この章で学ぶこと
第 9 章では、 5 年生社会 の学習 の 柱 の 1 つである、 国土の自然環境 と国民生活 を学びます。 これまで学んできた 「産業」 (米・野菜・畜産・水産・工業) は、 すべて 自然 の上に成り立っています。 しかし産業 の発達 は、 公害 や 自然災害 の大きさも変えてきました。
- 森林 が果たす役割 (酸素・水・土砂流出防止・木材) を知る
- 林業 のしごとと、 国内木材 と輸入木材 の関係 を知る
- 日本の 4大公害病 の原因 と教訓 を学ぶ
- 公害を防ぐ法律 (公害対策基本法・環境基本法) の役割 を知る
- 日本が 自然災害 が多い国であることを知る
- 防災・減災 のくふうと、 日本の国際協力を知る
ポイント: 自然 と産業 は 対立 するものではなく、 両立 させるべきもの。 この章は SDGs の 「11 住み続けられるまちづくり」 「13 気候変動に具体的 な対策 を」 「14 海の豊かさ」 「15 陸の豊かさ」 と強くつながります。
1. 森林 が果たす役割
日本の国土の 約 3 分の 2 (66 %) は 森林 で覆われています。 これは世界 の国の中でも高い方で、 「森の国」 と呼ばれる理由 です。
森林 — 日本は国土の約 3 分の 2 が 森林。 国土保全・水資源・木材生産など多くの役割を担う。 林業の後継者不足が課題。
森林 の 4 つの役割
| 役割 | 内容 |
|---|
| 空気 をきれいにする | 木が 二酸化炭素 を吸い、 酸素 を出す |
| 水源 (= 水のもと) を守る | 雨を土にたくわえ、 ゆっくり川へ流す。 緑のダム と呼ばれる |
| 国土保全 | 木の根が土をつかみ、 土砂災害 や 洪水 を防ぐ |
| 木材 の生産 | 家・家具・紙の原料 |
森林 の 2 つの種類
- 天然林 = 自然 に育った森 (北海道のシラカバ・ブナ、 屋久島 の屋久杉など)
- 人工林 = 人が木を植えて育ててきた森 (スギ・ヒノキが多い)
日本の森の 約 4 割 が人工林で、 戦後にたくさん植えられたスギやヒノキが 木材 として使える大きさ に育っています。
緑のダム のしくみ
森の土はスポンジのように雨水を吸い込み、 すこしずつ川に流します。 そのため
- 洪水 が起こりにくい (一度に川があふれない)
- ダム や水道 の水を 1 年中安定 させる
- 土砂流出を防ぐ (山の土が雨で流されない)
この 「雨をためて、 ゆっくり流す」 働きが、 コンクリートのダムに似ていることから 緑のダム と呼ばれます。
2. 林業 のしごとと課題
林業 は、 木を 植えて・育てて・切って・運ぶ しごとです。 1 つの木が木材 として使えるまでには、 40 年 〜 60 年 かかります。
林業 の 4 つの仕事
| 順番 | 仕事 | 内容 |
|---|
| ① | 植林 | 春に苗木 を植える |
| ② | 下草刈り | 苗木 の周りの雑草を刈り取る (5 〜 10 年) |
| ③ | 間伐 | 込み合った木を一部切り、 残りの木に日光を当てる |
| ④ | 伐採・搬出 | 大人の木を切り、 トラックで運ぶ |
国内木材 と輸入木材
| 比較 | 国内木材 | 輸入木材 |
|---|
| 値段 | 高い | 安い |
| 使い道 | 高級家具・神社・特産品 | 家・建材・紙 |
| 輸送 二酸化炭素 | 少ない | 多い |
| 国の森への影響 | 良い (手入れが進む) | 良くない (国内林が荒れる) |
課題
- 後継者不足 — 林業 を営む人が高齢化 (60 歳以上が多数)
- 国内木材利用 の減少 — 戦後に植えた木が大きくなっても、 切って使う人が少ない
- 山の荒廃 — 手入れされない森は、 暗くて下草が育たず、 雨の時に 土砂災害 が起こりやすくなる
- 獣害 = シカやイノシシが増えすぎて、 苗木 が食べられたり、 田畑を荒らしたりする
取り組み
- 国産材利用 = 学校・公共建物で国産のスギ・ヒノキを使う
- 森林環境税 (2024 年 〜) = 1 人 1 年間 1000 円を集め、 森の手入れに使う
- エコマーク や F S C 認証 = ちゃんと育てられた森から取った木であることを示す
