はじめに
この章では、 むかしから日本で大切にされてきた 短歌・俳句・ことわざ・慣用句・故事成語 と、 自分で 詩 をつくる体験を学びます。
この章でできるようになること:
- 短歌(五・七・五・七・七)と 俳句(五・七・五)のリズムがわかる
- 季語 をいくつか知っている
- ことわざ・慣用句・故事成語 を場面で使える
- 自分で 4〜8 行の詩がつくれる
1. 短歌の世界 — 五・七・五・七・七
短歌 は 5・7・5・7・7 の 31 音でつくられた、 日本で一番古い詩の形です。 1300 年以上前の 『万葉集』 からずっとつくられつづけています。
例 1(『万葉集』 山部赤人)
田子の浦にうち出でて見れば白妙の富士の高嶺に雪は降りつつ
(駿河の田子の浦に出て見ると、 白い富士山に雪がしずかに降っている)
例 2(江戸時代良寛)
霞立つながき春日に子供らと手まりつきつつこの日暮らしつ
(春の長い一日、 子どもたちと手まりをつきながら過ごした)
声に出して読むと、 5・7・5・7・7 のリズムの心地よさが感じられます。
2. 俳句の世界 — 五・七・五と季語
俳句 は 5・7・5 の 17 音でつくられた、 世界でいちばん短い詩と言われます。 中にかならず 季語(季節をあらわす言葉) を 1 つ入れるのがきまりです。
| 作者 | 句 | 季語(季節) |
|---|
| 松尾芭蕉 | 古池や蛙飛びこむ水の音 | 蛙(春) |
| 与謝蕪村 | 春の海ひねもすのたりのたりかな | 春の海(春) |
| 小林一茶 | やせ蛙まけるな一茶これにあり | 蛙(春) |
| 正岡子規 | 柿くへば鐘が鳴るなり法隆寺 | 柿(秋) |
ポイント: 「古池や」「ひねもすのたりのたり」 など、 ほんの 17 音で風景や気持ちが大きく広がります。
3. ことわざ — 知って使おう
ことわざ は、 むかしの人が経験からつくった短い教えの言葉です。 意味をおぼえるだけでなく、 自分の生活で使ってみましょう。
| ことわざ | 意味 |
|---|
| ちりも積もれば山となる | 小さい努力も続ければ大きくなる |
| 善は急げ | よいことはすぐやるのがよい |
| 石橋をたたいて渡る | 用心ぶかくすること |
| さるも木から落ちる | じょうずな人でもしっぱいすることがある |
| 七転び八起き | 何度倒れてもあきらめず立ち上がる |
| 急がば回れ | 急ぐほど安全な道を行く方がよい |
| 二兎を追う者は一兎をも得ず | 一度に二つをねらうとどちらも失う |
| 良薬は口に苦し | ためになる助言ほど聞きづらい |
自作例文: 「妹は毎日 5 字ずつ漢字を書いて、 一年で 1000 字をおぼえた。 ちりも積もれば山となるだ。」
4. 慣用句 — 体や自然から生まれた言い方
慣用句 は、 二つ以上の言葉が合わさって、 もとの意味とはちがう特別な意味をもつ言い方です。
| 慣用句 | 意味 |
|---|
| 水に流す | 過ぎたことを気にせず忘れる |
| 羽をのばす | きゅうくつからはなれてのんびりする |
| 頭をひねる | よく考える |
| 目が点になる | おどろいてぼうぜんとする |
| 手をかりる | 助けてもらう |
| 口がかたい | ひみつを守る |
| すずめの涙 | とても少ないこと |
| 馬が合う | 仲がよい |
自作例文: 「兄はテストが終わって、 久しぶりに公園で羽をのばした。」
5. 故事成語 — むかしの中国からの知恵
故事成語 は、 古い中国の歴史や物語がもとになった短い言葉です。 言葉のおくに一つの物語があります。
- 矛盾(むじゅん) — 楚の商人が 「どんな盾もつらぬく矛」 と 「どんな矛も通さない盾」 を売っていた。 「その矛でその盾をついたら?」 と聞かれて答えられなかった。 → 話の前と後ろでつじつまが合わないこと。
- 推敲(すいこう) — 唐の詩人賈島が 「僧は推す月下の門」 を 「敲く」 に変えるかなやんだ。 → 文章を何度も読み返して直すこと。
- 五十歩百歩 — 戦場で 50 歩にげた兵が 100 歩にげた兵をわらった。 にげたことは同じ。 → 少しのちがいはあるがほぼ同じ。
- 漁夫の利 — シギとハマグリが争っているうちに、 通りかかった漁師が両方をつかまえた。 → 二人が争っているすきに、 別の人が利益を得ること。
- 蛇足(だそく) — 早く酒を飲みたい人が、 蛇を描く競争で余計な足まで描き、 負けてしまった。 → よけいなものをつけ加えること。
6. 自分で詩をつくってみよう
詩 をつくるのは自由です。 でも、 はじめは次の 3 ステップがおすすめです。
- テーマを決める(季節・家族・友達・好きなもの等)
- 5 つの言葉を集める(思いつくままにメモする)
- 4〜8 行でつなぐ(くりかえしや、 たとえを使うとよい)
テンプレート例:
あさの空はピンクいろ
ねぼうした雲がふわりとうかぶ
学校までの道で
ぼくは一つ大きくしんこきゅう
くりかえし(「ピンク・ふわり・しんこきゅう」 などやわらかい音) やたとえ(「ねぼうした雲」) を使うと、 詩らしくなります。
7. まとめ
- 短歌 は 5・7・5・7・7、 俳句 は 5・7・5
- ことわざ・慣用句・故事成語 は知って使う
- 詩はテーマ → 言葉集め → 4〜8 行でつくれる
次の章では、 物語をどう読むかを学びます。