この章で学ぶこと
ユダヤ教・キリスト教・イスラームは 「一神教」 の アブラハム の宗教と呼ばれ、 同じ神を信仰の源とします。 この章ではユダヤ・キリストの流れを学びます。
- ユダヤ教の選民思想・モーセ の 十戒・律法 (トーラー)
- イエス の愛 (アガペー)・隣人愛・山上の説教
- パウロ の 贖罪 と 信仰義認
- アウグスティヌス の教父神学
- トマス・アクィナス のスコラ哲学
- 宗教改革 (ルター・カルヴァン)
1. ユダヤ教
紀元前 13 世紀頃、 エジプトで奴隷となっていたヘブライ人を モーセ が導き出し (出エジプト)、 シナイ山で神ヤハウェ と契約を結んだことに始まります。
主要概念
| 概念 | 内容 |
|---|
| ヤハウェ | 唯一絶対の創造神 |
| 選民思想 | ユダヤ人は神に選ばれた民 |
| 十戒 | モーセが受け取った 10 の戒め (偶像崇拝禁止・殺すな・盗むな等) |
| 律法 (トーラー) | 神の教え。 旧約聖書の最初の 5 書 (モーセ五書) |
| 預言者 | 神の言葉を告げる者 (イザヤ・エレミヤ等) |
| メシア (救世主) | 終末に現れる救い主 |
「目には目を、 歯には歯を」 (同害復讐法) はハンムラビ法典由来で、 旧約では復讐を等価に制限する趣旨です。
ミケランジェロ作 『モーセ像』 (1513-1515)。 十戒の石板を抱える姿。 ローマ・サン・ピエトロ・イン・ヴィンコリ聖堂所蔵。 (写真: Jörg Bittner Unna / Wikimedia Commons, CC BY 3.0)
2. イエスとキリスト教の成立
イエス (前 4 頃-後 30 頃) はガリラヤ出身のユダヤ教徒でしたが、 律法の形式主義を批判し、 「神の愛」 を説きました。
イエスの教え
| 概念 | 内容 |
|---|
| アガペー | 神が人に注ぐ無償の愛 |
| 隣人愛 | 「汝の隣人を汝自身のように愛せよ」 |
| 黄金律 | 「人にしてもらいたいことは、人にもそのとおりにせよ」 |
| 山上の説教 | 「心の貧しい者は幸い」 等、 八福の教え |
| 神の国 | 愛と正義が実現する世界 |
イエスはローマ支配下のエルサレムで十字架に処せられました。 弟子たちは 復活 を信じ、 「キリスト (救世主) である」 と宣教を始めました。
シナイ山聖カタリナ修道院の 『全能者キリスト (パントクラトール)』 (6 世紀)。 現存する最古級の イエス像の一つで、 ビザンティン美術の出発点とされる。 (写真: Wikimedia Commons, Public domain)
3. パウロと初期キリスト教
パウロ (10 頃-65 頃) は当初キリスト教徒を迫害していましたが、 回心後ユダヤ人以外の異邦人への宣教を進めました。
| 概念 | 内容 |
|---|
| 贖罪 | イエスは人類の罪を背負って死んだ |
| 信仰義認 | 律法の行いでなく、 神とキリストへの信仰で救われる |
| 原罪 | アダムとエヴァの罪を全人類が受け継ぐ |
| キリスト教の三元徳 | 信仰・希望・愛 |
4. 教父とスコラ哲学
アウグスティヌス (354-430)
教父哲学の大成者。 主著 『告白』 『神の国』。
- 人は 原罪 ゆえに自力で救われず、 神の 恩寵 が必要
- 「神の国」 と 「地上の国」 を区別
トマス・アクィナス (1225 頃-1274)
中世スコラ哲学 の大成者。 主著 『神学大全』。 アリストテレス哲学をキリスト教と統合し、 「信仰と理性の調和」 を論じました。
5. 宗教改革
16 世紀、 教会の 贖宥状 (免罪符) 販売等への批判から、 宗教改革 が起こりました。
| 改革者 | 主張 |
|---|
| ルター (1483-1546) | 「信仰のみ・聖書のみ」、 「万人司祭主義」、 95 か条の論題 |
| カルヴァン (1509-1564) | 予定説 (救済は神が予め定めている)、 職業召命観 (世俗の職業も神からの召し) |
マックス・ヴェーバー は 『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』 で、 カルヴァン派の禁欲的労働倫理が近代資本主義の精神的基盤となったと論じました。
章末まとめ
- ユダヤ教: ヤハウェ・モーセ・十戒・選民思想・律法
- イエス: アガペー・隣人愛・黄金律・山上の説教
- パウロ: 贖罪・信仰義認・キリスト教の普遍化
- 教父・スコラ: アウグスティヌス (神の国)、 トマス・アクィナス (信仰と理性)
- 宗教改革: ルター (信仰のみ)、 カルヴァン (予定説・職業召命観)