この章で学ぶこと
新課程 (平成 30 年告示) での扱い: 「整数の性質」 は 「数学と人間の活動」 に統合・選択制 となり、 必履修ではなくなりました。 しかし大学入試 (特に国公立二次・難関私大) では引き続き出題されるため、 入試を視野に入れるなら 発展内容としての学習が推奨 されます。
確率から一転、 整数 の世界へ入ります。 高校数学 A の 整数の性質 は、 中学の 「倍数・約数」 を整理 し直し、 大学入試や競技数学につながる 「整数論」 の入口となります。
- 約数・倍数 の定義と性質 を整理 する
- 倍数判定法 (3、 4、 8、 9 の倍数) を使いこなす
- 素数 と 素因数分解 を確認 する
- 素因数分解 から 約数の個数・約数の和 を求める
- 最大公約数 (gcd) と 最小公倍数 (lcm) を計算する
ポイント: 整数問題の多くは 素因数分解 から始まる。 「素因数が何個ずつどのように含まれているか」 を把握 するのが鍵。
1. 約数と倍数
定義
整数 a,b (b=0) について、 ある整数 k が存在して a=bk と表せるとき、 「b は a の 約数」、 「a は b の 倍数」 と言います。
例: 12=3×4 なので 3 は 12 の約数、 12 は 3 の倍数。
基本性質
- 1 はすべての整数 の約数
- 任意 の整数 n に対し n は n自身 の約数・倍数
- b∣a (= b は a を割る) と b∣c なら b∣(a±c)
- b∣a なら任意 の整数 k について b∣ka
2. 倍数判定法
主な倍数判定
| 数 | 判定法 |
|---|
| 2 | 一の位が偶数 (0, 2, 4, 6, 8) |
| 3 | 各位の数字の和が 3 の倍数 |
| 4 | 下 2 桁が 4 の倍数 |
| 5 | 一の位が 0 か 5 |
| 6 | 2 の倍数 かつ 3 の倍数 |
| 8 | 下 3 桁が 8 の倍数 |
| 9 | 各位の数字の和が 9 の倍数 |
| 11 | 各位を交互 に符号を変えて足した値が 11 の倍数 |
例題 1: 倍数判定
12345678 はどの数の倍数か。
- 一の位は 8 → 2 の倍数、 4 の倍数 (下 2 桁 78 ÷ 4 ≠ 整数だから 4 ではない → 確認: 78 = 4·19 + 2 で 4 の倍数ではない)。 正しくは 2 の倍数だけ。
- 各位の和: 1+2+3+4+5+6+7+8=36。 これは 9 の倍数 → 9 の倍数 (したがって 3 の倍数でもある)。
3. 素数と素因数分解
素数の定義
素数 とは 1 とその数自身以外に約数 を持たない 2 以上の自然数 を言います。 2, 3, 5, 7, 11, 13, 17, 19, ... が素数の例。
注: 1 は素数ではありません。
素因数分解
任意 の 2 以上の自然数は素数の積として ただ一通り に表せます (素因数分解の一意性)。
例: 60=22⋅3⋅5、 180=22⋅32⋅5、 1024=210、 504=23⋅32⋅7。
分解の仕方
小さい素数から順に割り続けます。
180÷2=90÷2=45÷3=15÷3=5÷5=1。 したがって 180=22⋅32⋅5。
4. 約数の個数と和
約数の個数
n=p1a1p2a2⋯pkak と素因数分解されるとき、 約数 の個数 は
(a1+1)(a2+1)⋯(ak+1)
約数の総和
σ(n)=(1+p1+⋯+p1a1)(1+p2+⋯+p2a2)⋯
各等比数列の和の公式 1+p+p2+⋯+pa=p−1pa+1−1 を使うと計算が楽。
例題 2: 180 の約数
180=22⋅32⋅5。
- 個数: (2+1)(2+1)(1+1)=18個
- 総和: (1+2+4)(1+3+9)(1+5)=7⋅13⋅6=546
例題 3: 12 の約数
12=22⋅3。 個数 は (2+1)(1+1)=6個 (= {1,2,3,4,6,12})。 総和は (1+2+4)(1+3)=7⋅4=28。
5. 最大公約数と最小公倍数
定義
- 最大公約数 gcd(a,b): a と b の共通 な約数 の中で最も大きいもの
- 最小公倍数 lcm(a,b): a と b の共通 な倍数 の中で最も小さいもの
素因数分解で求める
a=p1a1p2a2⋯、 b=p1b1p2b2⋯ と同じ素数を共通 に並べたとき
gcd(a,b)=∏pimin(ai,bi),lcm(a,b)=∏pimax(ai,bi)
例題 4: gcd と lcm
a=72=23⋅32、 b=108=22⋅33。
- gcd(a,b)=22⋅32=36
- lcm(a,b)=23⋅33=216
- 検算: gcd⋅lcm=36⋅216=7776=72⋅108 ○
公式
gcd(a,b)⋅lcm(a,b)=a⋅b
6. 章末まとめ
| 概念 | 内容 |
|---|
| 倍数判定 | 3, 9 は桁の和、 4 は下 2 桁、 8 は下 3 桁 |
| 素因数分解 | 一意性が保証される |
| 約数個数 | (a1+1)(a2+1)⋯ |
| 約数総和 | (1+p1+⋯+p1a1)⋯ |
| gcd, lcm | 素因数の min,max、 gcd⋅lcm=ab |
次の章では: 大きな数の gcd を効率 よく求める ユークリッドの互除法 を学びます。 不定方程式 への重要な道具となります。