この章で学ぶこと
世界三大宗教のうち、 残る イスラーム と 仏教 を学びます。 一神教と縁起思想の対比を通じて、 多様な救済観を理解しましょう。
- ムハンマド と イスラーム の成立、 クルアーン (コーラン)
- 六信五行 と シャリーア (イスラム法)
- ブッダ の生涯、 四諦・八正道・縁起・慈悲
- 上座部仏教 と 大乗仏教 の違い
1. イスラーム
7 世紀初頭、 アラビア半島で ムハンマド (570 頃-632) が神アッラー から啓示を受け、 イスラーム (「神への帰依」 の意) を興しました。
六信 — 信じるべき 6 つ
- アッラー (唯一神)
- 天使
- 啓典 (クルアーン等)
- 預言者 (ムハンマド・モーセ・イエス等)
- 来世
- 天命
五行 — 行うべき 5 つ
| 行 | 内容 |
|---|
| 信仰告白 (シャハーダ) | 「アッラーの他に神はなく、 ムハンマドは神の使徒である」 |
| 礼拝 (サラート) | 1 日 5 回、 メッカに向かい祈る |
| 喜捨 (ザカート) | 貧者への義務的寄付 |
| 断食 (サウム) | ラマダーン月に日中の飲食を断つ |
| 巡礼 (ハッジ) | 一生に一度メッカへ巡礼 |
経典と法
- クルアーン (コーラン): アッラーの言葉を集めた聖典
- ハディース: ムハンマドの言行録
- シャリーア: 信仰・生活全般を規定するイスラーム法
メッカの カーバ神殿。 イスラーム教徒が礼拝 (サラート) の際に向かう聖地で、 五行の一つ ハッジ (巡礼) の中心でもある。 (写真: Muhammad Mahdi Karim / Wikimedia Commons, GFDL)
大事: イスラームはユダヤ教・キリスト教と同じアブラハムの神を信じ、 イエスを偉大な預言者と認めています (ただし神の子とは認めません)。 偶像崇拝を厳しく禁じるのが特徴です。
2. 仏教の開祖ブッダ
ブッダ (ゴータマ・シッダールタ、 前 5 世紀頃) はインド・カピラ国の王子として生まれましたが、 老・病・死等の 「四門出遊」 を機に出家。 6 年の苦行後、 ブッダガヤの菩提樹下で悟りを開き、 ブッダ (覚者) となりました。
4 つの真理 — 四諦
| 諦 | 内容 |
|---|
| 苦諦 | 人生は苦である (四苦 = 生・老・病・死、 八苦 = + 愛別離・怨憎会・求不得・五蘊盛) |
| 集諦 | 苦の原因は 煩悩 (渇愛) である |
| 滅諦 | 煩悩を滅すれば苦は消え 涅槃 に至る |
| 道諦 | 涅槃への道は 八正道 |
八正道 — 涅槃への 8 つの道
正見・正思・正語・正業・正命・正精進・正念・正定。 極端を避ける 中道 の実践。
縁起と慈悲
| 概念 | 内容 |
|---|
| 縁起 | 全ての物事は関わり合いで生起する。 「此 あるにより彼ある」 |
| 諸行無常 | 全ての物は移り変わる |
| 諸法無我 | 不変の 「我」 は存在しない |
| 一切皆苦 | 全ては苦である |
| 慈悲 | 慈 (友への楽を与える)、 悲 (苦を抜く) |
ポイント: ブッダは神を立てず、 苦からの解脱の 「道」 を示した点で独特です。
3. 上座部と大乗
ブッダの死後、 仏教は大きく 2 系統に分かれました。
| 流派 | 特徴 | 地域 |
|---|
| 上座部仏教 (テーラワーダ) | 出家し自己の解脱を目指す (阿羅漢) | スリランカ・東南アジア |
| 大乗仏教 | 在家を含む万人の救済を目指す (菩薩信仰) | 中国・朝鮮・日本 |
大乗の主要概念
| 概念 | 提唱者 | 内容 |
|---|
| 空 | ナーガールジュナ (龍樹) | 全ての物に固定的実体はない |
| 唯識 | アサンガ (無著)・ヴァスバンドゥ (世親) | 全ては心 (識) の現れ |
| 六波羅蜜 | ― | 菩薩が行う 6 つの修行 (布施・持戒・忍辱・精進・禅定・智慧) |
| 一切衆生悉有仏性 | 涅槃経 | 全ての生ある者に仏となる性質がある |
鎌倉大仏 (高徳院)。 13 世紀建立の 阿弥陀如来青銅像。 万人救済を説く大乗仏教の信仰を象徴する。 (写真: Ray in Manila / Wikimedia Commons, CC BY 2.0)
章末まとめ
- イスラーム: ムハンマド・アッラー・六信五行・クルアーン・シャリーア
- ブッダ: 四諦 (苦集滅道)・八正道・縁起・諸行無常・諸法無我・慈悲
- 上座部 (自己解脱・阿羅漢) と大乗 (万人救済・菩薩)
- 大乗概念: 空 (龍樹)・唯識 (世親)・六波羅蜜・一切衆生悉有仏性