水俣病 発生地 (熊本県水俣市) — 1956 年に公式確認された公害病。 工場排水に含まれた有機水銀が海を汚染し、 魚を食べた人に症状が出た。 4 大公害病の 1 つ。
3. 公害 の歴史 と 4大公害病
産業 が急に発達 すると、 環境 が悪くなり、 人が病気になった。 これが 公害 です。 日本では 高度経済成長 (1955 年 〜 1973 年) の時期に 4 つの大きな 公害病が起こり、 大きな教訓 となりました。
4大公害病
| 公害病 | 発生場所 | 原因 | 主な症状 |
|---|
| 水俣病 | 熊本県水俣市 (八代海) | 工場が流した 有機水銀 が魚にたまり、 食べた人が発症 | 手足のしびれ・歩けなくなる・話せなくなる |
| 新潟水俣病 | 新潟県 (阿賀野川) | 有機水銀 (水俣病と同じ) | 水俣病と同じ |
| イタイイタイ病 | 富山県 (神通川) | 鉱山から流れた カドミウム が米にたまり、 食べた人が発症 | 骨がもろくなり、 「いたいいたい」 と痛がる |
| 四日市ぜんそく | 三重県四日市市 | 石油 コンビナート から出た 亜硫酸ガス | 激しいせき・呼吸困難 |
なぜこんなに多く起こったのか
- 戦後の産業発達 を 何より優先 し、 環境 を守る法律 がなかった
- 工場が廃棄物を そのまま川や海や空に流していた
- 病気と工場の関係 がわかるまでに 何年もかかった
- 知らずに食べた魚や米で、 多くの人が苦しんだ
教訓
- 病気で苦しんだ人や、 その家族 の苦しみは、 今も続いている
- 「経済 が大切だから」 と言って、 環境 を後回しにしてはいけない
- 早く気づいて、 早く止める ことがとても大切
4. 公害 をこえて — 法律 と取り組み
4大公害病 を教訓 として、 国はつぎつぎと法律 を作り、 環境 を守る取り組みを始めました。
主な法律 と出来事
| 年 | 出来事 |
|---|
| 1967 | 公害対策基本法 ができる (公害を防ぐための国の基本ルール) |
| 1971 | 環境庁 (今の環境省) ができる |
| 1972 | 自然環境保全法 — 国立公園 など自然 を守る法律 |
| 1993 | 環境基本法 ができる — 公害だけでなく、 地球温暖化 や オゾン層 など地球全体 の環境 を守る法律 |
| 2001 | 環境省 に格上げ |
7 つの 公害 と 「典型7公害」
公害対策基本法 では、 つぎの 7 つを 公害 と定めています。
- 大気汚染 — 空気がよごれる
- 水質汚濁 — 川・海がよごれる
- 土壌汚染 — 土がよごれる
- 騒音 — 音がうるさい
- 振動 — ゆれ
- 地盤沈下 — 地面が下がる
- 悪臭 — くさいにおい
環境 を守るふだんの取り組み
- ごみの分別 — 燃えるごみ・燃えないごみ・資源 ごみ
- 3R = リデュース (減らす)・リユース (再び使う)・リサイクル (再利用)
- エコカー や 省エネ家電 を使う
- 再生可能エネルギー = 太陽光・風力・水力で発電
- 地球温暖化対策 — 二酸化炭素 を減らす取り組み
ポイント: 環境基本法 は、 4大公害病 の 苦しい経験 から学んだ法律 です。 教科書だけでなく 「なぜできたか」 を必ず一緒におぼえましょう。
5. 自然災害 が多い国
日本は、 世界 の中でもとくに 自然災害 が多い国です。 地震・台風・豪雨・火山 などが、 毎年どこかで起こっています。
なぜ自然災害 が多いのか
- 4 つのプレート (太平洋プレート・フィリピン海プレート・ユーラシアプレート・北米プレート) がぶつかる場所にある → 地震・火山噴火 が多い
- 台風 の通り道 にある (年平均 11 個が接近、 そのうち 3 個が上陸)
- 梅雨 や 線状降水帯 で、 短い時間 に大雨が降る
- 山が多く川が短い → 大雨ですぐあふれる
- 海岸線が長い → 津波 の被害 が広い
主な 自然災害 と例
| 種類 | 説明 | 過去 の大きな例 |
|---|
| 地震 | プレートのずれで大地がゆれる | 阪神淡路大震災 (1995)・東日本大震災 (2011) |
| 津波 | 海底での地震 で海水が高くおし寄せる | 東日本大震災 (2011) |
