財保護法で届け出が必要 |
大事: 化石は国民の財産です。「拾った人のもの」ではありません。特に貴重な化石 (恐竜の骨など) は、専門家に届け出る義務があります。学術的な発掘でない限り、化石はその場で観察するだけが原則です。
野外観察の安全
| 場所 | 危険 | 対策 |
|---|
| がけ | くずれ・落石 | 真下に立たない・ヘルメット |
| 海岸 | 転倒・潮の干満 | 滑りにくい靴・潮見表確認 |
| 川岸 | 流される・増水 | 雨の日は避ける |
| 山地 | 道迷い・けが | 1 人で行かない・地図 |
観察道具
| 道具 | 用途 |
|---|
| ハンマー | 岩石を割る (許可された場所のみ) |
| ルーペ | 化石・粒の拡大 |
| 安全めがね | 飛び散る石片から目を守る |
| 軍手 | 手の保護 |
| カメラ | 採取の代わりに記録 |
| 巻尺 | 地層の厚さを測る |
| 方位磁針 | 地層の向きを記録 |
10. ふりかえり
この章で学んだことを確かめましょう。
この章の安全配慮
- 野外観察では化石を勝手に持ち帰らない (国立公園・私有地は法律違反)
- 観察は写真とスケッチで記録、ハンマーは指定された場所でのみ使用
- がけ・海岸・川岸では落石・転倒・増水に注意
- ハンマーで岩を割るときは安全めがねを着用、飛び散る石片から目を守る
- 1 人では行かず、必ず先生や保護者と一緒に
- 巨大な化石・骨格を見つけたら勝手に掘らず、博物館や専門家に連絡
- 観察後は手を洗い、けがの確認をする
次の章: ここまでで中学 1 年理科の 10 章が完了しました。第 1 分野 (物理・化学) と第 2 分野 (生物・地学) の基礎を学びました。中学 2 年では、化学変化・電流・動物のからだ・天気と、より深い内容に進みます。