この章で学ぶこと
第 5 章では、 食料生産 の学習 の最後 として 水産業 を学びます。 日本は 海に囲まれた国 で、 古くから魚や貝をとる 「とる漁業」 と、 育ててとる 「つくり育てる漁業」 の両方 が発達 してきました。
- 漁業 には 3 つの種類 がある (沿岸・沖合・遠洋)
- 日本の 漁獲量 は 1980 年ごろがピーク で、 その後は大きく減っている
- 養殖 と つくり育てる漁業 のちがいを知る
- 北海道・三陸・東シナ海 など主な 漁場 (魚がとれる海) の場所
- 水産物 が食卓 にとどくまでの流れ
- 日本の漁業 の課題 (魚が減る・後継者・燃料高)
ポイント: 「とる量」 は減っても、 「育てる量」 と 「輸入」 で食卓 が守られています。 この章では、 「とる」 から 「育てる」 へ と変わりつつある日本の漁業 を見ていきましょう。
1. 漁業 の 3 種類
漁業 は、 海の どこで とるかによって、 大きく 3 つに分かれます。
沿岸漁業
- 海岸 から近い海 (10 km ぐらいまで) でとる漁業
- 小さな船 (1 〜 10 トン) で、 朝出て夕方帰る 「日帰り漁」
- 取れるもの: あじ・いわし・サバ・タコ・イカ・貝類
- 全国 の漁港 (ぎょこう) で行われる
沖合漁業
- 海岸 から 200 km ぐらいまで の海 (沖 = おき) でとる漁業
- 中ぐらいの船 (10 〜 100 トン) で、 数日 〜 1 週間海に出る
- 取れるもの: サンマ・サバ・イワシ・アジ・イカ
- 日本の漁業 の中で 一番多くの量 をとっている
遠洋漁業
- 太平洋やインド洋など遠い海 まで出かけてとる漁業
- 大きな船 (100 トン以上) で、 数週間 〜 数ヶ月海に出る
- 取れるもの: マグロ・カツオ
- 1970 年代までは日本の漁業 の中心だったが、 各国 が 排他的経済水域 (200 海里) を決めて自国 の海を守るようになってから、 大きく減った
表でくらべよう
| 種類 | 場所 | 船の大きさ | 出る期間 | 主な魚 |
|---|
| 沿岸漁業 | 海岸 から近い海 | 小さな船 | 日帰り | あじ・いわし・タコ |
| 沖合漁業 | 200 km 以内 | 中ぐらいの船 | 数日 | サンマ・サバ・アジ |
| 遠洋漁業 | 遠い海 | 大きな船 | 数ヶ月 | マグロ・カツオ |
覚え方: 「沿 = 海岸 に そう」 「沖 = 海岸 から少し 離れた」 「遠 = はるか 遠い」 と漢字 の意味 から思い出すと確実 です。
2. 主な 漁場 とさかんな地域
魚が集まる場所 (= 漁場) は、 海の中でも限られています。 日本の周りには、 世界有数 のよい 漁場 があります。
写真は 焼津港 (静岡県)。 遠洋漁業 の基地 として、 マグロやカツオの水あげで知られる日本有数 の漁港。
日本の周りの 4 大漁場
| 漁場 | 場所 | とくに多い魚 | さかんな漁港 |
|---|
| 北海道沖 | 北の海 (オホーツク海・千島列島沖) | サケ・タラ・ホタテ・サンマ・カニ | 釧路・根室・稚内 |
| 三陸沖 | 東北の太平洋側 (青森・岩手・宮城) | サンマ・サバ・カツオ・カキ・ホタテ | 気仙沼・石巻 |
| 東シナ海 | 九州 の西側 | アジ・サバ・タイ | 長崎・博多 |
| 瀬戸内海 | 本州・四国・九州 に囲まれた海 | カキ・タイ・タコ・イリコ | 広島・徳島 |
なぜここがよい 漁場 なのか
- 暖流 (黒潮 = 日本海流) と 寒流 (親潮 = 千島海流) がぶつかる — ここを 潮目 といい、 プランクトンが集まり、 魚が集まる
- 大陸棚 (海の浅い部分) が広い — 日光がとどき、 海草 やプランクトンがよく育つ
- 川から栄養 がとけ込む — 山で育った落ち葉や土の養分 が、 川を通って海にとどく
ポイント: 「潮目 があるから三陸沖はよい 漁場」 という仕組みを、 セットでおぼえましょう。
3. 養殖 と つくり育てる漁業
「とる量」 が減る中で、 養殖 と つくり育てる漁業 が、 どんどん大切になっています。
養殖
- たまごから大人まで、 ずっと人が育てる 漁業
- いかだや生簀 (いけす) を海や池に浮かべ、 えさをやって育てる
- 取れるものの例:
| 育てる物 | 主な産地 |
|---|
| ホタテ | 北海道 (サロマ湖)・青森 (陸奥湾) |
| カキ | 広島 (瀬戸内海)・宮城 (松島湾) |
| のり | 佐賀 (有明海)・兵庫 (瀬戸内海) |
| ぶり | 鹿児島・愛媛 |
| マグロ | 長崎・和歌山 (近年では完全養殖も) |
| うなぎ | 鹿児島・愛知 (浜名湖周辺) |
つくり育てる漁業 (= 栽培漁業 さいばいぎょぎょう)
- たまごから稚魚 (= 子どもの魚) になるまで人が育て、 その後 海に放す
- 大きくなるまでは自然 の海で育ち、 そこを漁師 がとる
- サケ・ヒラメ・タイ・クルマエビなど
「とる漁業」 とのちがい