| 火山噴火 | マグマが地上にふき出す | 雲仙普賢岳 (1991)・御嶽山 (2014) |
| 台風 | 強い風と大雨をもたらす | 台風第 19 号 (2019) |
| 豪雨 | 短時間 に大量の雨 | 西日本豪雨 (2018) |
| 豪雪 | 大量の雪で道路が止まる | 北陸・東北で毎年 |
6. 防災 と国際協力
自然災害 を完全 に止めることはできません。 だから 「そなえる」 ことが大切です。
災害 へのそなえ (4 つ)
- ハザードマップ = 「どこが危険 か」 を示した地図 (市町村が配布)
- 避難訓練 = 学校・町内会で定期的 に
- 非常持ち出し袋 = 水・食料・ラジオ・薬・着替えを用意
- 家族で 避難場所 をきめる = 学校・公園・体育館 など
国や県の取り組み
- 緊急地震速報 = ゆれる数秒 〜 数十秒前にお知らせ
- 津波警報 = 海ぞいの町に伝える
- 堤防 や 防潮堤 = 川や海から町を守る
- 耐震工事 = 学校・公共建物を強くする
- 災害救助隊 = 警察・消防・自衛隊が出動
国際協力
日本は 災害 が多い国 だからこそ、 防災の知識 と技術 を 世界 と分け合っています。
- 国際緊急援助隊 (J D R) = 海外で大災害 が起きた時、 日本から救助隊を派けん
- O D A (政府開発援助) = アジア・アフリカの国に ハザードマップ や防災教育を教える
- 国連防災世界会議 = 仙台 (2015) で開かれ、 「仙台防災枠組」 ができた
ポイント: 「自助 (自分でそなえる)」 「共助 (近所で助け合う)」 「公助 (国や県が助ける)」 の 3 つが、 災害 に強い社会 の基本です。
まとめ
- 日本の国土は 3 分の 2 が森 で、 森林 は 空気・水・国土・木材 の 4 つの大切な役割 を果たす
- 林業 は 後継者不足 が課題、 国産木材 の利用 を増やす取り組みが進む
- 日本の 4大公害病 (水俣病・新潟水俣病・イタイイタイ病・四日市ぜんそく) は大きな教訓 となった
- 公害対策基本法 (1967) → 環境基本法 (1993) で、 環境 を守る法律 が整えられた
- 日本は 自然災害 がとくに多い国 — プレート・台風・梅雨 が重なるから
- ハザードマップ・避難訓練 でそなえ、 「自助・共助・公助」 の 3 つで災害 に強い社会 をつくる
次の章では: 第 10 章で 5 年生の まとめ をし、 6 年生で学ぶ 政治 と歴史 へと学びをつなげます。
安全 と マナー の約束 (公害跡地・災害時編)
公害が起きた場所 や、 災害 の跡地 を見学する時は、 とくに心を大切に。
公害跡地を訪れる時
- 公害で苦しんだ人と家族 が今もいる — 軽い気持ちで 「おもしろい」 と言わない
- 資料館では静かに、 写真撮影は許可 された場所 だけ
- 周りの海や川を汚さない — 今でも環境保全 が続いている
- 学んだことを家族 に伝える — 教訓 を次につなぐことが、 いちばん大切
災害時の行動
- 地震 が来たら: ① 机の下にもぐる ② 火を消す ③ ドアを開けて出口を確保 ④ 落ち着いて避難
- 津波 が来そうな時: とにかく 高い場所 へ走る (車ではなく徒歩 で)
- 大雨や 台風 の時: 川や用水路に近づかない、 早めに避難
- ハザードマップ を家族 と見ておく — どこが危険 か、 どこに避難 するか
- 非常持ち出し袋 を用意 — 水・食料 (3 日分)・薬・着替え・ラジオ・懐中電灯
- 緊急地震速報 が鳴ったら、 すぐ身を守る行動を
環境 と災害 の学びは、 「忘れないこと」 と 「そなえること」 の両方 が大切です。 学んだ知識 を、 家族や地域と必ず共有 しましょう。
まとめ — 国土 の 自然環境 と国民生活を 3 行で
- 日本の国土の約 3 分の 2 は 森林。空気・水・国土・木材の 4 つの大切な役割を果たしている。
- 水俣病・新潟水俣病・イタイイタイ病・四日市ぜんそく の 4大公害病 の教訓から、公害対策基本法 や 環境基本法 がつくられた。
- 日本は 自然災害 がとても多い国。ハザードマップ や 避難訓練 で「自助・共助・公助」 の 3 つでそなえる。