この章で学ぶこと
数学 A の図形分野を締めくくる章です。 中学で学んだ 円周角の定理 を拡張 し、 接線が関わる角と長さの関係を学びます。
- 円周角の定理 の復習
- 接弦定理 (接線 と弦のなす角)
- 方べきの定理 (3 つのパターン)
- 円に内接する四角形 の性質
- トレミーの定理 (発展)
ポイント: 「円周上の同じ弧を見る角度は等しい」 という 円周角の定理 が全ての出発点。 接線がからむときは、 接点を 「動かすことができない弦の端」 と解釈 すると接弦定理につながります。
1. 円周角の定理 (復習)
定理
円周上の 2 点A,B と、 弧AB (中心角の反対側) の上にある任意 の点P について、 円周角 ∠APB は弧AB に対する 中心角 の半分:
∠APB=21∠AOB
系 (重要)
- 同じ弧に対する円周角は 等しい
- 直径 に対する円周角は 90°
例題 1
円O上に A,B,C を取り、 ∠BOC=80° とする。 ∠BAC を求めよ (A は弧BC の反対側)。
円周角 = 中心角 ÷ 2 なので ∠BAC=40°。
2. 接弦定理
定理
円に接する直線があり、 接点を T とする。 弦TA を引くと、 弦TA は円を 2 つの弧に分けます。 接線上に点P をとったとき、 接線と弦のなす角∠PTA は、 P がある側とは反対側の弧 (英語で alternate segment、 「反対側の弧」) 上の 円周角 と等しくなります:
∠PTA=∠ABT
(B は 「弦TA が分ける 2 つの弧のうち、 接線上の点P とは 反対側 の弧」 上の任意 の点)。
つまり、 接線が弦の一方の側を向いていれば、 その角と等しい円周角は 反対側 の弧から見た角です。 弦と接線が作る角は 2 種類あり (鈍角と鋭角)、 それぞれ別の弧の円周角と対応します。
直感的な説明
接線を 「無限に短い弦の端」 とみなすと、 接弦定理は 「同じ弧を見る円周角は等しい」 という円周角の定理の極限として自然に出てきます。
例題 2
円に接する直線が接点T で接し、 接線上の点P をとる。 弦TA と接線のなす角∠PTA=70° とする。 弦TA が分ける 2 つの弧のうち、 P とは反対側の弧 上の点B から弦TA を見た 円周角 ∠TBA を求めよ。
接弦定理より ∠TBA=∠PTA=70°。
3. 方べきの定理
パターン 1: 弦同士が円内で交わる
円内の 1 点P を通る 2 本の弦AB、 CD が P で交わるとき
PA⋅PB=PC⋅PD
パターン 2: 弦 (の延長) が円外で交わる
円外の 1 点P から円を切る 2 本の直線 (割線) が、 円と A,B および C,D で交わるとき
PA⋅PB=PC⋅PD
パターン 3: 接線と割線
円外の 1 点P からの 接線 PT と 割線 PAB (A,B は円周上) について
PT2=PA⋅PB
覚え方: どのパターンも 「P から円までの 2 本の距離の積 = 一定」。 この値を 方べき と呼びます。
例題 3 (パターン 3)
円外の点P から接線PT を引いて PT=6。 P を通る割線が円と A,B で交わり、 PA=3 とする。 PB を求めよ。
PT2=PA⋅PB より 36=3⋅PB、 PB=12。 したがって AB=12−3=9。
例題 4 (パターン 1)
円内で弦AB と弦CD が 1 点P で交わり、 PA=4,PB=6,PC=3 のとき PD を求めよ。
4⋅6=3⋅PD より PD=8。
4. 円に内接する四角形
性質 1: 対角の和
円に内接 する 四角形 ABCD で
∠A+∠C=180°,∠B+∠D=180°
性質 2: 外角 = 内対角
四角形の 1 つの外角は、 それに隣り合わない内角 (= 内対角) と等しい。
内接するための条件
四角形 ABCD が円に内接する必要十分条件は、 上の 「対角の和が 180°」 (または同値な 「外角 = 内対角」) が成り立つこと。
例題 5
円に内接する 四角形 ABCD で ∠A=70°、 ∠B=95° のとき、 ∠C、 ∠D を求めよ。
∠C=180°−70°=110°、 ∠D=180°−95°=85°。
5. トレミーの定理 (発展)
定理
円に内接する 四角形 ABCD について、 対角線と辺の長さの間に
AC⋅BD=AB⋅CD+AD⋅BC
(対角線の積 = 向かい合う辺の積の和)。
例題 6
円に内接する 正方形 ABCD で 1 辺を 1 とする。 対角線AC を求めよ。
AC=BD (対称性)、 AB=BC=CD=DA=1。 トレミーより AC2=1⋅1+1⋅1=2、 AC=2。 (ピタゴラスの定理 と一致)。
6. 章末まとめ
| 定理 | 内容 |
|---|
| 円周角 | ∠APB=21∠AOB |
| 接弦定理 | 接線と弦の角 = 反対側の円周角 |
| 方べき (内) | PA⋅PB=PC⋅PD |
| 方べき (外) | 同上 |
| 方べき (接) | PT2=PA⋅PB |
| 内接四角形 | 対角の和 = 180° |
| トレミー | AC⋅BD=AB⋅CD+AD⋅BC |
7. 補足: 円と直線の位置関係
接するか交わるか
円O (半径r) と直線ℓ の位置関係は、 中心O から ℓ までの距離d で決まります。
| d と r | 関係 | 共通点の数 |
|---|
| d>r | 離れている | 0 |
| d=r | 接する | 1 |
| d<r | 交わる | 2 |
2 円の位置関係
2 つの円 (半径r1,r2、 中心間距離d) の関係:
| 距離 | 関係 |
|---|
| d>r1+r2 | 互いに外部 (共通点 0) |
| d=r1+r2 | 外接 (共通点 1) |
| ∥r1−r2∥<d<r1+r2 | 交わる (共通点 2) |
| d=∥r1−r2∥ | 内接 (共通点 1) |
| d<∥r1−r2∥ | 一方が他方の内部 (共通点 0) |
大事: 円と直線、 円と円の関係は 必ず距離と半径で比べる。 図だけで判断 せず、 必ず計算で確認 すること。
数学 A 全体を振り返って: 場合の数・確率・整数・図形と、 一見バラバラな 4 分野を学びましたが、 いずれも 「論理 を形式化する訓練」 という共通点があります。 数学 II・B、 III に進んでも、 この訓練は必ず役に立ちます。