| 比較 | とる漁業 | 養殖 | つくり育てる漁業 |
|---|
| 育てる期間 | なし | たまご 〜 大人 | たまご 〜 稚魚 |
| えさ | なし | 人がやる | 稚魚 までだけ |
| いつとるか | いつでも | 出荷サイズで | 大人になった後 |
| 良い点 | 大量にとれる | 計画的に育てられる | 海を守れる |
| 弱い点 | 取りすぎで減る | えさや病気が大変 | 何 % が帰ってくるかわからない |
ポイント: つくり育てる漁業 は、 「海の田んぼ」 とも言われ、 SDGs の 「14 海の豊かさを守ろう」 と強くつながります。
4. 水産物 が食卓 にとどくまで
魚はとった後が勝負 です。 鮮度 が落ちるとあじが大きく落ち、 売れ残りになるため、 「いかに早く、 冷たいまま運ぶか」 がとても大切です。
流れ (海 → 食卓)
- 漁港 に水揚げ (みずあげ) — 港で船から魚をおろす
- 市場 に運ぶ — 漁港 にある 卸売市場 で、 魚を仕分ける
- 競り — 魚屋さんや店の人が 値段 をつけ合い、 一番高い値をつけた人が買うしくみ
- 冷蔵輸送 — トラックや列車で、 0 度ぐらいに冷やして運ぶ
- 小売店 (スーパー・魚屋・回転ずし) に並ぶ
- 食卓 で食べる
くふう
- 氷をたくさん入れた発砲スチロール で鮮度 を守る
- 冷凍技術 の発達 で、 マグロは海の上でマイナス 60 度に凍らせて運ぶことができる
- トレーサビリティ = 「いつ・どこで・どの漁師 が・どのようにとったか」 を、 商品 のシールや Q R コードで知ることができるしくみ
5. 漁業 の課題
日本の漁業 は、 この 40 年で大きく変わりました。
漁獲量 の大きな減少
- 1980 年代ごろ = 約 1200 万トン (世界 1 位)
- 2020 年代 = 約 400 万トン (世界 7 〜 10 位)
- 3 分の 1 ぐらい に減っている
減ったわけ
- 魚のとりすぎ で、 子どもの魚までとってしまった
- 排他的経済水域 (200 海里) が各国 できめられ、 遠洋漁業 ができる海が減った
- 海の環境変化 (温暖化・赤潮・海のごみ)
- 後継者不足 — 漁師 の高齢化が進み、 65 歳以上が半分近く
- 燃料高 — 船の油 (重油) の値段 が上がり、 利益 が出にくい
これからの取り組み
- 資源管理 = 魚の種類 ごとに 「とってよい量」 をきめる (T A C 制度)
- 小さな魚はとらない — あみの目を大きくする、 漁を休む期間 を作る
- つくり育てる漁業 の拡大 — マグロやヒラメの完全養殖
- 海のごみを拾う — マイクロプラスチック対策
- 若い人をよぶ — 国や県が漁業 を始める人に補助金を出す
ポイント: 「とる漁業 から育てる漁業 へ」 という大きな流れが、 これからのキーワードです。 SDGs 「14 海の豊かさを守ろう」 と重ねておぼえましょう。
まとめ
- 第 5 章では、 水産業 を学びました
- 漁業 には 沿岸漁業・沖合漁業・遠洋漁業 の 3 つがある
- 主な 漁場 は 北海道沖・三陸沖・東シナ海・瀬戸内海
- 黒潮 と 親潮 がぶつかる 潮目 が、 よい 漁場 をつくる
- 養殖 と つくり育てる漁業 がどんどん大切になっている
- 漁獲量 は 3 分の 1 に減っており、 「とる」 から 「育てる」 への転換 が進んでいる
次の章では: 第 6 章からは 工業 へと学習 が広がります。 食料生産 (米・野菜・果実・畜産・水産) で学んだ 「地域 の特色」 と 「生産 のくふう」 の見方を、 工業 でも使っていきましょう。
安全 と マナー の約束 (港・漁船見学編)
漁港 や漁船、 市場 を見学させてもらう時は、 とくに安全 に注意 しましょう。
- 港のはしは走らない — 海に落ちると、 命にかかわります。 大人と必ず手をつなぐ
- ライフジャケット を必ず着ける — 船に乗る時は子どもも大人も
- ロープや網につまずかない — 港には船のロープがたくさん。 走らずゆっくり歩く
- クレーン や重機の下を通らない — 魚を入れた重い箱をつり上げていることがある
- 市場 の 競り のじゃまをしない — 大切なしごと中。 静かに見守る
- 魚を 勝手にさわらない — ヒレやトゲでけがをしたり、 食中毒の原因 になることがある
- 手洗い・うがいを必ずする — 帰ったらすぐ
- 海にごみを捨てない — マイクロプラスチックは魚を通して私たちの体にも戻ってきます
海と漁業 は、 私たちの食卓 を支えています。 マナーを守って、 漁師 さんのしごとを体験 させてもらいましょう。
まとめ — 水産業 のさかんな地域を 3 行で
- 漁業 はどこでとるかで 3 つに分かれる。岸近くの 沿岸漁業、沖の 沖合漁業、遠い海の 遠洋漁業。
- 日本は 黒潮 と 親潮 がぶつかる 潮目 があり、魚の種類がとても多い。
- 魚のとり過ぎや環境の変化で 漁獲量 は減っており、養殖 や つくり育てる漁業 が大切になっている。